【『不適切ふてきせつにもほどがある!』感想かんそう 初回しょかい】宮藤くどう官かん九郎くろうは決けっして守まもりに入はいらない By - かな 公開こうかい:2024-01-29 更新こうしん:2024-01-29 かなドラマコラム不適切ふてきせつにもほどがある!吉田よしだ羊ひつじ宮藤くどう官かん九郎くろう磯村いそむら勇いさむ斗と阿部あべサダヲ Share Post LINE はてな コメント SNSを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている、かな(@kanadorama)さん。 2024年ねん1月がつスタートのテレビドラマ『不適切ふてきせつにもほどがある!』(TBS系けい)の見みどころを連載れんさいしていきます。 かなさんがこれまでに書かいたコラムは、こちらから読よめます。 おそらく全国ぜんこくあちこちで、2024年ねん1月がつ26日にちの22時じ10分ふんあたり、「昭和しょうわ生うまれの中年ちゅうねんがメンタル瀕死ひんしになっていたのではないか」と思おもう。 「こんなに野蛮やばんな時代じだいだったか?」「こんなにひどい日常にちじょうだったか?」と思おもっただろう。 だが記憶きおくをぼんやりと辿たどるに、ドラマとして詰つめ込こんではいたけれど、全部ぜんぶ確たしかに現実げんじつにあったことだった。 画像がぞうを見みる(全ぜん30枚まい) 配慮はいりょのない会話かいわも、職場しょくばで女性じょせいの容姿ようしをからかうのも、教育きょういく現場げんばでの暴力ぼうりょくも、残念ざんねんなほどに全部ぜんぶあった。 少すこしでも品質ひんしつの良よいカセットテープで音楽おんがくを録音ろくおんしようと必死ひっしだった。大体だいたい、安売やすうりのテープが『のびて』音おとが悪わるくなった時ときの悲かなしみといったら、非常ひじょうに切せつないものだった。ついうっかりそんなことまで思おもい出だしてしまった。 そんな人生じんせいに疲弊ひへいした中年ちゅうねんの心しんをこてんぱんにする怪かい作さく『不適切ふてきせつにもほどがある!』(TBS系けい金曜日きんようび22時じ)。 脚本きゃくほんは、四半世紀しはんせいき近ちかくこの国くにのエンタテインメントの辺境へんきょうを開拓かいたくしてきた宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうである。 始はじまりは1986年ねん(昭和しょうわ61年ねん)、主人公しゅじんこうは中学ちゅうがくの体育たいいく教師きょうしで、妻つまと死別しべつ後ごひとりで娘むすめを育そだててきた小川おがわ市郎いちろう(阿部あべサダヲ)。昭和しょうわの体育たいいく教師きょうしという設定せっていを裏切うらぎることなく、周囲しゅういへの言動げんどうは粗雑そざつかつ生徒せいとへの指導しどうはスパルタである。 その小川おがわ市郎いちろうが、突如とつじょ2024年ねんへとタイムスリップしてしまう。 現代げんだいに張はり巡めぐらされたコンプライアンスと配慮はいりょの網あみをことごとくぶち破やぶり、小川おがわの言動げんどうはあちこちで騒動そうどうを巻まき起おこす。 一方いっぽう、同時どうじにひと組くみの親子おやこが逆ぎゃくに2024年ねんから1986年ねんにタイムスリップしてきていた。 社会しゃかい学者がくしゃの向坂さきさかサカエ(吉田よしだ羊ひつじ)と、その息子むすこの中学生ちゅうがくせいのキヨシ(坂元さかもと愛あい登とう)である。 キヨシは小川おがわの娘むすめ・純子じゅんこ(河合かわい優ゆう実み)に一目惚ひとめぼれしてしまい、未来みらいへの帰還きかんを拒こばむ。 果はたして小川おがわは元もとの時代じだいに戻もどれるのか、そして向坂さきさか親子ちかこはどうやって過去かこにやってきたのか。抱腹絶倒ほうふくぜっとうのジェネレーションギャップドラマが始はじまる。 