熱中ねっちゅう症しょう単語たんご

• 概要がいよう
• 症状しょうじょうと処置しょち
• 応急おうきゅう処置しょち
• 予防よぼう法ほう
• 関連かんれん商品しょうひん
• 関連かんれん項目こうもく
• 外部がいぶリンク
• 掲示板けいじばん

ニコニコ大だい百科ひゃっか　：　医学いがく記事きじ ※ご自身じしんの健康けんこう問題もんだいに関かんしては、専せん門もんの医療いりょう機関きかんに相談そうだんしてください。

熱中ねっちゅう症しょうとは、高温こうおん等とうのために体からだのバランスがおかしくなり発症はっしょうする障害しょうがいのことである。

概要がいよう

人間にんげんのような恒温こうおん動物どうぶつは汗あせや毛け細ほそ血管けっかんの拡張ちょうなどにより上昇じょうしょうした体温たいおんを低下ていかさせる機き能のう、つまり体温たいおん調整ちょうせい機き能のうがある。しかし、汗あせにより水みず分ぶんや塩分えんぶんが失うしなわれることにより、このような体温たいおん調整ちょうせい機き能のうが破綻はたんし体温たいおんが上昇じょうしょうし続つづけて様々さまざまな障害しょうがいを起おこすことがある。このような障害しょうがいを総称そうしょうしたものが熱中ねっちゅう症しょうである。かつては特とくに重症じゅうしょうのものを熱射病ねっしゃびょうあるいは日射病にっしゃびょうと呼よぶこともあった。

熱中ねっちゅう症しょうになりやすい環境かんきょうとしては、温度おんどが高たかい、湿度しつどが高たかい、風ふうが弱よわい、通気つうき性せいが悪わるい、日差ひざしが強つよい、急きゅうに暑あつくなったなどがある 。激げきしい労働ろうどうや運動うんどうによって発症はっしょうすることも多おおい。また熱中ねっちゅう症しょうになりやすい人ひとは、高齢こうれい者しゃ、幼児ようじ、肥満ひまんの人ひと、 体調たいちょうの悪わるい人ひと、持病じびょうのある人ひと、暑あつさに慣なれていない人ひととされている。

悪条件あくじょうけんさえ揃そろいえば、年齢ねんれいに限かぎらず30分ふんも経たたないうちに発症はっしょうする。

年代ねんだい別べつに見みると10代はスポーツ時とき、20代だいから50代だいは仕事しごと時とき、60代だい以上いじょうは日常にちじょう生活せいかつにおいて起おきることが多おおい。このうち、スポーツ時ときと仕事しごと時ときは屋外おくがいで発症はっしょうすることが多おおいが、日常にちじょう生活せいかつにおいて起おこる場合ばあいにはむしろ屋内おくないで発症はっしょうすることが多おおいので注意ちゅういが必要ひつようである。

熱中ねっちゅう症しょうは患者かんじゃ数すう、死亡しぼう数かずとも少すくなくない。1995年ねん以降いこうにおける日本にっぽんの1年間ねんかんの熱中ねっちゅう症しょう死亡しぼう数かずは平ひらた均ひとしで約やく353人ひとであり、最もっとも多おおかった2007年ねんには923人にんに上のぼった。また、消防庁しょうぼうちょうの調しらべ査によると、2010年ねんは7月がつ～9月の夏なつ季きにおいて53,843人にんが熱中ねっちゅう症しょうで搬送はんそうされた。

症状しょうじょうと処置しょち

熱中ねっちゅう症しょうは重症じゅうしょう度どに応おうじてⅠ度ど～Ⅲ度どに分類ぶんるいされている。これを表ひょうにまとめると次つぎのようになる。

Ⅰ度どやⅡ度どの場合ばあいは次つぎのような手順てじゅんで処置しょちを行おこなう。これらの処置しょちを行おこなっても症状しょうじょうが改善かいぜんされなかったりむしろ悪化あっかするような場合ばあいには医療いりょう機関きかんへ搬送はんそうする 。Ⅲ度どの場合ばあいの応急おうきゅう処置しょちも1や2については同様どうようであるが、3の水みず分ぶん・塩分えんぶんの補給ほきゅうは行おこなわない。

応急おうきゅう処置しょち

1. 涼すずしい場所ばしょへの避難ひなん

風ふう通とおしの良よい日陰ひかげかクーラーの効きいた室内しつないへ避難ひなんさせて、安静あんせいに寝ねかせる。

2. 脱衣だついと冷却れいきゃく

衣服いふくを脱ぬがせたり締しめ付づけを緩ゆるめる（ボタンやベルトを外はずすなど）。うちわや扇風機せんぷうきなどで扇あおいで体からだを冷ひやす、氷嚢ひょうのうを首くび、脇わきの下した、太ふとももの付つけ根ね、股関節こかんせつなど皮膚ひふのすぐ下かを太ふとい血液けつえきが流ながれているところに当あてる。保冷ほれい材ざいや凍こおったペットボトル等ひとしでも代用だいようできるため、冷蔵庫れいぞうこやクーラーボックスに入いれておくと役立やくだつ。

