社会しゃかい主義しゅぎ単語たんご

シャカイシュギ

5.4千せん文字もじの記事きじ

　社会しゃかい主義しゅぎ（英えい: soc ialism）とは、生産せいさん手段しゅだんの共有きょうゆう化かや社会しゃかい福ぶく祉制度せいどでもって平ひらた等ひとしな社会しゃかいを実現じつげんしようと言いう思想しそうもしくはそれに基もとづいた運動うんどうである。

概要がいよう

　19世紀せいきに資本しほん主義しゅぎが発展はってんするとともに、そこに生しょうじた社会しゃかい的てき矛盾むじゅんを解消かいしょうしようという機運きうんから生うまれた思想しそう・政治せいじ運動うんどう・社会しゃかい体制たいせいである。大おおまかには共産きょうさん主義しゅぎと社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎに2分ふんされる。この2派はは冷戦れいせん時代じだいに東西とうざいに分わかれて対峙たいじしていた。

　ソ連それん共産党きょうさんとうはロシア革命かくめいを成功せいこうさせてソ連それんを建けん国くにし、多おおくの国くにを影かげ響ひびき下したにおき20世紀せいき後半こうはんの世界せかい情勢じょうせいを特徴付とくちょうづける事こととなった。この一いち派はを特とくに共産きょうさん主義しゅぎと呼よぶが、日本にっぽんで単たんに社会しゃかい主義しゅぎと言いった場合ばあい、この共産きょうさん主義しゅぎを指ゆびす事ことも多おおい。ソ連それん、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく、キューバ、北朝鮮きたちょうせん、東ひがしドイツ、旧きゅうユーゴスラビアやチェコスロバキアをはじめとする東欧とうおう諸しょ国くに、ベトナムなどが主あるじな共産きょうさん主義しゅぎ国家こっかであった。アフリカや東南とうなんアジア、中なか南米なんべいでも共産きょうさん主義しゅぎを採用さいようする政権せいけんが存在そんざいしたが、東欧とうおう革命かくめい以降いこうに次々つぎつぎと崩壊ほうかいし、残のこる中国ちゅうごくやベトナムなどが市場いちば経済けいざいを推おし進すすめている現状げんじょうでは、共産きょうさん主義しゅぎと言いえる社会しゃかい体制たいせいを維持いじしているのは北朝鮮きたちょうせんやキューバなど僅わずかとなっている。

　他方たほうマルクス主あるじ義ぎから転てんじたドイツ社会しゃかい民主党みんしゅとう、そもそもマルクスの影かげ響ひびきの薄うすいイギリス労働党ろうどうとうなどの、共産きょうさん主義しゅぎとは異ことなる一いち派はがあり、これらは社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎと呼よばれる。議会ぎかい制せい民主みんしゅ主義しゅぎを重おもんじ、社会しゃかい福ぶく祉政策せいさくなどで資本しほん主義しゅぎを適宜てきぎ修正しゅうせいしていく事ことによって平ひらた等ひとしな社会しゃかいの実現じつげんを目め指ゆびす政治せいじ思想しそうである。

日本にっぽん型がた社会しゃかい主義しゅぎ

日本にっぽんは世界せかいで一番いちばん成功せいこうした社会しゃかい主義しゅぎ国こくだ

- ゴルバチョフ

日本にっぽんこそ、ソ連それんや中国ちゅうごくがお手本てほんにすべき社会しゃかい主義しゅぎ国こくです

　　　　　　　- 江副えぞえ浩正ひろまさ　リクルート創業そうぎょう者しゃ

日本人にっぽんじんほど社会しゃかい主義しゅぎになじみやすく、不ふ勉強べんきょうでお上かみに靡きやすい国くに民みんは稀まれである

　　　　- 小林こばやし秀雄ひでお　文芸ぶんげい評論ひょうろん家か

戦後せんごの日本にっぽんでは社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ勢いきおい力ちからは内輪うちわもめを繰くり返かえし政権せいけんを取とるには至いたらなかったが、55年ねん体制たいせい下かの自民党じみんとうが年金ねんきんや健康けんこう保険ほけんなどの社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ的てきな政策せいさくを熱心ねっしんに実行じっこうしたために、結果けっか的てきに社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ国くにといえるような社会しゃかい体制たいせいが整ととのえられるに至いたった。