近年きんねん、宮藤くどう官かん九郎くろうは『得体えたいの知しれないもの』や『閉とじられたもの』に向むき合あって、それらを見みつめるように作品さくひんを描えがいてきた。 テレビドラマ『ゆとりですがなにか』(2016年ねん 日本にほんテレビ系けい)では、ゆとり世代せだいとひとくくりにされる世代せだいの複雑ふくざつさと苦悩くのうを、『監獄かんごくのお姫ひめさま』(2017年ねん TBS系けい)では怒おこれる女おんなたちの痛いたみと連帯れんたいを、『俺おれの家いえの話はなし』(2021年ねん TBS系けい)では老親ろうしんの介護かいごという悲かなしみと困難こんなんを。 そして今いま作さくで宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうが掴つかもうとしているのは、コミュニケーションにおける配慮はいりょという、目めに見みえない『空気くうき』である。 それは人ひとと人ひとの間あいだに必要ひつよう不可欠ふかけつだけれども、無なさすぎれば関係かんけいを壊こわし、有ありすぎれば対話たいわを硬直こうちょく化かして錆さびつかせる。 その、安易あんいに言語げんご化かできないものをエンタテインメントとして描えがきだすために、粗忽そこつ(そこつ)さすらも魅力みりょくに変かえてみせる阿部あべサダヲの存在そんざいは必須ひっすである。 唯一ゆいいつ無二むにの身体しんたい表現ひょうげんで鬱陶うっとうしい昭和しょうわの中なか年男としおとこに一いち匙さじぶんのかわいげを加味かみしている。 居酒屋いざかやの一幕ひとまく、配膳はいぜんロボットが延々えんえんと炙あぶりシメサバを運はこぶ。 タッチパネルの誤あやま入力にゅうりょくがそのままノーチェックで通かよってしまう不条理ふじょうり、さらにロボットが運はこんだ後のちで炙あぶりにくるのはアルバイトという、不条理ふじょうりに不条理ふじょうりをたたみかける展開てんかいは、宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうらしい怒濤どとうの笑わらいと毒どくに満みちていて素晴すばらしかった。 さらにクライマックスのミュージカル仕立したてのシーンに仰天ぎょうてんしつつ、『木更津きさらづキャッツアイ』(2002年ねん TBS系けい)で、時間じかんを逆戻ぎゃくもどりさせて再度さいど見みせる展開てんかいに驚おどろいたことを思おもい出だした。 他ほかにも篠原しのはら涼子りょうこを古田ふるた新太あらたに変身へんしんさせてしまう『ぼくの魔法使まほうつかい』(2003年ねん 日本にほんテレビ系けい)といった「ありなの?」を「面白おもしろい!」に昇華しょうかさせてきたその剛腕ごうわんで、このミュージカルのシーンも見みせ場ばに磨みがき上あげていくのだろう。 そして1986年ねんと2024年ねんを繋つなぐゲートを守まもるのが、40年ねんの芸能人げいのうじんとしてのキャリアを信念しんねんを持もって走はしり続つづけ、宮藤くどう官かん九郎くろう作品さくひんでも数々かずかずの重要じゅうような役柄やくがらを演えんじてきた小泉こいずみ今日子きょうこのポスターだというのが、何なんともエモい。 それにしても、なぜ中学生ちゅうがくせいのキヨシは尾美おみとしのりの名前なまえどころか、生年月日せいねんがっぴまで知しっていたのだろう。 昭和しょうわのムッチ先輩せんぱい(磯村いそむら勇いさむ斗と)とそっくりな令れい和わの秋津あきつ(磯村いそむら勇いさむ斗と)の関係かんけい、小川おがわの娘むすめ・純子じゅんこは令れい和わでどうしているのか、向坂さきさか親子ちかこはどんな経緯けいいで過去かこにやってきたのか、そして喫茶きっさ『すきゃんだる』に居いたシングルマザー(仲なか里依りえ紗しゃ)は何者なにものなのか。 何なにせ物語ものがたりが進すすむにつれて点てんと点てんが線せんになり、線せんと線せんが面めんになり、面めんが立体りったいになる宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうのドラマである。 