アーサー王おう物語ものがたり

アーサー王おう物語ものがたり（アーサーおうものがたり　英えい：King Arthur and the Knights of the Round Table）またはアーサー王おう伝説でんせつ（アーサーおうでんせつ）、あるいはアーサー王おうと円卓えんたくの騎士きしたち（アーサーおうとえんたくのきしたち）は、中世ちゅうせいの騎士きし道どう物語ものがたり。

アーサー王おう像ぞう(ペーター・ヴィッシャー作さく、1480年ねんごろ、インスブリュック宮廷きゅうてい内ない教会きょうかい)

あらすじ

現在げんざい、アーサー王おう物語ものがたりとして一般いっぱんに知しられているのは、中世ちゅうせい後期こうきに完成かんせいし、トマス・マロリーがまとめたアーサー王おうを中心ちゅうしんとする騎士きし道どう物語ものがたり群ぐんである。これは大おおきく四よっつの部分ぶぶんに分わける事ことができる。

• アーサーの誕生たんじょうと即位そくい。ローマ皇帝こうていを倒たおし、全ちょんヨーロッパの王おうになるまでの物語ものがたり。
• アーサー王おうの宮廷きゅうてい（キャメロット）に集たかった円卓えんたくの騎士きし達いたるの冒険ぼうけんとロマンス。
• 聖ひじり杯はい探索たんさく。最後さいごの晩餐ばんさんで使つかわれたという聖ひじり杯はいを円卓えんたくの騎士きしが探さがす物語ものがたり。
• ランスロットと王妃おうひグィネヴィアの関係かんけい発覚はっかくに端はしを発はっする内乱ないらん（実子じっしモルドレッドとのカムランの戦たたかい）。王国おうこくの崩壊ほうかいとアーサー王おうの死し（アヴァロンへの船出ふなで）、コンスタンティンへの王位おうい継承けいしょう。

主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつ

詳細しょうさいはアーサー王おう伝説でんせつに登場とうじょうする人物じんぶつ一覧いちらんを参照さんしょう。作品さくひんにより、名前なまえや血縁けつえん関係かんけいが多少たしょう異ことなる。

アーサー王おう

ブリテンの王おう。

マーリン

アーサーを補佐ほさし、導みちびく魔術まじゅつ師し。

グィネヴィア

アーサーの王妃おうひ。ランスロットとの禁断きんだんの恋こいで有名ゆうめい。

ヴィヴィアン（湖みずうみの乙女おとめ）

マーリンの愛人あいじんにして弟子でし。

モルゴース

アーサー王おうの異父いふ姉あね。

モーガン・ル・フェイ

妖姫ようき。アーサー王おうの異父いふ姉あね。

円卓えんたくの騎士きし

アーサー王おうと円卓えんたくの騎士きし

アーサー王おうに仕つかえた精鋭せいえいの騎士きしたち。各々おのおの魔法まほうの円卓えんたくに席せきを持もつ。席せきの総数そうすう、構成こうせい員いんは作品さくひんによって異ことなる。

ランスロット

湖みずうみの騎士きし。この世よで最もっとも誉ほまれ高たかき最高さいこうの騎士きし。

ガウェイン

モルゴースの息子むすこでアーサーの甥おい。

トリスタン

アイルランド王おうマルクの甥おい。竜りゅう退治たいじやイズーとの恋こいで有名ゆうめい。

ガラハッド

ランスロットとカーボネックのエレインの息子むすこ。聖ひじり杯はいの騎士きしの一人ひとり。

パーシヴァル

ペリノア王おうの息子むすこ。聖ひじり杯はいの騎士きしの一人ひとり。

ボールス

ボールス王おうの息子むすこで、ボールス王おうと区別くべつするためにボールス卿きょうと呼よばれる。聖ひじり杯はいの騎士きしの一人ひとり。童貞どうていを守まもっていたため、聖きよし杯はいに到達とうたつできたと説明せつめいされている。

モルドレッド

ガウェインの異父いふ弟おとうと。王位おういの簒奪さんだつを企たくらみ、アーサーと戦たたかう。

コンスタンティン

コーンウォールのカドー卿きょうの息子むすこ。アーサーの死後しごコンスタンティン3世せいとしてブリテン王おうに即位そくい。

ベディヴィア

アーサー王おうの執事しつじ。アーサーの死後しごエクスカリバーを湖みずうみに還かえした。

歴史れきし

伝説でんせつ

「アーサー王おう」も参照さんしょう

5世紀せいき末すえにサクソン人じんを撃退げきたいしたとされる英雄えいゆうアーサーは、ブリトン人じん（ウェールズ人じん）の間あいだで古ふるくから伝説でんせつとして語かたり継つがれてきた。アーサーの直系ちょっけいの子孫しそんであるウェールズ人ひとが残のこした『マビノギオン』はそれを現代げんだいに伝つたえるほぼ唯一ゆいいつの史料しりょうであり、華はなやかな騎士きし道どうロマンスに彩いろどられる前まえの比較的ひかくてき古ふるい状態じょうたいのアーサー王おう伝説でんせつを見みることができる。

