カサレヴサ

カサレヴサ（ギリシア語ご: Καθαρεύουσα、ギリシア語ご発音はつおん: [kaθしーたaˈɾɛvusa]）は、現代げんだいのギリシアで使用しようされている、現代げんだいギリシア語ごの文語ぶんご（純粋じゅんすい文語ぶんご）をいう。「学者がくしゃ語ご」の範疇はんちゅうに属ぞくし、アラビア語ごのフスハーに相当そうとうする。すなわち、各地かくちの方言ほうげんの現代げんだいギリシア語ごの束たばとなる共通きょうつう文語ぶんごで、どこにいっても通用つうようする公的こうてき言語げんごである。これに対たいしデモティキは、ペロポネソスとアテネの民衆みんしゅうの口語こうご（方言ほうげん）を基礎きそにした標準ひょうじゅん語ごである。

さまざまに分化ぶんかした各地かくちの方言ほうげんをまとめ、革命かくめい後ごの新しんギリシアの共通きょうつう語ごとして、アダマンティス・コライス（1748年ねん - 1833年ねん）らの言語げんご学者がくしゃが、古典こてんギリシア語ごとコイネーに基もとづき、言語げんごの純粋じゅんすい化か（日本語にほんごにおいて外来がいらい語ごを漢語かんご等ひとしに訳やくしたように、外国がいこく語ごから借用しゃくようしている語彙ごいを、それを示しめすギリシア語ご単語たんごを作つくって置おき換かえるなどした）と学問がくもん的てきな計画けいかくにより創造そうぞうされた擬古ぎこ典てん言語げんごであるが、方言ほうげんの基盤きばんとなる共通きょうつう項こうを一括いっかつできる言語げんごである。

学校がっこう・メディア・行政ぎょうせい・司法しほう・軍事ぐんじのため、古典こてんを愛あいする擬古ぎこ典てん主義しゅぎの要請ようせいにより、公用こうよう語ごとして永ながく用もちいられている言語げんごである。かつては、ディモティキを排除はいじょするほどの権威けんいを付与ふよされた（エレフテリオス・ヴェニゼロス（1864年ねん - 1936年ねん）政府せいふは、カサレヴサを唯一ゆいいつの公用こうよう語ごとすることを憲法けんぽうに明記めいきしている）。古典こてんギリシア語ごの文法ぶんぽう形態素けいたいそと語彙ごい形態素けいたいそを維持いじした、国民こくみんの共通きょうつう語ごであり、現代げんだいでも教養きょうよう人じんは手紙てがみをはじめとする文章ぶんしょう語ごとして用もちいており、判例はんれいをはじめ、司法しほうの分野ぶんやにおいては依然いぜん主流しゅりゅうである。

歴史れきし

カサレヴサという単語たんごが現あらわれる現在げんざい知しられている中なかで最もっとも古ふるい文献ぶんけんはギリシャの博学はくがく者しゃニケフォロス・テオトキスによる1796年ねんの物ものである。

カサレヴサは公共こうきょうの文書ぶんしょ、あるいはギリシャの学者がくしゃによる公式こうしきな活動かつどうの成果せいかとされたもの全すべてに幅広はばひろく用もちいられた。カサレヴサという名称めいしょうは、古代こだいギリシャ語ごが外部がいぶの影響えいきょうを一切いっさい受うけなかったと仮定かていしたならこのような純粋じゅんすいなギリシャ語ごの形態けいたいに進化しんかしただろう、ということを暗あんに意味いみしている。この名前なまえは現代げんだいギリシャ語ご風ふうに解釈かいしゃくすると「公式こうしき言語げんご」という意味いみになる。

時代じだいが下くだると、カサレヴサは公式こうしきで格式かくしきばった目的もくてき（例たとえば政治せいじ、書簡しょかん、公式こうしき文書ぶんしょ、報道ほうどうなど）で使つかわれ、一方いっぽうデモティキ(δημοτική, dimotiki)  または標準ひょうじゅんギリgoi シャ語ごは日常にちじょう的てきな言語げんごとして使つかわれた。これにより、ギリシャ人じんの多おおくがカサレヴサに馴染なじまない限かぎり公共こうきょうの場ばや教育きょういくの進歩しんぽから排除はいじょされるというダイグロシアが生うみ出だされた。1976年ねんにデモティクが公用こうよう語ごとされ、1981年ねんにはアンドレアス・パパンドレウにより20世紀せいき末まつまでに従来じゅうらいの発音はつおん法ほうの表記ひょうきを廃止はいしするとされるに至いたって、初期しょきの形態けいたいにおける完全かんぜんなカサレヴサは時代遅じだいおくれとなった。