これから春はるまで、昭和しょうわパートに悶もだえつつ、令れい和わになっても決けっして守まもりに入はいらない、名手めいしゅが描えがく物語ものがたりの妙みょうに唸うなる週末しゅうまつになりそうである。 この記事きじの画像がぞう(全ぜん30枚まい) ドラマコラムの一覧いちらんはこちら [文ぶん・構成こうせい/grape編集へんしゅう部ぶ] かな SNSを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている。 ⇒ かなさんのコラムはこちら Share Post LINE はてな コメント
SNSを中心 に注目 ドラマの感想 を独自 の視点 でつづり人気 を博 している、かな(@kanadorama)さん。
2024年 1月 スタートのテレビドラマ『不適切 にもほどがある!』(TBS系 )の見 どころを連載 していきます。
かなさんがこれまでに書 いたコラムは、こちらから読 めます。
おそらく全国 あちこちで、2024年 1月 26日 の22時 10分 あたり、「昭和 生 まれの中年 がメンタル瀕死 になっていたのではないか」と思 う。
「こんなに野蛮 な時代 だったか?」「こんなにひどい日常 だったか?」と思 っただろう。
だが記憶 をぼんやりと辿 るに、ドラマとして詰 め込 んではいたけれど、全部 確 かに現実 にあったことだった。
そんな人生 に疲弊 した中年 の心 をこてんぱんにする怪 作 『不適切 にもほどがある!』(TBS系 金曜日 22時 )。
その小川 市郎 が、突如 2024年 へとタイムスリップしてしまう。
キヨシは小川 の娘 ・純子 (河合 優 実 )に一目惚 れしてしまい、未来 への帰還 を拒 む。
テレビドラマ『ゆとりですがなにか』(2016年 日本 テレビ系 )では、ゆとり世代 とひとくくりにされる世代 の複雑 さと苦悩 を、『監獄 のお姫 さま』(2017年 TBS系 )では怒 れる女 たちの痛 みと連帯 を、『俺 の家 の話 』(2021年 TBS系 )では老親 の介護 という悲 しみと困難 を。
そして今 作 で宮藤 官 九 郎 が掴 もうとしているのは、コミュニケーションにおける配慮 という、目 に見 えない『空気 』である。
それは人 と人 の間 に必要 不可欠 だけれども、無 さすぎれば関係 を壊 し、有 りすぎれば対話 を硬直 化 して錆 びつかせる。
その、安易 に言語 化 できないものをエンタテインメントとして描 きだすために、粗忽 (そこつ)さすらも魅力 に変 えてみせる阿部 サダヲの存在 は必須 である。
タッチパネルの誤 入力 がそのままノーチェックで通 ってしまう不条理 、さらにロボットが運 んだ後 で炙 りにくるのはアルバイトという、不条理 に不条理 をたたみかける展開 は、宮藤 官 九 郎 らしい怒濤 の笑 いと毒 に満 ちていて素晴 らしかった。
さらにクライマックスのミュージカル仕立 てのシーンに仰天 しつつ、『木更津 キャッツアイ』(2002年 TBS系 )で、時間 を逆戻 りさせて再度 見 せる展開 に驚 いたことを思 い出 した。
そして1986年 と2024年 を繋 ぐゲートを守 るのが、40年 の芸能人 としてのキャリアを信念 を持 って走 り続 け、宮藤 官 九郎 作品 でも数々 の重要 な役柄 を演 じてきた小泉 今日子 のポスターだというのが、何 ともエモい。
それにしても、なぜ中学生 のキヨシは尾美 としのりの名前 どころか、生年月日 まで知 っていたのだろう。
これから春 まで、昭和 パートに悶 えつつ、令 和 になっても決 して守 りに入 らない、名手 が描 く物語 の妙 に唸 る週末 になりそうである。
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かな
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