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ジャストインタイム生産システム - Wikipedia

ジャストインタイム生産せいさんシステム

カンバン方式ほうしきから転送てんそう

ジャストインタイム生産せいさんシステムジャスト・イン・タイム生産せいさんシステム(ジャストインタイムせいさんシステム、just-in-time, JIT)は、生産せいさん過程かていにおいて、かく工程こうてい必要ひつようもの部品ぶひんなど)を、必要ひつようときに、必要ひつようりょうだけ供給きょうきゅうすることで在庫ざいこ(あるいは経費けいひ)を徹底的てっていてきらして生産せいさん活動かつどうおこな技術ぎじゅつ体系たいけい生産せいさん技術ぎじゅつ)をいう[1]

日本にっぽんトヨタ自動車とよたじどうしゃにおいて豊田とよだ喜一郎きいちろうごう目的もくてき経営けいえい観点かんてんから導入どうにゅうした生産せいさん方式ほうしきとしてよくられている[1]トヨタ生産せいさん方式ほうしき)。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく自動車じどうしゃ業界ぎょうかいでもJIT(ジット)といえばこのことである。

概要がいよう

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トヨタ生産せいさん方式ほうしき基本きほんてきかんがかたは、やみくもな減量げんりょう経営けいえいではなく、かぎられたひと設備せつび在庫ざいこ効率こうりつてき生産せいさんおこなきりりょう経営けいえいである(そのため減量げんりょうではなくきりりょう表現ひょうげんされる)[2]

もののながれ(こう工程こうてい引取ひきと方式ほうしき

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工程こうていあいだ仕掛しかけ在庫ざいこ最少さいしょうおさえる究極きゅうきょくかたち完全かんぜん受注じゅちゅう生産せいさんである。しかし、生産せいさんのプロセスを場合ばあい、オーダーから出荷しゅっかまでのあいだにはすうおおくの工程こうてい存在そんざいし、それが結果けっかとしてリードタイム長時間ちょうじかんをもたらす。ニッチ製品せいひん場合ばあい顧客こきゃくがわちょうリードタイムをれる場合ばあいおおいが、一般いっぱんてき大量たいりょう生産せいさんしな場合ばあいちょうリードタイムはそのまま販売はんばい機会きかい損失そんしつつながる。そのため、ある程度ていど見込みこ生産せいさん発生はっせいするが、見込みこ生産せいさんりょうおおいことは、資金しきん投資とうしから回収かいしゅうまでの期間きかんながくするため、キャッシュ・フロー場合ばあい損失そんしつおおきい。また、販売はんばい不振ふしんによる商品しょうひんえが発生はっせいした場合ばあい多量たりょう仕掛しかけ在庫ざいこ損失そんしつ発生はっせいすることもある。

ジャストインタイム生産せいさん方式ほうしきこう工程こうてい引取ひきと方式ほうしきであり、こう工程こうてい必要ひつようとき必要ひつようりょうだけぜん工程こうていからものをり、ぜん工程こうていではられたものについてのち工程こうていから指示しじされたりょうだけ生産せいさんするというシステムである[3]

工程こうてい使つかったぶんだけぜん工程こうていつくらせる連鎖れんさむことで、工程こうていあいだ仕掛しかけ在庫ざいこ最少さいしょう実現じつげんすることにより生産せいさんコストの削減さくげんはかるのである。

情報じょうほうながれ(カンバン方式ほうしき

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ジャストインタイム生産せいさん方式ほうしきではこう工程こうていからぜん工程こうていへの生産せいさん指示しじひょうとしてカンバンばれる帳票ちょうひょう利用りようする。このカンバンは、こう工程こうていたいしては納品書のうひんしょとして加工かこうひんともわたされる。こう工程こうてい加工かこうひん使用しようされたらカンバンをぜん工程こうていもどす。ぜん工程こうていもどさいは、発注はっちゅうひょうとしてわたされ、このカンバンの受領じゅりょうもっぜん工程こうていでは製品せいひん加工かこうおこなう。

