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次元 (ベクトル空間) - Wikipedia

次元じげん (ベクトル空間くうかん)

ハメル次元じげんから転送てんそう

数学すうがくにおける、ベクトル空間くうかん次元じげん(じげん、えい: dimension)とは、その基底きてい濃度のうど、すなわち基底きていぞくするベクトルの個数こすうである。 種類しゅるい次元じげん(たとえばヒルベルト次元じげん)との区別くべつのため、ハメル次元じげんまたはだいすう次元じげんばれることもある。この定義ていぎは「任意にんいのベクトル空間くうかんは(選択せんたく公理こうり仮定かていすれば)基底きていつ」ことと「ひとつのベクトル空間くうかん基底きていは、どのふたつもかならおな濃度のうどつ」というふたつの事実じじつ依存いぞんしており、これらの事実じじつ結果けっかとして、ベクトル空間くうかん次元じげん空間くうかんたいして一意的いちいてきさだまる。からだ F うえのベクトル空間くうかん V次元じげんdimF(V) あるいは [V : F]あらわす(文脈ぶんみゃくから基礎きそとするからだ Fあきらかならばたんdim(V)く)。

ベクトル空間くうかん V有限ゆうげん次元じげんであるとは、その次元じげん有限ゆうげんであるときにいう。

ベクトル空間くうかん R3

 

基底きていち、したがって dimR(R3) = 3つ。より一般いっぱんに、dimR(Rn) = nち、さらに一般いっぱんに、任意にんいからだ Fたいして dimF(Fn) = nつ。

複素数ふくそすう全体ぜんたい Cじつベクトル空間くうかんでも複素ふくそベクトル空間くうかんでもあるが、それぞれの場合ばあいについて dimR(C) = 2 および dimC(C) = 1つ。したがって、次元じげん基礎きそとするからだかた依存いぞんするものである。

次元じげん0 のベクトル空間くうかんは、れいベクトルのみからなるベクトル空間くうかん {0} のみである。

いくつかの事実じじつについて

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ベクトル空間くうかん V部分ぶぶん線型せんけい空間くうかん Wたいして dim(W) ≤ dim(V)つ。

ふたつの有限ゆうげん次元じげんベクトル空間くうかんひとしいことをしめすのに、つぎ判定はんてい規準きじゅん利用りようできる。

V有限ゆうげん次元じげんベクトル空間くうかんWV部分ぶぶん線型せんけい空間くうかんとするとき、dim(W) = dim(V) ならば W = Vつ。

Rn標準ひょうじゅんてき基底きてい {e1, ..., en}つ。ただし ei単位たんい行列ぎょうれつだい i-れつ対応たいおうする。したがって Rn次元じげんn である。

からだ F うえ任意にんいふたつのベクトル空間くうかんは、その次元じげんひとしいならばたがいに同型どうけいである。それらの基底きていあいだ任意にんいぜんたんしゃはベクトル空間くうかんあいだぜんたんしゃ線型せんけい写像しゃぞう一意的いちいてき拡張かくちょうすることができる。集合しゅうごう Bあたえられたとき、F うえ次元じげん|B|B濃度のうど)であるようなベクトル空間くうかんを、つぎのようにつくることができる。写像しゃぞう f: BF で、有限ゆうげん例外れいがいのぞ Bかくもと bたいして f(b) = 0 となるようなものの全体ぜんたい F(B)り、もとごとのとスカラーばいによってこれらの写像しゃぞうあいだ加法かほうFもとによるスカラー乗法じょうほうさだめれば、それが初期しょきF-ベクトル空間くうかんである。

次元じげんについての重要じゅうよう結果けっかとして、線型せんけい写像しゃぞうたいする階数かいすう退化たいか次数じすう定理ていりげられる。

F/Kからだ拡大かくだいとすると、拡大かくだいたい Fとく部分ぶぶんたい K うえのベクトル空間くうかん構造こうぞうつ。さらに、任意にんいF-ベクトル空間くうかん VK-ベクトル空間くうかんることもできる。これらのベクトル空間くうかん次元じげん

dimK(V) = dimK(F) dimF(V)

