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スピン軌道相互作用 - Wikipedia

スピン軌道きどう相互そうご作用さようえい: Spin orbit couplingまれえい: Spin orbit interaction)とは電子でんしスピンと、電子でんし軌道きどうかく運動うんどうりょうとの相互そうご作用さようのこと。

相対そうたいろんてきあつかわれるディラック方程式ほうていしき相対そうたいろんてき量子力学りょうしりきがく)では自然しぜん導入どうにゅうされる概念がいねんである。スピン軌道きどう相互そうご作用さようにより、縮退しゅくたいしていた電子でんしエネルギー固有値こゆうち分裂ぶんれつする。

ゲッパート=マイヤーイェンセンは、原子核げんしかく問題もんだいについて、スピン軌道きどう相互そうご作用さよう導入どうにゅうしたから模型もけいもちいれば、そのじゅん分裂ぶんれつから、実験じっけんてきられていた安定あんていかくすう魔法まほうすう説明せつめいできることを発見はっけんし、ノーベルしょう受賞じゅしょうした。

原子げんしさいそとから電子でんしではスピン軌道きどう相互そうご作用さようによりスピン・軌道きどうかく運動うんどうりょうきがそろうことがある。常温じょうおん範囲はんいでは分裂ぶんれつしたじゅんくらい(LS多重たじゅうこうという)のなか最低さいていエネルギーをもつじゅん状態じょうたいがあるかくりつたかい。最低さいていエネルギーの多重たじゅうこうるためにフントの規則きそくとよばれる実験じっけんそく有効ゆうこうである。

古典こてんてき説明せつめい

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水素すいそ原子げんしない電子でんし陽子ようしのまわりを回転かいてんしているが、これを電子でんしうえっているひとからると、電子でんしのまわりを陽子ようし回転かいてんしているようにえる。回転かいてんしている陽子ようし円形えんけい電流でんりゅうとみなすことができ、ビオ・サバールの法則ほうそくにより、それは電子でんしじょう磁場じば つくる。その磁場じば電子でんしのスピンによる磁気じき双極そうきょくモーメント 作用さようする。この相互そうご作用さよう 比例ひれいする。 はスピンかく運動うんどうりょう 比例ひれいしている。一方いっぽう陽子ようしのつくる磁場じば 陽子ようし磁気じき双極そうきょくモーメント 比例ひれいし、その 陽子ようし軌道きどうかく運動うんどうりょう 比例ひれいしている。したがってこの場合ばあい電子でんし-陽子ようしあいだ相互そうご作用さようエネルギーは 比例ひれいする[1]

具体ぐたいてきひょうしき

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たま対称たいしょうポテンシャルなかでのいち電子でんしかんする、スピン軌道きどう相互そうご作用さよう HSO は、

 
 

l軌道きどうかく運動うんどうりょうsスピンかく運動うんどうりょうともに、 単位たんいとする)、  で、hプランク定数ていすうe電荷でんかm電子でんし質量しつりょうr電子でんし位置いち座標ざひょうc光速こうそくgg因子いんし真空しんくうちゅう自由じゆう電子でんし場合ばあいg = 2)である。φふぁいっきゅう対称たいしょうじょうでの電場でんじょうE(r) とする)にたいするスカラーポテンシャルで、

 

である。

ポテンシャルがたま対称たいしょう場合ばあいは、

 

となる。v電子でんし速度そくどE(r) はっきゅう対称たいしょうでない電場でんじょう

相対そうたいろんてきシュレーディンガー方程式ほうていしきたいし、もっと影響えいきょうおおきい相対そうたいろん効果こうかはスピン軌道きどう相互そうご作用さようこうなので、これを摂動せつどうこうとしてシュレーディンガー方程式ほうていしきれてかれることがある。

補足ほそく
うえげた電子でんし以外いがいに、原子核げんしかくかく陽子ようし中性子ちゅうせいし)もスピンをつので(かくスピン)、これらにかんしてのスピン軌道きどう相互そうご作用さよう存在そんざいする。

スピン軌道きどう分裂ぶんれつ

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スピン軌道きどう相互そうご作用さようHSOいち粒子りゅうしポテンシャルにくわわる場合ばあい摂動せつどうろんかんがえる。

一体いったいハミルトニアンH0 = T + U(r)固有値こゆうち問題もんだいくことによっていち粒子りゅうしじゅんEnlいち粒子りゅうし波動はどう関数かんすうRnl(r)Ylm(θしーた,φふぁい)がもとめられているとする。粒子りゅうしのスピンは1/2とする。

このような相互そうご作用さようがあると、スピンかく運動うんどうりょう 軌道きどうかく運動うんどうりょう 別々べつべつ量子りょうしすうになることができなくなり、全角ぜんかく運動うんどうりょうのみが量子りょうしすうになる。 としてはかく運動うんどうりょう合成ごうせいのりから  可能かのうである。

 

であるから、 期待きたい たいして  たいして られる。

どうみち積分せきぶん とおくと、 軌道きどう 軌道きどうのエネルギー となる。また n およびl によってあま変化へんかしないものとすれば、スピン軌道きどう分裂ぶんれつlおおきいほどおおきくなる。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ 砂川すなかわ重信しげのぶ量子力学りょうしりきがく岩波書店いわなみしょてん、1991ねんISBN 4000061399