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イオン結合 - Wikipedia

イオン結合けつごう

せい電荷でんかイオン(カチオン)と電荷でんかかげイオン(アニオン)のあいだせいでん引力いんりょく

イオン結合けつごう(イオンけつごう、英語えいご:ionic bond)はせい電荷でんかイオン(カチオン)と電荷でんかかげイオン(アニオン)のあいだしずかでん引力いんりょく(クーロンりょく)による化学かがく結合けつごうである。この結合けつごうによってイオン結晶けっしょう形成けいせいされる。共有きょうゆう結合けつごう対比たいひされ、結合けつごうせい軌道きどう電気でんき陰性いんせいたかほう原子げんし局在きょくざいした極限きょくげんであると解釈かいしゃくすることもできる。

イオン結合けつごう金属きんぞく元素げんそおもイオン)と非金属ひきんぞく元素げんそおもかげイオン)とのあいだ形成けいせいされることがおおいが、塩化えんかアンモニウムなど、非金属ひきんぞく原子げんしイオン(ここではアンモニウムイオン)がイオンとなる場合ばあいもある。イオン結合けつごうによってできた物質ぶっしつ組成そせいしきあらわされる。

イオンあいだせいでん引力いんりょく

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イオン結晶けっしょう結合けつごうエネルギーのうち、イオンあいだせいでん相互そうご作用さようによるエネルギーをマーデルング・エネルギー(Madelung energy)という。

マーデルング・エネルギーの導出どうしゅつ

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はじめに2つのイオンあいだ相互そうご作用さようについてかんがえる。イオンとかげイオンの電荷でんかをそれぞれ とすると、イオン  あいだ相互そうご作用さようエネルギー は 

      (1)

くことができる。イオン  あいだ距離きょり とした。だいこうパウリの排他はいたりつによる斥力せきりょくポテンシャルで、  はそれぞれ、斥力せきりょくおおきさと斥力せきりょくはたら距離きょり決定けっていするパラメータである。だい2こうはクーロンポテンシャルをあらわ[注釈ちゅうしゃく 1]。 (1)しき 符号ふごう同種どうしゅ電荷でんかたいして、 符号ふごう異種いしゅ電荷でんかたいしてとる。ただし、イオン結晶けっしょうでのファンデルワールスりょく部分ぶぶん凝集ぎょうしゅうエネルギーの 程度ていど比較的ひかくてきちいさな寄与きよしかあたえないので、ここでは無視むしした[1]

つぎ結晶けっしょうについてかんがえる。結晶けっしょうさい近接きんせつイオンあいだ距離きょり とおき、 となる 導入どうにゅうすると のイオンからなる結晶けっしょうぜん格子こうしエネルギー [注釈ちゅうしゃく 2]は、

      (2)

くことができる。ただし斥力せきりょくポテンシャルは、さい近接きんせつイオンあいだ相互そうご作用さようのみを考慮こうりょし、それ以外いがい無視むしした。 さい近接きんせつイオンのかずである。 はマーデルング定数ていすうとよばれ、

 

定義ていぎする。ただし はイオン  符号ふごうのときは どう符号ふごうのときは をとる。

イオンが静止せいしした温度おんどゼロの状態じょうたいかんがえる。圧力あつりょくがゼロという条件じょうけんしたでは、体積たいせきたいして 最小さいしょうとなる。これは平衡へいこう距離きょり  最小さいしょうとなることにひとしいので つ。(2)しきより

 

平衡へいこう距離きょり での2のイオンからなる結晶けっしょうぜん格子こうしエネルギーは

 

ける。だい1こう斥力せきりょくこうだい2こうがクーロンこうすなわちマーデルング・エネルギーあらわす。

イオン結合けつごうせい共有きょうゆう結合けつごうせい

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たとえば水素すいそ(H₂)や酸素さんそ(O₂)などとうかく2原子げんし分子ぶんしは、純粋じゅんすい共有きょうゆう結合けつごうによって形成けいせいされている。しかし一酸化いっさんか窒素ちっそ(NO)や一酸化いっさんか炭素たんそ(CO)のようなかく原子げんし分子ぶんしは、共有きょうゆう結合けつごうせいとイオン結合けつごうせいざっている。これは分子ぶんし形成けいせいするさい電荷でんか分布ぶんぷ変化へんかによってしょうじる。

原子げんしA,Bからなる2原子げんし分子ぶんしについてかんがえる。結合けつごうまえ原子げんしA,Bの電子でんし存在そんざいかくりつ密度みつどをそれぞれ  とすると、2原子げんし分子ぶんし電子でんし存在そんざいかくりつ密度みつど つぎかたちあたえられる。

 

右辺うへんだいいちこうだいこうは、 だけの電子でんし原子げんしBから原子げんしAに移動いどうし、2原子げんし分子ぶんしにおいて電子でんしかたよっていることをあらわす。 原子げんしA,Bが結合けつごうしたときに中間ちゅうかん部分ぶぶん電子でんし密度みつどたかくなってできた結合けつごう電荷でんかであり、ぜん空間くうかんでの かんするぜん電荷でんかはゼロにひとしい。  は、結合けつごうのイオンせい(ionicity)と共有きょうゆうせい(covalency)の尺度しゃくどあらわし、 たす。とうかく2原子げんし分子ぶんし電子でんしかたよりはないので である。電子でんし密度みつど

    

あらわせ、結合けつごう前後ぜんこう電荷でんか密度みつど変化へんか結合けつごう電荷でんか寄与きよ のみによってあたえられる。一方いっぽうかく2原子げんし分子ぶんし であるので電子でんし密度みつど

 

あらわせる。共有きょうゆう結合けつごうせい電荷でんか寄与きよ くわえて、イオン結合けつごうせい電荷でんか寄与きよ ふくんでいる。

これより、とうかく2原子げんし分子ぶんしでは、結合けつごう純粋じゅんすい共有きょうゆうせいであり、かく2原子げんし分子ぶんしでは共有きょうゆうせいとイオンせいざった性格せいかくしめす。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 国際こくさい単位たんいけいでは、クーロン相互そうご作用さよう であるが、ここではクーロン相互そうご作用さよう とするCGS単位たんいけい採用さいようした。
  2. ^ ぜん格子こうしエネルギーは、結晶けっしょうたがいに無限むげんはなれたイオンにはなすのにようするエネルギーと定義ていぎされる。

出典しゅってん

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  1. ^ キッテル:固体こたい物理ぶつりがく入門にゅうもん』pp.67

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Charles Kittel (2005) 『キッテル:固体こたい物理ぶつりがく入門にゅうもん』( 宇野うの りょうきよし新関にいぜき こま二郎じろう山下やました 次郎じろう津屋つや のぼる森田もりた あきら やく) 丸善まるぜん株式会社かぶしきがいしゃ
  • David Pettifor(1997)『分子ぶんし固体こたい結合けつごう構造こうぞう』(青木あおき正人まさと西谷にしたにしげるじん やく) 技報堂ぎほうどう出版しゅっぱん

関連かんれん項目こうもく

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