カンバン方式ほうしき連鎖れんさ問題もんだいてんは、販売はんばいがわから工場こうじょうはいるオーダーのカンバンをどこに投入とうにゅうするかである。カンバンのもど場所ばしょを「みせ」(MISE)といい、どこの工程こうていにカンバンをもどすかをめることを「みせかまえる」という表現ひょうげん使つかう。製造せいぞう上流じょうりゅうがわみせかまえる場合ばあい工程こうていあいだ仕掛しかけ在庫ざいこ最少さいしょうになるが顧客こきゃくへの引渡ひきわたしがおそくなる。完成かんせいひん出庫しゅっこがわみせかまえる場合ばあい製造せいぞう工程こうていすうおお製品せいひんになればなるほど製造せいぞう源流げんりゅうにカンバンがとどくまでの時間じかんようし、顧客こきゃくへの納期のうきまもるために源流げんりゅうがわ見込みこ生産せいさん発生はっせいすることがある。みせ上流じょうりゅう工程こうていからじゅんにアルファベットをもちいてつけられAてん,Bてん....とぶ。

電子でんしカンバン

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通常つうじょうもちいられるカンバンは、プラスチックせいであったりかみをラミネート(透明とうめいフィルムに封入ふうにゅう処理しょり)したりしたものがおおい。このようなカンバンは、実際じっさい使つかわれているカンバンすう素早すばや正確せいかく把握はあくすることが困難こんなんであったり、紛失ふんしつ長期間ちょうきかん使用しようによる損傷そんしょうなどの問題もんだいがあったりする。また、製造せいぞう工程こうてい工程こうていにわたる場合ばあいや、遠隔えんかく取引とりひき企業きぎょう場合ばあいなど、現物げんぶつのカンバンがやりりされることによる、上流じょうりゅう工程こうていへのカンバン伝達でんたつ時間じかんてきロスが発生はっせいし、さい上流じょうりゅうでカンバンに連動れんどうしない見込みこ生産せいさんおこなわれることがある。

カンバンが電子でんしされることの利点りてんは、

  • カンバン総量そうりょう把握はあく容易よういとなり、生産せいさんボリューム変動へんどうおうじたカンバンすう柔軟じゅうなん
  • 上流じょうりゅう工程こうていへのカンバン伝達でんたつのジャストインタイム

可能かのうとなる。

欠点けってんとして

  • トヨタ生産せいさん方式ほうしきひとつのはしらである「える」がとどこお可能かのうせいがある。

カンバンは「現場げんば作業さぎょうしゃ」があつかいでおこな必要ひつようがある。カンバンは工場こうじょうないでは「おかね」としてあつかわれる。電子でんしカンバンはいわば手形てがた取引とりひきのようなものになってしまい、現場げんばでの商品しょうひんのやりりが帳面ちょうめんじょう形骸けいがいになる可能かのうせいがある。

これをけるために実際じっさいにカンバン自身じしんがなくなることはく、カンバンにバーコード[4]をつけてそれをませることで電子でんしおこなったり、ICチップまれて、工場こうじょうないのどこにあるのかわかるようになっているものもある。

便びん係数けいすう

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カンバンのしから納品のうひんまでのタイムラグを「便びん係数けいすう」とう。たとえば1にちに1かい配達はいたつ発注はっちゅうしてから2にちかえってくる場合ばあい「1-1-2」といういいかたをし、「いちにちいち便びん2かいおくれ」とかたをする。ちなみに1にちに14便びんまえ便びん発注はっちゅうしたものがつぎ便びんかえってくる場合ばあいは「1-14-1」となる。

この便びん係数けいすうから、その物品ぶっぴん入手にゅうしゅできるリードタイムは「便びん係数けいすうだい1こうだい3こうわせ、だい2こうる」ことでもとめられる。

さきほどの「1-14-1」の場合ばあいは、1×1÷14=0.0714となる。稼動かどう時間じかんが1にち24あいだ場合ばあい、1.71あいだとなる。つまり、この物品ぶっぴんは1.71あいだのリードタイム以下いか生産せいさんしなければならないこととなる。

