日本にっぽんもついに「金利きんりのある世界せかい」へ30年ねんぶり上昇じょうしょうか、住宅じゅうたくローン選えらびで明暗めいあん分わかれる？

6月の週末しゅうまつ、東京とうきょう都内とないで楽天らくてん証券しょうけんが開ひらいたセミナーには、20～40代だいの約やく100人にんが訪おとずれた。子連こづれの人ひとも多おおく、「子こどもの教育きょういく資金しきんをためるためには？」といった質問しつもんが相次あいついだ。

同どう証券しょうけんの口座こうざは、日本銀行にっぽんぎんこうが利上りあげに動うごくとの予測よそくが強つよまりつつあった昨年さくねん末まつから開設かいせつが加速かそくし、新しんNISA（少額しょうがく投資とうし非課税ひかぜい制度せいど）が始はじまった今年ことし1月がつから4月がつの間あいだに100万まん増ふえた。従来じゅうらいの投資とうし家か層そうと異ことなり、30代だい以下いかが58.1%を占しめる。別べつの証券しょうけん関係かんけい者しゃによると、「若わかい人ひとに限かぎらず、初はじめての投資とうしに動うごき出だす人ひとが増ふえている」。物価高ぶっかだかで実質じっしつ賃金ちんぎんが減へっており、生活せいかつ防衛ぼうえいのための投資とうしも増ふえているとみられる。

日本銀行にっぽんぎんこうは3月がつ、マイナス金利きんり政策せいさくを解除かいじょし、17年ねんぶりの利上りあげに踏ふみ切きった。今後こんごは短期たんき金利きんりを上あげ下さげする「普通ふつうの金融きんゆう政策せいさくを行おこなう」としており、7月がつや9月がつに追加ついか利上りあげするという予想よそうも市場いちばに出でている。

日本にっぽんではこれまで金利きんりがほぼゼロで、銀行ぎんこうに預あづける意味いみがなかったため、家いえで保管ほかんする「タンス預金よきん」が増ふえていた。第一生命だいいちせいめい経済けいざい研究所けんきゅうじょの首席しゅせきエコノミスト熊野くまの英生ひでおさんによると、1990年代ねんだいの金融きんゆう危機ききで、銀行ぎんこうに預あづけるリスクを感かんじるようになった人ひとたちが増ふえ始はじめ、低てい金利きんりの環境かんきょう下かでふくらんだ。

公的こうてきなデータは存在そんざいしないが、60兆ちょう円えん近ちかくあるという。さらに日銀にちぎんは7月がつ3日にち、新しん紙幣しへいを発行はっこう。交換こうかんのため旧きゅう紙幣しへいが銀行ぎんこうに持もち込こまれることも予想よそうされ、タンス預金よきんが眠ねむりから覚さめようとしている。

家計かけい簿ぼアプリなどを展開てんかいするフィンテック企業きぎょう「マネーフォワード」グループ執行しっこう役員やくいんの瀧たき俊雄としおさんは、「金利きんりがどれぐらい上あがればタンス預金よきんが覚醒かくせいしてくるかがポイントになる」と話はなした。

日本銀行にっぽんぎんこうが4月がつに公表こうひょうした「金融きんゆうシステムレポート」は、金利きんり上昇じょうしょうが「利息りそく収支しゅうしの改善かいぜんにつながることが見込みこまれる」とする一方いっぽう、家計かけいによって「ばらつきは大おおきい」と指摘してき。日本にっぽん総合そうごう研究所けんきゅうじょチーフエコノミストの石川いしかわ智久ともひささんは、金利きんりが上昇じょうしょうする局面きょくめんについて「家計かけい全体ぜんたいでみるとプラスだが、資産しさんを多おおく持もつ高齢こうれい世代せだいと、奨学しょうがく金きんや住宅じゅうたくローンを抱かかえる現役げんえき世代せだいの格差かくさが顕在けんざい化かする恐おそれがある」。金融きんゆう情報じょうほうを見極みきわめる力ちからの差さでも、格差かくさが広ひろがりやすくなる可能かのう性せいも指摘してきされる。

住宅じゅうたくローンは固定こていか、変動へんどうか？

今後こんごの金利きんりの上あがり方かたによって、住宅じゅうたくローンを借かりている人ひとの間あいだで明暗めいあんが分わかれる可能かのう性せいもある。

日本にっぽんでは短期たんき金利きんりに連動れんどうする変動へんどう型がたを選えらぶ人ひとが7割わりを超こえる。日銀にちぎんによって短期たんき金利きんりはまだ0%程度ていどにとどまっているため変動へんどう型がたローンの金利きんりは低ひくいままだが、長期ちょうき金利きんりに連動れんどうする固定こてい型がたローンの金利きんりはすでに上昇じょうしょう傾向けいこうにある。