カサレヴサの語彙ごいの多おおくとその文法ぶんぽうや統辞とうじ法ほうはデモティクに影響えいきょうを与あたえたので、このプロジェクトは今日きょう使つかわれている言語げんごに確たしかに貢献こうけんしている。現代げんだいギリシャ語ごは元々もともとのデモティクと伝統でんとう的てきなカサレヴサの入いり混まじったものということもできるだろう。同おなじような状況じょうきょうは19世紀せいきにも、当時とうじのデモティクとコイネーとについて強調きょうちょうされていた。その他たのカサレヴサの後代こうだいの言語げんごへの貢献こうけんとしては、かつて存在そんざいしなかった事物じぶつ（例たとえば、新聞しんぶん、警察けいさつ、自動車じどうしゃ、飛行機ひこうき、テレビなど）を他たの言語げんごからそのまま借かりることなしに、古典こてん由来ゆらいの形態素けいたいそによって描写びょうしゃする方法ほうほうを作つくり出だしたことが挙あげられる。

なお、ギリシャ人じんの若者わかものの語彙ごいは非常ひじょうに貧困ひんこんであることが指摘してきされており、その理由りゆうとしてカサレヴサに慣なれ親したしんでいないことや、カサレヴサのような規範きはんとなる文体ぶんたいとなるものが存在そんざいしない点てんが挙あげられる。

今日きょうでの使用しよう

ギリシャ正教会せいきょうかい、キプロス正教会せいきょうかい、ギリシャ正教せいきょうのコンスタンティノープル、アレクサンドリア、エルサレム各かく主教しゅきょう管区かんくにおいては今いまでも公的こうてきな言語げんごとして用もちいられている。

使用しよう例れい

次つぎのテキストは1930年ねんに出版しゅっぱんされたギリシャ大だい百科ひゃっか事典じてんから引ひかれたカサレヴサの使用しよう例れいである。これはアダマンティス・コライスのギリシャ正教会せいきょうかいとの関係かんけいについてのテキストである。デモティキ、英語えいご、日本語にほんごでの訳わけを添そえる。

• カサレヴサ: Ἡ δでるた' ἀπぱいὸ τたうῆς Ἑλλάδος ἀποδημία τたうοおみくろんυうぷしろん ἐγένετο πρόξενος πぱいοおみくろんλらむだλらむだῶνにゅー ἀδίκων κρίσεων πぱいεいぷしろんρろーὶ προσώπων κかっぱαあるふぁὶ πραγμάτων κかっぱαあるふぁὶ πぱいρろーῶτたうαあるふぁ πぱいρろーῶτたうαあるふぁ τたうῆς πぱいεいぷしろんρろーὶ ἧς ἀνωτέρω ἔγινε λόγος πぱいρろーὸς τたうὸνにゅー κかっぱλらむだῆρろーοおみくろんνにゅー συμπεριφορᾶς τたうοおみくろんυうぷしろん. Ἂνにゅー ἔζぜーたηいーた ἐνにゅー Ἑλλάδι κかっぱαあるふぁὶ ἤρχετο εいぷしろんἰς ἐπικοινωνίαν πぱいρろーὸς τたうὸνにゅー κかっぱλらむだῆρろーοおみくろんνにゅー κかっぱαあるふぁὶ ἐγνώριζεν ἐκかっぱ τたうοおみくろんῦ πλησίον ὄχかいιいおた μόνον τたうὰς κακίας, ἀλらむだλらむだὰ κかっぱαあるふぁὶ τたうὰς ἀρετὰς αあるふぁὐτたうοおみくろんῦ, ὄχかいιいおた μόνον πぱいοおみくろんλらむだὺ θしーたὰ συνετέλει εいぷしろんἰς διόρθωσίν τたうιいおたνにゅーωおめがνにゅー ἐκかっぱ τたうῶνにゅー κかっぱαあるふぁκかっぱῶνにゅー ἐνにゅー τたうῇ Ἐκκλησίᾳ ἐχόντων, ἀλらむだλらむだὰ κかっぱαあるふぁὶ δでるたὲνにゅー θしーたὰ ἤκουεν ὅσしぐまαあるふぁ ἤκουσεν ἐκかっぱ τたうῶνにゅー ὑπερβολικῶνにゅー κかっぱαあるふぁτたうὰ τたうοおみくろんῦ κλήρου ἐκφράσεών τたうοおみくろんυうぷしろん.