リスク・問題もんだいてん対策たいさく

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災害さいがい事故じこによる部品ぶひん不足ふそく

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在庫ざいこたないので、指示しじどおり部品ぶひん納入のうにゅうされない場合ばあい即座そくざ操業そうぎょう停止ていしするリスクがある。1979ねん昭和しょうわ54ねん)7がつ日本にっぽんざかトンネル火災かさい事故じこ1995ねん平成へいせい7ねん)1がつ阪神はんしん淡路あわじ大震災だいしんさい1997ねん2がつ発生はっせいしたアイシン精機あいしんせいきげん:アイシン刈谷かりや工場こうじょう火災かさいによる部品ぶひん入手にゅうしゅとどこおりによる自動車じどうしゃメーカー各社かくしゃ操業そうぎょう停止ていし[5]などがげられる。2011ねん平成へいせい23ねん)の東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしん東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい)では被害ひがいおおきい東北とうほく地方ちほう自動車じどうしゃよう部品ぶひん電子でんし部品ぶひん工場こうじょうおおかったことがわざわいした。部品ぶひん調達ちょうたつなんによって、直接ちょくせつ被害ひがいがなかった愛知あいちけん豊田とよだつつみ工場こうじょうにおいても、3月14 - 27にち操業そうぎょう停止ていし余儀よぎなくされた。2020ねんれい2ねん)より世界せかいひろがったコロナにより、日本にっぽん国外こくがいかく工場こうじょう定期ていきてきかつ長期ちょうきてき操業そうぎょう停止ていし余儀よぎなくされた。これらの教訓きょうくんから、そのは、リスクのたかいものから優先ゆうせんてき複数ふくすう発注はっちゅう体制たいせいえられている。

トラック物流ぶつりゅうにおける路上ろじょう駐車ちゅうしゃ

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大型おおがたしゃ路上ろじょう駐車ちゅうしゃとジャストインタイムとの関連かんれんについて、神奈川かながわけんトラック協会きょうかい指摘してきしている[6]。ジャストインタイムでは配達はいたつ時間じかん厳密げんみつ指定していされる[6]。このためトラックは到着とうちゃく時間じかん調整ちょうせい必要ひつようとなるが、おおくの場合ばあい荷主にぬし待機たいき場所ばしょ提供ていきょうしない[6]待機たいき場所ばしょがないため道路どうろじょう駐車ちゅうしゃ時間じかん調整ちょうせいをする大型おおがたトラックもおおく、道路どうろ交通こうつう障害しょうがいとなることが課題かだいとなっている[6]

「ジャスト・イン・ケース」への転換てんかん

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上記じょうきのコロナくわえ、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく軍事ぐんじてき台頭たいとうともな台湾たいわん有事ゆうじなどの危険きけんせい2022ねんロシアのウクライナ侵攻しんこう起因きいんする西側にしがわ諸国しょこくたい経済けいざい制裁せいさいては2023ねんパレスチナ・イスラエル戦争せんそうなどといった部品ぶひん資材しざいサプライチェーン供給きょうきゅうもう)が分断ぶんだんされる懸念けねんたかまっている。このため、調達ちょうたつさき自国じこくない同盟どうめい友好国ゆうこうこくえたり、在庫ざいこおおめに確保かくほしておく「ジャスト・イン・ケース」(まんいちそなえ)[7]志向しこうするうごきがている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 藤井ふじい春雄はるお『よくわかる「ジャスト・イン・タイム」のほん日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2009ねん、7ぺーじ 
  2. ^ 藤井ふじい春雄はるお『よくわかる「ジャスト・イン・タイム」のほん日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2009ねん、9ぺーじ 
  3. ^ 藤井ふじい春雄はるお『よくわかる「ジャスト・イン・タイム」のほん日刊工業新聞社にっかんこうぎょうしんぶんしゃ、2009ねん、7-8ぺーじ 
  4. ^ QRコード当初とうしょ電子でんしカンバンでの使用しよう念頭ねんとう日本電装にほんでんそう当時とうじ)で開発かいはつされた。
  5. ^ アイシン精機あいしんせいき工場こうじょう火災かさい(1997)~ - サイドローズ > データベース > 失敗しっぱいひゃくせん(2015ねん10がつ8にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d なぜ大型おおがたトラックはみちちゅうするのか たない追突ついとつ事故じこ」『毎日新聞まいにちしんぶん』2021ねん8がつ8にち2021ねん8がつ8にち閲覧えつらん
  7. ^ インタビュー:中曽なかそひろしさん(大和総研だいわそうけん理事りじちょうまえ日本銀行にっぽんぎんこうぜんふく総裁そうさい金融きんゆう危機ききまたるか/最悪さいあく想定そうてい安全あんぜんもう 地味じみ実務じつむ巧拙こうせつ 決定的けっていてき意味いみ朝日新聞あさひしんぶん朝刊ちょうかん2022ねん9がつ28にちオピニオンめん(2022ねん10がつ22にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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