血管けっかん（けっかん） の例文れいぶん・使つかい方かた・用例ようれい・文例ぶんれい(20)

･･･この聖徒せいとは太ふとい血管けっかんの中なかに水夫すいふの血ちを流ながしていました。が、唇くちびるをごらんなさい。砒素ひそか何なにかの痕あとが残のこっています。第だい七ななの龕がんの中なかにあるのは……もうあなたはお疲つかれでしょう。ではどうかこちらへおいでください。」　僕ぼくは実際じっさい疲つかれていましたから、ラップといっし･･･ 芥川あくたがわ竜之介りゅうのすけ 「河童かっぱ」

･･･そのなよなよした姿すがたのほほえみが血球けっきゅうとなって、僕ぼくの血管けっかんを循環じゅんかんするのか、僕ぼくは筋肉きんにくがゆるんで、がッかり疲労ひろうし、手ても不断ふだんよりは重おもく、足あしも常つねよりは倦怠けんたいいのをおぼえた。　僕ぼくの過敏かびんな心しんと身体しんたいとは荒すさんでいるのだ。延のびているのだ。固かたまっていた物ものが融とけて行くだり･･･ 岩野いわの泡鳴ほうめい 「耽溺たんでき」

･･･彼かれの血管けっかんに流ながれるるユグノー党とうの血ちはこの時ときにあたって彼かれをして平和へいわの天使てんしたらしめました。他人たにんの失望しつぼうするときに彼かれは失望しつぼうしませんでした。彼かれは彼かれの国人くにびとが剣けんをもって失うしなったものを鋤すきをもって取とり返かえさんとしました。今いまや敵国てきこくに対たいして復讐ふくしゅう戦せんを計画けいかくするにあらず、鋤すきと･･･ 内村うちむら鑑三かんぞう 「デンマルク国こくの話はなし」

･･･　紅潮こうちょうした身体しんたいには細ほそい血管けっかんまでがうっすら膨ふくれあがっていました。両りょう腕うでを屈伸くっしんさせてぐりぐりを二にの腕うでや肩かたにつけて見みました。鏡かがみのなかの私わたしは私わたし自身じしんよりも健康けんこうでした。私わたしは顔かおを先程さきほどしたようにおどけた表情ひょうじょうで歪いがませて見みました。　Hysterica P･･･ 梶井かじい基次郎もとじろう 「橡とちの花はな」

･･･　一いち週間しゅうかんばかり外米がいまい混入こんにゅうの飯めしを食くいつづけた後のち、一いち日にちだけまぜものなしの内地ないち米まいに戻もどると、はじめて本当ほんとうに身みにつくものを食くった感かんじで、その身みにつくものが快かいよく胃いの腑ふから直ただちに血管けっかんにめぐって行いくようで、子供こどもらは、なんばいもなんばいも茶碗ぢゃわんを出だすのであ･･･ 黒島くろしま伝治でんじ 「外米がいまいと農民のうみん」

･･･人間にんげんも、そこでは、自然しぜんと、山やまの刺戟しげきに血ちが全身ぜんしんの血管けっかんに躍おどるのだった。　虹にじ吉きちは――僕ぼくの兄あにだ――そこで女おんなを追おっかけまわしていた。僕ぼくが、まだ七ななツか八はちツの頃ころである。そこで兄あには、さきの妻つまのトシエと、笹ささの刈株かりかぶで足あしに踏抜ふみぬきをこしらえ、臑すねをすりむきなどし･･･ 黒島くろしま伝治でんじ 「浮動ふどうする地価ちか」

･･･血ちは血管けっかんの中なかで螺旋らせんして流ながれているのだよ。酒樽さかだるの口くちから酒さけは螺旋らせんして出でるよ。腸ちょうは即すなわち螺にし線せんをなしてるのサ。川かわはやや平面へいめん的てきに螺にし線せんをなして流ながれる。山脈さんみゃくは螺にし線せんさ。木きの枝えだは一ひとつが東ひがしに向こうッて生はえる、その上うえの枝えだは南みなみそれから西北せいほくという工合ぐあいに螺旋らせんしている。花はなを能のう･･･ 幸田こうだ露伴ろはん 「ねじくり博士はかせ」

･･･その未見みけんの親友しんゆうの、純粋じゅんすいなるくやしさが、そのまま私わたしの血管けっかんにも移入いにゅうされた。私わたしは家いえへかえって、原稿げんこう用紙ようしをひろげた。『私わたしは無頼ぶらいの徒とではない。』具体ぐたい的てきに言いって呉くれ。私わたしは、どんな迷惑めいわくをおかけしたか。私わたしは借銭しゃくせんをかえさなかったことはない。私わたしは、ゆえなく人ひとの･･･ 太宰だざい治おさむ 「虚構きょこうの春はる」

･･･そのような事ことでさえ彼かれの血管けっかんへ一いち滴てきの毒液どくえきを注射ちゅうしゃするくらいな効果こうかがあった。二人ふたりが帰かえって後のちにぼんやり机つくえの前まえにすわったきりで、その事ことばかり考かんがえていた。そういう時ときには彼かれの口中くちじゅうはすっかりかわき上あがって、手ての指ゆびがふるえていた。そうして目立めだって食欲しょくよくが減退げんたいす･･･ 寺田てらだ寅彦とらひこ 「球根きゅうこん」

･･･しかしＡ博士はかせの研究けんきゅうによると、日本人にっぽんじんは血管けっかんの分布ぶんぷのしかただけから見みても明あきらかに西洋せいよう人じんとちがった特徴とくちょうをもっているそうである。言いわば違ちがった動物どうぶつなのである。昔むかしの攘夷じょうい論ろん者しゃは西洋せいよう人じんを獣類じゅうるいの一種いっしゅと思おもっていた。今いまの米国べいこく人じんの中なかにでも黒人こくじんは人間にんげんと思おもっていない仲なか･･･ 寺田てらだ寅彦とらひこ 「空想くうそう日び録ろく」