　主あるじ流ながれ二に派はとは別べつに、イデオロギーは右みぎでありながら、富とみ国くに強兵きょうへいなどの目め的まとから社会しゃかい主義しゅぎ的てきな経済けいざい政策せいさく（計画けいかく経済けいざい）のみを実行じっこうするという考かんがえ方かたもあり、これは国家こっか社会しゃかい主義しゅぎと呼よばれる。ナチスがその典てん型かたとされるが、日本にっぽんでも、戦前せんぜんの革新かくしん官僚かんりょうと呼よばれた一群いちぐんがそれであり、その政策せいさくは戦後せんごの自民党じみんとうにも引ひき継つがれ、中なかでも岸きし信介しんすけは戦後せんご総理そうり大臣だいじんとなり、左ひだり派はとは別べつのスタンスから日本にっぽんを社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ的てきな国家こっかへと変貌へんぼうさせていった。

社会しゃかい主義しゅぎの理想りそう

市場いちば経済けいざいシステムは、自然しぜん発生はっせい的てきなシステムであって、無む計画けいかく的てきな社会しゃかいである。その結果けっかとして、資し源みなもとを浪費ろうひしたり、過剰かじょうな競争きょうそうをもたらしている。そうしたムダを排はいして、合理ごうり的てきに社会しゃかいを統治とうちすることはできないか、といった方向ほうこうで理想りそうの社会しゃかいを追求ついきゅうするのが、社会しゃかい主義しゅぎといえる。

社会しゃかい主義しゅぎ経済けいざいの特徴とくちょうは、生産せいさん手段しゅだんの公おおやけ有ゆう（社会しゃかい的てき所有しょゆう）と計画けいかく経済けいざいにある。そこでは、私有しゆう財産ざいさん制せいと利潤りじゅん追求ついきゅうの自由じゆうは否定ひていされ、財ざいの生産せいさんと分配ぶんぱいは、中央ちゅうおう政府せいふの計画けいかくと指ゆび令れいに基もとづいて行おこなわれる。この結果けっか、景けい気き循環じゅんかんや失業しつぎょうはなくなるとされた。

究極きゅうきょく的てきには、世界せかい全体ぜんたいを、それが不可能ふかのうであれば、国家こっかや連邦れんぽうというものを単位たんいとして計画けいかく経済けいざいを営いとなむ。これまで国家こっか単位たんいないしは連邦れんぽう単位たんいによる生産せいさん手段しゅだんの国くに有ゆう化かが主あるじ張ちょうされてきた（国家こっか主義しゅぎ）。現実げんじつ的まとには、資本しほん主義しゅぎと社会しゃかい主義しゅぎの混合こんごう経済けいざいを運営うんえいする事ことが目め標しるべとされてきた。混合こんごう経済けいざいシステムをストレートに擁護ようごする立場たちばは、社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎと呼よばれることもある。

社会しゃかい主義しゅぎ革命かくめい

資本しほん主義しゅぎを廃はい止よし、社会しゃかい主義しゅぎ制度せいどを打うち立たてる革命かくめいのことをいう。その基本きほん的てき特徴とくちょうは、労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうの権けん力ちからの確立かくりつ、生産せいさん手段しゅだんの社会しゃかい化か、生産せいさん力ちからの豊ゆたかな発展はってんをもたらす社会しゃかい主義しゅぎ的てき計画けいかく経済けいざいである。資本しほん主義しゅぎの下したで組織そしきされた労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうは、都市とし・農のう村むらの勤労きんろう大衆たいしゅうと同盟どうめいして、資し本家ほんけ階級かいきゅうの支配しはいを廃はい止よし、労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうの権けん力ちからを打うち立たてる。そしてこの権けん力ちからによって、人間にんげんによる人間にんげんの搾取さくしゅそのものを根絶こんぜつし、共産きょうさん主義しゅぎを建設けんせつすることを最終さいしゅう目め標しるべとする。