  Hē d' apò tē̂s Helládos apodēmía tou egéneto próxenos pollō̂n adíkōn kríseōn perì prosṓpōn kaì pragmátōn kaì prō̂ta prō̂ta tē̂s perì hē̂s anōtérō égine lógos pròs tòn klē̂ron symperiphorâs tou. Àn ézē en Helládi kaì ḗrcheto eis epikoinōnían pròs tòn klē̂ron kaì egnṓrizen ek toû plēsíon óchi mónon tàs kakías, allà kaì tàs aretàs autoû, óchi mónon polỳ thà synetélei eis diórthōsín tinōn ek tō̂n kakō̂n en tē̂i Ekklēsíāi echóntōn, allà kaì dèn thà ḗkouen hósa ḗkousen ek tō̂n hyperbolikō̂n katà toû klḗrou ekphráseṓn tou.

• デモティキ: Ηいーた αποδημία τたうοおみくろんυうぷしろん από τたうηいーたνにゅー Ελλάδα έγινε πρόξενος πολλών άδικων κρίσεων γがんまιいおたαあるふぁ πρόσωπα κかっぱαあるふぁιいおた πράγματα κかっぱαあるふぁιいおた πρώτα πρώτα, γがんまιいおたαあるふぁ τたうηいーたνにゅー οποία έγινε λόγος παραπάνω, της συμπεριφοράς τたうοおみくろんυうぷしろん προς τたうοおみくろんνにゅー κλήρο. Αあるふぁνにゅー ζούσε σしぐまτたうηいーたνにゅー Ελλάδα κかっぱαあるふぁιいおた ερχόταν σしぐまεいぷしろん επικοινωνία μみゅーεいぷしろん τたうοおみくろんνにゅー κλήρο κかっぱαあるふぁιいおた γνώριζε από κοντά όχι μόνο τις κακίες, αλλά κかっぱαあるふぁιいおた τις αρετές αυτού, όχι μόνο θしーたαあるふぁ συντελούσε πολύ σしぐまτたうηいーた διόρθωση μερικών από τたうαあるふぁ κακά πぱいοおみくろんυうぷしろん υπάρχουν σしぐまτたうηいーたνにゅー Εκκλησία, αλλά κかっぱαあるふぁιいおた δでるたεいぷしろんνにゅー θしーたαあるふぁ άκουγε όσα άκουσε εξαιτίας τたうωおめがνにゅー υπερβολικών εκφράσεών τたうοおみくろんυうぷしろん εναντίον τたうοおみくろんυうぷしろん κλήρου.

  Ē apodēmía tou apó tēn Elláda égine próxenos pollṓn ádikōn kríseōn gia prósōpa kai prágmata kai prṓta prṓta, gia tēn opoía égine lógos parapánō, tēs symperiphorás tou pros ton klḗro. An zoúse stēn Elláda kai erchótan se epikoinōnía me ton klḗro kai gnṓrize apó kontá óchi móno tis kakíes, allá kai tis aretés autoú, óchi móno tha synteloúse polý stē diórthōsē merikṓn apó ta kaká pou ypárchoun stēn Ekklēsía, allá kai den tha ákouge ósa ákouse exaitías tōn yperbolikṓn ekphráseṓn tou enantíon tou klḗrou.

• 英語えいご: His expatriation from Greece was a cause for many unjust judgements about situations and people and mainly for his behaviour towards the clergy, which was discussed above. If he had lived in Greece and been in contact with the clergy and known closely not only its turpitude but also its virtues, not only would he have contributed greatly to correcting some of the problems within the Church, but also would not have listened to all that he listened due to his exaggerated sentiments against the clergy.
• 日本語にほんご:彼かれのギリシャからの国外こくがい追放ついほうは状況じょうきょうや人々ひとびとについての多おおくの不ふ平等びょうどうな判断はんだんの原因げんいんとなり、また上述じょうじゅつしたような彼かれの聖職せいしょく者しゃへの態度たいどの主しゅたる原因げんいんとなった。もし彼かれがギリシャに住すみ、聖職せいしょく者しゃとかかわりを持もち、その悪徳あくとくのみならず美徳びとくをも具つぶさに知しっていたとしたら、彼かれは教会きょうかい組織そしき内ないのいくつかの問題もんだいを糾ただすことに大おおいに貢献こうけんしただけでなく、彼かれが聖職せいしょく者しゃに対たいする過度かどの感傷かんしょうからき入きいれてしまった全すべてのことをき入きいれることもなかっただろう。

関連かんれん項目こうもく

• コイネー
• デモティキ
• ダイグロシア