3. 水みず分ぶん・塩分えんぶんの補給ほきゅう

冷つめたい水みずを与あたえる。大量たいりょうの発はつ汗あせがあった場合ばあいには、塩分えんぶん補給ほきゅうのため食塩しょくえん水みず（1リットルに1～2グラムの食塩しょくえん）やスポーツドリンクが良よい。ただし、意識いしきがない場合ばあい、意識いしきがあっても呼よびかけや刺とげ激げきに対たいする反応はんのうがおかしい場合ばあい、吐はき気けを訴うったえたり実際じっさいに吐はく場合ばあいには水みず分ぶんを無む理りに飲のませるのは厳禁げんきんである。このような場合ばあいには医療いりょう機関きかんへ搬送はんそうすること。

予防よぼう法ほう

熱中ねっちゅう症しょうの予防よぼうのためには次つぎのようなことに気きをつける必要ひつようがある。

暑あつさを避さける

屋外おくがいでは日ひ傘かさや帽子ぼうしを使用しようし、できるだけ日陰ひかげを歩あるく。屋内おくないではブラインドやすだれを垂たらし、扇風機せんぷうきやエアコンを使つかう。ただし、エアコンの設定せってい温度おんどが低ひくすぎると出入でいりする際さいに体からだの負担ふたんになるので注意ちゅうい。仕事しごとにおいてはスポットクーラーや業務ぎょうむ用ようの大だい型かた扇風機せんぷうきなどの設備せつびも必要ひつよう。体温たいおんが過度かどに上昇じょうしょうする前まえに涼すずしい室内しつない・車くるま内うち・店内てんない・地下街ちかがいなどに一時いちじ避難ひなんする手てもある。

涼すずしい服ふく装そうをする

汗あせをよく吸すう素材そざいで出来できた、体からだを締しめ付つけない服ふく装そうを選えらぶ。太陽たいよう光ひかりの下したでは、黒色こくしょく系けいの服ふくは避さける。
長時間ちょうじかん炎えん天てん下したで過すごす場合ばあいは帽子ぼうしをかぶるといった自衛じえい策さくも必要ひつよう。（麦むぎわら帽子ぼうしなどは通気つうき性せいに優すぐれており蒸むれづらい）近年きんねんは冷却れいきゃく材ざいを内蔵ないぞうできたり、内部ないぶに送おく風ふうが可か能のうな空そら調しらべ服ふくも販売はんばいされている。

こまめに水みず分ぶんや塩分えんぶんを補給ほきゅうする

のどが乾いぬいいた場合ばあいはもちろんであるが、のどが乾いぬいいていなくてもこまめな水みず分ぶん補給ほきゅうを行おこなう。スポーツドリンクや塩分えんぶんの多おおい飲料いんりょうが特とくに良よい。なお、お酒さけは吸収きゅうしゅうした水みず分わか以上いじょうが尿にょうとして排出はいしゅつされてしまうため、水みず分ぶん補給ほきゅうとしては不十分ふじゅうぶんである。

「運動うんどう中なかに水みずを飲のむな！」と昔むかしはよく言いわれ未いまだに頑かたくなに信しんじている古ふるい人ひともいるが、元もとは「戦時せんじ中ちゅうにジャングルなどで（煮沸しゃふつされていない）不衛生ふえいせいな生せい水みずは腹はらを壊こわす＝死しに直結ちょっけつするから飲のむな！」という言葉ことばが伝言でんごんゲームで勝手かってに曲解きょっかいされて伝つたわったもので、全まったく科学かがく的てき根拠こんきょがない。当人とうにんが「俺おれがそれで苦労くろうしてきたのにお前まえらが苦労くろうしないのは許ゆるさない！」という負まけの部分ぶぶんもある。（当然とうぜん、海外かいがいの人ひとは行おこなわないし、普通ふつうに飲のむ）

十分じゅうぶんな水みず分ぶんを準備じゅんびする

運動うんどうや活動かつどうに対たいして十分じゅうぶんな量りょうの水みず分ぶんを用意よういする。またコンビニや自販機じはんきなど補給ほきゅう場所ばしょを把握はあくする。店舗てんぽのない山やま奥おくの現場げんばなどではあらかじめそれらを買かい込こむといった準備じゅんびを怠おこたらない。必要ひつように応おうじて大だい型かたの水筒すいとうや、共用きょうようで使つかえるタンクといった補給ほきゅう装置そうちなどを準備じゅんびする。（→水筒すいとう）