社会しゃかい主義しゅぎへの移行いこうの道みち筋すじと形態けいたいは国くにによって異ことなる。高度こうどに発達はったつした資本しほん主義しゅぎ国くにであり、対たい米べい従属じゅうぞくにある日本にっぽんの場合ばあいは、アメリカ帝国ていこく主あるじ義ぎと日本にっぽん独占どくせん資本しほんの二ふたつの支配しはいを打倒だとうする民族みんぞく民主みんしゅ革命かくめいが必要ひつようだとする。

1976年ねんに出だされ、現在げんざいも有効ゆうこうとされている、日本にっぽん共産党きょうさんとうの「自由じゆうと民主みんしゅ主義しゅぎの宣言せんげん」においては、経済けいざいの重要じゅうよう部分ぶぶんを握にぎる大だい企業きぎょうの社会しゃかい主義しゅぎ的てき国くに有ゆう化かが中心ちゅうしんとされ、中小ちゅうしょう企業きぎょうや農業のうぎょう、中小ちゅうしょう漁業ぎょぎょうなどの部門ぶもんでは、私的してき所有しょゆうと私的してき経営けいえいが広ひろく残のこされるとしている^[1] 。

社会しゃかい主義しゅぎの歴史れきし

歴史れきし的まとには、社会しゃかい主義しゅぎの思想しそうは、18世紀せいきの産業さんぎょう革命かくめい期きにおける「不ふ平ひらた等ひとし」や「貧困ひんこん」を克かつ服ふくするという関せき心しんから生うまれている。社会しゃかい主義しゅぎという言葉ことばそのものは、1830年ねん前後ぜんこうに、フランスのシャルル・フーリエやサン=シモン、イギリスのロバート・オーエンなどによって提唱ていしょうされた政策せいさく思想しそうを指ゆびす言葉ことばとして用もちいられた。

ところが、1848年ねんになると、カール・マルクスはフリードリヒ・エンゲルスとの共著きょうちょ『共産党きょうさんとう宣言せんげん』において、それまでの社会しゃかい主義しゅぎを「空そら想そう的てき社会しゃかい主義しゅぎ」と呼よび、これに対たいして自分じぶんたちの立場たちばを「科学かがく的てき社会しゃかい主義しゅぎ」と呼よんで、それまでの社会しゃかい主義しゅぎは人間にんげん主あるじ義ぎ的てきで道徳どうとく的てきな観点かんてんから資本しほん主義しゅぎを否定ひていしてきたに過すぎないと批判ひはんした。これに対たいして自身じしんの思想しそうは、科学かがく的てき分析ぶんせきに基もとづいたもので、歴史れきしの法則ほうそく的てきな発展はってんの分析ぶんせきから、社会しゃかい主義しゅぎの社会しゃかいは歴史れきし必然ひつぜん的てきに実現じつげんするはずだ、と主あるじ張ちょうした。

「カール・マルクス」の記事きじも参照さんしょう。

1864年ねんになると、「第だい一いちインターナショナル」と呼よばれる協会きょうかいが結成けっせいされ、イギリスとヨーロッパ大陸たいりくの労働ろうどう者しゃの代表だいひょう者しゃと少数しょうすうの知識ちしき人じんが国くに際きわ的てきな社会しゃかい主義しゅぎの運動うんどうを開始かいしする。ドイツでは1869年ねんに、マルクスの影かげ響ひびきを受うけたアウグスト・ベーベルやヴィルヘルム・リープクネヒトが「社会しゃかい民主党みんしゅとう」を結成けっせいし、1890年ねんに「社会しゃかい主義しゅぎ鎮圧ちんあつ法ほう」が廃はい止よされると、翌年よくねんには、「階級かいきゅうの廃はい絶ぜっ」を目め指ゆびすマルクス主あるじ義ぎ的てきな綱領こうりょう（エルフルト綱領こうりょう）が採択さいたくされている。同どう党とうは1912年ねんになると、ドイツの帝国ていこく議会ぎかいで最大さいだい多数たすう派はを占しめるようになり、社会しゃかい主義しゅぎ政策せいさくを部分ぶぶん的てきに取とり入いれることに成功せいこうした。