アーサーの生涯しょうがいがはじめてまとまった形かたちをとったのは、1136年ねん頃ころウェールズ人ひとジェフリー・オブ・モンマスが書かいた『ブリタニア列れつ王おう史し』においてである。『ブリタニア列れつ王おう史し』は歴史れきし書しょの体裁ていさいを取とっているものの、非ひ現実げんじつ的てきな部分ぶぶんが多おおくを占しめており、今日きょうの伝説でんせつ上じょうの人物じんぶつとしてのアーサー王おうのイメージはここから始はじまると言いってよい。以降いこう、彼かれの作品さくひんとそれを基もとにしたアングロ＝ノルマンの詩人しじんウァースの『ブリュ物語ものがたり』（1155年ねん頃ころ）、それにウェールズ人じんと共通きょうつうの文化ぶんかを有ゆうするブルターニュのブルトン人じんなどを経由けいゆして、アーサーの伝説でんせつは西にしヨーロッパ全体ぜんたいに伝播でんぱしてゆく。

中世ちゅうせい

「円卓えんたくの騎士きし」および「聖ひじり杯はい伝説でんせつ」も参照さんしょう

騎士きし道どうが花開はなひらく中世ちゅうせい後半こうはんになると、アーサー王おう伝説でんせつはシャルルマーニュ（「フランスもの」）やアレクサンドロス3世せい（大王だいおう）（「ローマもの」）と並ならんで「ブルターニュ」（ブルターニュものとも）と呼よばれる騎士きし道どう文学ぶんがくの題材だいざいとなり、フランスを中心ちゅうしんに各地かくちでさまざまな異本いほんやロマンスが作つくられた。その過程かていで本来ほんらい関係かんけいがなかったエピソードが円卓えんたくの騎士きしの物語ものがたりとして徐々じょじょに組くみ込こまれていった。ランスロットや湖みずうみの乙女おとめ、トリスタンとイゾルデ、パーシヴァル、ガラハッド、聖ひじり杯はい探求たんきゅう、石いしに刺ささった剣けん、円卓えんたく、キャメロットなどといった人物じんぶつやモチーフはこの時期じきに導入どうにゅうされたものである。

この時代じだいの優すぐれた作品さくひんにクレティアン・ド・トロワ（フランス）の『ランスロ、あるいは荷車にぐるまの騎士きし』、ドイツのヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルツィヴァル』、ゴットフリート・フォン・シュトラースブルクの『トリスタン』、イングランドの『ガウェイン卿きょうと緑みどりの騎士きし』（著者ちょしゃ不明ふめい）などがあり、これらは中世ちゅうせい文学ぶんがくを代表だいひょうする俗語ぞくご作品さくひんとして高たかく評価ひょうかされている。

このようにして製作せいさくされた各種かくしゅロマンスは、『ランスロ＝聖きよし杯はいサイクル』や『後期こうき流布るふ本ほんサイクル』（ともに著者ちょしゃ不明ふめい）などの統一とういつ性せいを持もった散文さんぶん作品さくひん群ぐんにまとめられていった。1470年ねんにウェールズ出身しゅっしんの騎士きしトマス・マロリーがこれらを使用しようして書かき上あげた『アーサー王おうの死し』はその決定けってい版ばんというべきもので、現在げんざいはマロリーの作品さくひんがアーサー王おう物語ものがたりを代表だいひょうする作品さくひんとなっている（ただし、『アーサー王おうの死し』に含ふくまれないエピソードやヴァリエーションも数多かずおおく存在そんざいする）。この作品さくひんは15世紀せいき末すえの出版しゅっぱん業者ぎょうしゃウィリアム・キャクストンの手てによる印刷いんさつ本ほん（キャクストン版ばん）と、1934年ねんに発見はっけんされた中世ちゅうせい写本しゃほん（ウィンチェスター版ばん）により現在げんざいに伝つたえられている。