急きゅうに熱あつくなる日ひに注意ちゅういする

暑あつい環境かんきょうにおかれてしばらく経たつと人間にんげんの体からだは体温たいおん調整ちょうせいが上手うまくなる。逆ぎゃくに言いうと急きゅうに熱あつくなる日ひは体温たいおん調整ちょうせいがまだ上手じょうずに出来できていないため、熱中ねっちゅう症しょうになりやすい。このため、梅雨つゆ明あけの7月がつ下旬げじゅんから8月がつ上旬じょうじゅんに熱中ねっちゅう症しょうが多発たはつする。

暑あつさに備そなえた体からだづくりをする

汗あせをかかないような季き節ぶしから、ウォーキングなどの軽かるい運動うんどうにより汗あせをかくことにより、体温たいおん調整ちょうせいが上手じょうずになるようにする。

体調たいちょうに気きをつける

体調たいちょうに異常いじょうを感かんじたら申告しんこくし対処たいしょ・診断しんだん・応急おうきゅう処置しょちを行おこなう。速すみやかに対処たいしょできれば現場げんばへの復帰ふっきも容易よういになり、結果けっか的てきに被害ひがいは最小限さいしょうげんに抑おさえる事ことも可か能のう。場合ばあいによっては医療いりょう機関きかんへの救急きゅうきゅう搬送はんそうも行おこなう。

風邪かぜによる発熱はつねつや下痢げりによる脱水だっすい症状しょうじょうの時とき、睡眠すいみん不足ふそくや栄養えいよう不足ふそくの時ときは特とくに暑あつい場所ばしょでの活動かつどうは控ひかえる。心臓しんぞう病やまいや糖尿とうにょう病びょうなどの持病じびょうがある人ひと、肥満ひまんの人ひとも同様どうようである。

集団しゅうだん活動かつどうではお互たがいに配慮はいりょする

スポーツや労働ろうどうなど集団しゅうだん活動かつどうを行おこなうときは監督かんとく者ものを配置はいちし、上記じょうきのようなことに気きをつける。気温きおん・湿度しつど・通気つうき性せいなどを把握はあくし、計画けいかく的てきに休憩きゅうけいを指ゆび示しめし場合ばあいによっては活動かつどうを中止ちゅうしする。個人こじんの体調たいちょうを観察かんさつし、熱中ねっちゅう症しょうの症状しょうじょうが疑うたがわれる時ときには適切てきせつな対応たいおうを行おこなう。凍こおったボトルなどの保冷ほれい材ざい等とうをクーラーボックスに入いれておくといった事前じぜん対策たいさくがあればなおよい。一人ひとりで作業さぎょうしている場合ばあいに倒たおれると発見はっけん・対処たいしょが遅おくれるため、2人ふたり以上いじょうでの作業さぎょうや定期ていき的てきな見回みまわりも必要ひつよう。

対処たいしょが悪質あくしつな場合ばあいは必かならず疑うたがう

ブラック部活ぶかつ・ブラック企業きぎょう（項こう目め参照さんしょう）など、体調たいちょう不良ふりょうの申告しんこくや明確めいかくな異常いじょうが起おきているのに体育たいいく会かい系けいのノリや根性こんじょう論ろんで継続けいぞくさせるのはもってのほか。（価値かち観かんが昭和しょうわのまま修正しゅうせいされずに生いきてきた指ゆび導しるべ者しゃなどに多おおい）気軽きがるに水みず分ぶん補給ほきゅうをしやすい雰囲気ふんいき・環境かんきょうや休憩きゅうけい時間じかんを作つくることも重要じゅうよう。

皆みなが頑張ちょうっており迷惑めいわくがかかるからと同調どうちょう圧力あつりょくで「い出いだせずに限界げんかいまで耐たえて熱中ねっちゅう症しょうで死しにました」は全まったく美徳びとくではないため、非人ひにん道みち的てきな対処たいしょしか行おこなわない現場げんばはまともでないと疑うたがうこと。部活ぶかつや職場しょくばの先輩せんぱい・過去かこに功績こうせきを残のこした監督かんとく＝「指ゆび導しるべ者しゃとしても優秀ゆうしゅう」…とは限かぎらないため、盲目もうもくに従したがえばあの世よ行いきである。