マルクスは、初期しょきにおいては「暴力ぼうりょく革命かくめいによる社会しゃかいの転覆てんぷくとプロレタリアート独裁どくさい」を唱となえていたが、1860年代ねんだい末まつになると、資本しほん主義しゅぎの十分じゅうぶんな成熟せいじゅくを待まってから社会しゃかい主義しゅぎ体制たいせいに移行いこうするという、長期ちょうき的てきなビジョンを持もつに至いたった。その背景はいけいには、イギリスにおいては1867年ねんに、都市とし部ぶの労働ろうどう者しゃ上層じょうそうにも選挙せんきょ権けんが与あたえられたことが挙あげられる。

ドイツ社会しゃかい民主党みんしゅとうの理念りねん的てき指ゆび導しるべ者しゃであったカール・カウツキーは、「歴史れきし法則ほうそくの必然ひつぜん性せい」という観点かんてんから、社会しゃかい主義しゅぎの徹とおる底そこした実現じつげんを求もとむめた。これに対たいして、エドゥアルド・ベルンシュタインは、「修正しゅうせい主あるじ義よし」の観点かんてんから、より現実げんじつ的てきな方向ほうこう性せいを採とった。この二人ふたりの対立たいりつは、1903年ねんの党とう大会たいかいにおいて、形式けいしき的てきには修正しゅうせい主あるじ義ぎの敗北はいぼく、実質じっしつ的てきには党内とうないにおける修正しゅうせい主あるじ義ぎの支持しじという形かたちに現あらわれた。

国くに際きわ的てきな社会しゃかい主義しゅぎを目め指ゆびす第だい一いちインターナショナルが1876年ねんに解体かいたいすると、代かわって1889年ねんに第だい二にインターナショナルが結成けっせいされ、各かく国くにの事情じじょうに合あわせた運動うんどうが展開てんかいされていった。二に十じゅう世紀せいきになると、ヨーロッパ諸しょ国くにでは社会しゃかい主義しゅぎを支持しじする勢いきおい力ちからが大おおきく台頭たいとうし、議会ぎかい制せい民主みんしゅ主義しゅぎの下したで現実げんじつ的てきな改あらため良りょう主あるじ義ぎの政策せいさくが実現じつげんしていった。イギリスでは1906年ねんに、それまでの「労働ろうどう代表だいひょう委員いいん会かい」が名称めいしょうを改あらため称しょうして「労働党ろうどうとう」が結成けっせいされ、ウェッブ夫妻ふさいの影かげ響ひびきの下もとで、1918年ねんには「分配ぶんぱいと生産せいさん手段しゅだんの公おおやけ有ゆう」という、社会しゃかい主義しゅぎの綱領こうりょうを掲かかげるようになった。

実際じっさいの社会しゃかい主義しゅぎ社会しゃかいは、ロシアにおいて実現じつげんした。ウラジミール・レーニンは1917年ねんの「10月革命かくめい」によって政権せいけんを握にぎると、同時どうじに「コミンテルン（第だい三さんインターナショナル）」を提唱ていしょうして、各かく国くにごとに中央ちゅうおう集権しゅうけん的てきな組織そしきを作つくるように訴うったえた。資本しほん主義しゅぎから共産きょうさん主義しゅぎへ移行いこうする際さいの過渡かと期きの段階だんかいとして「社会しゃかい主義しゅぎ」という言葉ことばをこの場合ばあい用もちいている。