なる関係かんけいによってむすばれている。とく任意にんいn-次元じげん複素ふくそベクトル空間くうかんじつベクトル空間くうかんとして次元じげん 2nつ。

ベクトル空間くうかん次元じげんについて、基底きてい濃度のうどおよび空間くうかん自身じしん濃度のうどかんするいくつか簡単かんたん公式こうしきられている。Vからだ F うえのベクトル空間くうかんとし、その次元じげんdim Vあらわすと

  • dim V有限ゆうげんならば |V| = |F|dimV
  • dim V無限むげんならば |V| = max(|F|, dim V)

などが成立せいりつする。

一般いっぱん

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ベクトル空間くうかんマトロイド特別とくべつ場合ばあいとみることができて、後者こうしゃにたいして次元じげん概念がいねん矛盾むじゅんなく定義ていぎすることができる。ぐんながおよびアーベルぐんのランクは、いずれもベクトル空間くうかん次元じげん同様どうようのさまざまな性質せいしつをもつ。

ヴォルフガンク・クルル (1899–1971) に由来ゆらいする、かわたまきクルル次元じげんは、たまきイデアルのぼりれつにおけるしん包含ほうがん関係かんけい個数こすうのうち最大さいだいのものとして定義ていぎされる。

トレースによる特徴とくちょうづけ

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ベクトル空間くうかん次元じげんは、その恒等こうとう作用素さようそトレースとして特徴付とくちょうづけることもできる。たとえば、

 

はトレースの定義ていぎからあきらかだが、一般いっぱんには有用ゆうようである。

まず、これにより自然しぜん意味いみでの基底きていをもたないがトレースが定義ていぎできると場合ばあいにも次元じげん概念がいねん定義ていぎすることができるようになる。たとえば代数だいすう A単位たんいしゃ ηいーた: KA および単位たんいしゃ εいぷしろん: AKつならば、合成ごうせいしゃ εいぷしろんηいーた: KK は「恒等こうとう変換へんかんのトレース」に対応たいおうするスカラー(いち次元じげん空間くうかんじょう線型せんけい作用素さようそ)であり、これによって抽象ちゅうしょう代数だいすうたいする次元じげん概念がいねんかんがえることができる。実用じつようじょうは、そう代数だいすうについて(単位たんいしゃ次元じげんった εいぷしろん ≔ (1/n)tr正規せいきして)この合成ごうせいしゃ恒等こうとう変換へんかんとなることを要求ようきゅうすることがある。この場合ばあいには正規せいき定数ていすう次元じげん対応たいおうすることになる。

また、無限むげん次元じげん空間くうかんじょう作用素さようそのトレースを定義ていぎすることもできる。この場合ばあい、(有限ゆうげんな)次元じげん存在そんざいしなくても(有限ゆうげんの)トレースを定義ていぎして、「作用素さようそ次元じげん」の概念がいねんかんがえることができる。これらは、ヒルベルト空間くうかんうえの「トレースクラス作用素さようそ」やもっと一般いっぱんバナッハ空間くうかんうえかく作用素さようそかんがかた該当がいとうする。

もうすこ一般いっぱんして、作用素さようそぞくのトレースを「ねじられた」時限じげん一種いっしゅかんがえることもできる。これは表現ひょうげんろんにおいて顕著けんちょあらわれる。表現ひょうげんろんにおける表現ひょうげん指標しひょうとは表現ひょうげんのトレースのことであるから、ぐん G うえのスカラー函数かんすう χかい: GK単位たんいもと 1 ∈ G における χかい(1)表現ひょうげん次元じげんということになる。これは表現ひょうげんによって単位たんいもとうつされるさき単位たんい行列ぎょうれつであること、すなわち

 

成立せいりつすることによる。そこで指標しひょうほか χかい(g) を「ねじられた」次元じげんかんがえることができて、次元じげんかんする主張しゅちょうたいして、「次元じげん」を指標しひょう表現ひょうげんえたアナロジーや一般いっぱんることができる。このようなものはモンスターぐんムーンシャイン現象げんしょう理論りろんにおいてしょうじる。j-変量へんりょうモンスターぐん無限むげん次元じげん次数じすうつき表現ひょうげん次数じすうつき次元じげんであるが、次元じげん指標しひょうえることによりモンスターぐんかくもとたいしてマッケイ=トンプソン級数きゅうすうあたえられる[1]

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Gannon, Terry (2006), Moonshine beyond the Monster: The Bridge Connecting Algebra, Modular Forms and Physics, ISBN 0-521-83531-3 

外部がいぶリンク

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