キャンバス

キャンバス（英語えいご: canvas）とは、帆布ほぬのであり、油絵具あぶらえのぐやアクリル絵具えのぐを用もちいて描えがかれる支持しじ体たいに使用しようされる。

キャンバスは主おもに亜麻あまの繊維せんいから作つくられるが、大麻たいま、亜麻あまと大麻たいまの混こん織お、綿めん、合成ごうせい繊維せんいなどから作つくられる場合ばあいもある。使用しよう前まえに絶縁ぜつえんや地ち塗ぬりが施ほどこされ、枠わくに張はられるか、木きの板いたか厚紙あつがみに接着せっちゃくされる。現在げんざい画材がざい店みせで売うられているキャンバスは既すでに絶縁ぜつえんや地ち塗ぬりを施ほどこしてあるものが多おおく、木き枠わくに張はったものや厚紙あつがみに貼付ちょうふしたものもよく市販しはんされている。このように加工かこうを施ほどこした物ものも、単たんにキャンバスとも呼よぶので紛まぎらわしい。

帆布ほぬの、画布がふとも言いう。英語えいご canvasの語源ごげんは俗ぞくラテン語らてんご cannapaceus = 「麻あさに由来ゆらいするもの」であり、さらにギリシャ語ごで麻あさ（英語えいご: cannabis）を意味いみする Κάνναβις に遡さかのぼる^[1]。

カンヴァス、カンバスは単たんに表記ひょうきのゆれである。

歴史れきし

仮かり止とめしたキャンバスに描えがく画家がか。アールト・デ・ヘルデル画が(1685)

キャンバスはそれまでの板いた絵えに徐々じょじょに取とって代がわり、油彩ゆさいの支持しじ体たいとして最もっとも普及ふきゅうしたものとなった。キャンバスに描えがかれた油絵あぶらえとして最もっとも古ふるい作品さくひんの1つは、1410年ねんごろにフランスで描えがかれ、現在げんざいベルリンの絵画かいが館かんに所蔵しょぞうされている『マドンナと天使てんしたち』である。しかしながら、板いた絵えもイタリアでは16世紀せいき、北欧ほくおうでは17世紀せいきまで存続そんぞくしていた。画家がかアンドレア・マンテーニャやヴェネツィアの芸術げいじゅつ家かたちがキャンバスへの移行いこうを引ひき起おこした代表だいひょう的てきな存在そんざいである。伝承でんしょうによると、ヴェネツィアのような湿潤しつじゅんな気候きこうでは木きは傷いたみやすいので、画家がかたちは船用せんようの帆布ほぬのを用もちいるようになったといわれる。ヴェネツィアの帆布ほぬの＝キャンバスは簡単かんたんに入手にゅうしゅでき、品質ひんしつも優すぐれていると考かんがえられていた。

準備じゅんび

包つつみ張はりキャンバス

キャンバスは通常つうじょうは木きの枠わくにピンと張はられ、油絵具あぶらえのぐが直接ちょくせつキャンバスに触ふれて傷いたんでしまうのを防ふせぐために、使用しよう前まえの地ち塗ぬりが施ほどこされる。ジャクソン・ポロック、ケネス・ノーランド、フランシス・ベーコン、ヘレン・フランケンサーラー、ダン・クリステンセン（英語えいご版ばん）、ラリー・ゾックス（英語えいご版ばん）、ロニー・ランドフィールド（英語えいご版ばん）などの、カラーフィールド・ペインティング運動うんどうや叙情じょじょう的てき抽象ちゅうしょう（fr:abstraction lyrique）運動うんどうの画家がかたちは、損傷そんしょうのリスクを冒おかしてでもジェッソを施ほどこさない「素もとのキャンバス」に描えがくことがある。

今日きょうではキャンバスの製造せいぞうは工業こうぎょう化かされているが、伝統でんとう的てきな方法ほうほうで製作せいさくされたキャンバスを好このむ画家がかもいる。今日きょうの絵画かいが技法ぎほうと古典こてん的てきな画家がかのそれとの違ちがいの最もっとも大おおきなものの1つはキャンバスの準備じゅんびにある。「現代げんだい的てきな」技法ぎほうではキャンバスの織おり目め、肌理きめの利点りてんを引ひき出だすが、これは古典こてん的てき絵画かいがの写実しゃじつ性せいをほとんど不可能ふかのうにしてしまう。ルネサンス美術びじゅつの画家がかたちはキャンバスの織おり目めが目立めだたなくなるよう気きを使つかった。

通常つうじょうの枠わくに張はったキャンバスとは異ことなり側面そくめんでなく裏面りめんに止とめ金がねで固定こていされている「裏うら張はりキャンバス」というものもある。この種たねのキャンバスの利点りてんは側面そくめんがきれいなままなので縁えんまで塗ぬって絵えに取とり込こめることにある。