ホームセンターのコーナンで楽天ポイントとTポイントが直接対決!勝利の決め手は「巨大経済圏」
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楽天(現楽天グループ)が展開する楽天ポイントは存在感を高めつつあった。当初は日本初の共通ポイントであるTポイントの高い知名度に苦戦したが、次第にポイントと決済を強みとする「楽天経済圏」の力で、ライバルを凌駕していくことになる。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#30では、楽天の経済圏のパワーを示すこととなった、ホームセンター大手のコーナンを巡るTポイントとの争奪戦の内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
ホームセンターのコーナンと交渉入り
楽天とTポイントが再度の直接対決へ
2016年7月27日、楽天(現楽天グループ)のポイント事業を指揮する笠原和彦は大阪府堺市にあるコーナン商事を訪れた。社長の疋田直太郎と面会した笠原は、楽天ポイントへの加盟を呼びかけた。
ホームセンター大手のコーナンを運営するコーナン商事の発足の経緯はユニークだ。1967年、疋田の父の耕造は港南株式会社を創業した。同社の主業は石油販売業で、大阪・堺でガソリンスタンド数店舗を展開していた。
店舗網が100店ほどに広がったころのこと。耕造は多角化を目指し、ホームセンター事業に参入を決める。理由は耕造の趣味が盆栽だったためだ。耕造は78年にコーナン商事を設立し、1号店を堺にオープンした。のちに、ホームセンター事業の急成長に伴い、祖業である石油販売業を主要取引先の伊藤忠エネクスに売却することになる。
笠原に疋田を紹介したのは、その伊藤忠エネクスの社長だった岡田賢二である。伊藤忠エネクスに転じる前に伊藤忠商事の常務金融事業部長だった岡田と笠原は、ファミリーマートのファミマTカードを一緒に立ち上げた仲だった。12年に伊藤忠エネクスに転じた岡田は、早くから楽天ポイントの可能性を見いだし、15年秋から一部のガソリンスタンドで楽天ポイントの取り扱いを始めた。そして、取引先のENEOSホールディングスにも楽天ポイントの加入を勧めていた(『楽天の苦闘10年!「Tポイントのみ」だったENEOSを切り崩した加盟交渉の全内幕』参照)。
笠原の話を聞いた疋田は、販売促進部長の山本健太朗を窓口に交渉を進めることを決める。16年9月15日、楽天とコーナン商事の間で秘密保持契約(NDA)が結ばれた。
最初に両者でシステムに関する協議が持たれた。だが、笠原はTポイント陣営もコーナン商事と同時に交渉を進めていることに勘付く。そもそも、コーナン商事にTポイント陣営として最初に営業をかけたのはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)在籍時の笠原である。笠原は前職のNECの営業マン時代に港南株式会社にコンピュータシステムを売り込んでいた経緯もあり、Tポイントの営業先としてコーナン商事に足を運んでいたのだ。笠原がCCCを去った後も、CCCはコーナン商事を口説いていたのだ。
コーナン商事を担当していたのは、CCC傘下のTポイント運営会社の営業部長だった滝口彰である。CCCで笠原の部下だった滝口は、富山県のスーパー、大阪屋ショップの争奪戦でも相手方だった。かつての上司と部下だった笠原と滝口が再びコーナンを巡る争奪戦で相まみえることになったのだ。