近きん現代げんだい

騎士きし道どう文学ぶんがくの衰退すいたいと共ともに汎ひろしヨーロッパ的てきな人気にんきは衰おとろえたが、ロマン主義しゅぎの時代じだいになるとイギリスの愛国あいこく主義しゅぎのモチーフとして好このまれ、アルフレッド・テニスンの『国王こくおう牧歌ぼっか』などが書かかれた。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以降いこう、ファンタジーの復権ふっけんとともに再ふたたび注目ちゅうもくされるようになり、現在げんざいでも小説しょうせつや映画えいが、ドラマなど多様たようなメディアでアーサー王おう物語ものがたりが作つくられ続つづけている。

ナルト叙事詩じょじしとの関連かんれん

アーサー王おうをはじめとする伝説でんせつの多おおくは、従来じゅうらいはケルトに由来ゆらいするというのが有力ゆうりょくな説せつであった。しかし近年きんねんでは黒海こっかい東岸とうがんのオセット人じんのナルト叙事詩じょじしと共通きょうつうの起源きげんを持もつという説せつが注目ちゅうもくされている。この説せつで特とくに注意ちゅういされているうちの一ひとつは、アーサー王おうの死しとナルト叙事詩じょじしの大だい英雄えいゆうバトラズの死しとの間あいだに顕著けんちょな類似るいじが認みとめられることである。

アーサー王おうは死しの直前ちょくぜんベディヴィアに湖みずうみにエクスカリバーを投なげ込こむよう指示しじする。しかしベディヴィアはエクスカリバーの美うつくしさに見惚みほれて湖みずうみに投なげ込こんだと嘘うそをつく。しかしアーサー王おうは奇跡きせき（つまり湖みずうみから手てが現あらわれて剣けんを受うけ取とる）が起おきないことを理由りゆうにその嘘うそを見抜みぬき、仕方しかたなくベディヴィアは剣けんを湖みずうみに投なげ入いれる。一方いっぽうのバトラズも死しの直前ちょくぜん、ナルトたちに自分じぶんの神剣しんけんを海うみに投なげ込こむよう命めいじる。しかしその剣けんのあまりの重おもさゆえに、ナルトたちが海うみに投なげ入いれたと嘘うそをつくと、やはり何なにの奇跡きせきも起おきていないことを理由りゆうにその嘘うそを見抜みぬき、ナルトたちは仕方しかたなく剣けんを海うみに投なげ込こむ。奇跡きせきの内容ないようなど違ちがいもあるが、物語ものがたりの構成こうせいに類似るいじが保存ほぞんされている、と論ろんじられている。

研究けんきゅう書しょ・解説かいせつ書しょ

「アーサー王おうに関かんする書籍しょせきの一覧いちらん#解説かいせつ書しょ・研究けんきゅう書しょ」を参照さんしょう

学術がくじゅつ研究けんきゅう機関きかん

国際こくさいアーサー王おう学会がっかい

（IAS:The International Arthurian Society/SIA:La Société Internationale Arthurienne）

1948年ねんにアーサー王おう文学ぶんがくの研究けんきゅう者しゃジャン・フラピエ（Jean Frappier）、ウジェーヌ・ヴィナーヴァ（Eugene Vinaver）、ドミニカ・レッゲ（Dominica Legge）らが中心ちゅうしんとなり、パリ大学だいがく（ソルボンヌ）を本拠ほんきょとして創設そうせつされた研究けんきゅう団体だんたい。イギリス、ドイツなどの西にしヨーロッパのみならず、日本にっぽんを含ふくむ世界せかい各国かっこくに支部しぶがある（1987年ねん第だい1回かい日本にっぽん支部しぶ総会そうかい）。

関連かんれん作品さくひん

「アーサー王おうに関かんする書籍しょせきの一覧いちらん」および「アーサー王おうに関かんする作品さくひん一覧いちらん」を参照さんしょう

舞台ぶたい

• アーサー王おう伝説でんせつ（原題げんだい:LA LEGENDE DU ROI ARTHUR）

2015年ねんにパリで初演しょえんのミュージカル作品さくひん。日本にっぽんでは、宝塚歌劇団たからづかかげきだん月つき組ぐみ選抜せんばつメンバーにより、2016年ねん10月がつ14日にち〜10月19日にちに文京ぶんきょうシビックホール、同年どうねん10月がつ28日にち〜11月9日にちにシアター・ドラマシティで公演こうえん。潤色じゅんしょく・演出えんしゅつは石田いしだ昌也まさや、主演しゅえんは珠たま城じょうりょう、愛希あいきれいか。2023年ねん、オ・ルピナ演出えんしゅつ浦井うらい健治けんじ主演しゅえんでミュージカル「キングアーサー」のタイトルで上演じょうえん。

外部がいぶリンク

• 国際こくさいアーサー王おう学会がっかい日本にっぽん支部しぶ