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少子化社会に「メダル数こそ国力」発想は時代遅れ 次世代に伝えたいスポーツの真価:朝日新聞GLOBE+
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少子化しょうしか社会しゃかいに「メダルすうこそ国力こくりょく発想はっそう時代遅じだいおくれ 次世代じせだいつたえたいスポーツの真価しんか

World Now 更新こうしん 公開こうかい
東京五輪の開会式には、木材を使用した大きな五輪マークが登場した
東京とうきょう五輪ごりん開会かいかいしきには、木材もくざい使用しようしたおおきな五輪ごりんマークが登場とうじょうした=2021ねん7がつ23にち国立こくりつ競技きょうぎじょう内田うちだひかり撮影さつえい

東京とうきょう大会たいかい組織そしき委員いいんかい会長かいちょう代行だいこうつとめた遠藤えんどう利明としあき文部もんぶ科学かがくふく大臣だいじんだった2007ねん私的してき諮問しもん機関きかんに「『スポーツ立国りっこく』ニッポン」とだいした報告ほうこくしょつくらせた。

五輪ごりんのメダルが「しん先進せんしんこく日本にっぽん』のプレゼンスとアイデンティティーをたかめる」とうたった。2006ねんトリノ冬季とうき五輪ごりんきんメダルひとつの「惨敗ざんぱい」にわったのが契機けいきだ。

五輪ごりんメダルの多寡たかが、「国力こくりょく」をはかるバロメーター、という発想はっそうだ。

東京とうきょう五輪ごりん招致しょうちでスポーツ強化きょうかへのくに予算よさんえた。日本にっぽんオリンピック委員いいんかい(JOC)は当初とうしょ東京とうきょうで「きんメダル30世界せかい3」と野心やしんてき目標もくひょうかかげ、実際じっさいきんメダル27世界せかい3確保かくほした。

東京五輪の閉会式で記念撮影する日本の選手たち
東京とうきょう五輪ごりん閉会へいかいしき記念きねん撮影さつえいする日本にっぽん選手せんしゅたち=2021ねん8がつ8にち国立こくりつ競技きょうぎじょう細川ほそかわたく撮影さつえい

しかし、今後こんごはどうか。日本にっぽん経済けいざいりょく低下ていかすれば、スポーツにまわ予算よさん可能かのうせいがある。人口じんこうは1おく2000まんにんだいから、2070ねんには3わりると予測よそくされる。

1964ねん東京とうきょう五輪ごりん当時とうじ東京とうきょう都内とないの0~14さい人口じんこうが65さい以上いじょうの5ばいいたが、いま高齢こうれいしゃやく2ばいだ。出生しゅっしょうりつは1.20。少子化しょうしか進行しんこうはアスリート年代ねんだい先細さきぼそりを意味いみする。主催しゅさいこく特権とっけん予選よせん免除めんじょ種目しゅもくもあった東京とうきょう大会たいかいのようなメダルラッシュは、のぞみにくい。

一方いっぽう日本にっぽん経済けいざいが「うしなわれた30ねん」と揶揄やゆ(やゆ)されたなか、野球やきゅう大谷おおやしょうたいら代表だいひょうかくに、ゴルフの畑岡はたおか奈紗、松山まつやま英樹ひでき、テニスの錦織にしきおりけい、バスケットボールのはちむらるい、サッカーのさん笘薫ら世界せかい活躍かつやくする日本人にっぽんじん続々ぞくぞくた。そうした選手せんしゅたちはふだん、「国家こっか」を背負せお意識いしき希薄きはくだろう。

国際こくさい体操たいそう連盟れんめい(FIG)会長かいちょうで、国際こくさいオリンピック委員いいんかい(IOC)委員いいんでもある渡辺わたなべ守成しゅせいさんは「五輪ごりん表彰ひょうしょうしき国旗こっき掲揚けいよう国歌こっか斉唱せいしょうをやめるのがナショナリズムを過熱かねつさせない一案いちあんかもしれない」とう。

東京五輪のスケートボード女子パーク決勝で、最後の大技が決まらず4位が確定した岡本碧優を他の選手たちが担ぎ上げた
東京とうきょう五輪ごりんのスケートボード女子じょしパーク決勝けっしょうで、最後さいご大技おおわざまらず4確定かくていした岡本おかもとあおいゆう選手せんしゅたちがかつげた=2021ねん8がつ4にち有明ありあけアーバンスポーツパーク、北村きたむら玲奈れいな撮影さつえい

東京とうきょう五輪ごりんはつ採用さいようされたスポーツクライミング、スケートボードなど「アーバン(都市としがた)スポーツ」に共通きょうつうするのは、「てき味方みかたというより、競技きょうぎあいする仲間なかま同志どうし感覚かんかくだ」。渡辺わたなべさんは、そこにスポーツの未来みらいる。

わたしけにこだわるのは人間にんげん本能ほんのうだとおもうし、「世界せかい最大さいだい運動会うんどうかい」で自国じこく選手せんしゅのメダルに一喜一憂いっきいちゆうすることにくじらをてることはないとおもう。冷戦れいせんきゅう共産きょうさん主義しゅぎこく近年きんねんのロシアのようにドーピングにめ、「国家こっかぐるみ」で強化きょうかする国威こくい発揚はつようがた論外ろんがいなのはうまでもない。

韓国かんこくでは少子化しょうしかのなか、少数しょうすう精鋭せいえいのエリート強化きょうか見直みなおこえはじめている。日本にっぽんでも、どもの自律じりつうながざらづくりの芽吹めぶきがてきている。

「スポーツはたのしいものだ」

五輪ごりん選手せんしゅ活躍かつやくがめざましいノルウェーでは、どもたちをはぐくむこんな指針ししんかかげられている。わたしは、そこにスポーツの原点げんてんる。

カスパー・ルードも所属したテニスクラブで練習する少女たち
カスパー・ルードも所属しょぞくしたテニスクラブで練習れんしゅうする少女しょうじょたち=ノ2024ねん4がつ、ノルウェー・スナロヤ、稲垣いながきやすしかい撮影さつえい