将来しょうらい、短期たんき金利きんりが上あがれば、いまは低ひくい変動へんどう型がたの金利きんりが、固定こてい型がたの金利きんりよりも高たかくなる可能かのう性せいがあるが、マネーフォワードの瀧たきさんは「日本にっぽんは政策せいさく調整ちょうせいが比較的ひかくてきうまいので、住宅じゅうたくローンの金利きんりがそこまで急激きゅうげきに上あがることはないのでは」と予想よそうする。変動へんどうから固定こていへの切きり替かえが相次あいつぐような事態じたいには至いたっていない。

35年間ねんかん固定こてい金利きんりの住宅じゅうたくローン「フラット35」を提供ていきょうする住宅じゅうたく金融きんゆう支援しえん機構きこうによると、2024年ねん1～3月がつのフラット35の融資ゆうし金額きんがくは、前年ぜんねん同期どうき比ひで4割わり近ちかく減へった。機構きこうはフラット35の金利きんりを、10年ねん物ぶつ国債こくさいの利回りまわりを参考さんこうに設定せってい。フラット35を融資ゆうしした金融きんゆう機関きかんから買かい取とり、それらを担保たんぽに機構きこうの債券さいけんを発行はっこうして投資とうし家かに買かってもらう。債券さいけんの金利きんりは、投資とうし家かとの対話たいわを通つうじて10年ねん物ぶつ国債こくさいプラス上乗うわのせ金利きんりとして決きめる。

結局けっきょくは、市場いちばの長期ちょうき的てきな金利きんり見通みとおしによってフラット35の貸出かしだし金利きんりも上下じょうげすることになる。2007年ねん4月がつに発足ほっそくした機構きこうだけに、「将来しょうらいの金利きんりが上あがる見通みとおしが強つよいのは初はじめての局面きょくめん」（市場いちば資金しきん部ぶ）という。

国債こくさいの金利きんりは、そうした機構きこうの債券さいけんの金利きんりだけでなく、社債しゃさいなどさまざまな金利きんりに影響えいきょうを与あたえる。「金利きんりのある世界せかい」での大おおきな懸念けねんは財政ざいせいへの影響えいきょうだ。

日本にっぽん政府せいふの借金しゃっきんは2024年度ねんど末まつで1105兆ちょう円えんにのぼる見込みこみで、国内こくない総そう生産せいさん（GDP）に対たいする比率ひりつは2倍ばいを超こえる。日本にっぽん総研そうけんの石川いしかわさんは「インフレ時じは税収ぜいしゅうが増ふえて財政ざいせいは好転こうてんするが、それは一時いちじ的てきで金利きんりが上昇じょうしょうすれば財政ざいせいは悪化あっかする」と説明せつめいする。

日銀にちぎんの理事りじを務つとめた「みずほリサーチ＆テクノロジーズ」エグゼクティブエコノミストの門間かどま一夫かずおさん（66）は、別べつの視点してんから懸念けねんを示しめす。「政府せいふ債務さいむが大おおきいと中央ちゅうおう銀行ぎんこうの利上りあげが効ききにくくなるかもしれない」。日本にっぽん国債こくさいを持もっているのは国内こくないの家計かけいや企業きぎょうが多おおいので、金利きんりが上あがって国債こくさいの利払りばらい費ひが増ふえれば、民間みんかんの収入しゅうにゅうが増ふえる。給付きゅうふ金きんと同おなじように需要じゅようを刺激しげきし、インフレを加速かそくさせる可能かのう性せいがあるという。

同様どうように政府せいふ債務さいむが大おおきい米国べいこくで、利上りあげしているのに経済けいざいが好調こうちょうなのは、高金利こうきんりが民間みんかんの収入しゅうにゅうを増ふやし、むしろ景気けいきを過熱かねつさせている面めんがあるのではないかという議論ぎろんも出でている。門間かどまさんは「日本にっぽんは政府せいふ債務さいむが突出とっしゅつして大おおきいうえに、政府せいふ債務さいむが急増きゅうぞうし始はじめた1990年代ねんだい半なかば以降いこう、本格ほんかく的てきな利上りあげの経験けいけんがなく、金融きんゆう政策せいさくの効果こうかは不透明ふとうめいだ」と指摘してきする。