しかし、当初とうしょは順調じゅんちょうに進すすんでいた経済けいざいも、やがて工業こうぎょう生産せいさんの不振ふしん、生産せいさん性せいの低下ていかなどに苦くるしみ、解決かいけつのための模索もさくがなされるようになった。

1960年ねん代だいに入はいると、ソ連それん経済けいざいには、官僚かんりょう主あるじ義ぎの非ひ効率こうりつ、労働ろうどう者しゃの勤労きんろう意欲いよくの停滞ていたいなどの問題もんだいが表面ひょうめん化かしてきた。フルシチョフによって提唱ていしょうされた「共産きょうさん主義しゅぎの展開てんかい的てき建設けんせつ期き」という考かんがえ方かたは次第しだいに退潮たいちょうした。そこで1960年ねん代だいの半なかばから導入どうにゅうされたのが利潤りじゅん方式ほうしきだった。これはリーベルマン方式ほうしきといわれ、中央ちゅうおうの計画けいかくを緩ゆるめて企業きぎょうの自じ主あるじ性せいを高たかめ、利潤りじゅん率りつの高たかさに応おうじて企業きぎょうに報奨ほうしょう金きむを与あたえ、生産せいさん性せいの向上こうじょうをはかろうとしたものであるが、目め立たった成果せいかをあげることが出来できなかった。

「ソ連それん」の記事きじも参照さんしょう。

中国ちゅうごくの社会しゃかい主義しゅぎ経済けいざいは、1950年ねん代だいまではソ連それん型かたの中央ちゅうおう集権しゅうけん的てき色彩しきさいが強つよかったが、1960年ねん代だい以降いこう、次第しだいに変かわっていった。1960年ねん代だいの「文化ぶんか大だい革命かくめい」による経済けいざい的てきな混乱こんらんを契機けいきとして、毛沢東もうたくとうの死後しご、1977年ねんには、農業のうぎょう・工業こうぎょう・国くに防ぼう・科学かがく技術ぎじゅつの四よっつの近代きんだい化かが掲かかげられた。1980年代ねんだいから、改あらため革かわ・開放かいほう政策せいさくにより、外そと国くにの資本しほんや技術ぎじゅつを導入どうにゅうするための経済けいざい特区とっくを設置せっちするなど大幅おおはばな市場いちば経済けいざいの導入どうにゅうが進すすめられた。集団しゅうだん所有しょゆうのモデルとされた人民じんみん公おおやけ社しゃも1985年ねんに解体かいたいし、主あるじに農業のうぎょう分野ぶんやで家族かぞく単位たんいで生産せいさんを請うけ負おう生産せいさん責任せきにん体制たいせいが普及ふきゅうした。1992年ねんになると、「社会しゃかい主義しゅぎ市場いちば経済けいざい」^[2]の路線ろせんが提唱ていしょうされ、市場いちば経済けいざいと国くに有ゆう部門ぶもん運営うんえいという、混合こんごう経済けいざいが採とられている。1990年代ねんだい以降いこうの中国ちゅうごく経済けいざいは、ＧＤＰで世界せかい第だい二に位いを達成たっせいするものの、所得しょとく格差かくさ問題もんだいや公害こうがい問題もんだいの発生はっせいという、資本しほん主義しゅぎにおける問題もんだいを抱かかえている。

旧きゅうユーゴスラヴィアでは、分権ぶんけん的てきな経済けいざい運営うんえいが模索もさくされたが、高たかい生産せいさん性せいを達成たっせいするには不十分ふじゅうぶんであった。

社会しゃかい主義しゅぎ国家こっかの終焉しゅうえん

ソ連それんではゴルバチョフ政権せいけんによって、ペレストロイカが進すすめられた。しかし、経済けいざい面めんでの改あらため革かわは目め立たった効果こうかを上あげられず、1991年ねんにソ連それんは解体かいたいした。ロシアを中心ちゅうしんとする独立どくりつ国家こっか共同きょうどう体たい（CIS）が成立せいりつしたが、社会しゃかい主義しゅぎから資本しほん主義しゅぎへの移行いこうは円滑えんかつには進すすまず、その後ごも混乱こんらんが続つづいた。