WBGT（暑あつさ指数しすう）

熱中ねっちゅう症しょうの発症はっしょう数すうと気温きおんには密接みっせつな関係かんけいがあるが、他ほかにも湿度しつど、気流きりゅう、輻や射い熱ねつ（物体ぶったい表面ひょうめん温度おんど）なども関係かんけいしてくる。運動うんどう時どきや労働ろうどう時じなど特とくに熱中ねっちゅう症しょうに気きをつける必要ひつようがあるような場合ばあいには、気温きおんのみによる管理かんりでは不十分ふじゅうぶんな時ときもある。このことを踏ふまえて、熱中ねっちゅう症しょう予防よぼうの観点かんてんから高温こうおん環境かんきょうを評価ひょうかする指ゆび標しるべがWBGT(Wet-bulb Globe Temperature：湿しめ球たま黒くろ球たま温度おんど)である。

これは1957年ねんにアメリカのYaglouとMinardが提唱ていしょうした指ゆび標しるべで、労働ろうどう時じの指ゆび標しるべとしてJIS Z 8504やISO7243で規格きかく化かされており、運動うんどう時どきの指ゆび標しるべとしても日本にっぽん 体育たいいく協会きょうかいの「熱中ねっちゅう症しょう予防よぼうのための運動うんどう指ゆび針はり」で採用さいようされている。日本にっぽんでは暑あつさ指ゆび数かずなどともよぶ。

WBGTは次つぎの計算けいさん式しきで求もとむまる。測定そくていにはアウグスト温度おんど計けい等とうを用もちいるが、演算えんざんと取扱とりあつかいが煩雑はんざつなため、現在げんざいはハンディータイプの測定そくてい器きが開発かいはつされている。

WBGTについては、1時じ間あいだごとの実況じっきょう予測よそく値ち（推測すいそく値ち）と明後日みょうごにちまでの予測よそく値ちが環境省かんきょうしょう熱中ねっちゅう症しょう予防よぼう情報じょうほうサイトに掲載けいさいされている。

日本にっぽん体育たいいく協会きょうかいの「熱中ねっちゅう症しょう予防よぼうのための運動うんどう指ゆび針はり」では、WBGTに応おうじて次つぎのような指ゆび針はりを定さだめている。温度おんどが高たかい場合ばあいには参考さんこう値ちとしてあげた乾いぬい球たま温度おんど、つまり通常つうじょうの気温きおんでも代用だいようできるが、湿度しつどが高たかい場合ばあいには1つ上うえのランクの指ゆび針はりを参考さんこうにすること。

なお、2011年ねん6月24日にちに埼玉さいたま県けん熊谷くまがや市しで6月がつとしては史上しじょう最高さいこうとなる39.8度どを観測かんそくしたが、気温きおんの上昇じょうしょうに伴ともない急きゅう激げきに湿度しつどが低下ていかしたため、WBGTとしては最高さいこう気温きおんを観測かんそくした午後ごご2時じ過すぎ（約やく29度ど）よりむしろ正午しょうご（約やく32度ど）の方ほうが高たかかった。

余談よだん

• 熱中ねっちゅう症しょうになるのは人間にんげんだけではなく、外そとで飼育しいくしているペットなどでも起おこりうる。
  • 発はつ汗あせによる体温たいおん調整ちょうせいが人間にんげんほどできないため。
  • 炎ほのお天てん下したの通気つうき性せいの悪わるい犬いぬ小屋こやや、リードで繋つながれており日陰ひかげに逃にげ込こめないなど。
• 生物せいぶつに限かぎらず高温こうおん多湿たしつの環境かんきょう下したに置おかれた飲料いんりょうや食品しょくひん等ひとしは、細菌さいきんが繁殖はんしょくし容易よういに腐敗ふはいする（食中毒しょくちゅうどく）といったリスクも見落みおとしがちである。

関連かんれん商品しょうひん

関連かんれん項目こうもく

• 夏なつ / 猛暑もうしょ
• 水みず / 水筒すいとう
• ニコニコ大だい百科ひゃっか:医学いがく記事きじ一覧いちらん
• 少すこし、頭あたま冷ひやそうか
• 高齢こうれい化か社会しゃかい
• ヒートアイランド現象げんしょう
• 地球ちきゅう温暖おんだん化か
• 脱水だっすい

外部がいぶリンク

• 環境省かんきょうしょう熱中ねっちゅう症しょう情報じょうほう
• 今後こんごの暑あつさ指数しすう|環境省かんきょうしょう熱中ねっちゅう症しょう予防よぼう情報じょうほうサイト
• 救急きゅうきゅう救助きゅうじょ　熱中ねっちゅう症しょう情報じょうほう　：：　総務そうむ省しょう消防庁しょうぼうちょう
• 熱中ねっちゅう症しょうを防ふせぐために｜報道ほうどう発表はっぴょう資料しりょう｜厚生こうせい労ろう 働はたらけ省しょう

キーワード「熱中ねっちゅう症しょう」でニコニコ動画どうがを検索けんさく

タグ「熱中ねっちゅう症しょう」でニコニコ動画どうがを検索けんさく