ベルリンの壁かべ崩壊ほうかい後ご、1990年ねんに東ひがしドイツは、西にしドイツの資本しほん主義しゅぎ経済けいざいに吸収きゅうしゅうされ、統一とういつドイツとして、資本しほん主義しゅぎ経済けいざいに移行いこうした。他たの東欧とうおう諸しょ国くにでも、市場いちば経済けいざいを全面ぜんめん的てきに採用さいようしている。また、東西とうざい対立たいりつの終結しゅうけつに伴ともない、1991年ねんには、社会しゃかい主義しゅぎ諸もろ国くにの協きょう力ちから機関きかんであった経済けいざい相互そうご援助えんじょ会議かいぎ（COM ECON）は解散かいさんした。ロシア・東欧とうおうともに国くに営企業きぎょうの民営みんえい化かが進すすんだが、市場いちば経済けいざいへの移行いこうは順調じゅんちょうに進すすまず、所得しょとく格差かくさも増大ぞうだいした。

社会しゃかい主義しゅぎの矛盾むじゅん

計画けいかく経済けいざいは、なぜ効率こうりつ的てきな生産せいさんを達成たっせいすることができないのか。ハンガリーの経済けいざい学者がくしゃ、ヤーノシュ・コルナイは、計画けいかく経済けいざいが抱かかえるジレンマを次つぎのように説明せつめいする。従来じゅうらいの社会しゃかい主義しゅぎシステムにおいては、国家こっかのパターナリズム（温情おんじょう主あるじ義よし）によって企業きぎょうに対たいする予算よさん制約せいやくがゆるやかなものになり、結果けっかとして効率こうりつ的てきな生産せいさんを促うながすことが出来できない。生産せいさん効率こうりつを上あげるためには、自由じゆうな市場いちば経済けいざいを通つうじて、非ひ効率こうりつ的てきな部門ぶもんを淘汰とうたするための競争きょうそうが必要ひつようになる。ところがそのような競争きょうそうは、「連帯れんたい」や「分配ぶんぱいの平ひらた等ひとし」を重おもんじる社会しゃかい主義しゅぎの思想しそうに背そむくことになる。効率こうりつ性せいと社会しゃかい主義しゅぎの倫理りんりは、ジレンマに立たたざるを得えない^[3] 。

社会しゃかい主義しゅぎの用法ようほう

日本にっぽんの言論げんろん・政治せいじ家かの発言はつげんから来くる「社会しゃかい主義しゅぎ」には、主あるじに3つの使つかわれ方かたがある。

社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎや共産きょうさん主義しゅぎなども含ふくめた思想しそう・社会しゃかい体制たいせいの総称そうしょう
共産きょうさん主義しゅぎ
社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ

かみ合あわない口論こうろんの例れい

A. 「これからの日本にっぽんは社会しゃかい主義しゅぎ（1)で行いくべきだ。」

B. 「日本にっぽんは資本しほん主義しゅぎ国くにだ。社会しゃかい主義しゅぎ(2)なんてありえない！」

A. 「いや、社会しゃかい主義しゅぎ(1)の頃ころの方ほうが日本にっぽんは繁栄はんえいしていた。」

B. 「戦後せんご、日本にっぽんを統治とうちしてきたのは自民党じみんとう。社会党しゃかいとうじゃない。」

A. 「だから、旧きゅう自民党じみんとうの方向ほうこう(3)で行いけと言いっている」

B. 「今いまも昔むかしも自民党じみんとうは資本しほん主義しゅぎ政党せいとうだ！」

　B.はそもそも社会しゃかい主義しゅぎが広ひろい意味いみ(1)でも使つかわれる事ことを知しらないようであるが、A.も保守ほしゅ派はは社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ的てきな政策せいさくを支持しじする事ことはあっても、それを社会しゃかい主義しゅぎと呼よぶ事ことはないという事情じじょうを無視むししている。