バリトン・ギター

バリトンギター（Baritone guitar）とは、ギターの亜種あしゅであり、通常つうじょうのギターより長ながいスケール長ちょう（ナットからブリッジまでの長ながさ）と通常つうじょうのギターより低ひくい音域おんいきがその特徴とくちょうである。

バリトン・ギター
各かく言語げんごでの名称めいしょう
英えい Baritone guitar 独どく Oktavbaritongitarre 仏ふつ Guitare baritone 伊い Chitarra baritono 中なか 男おとこ中ちゅう音吉おときち他ほか
分類ぶんるい
弦楽器げんがっき、ギター
音域おんいき
実音みお通どおり記き譜ふ その他た変則へんそく調律ちょうりつあり

バリトンギターを演奏えんそうするClifton Hyde

明確めいかくな定義ていぎは存在そんざいしない が、一般いっぱん的てきにフェンダー社しゃのエレクトリック・ギターの25.5インチよりも長ながい27-8インチ程度ていどのスケールを持もつギターを指さし、またその上限じょうげんは30インチ程度ていどまでである。

概要がいよう

1950年代ねんだいにダンエレクトロが発表はっぴょうした当時とうじにはそれほど脚光きゃっこうを浴あびることはなかったが、その後ごそのユニークなサウンドがビーチ・ボーイズの楽曲がっきょくのヒット( "Dance, Dance, Dance"や"Caroline, No")により注目ちゅうもくされた。その張はりのある音色ねいろを好このんだブライアン・ウィルソンが単音たんおんリフに使用しようする事ことが主おもであった。

以降いこうカントリーミュージックや映画えいがのサウンドトラック、特とくにマカロニウェスタンなどでそのサウンドが聴きかれるようになったが、この場合ばあいは"Tic-Tac Bass"と呼よばれるブリッジミュートを効きかせた音色ねいろが好このまれ、コントラバス等ひとしのベースラインをなぞる様ような演奏えんそう法ほうが用もちいられた。

米国べいこくではカントリー等ひとしに用もちいられる普遍ふへん的てきなものであり、パーツメーカーWarmothのレギュラーラインにバリトンのネックがある事ことが確認かくにんできる。これは通常つうじょう仕様しようのテレキャスターやストラトキャスターにネック交換こうかんという形かたちで取とり付つける事ことで28-5/8インチのバリトンになるというもの。フェンダー・カスタムショップ製せいのモデルが少数しょうすう生産せいさんされる事こともある。

現在げんざいでもその音色ねいろを好このむアーティスト達たちによって使用しようされている。フィンガースタイルでコードを押おさえ、親指おやゆびでベースラインを兼かねて行いくような奏法そうほう(Travis picking)を用もちいる奏者そうしゃが好このむ傾向けいこうがある。

ヘヴィメタルにおける使用しよう

特とくに90年代ねんだい以降いこうのヘヴィメタルの分野ぶんやで、低てい域いきを駆使くししたサウンドが欲ほしいときに使つかわれることが増ふえてきた。低てい音域おんいきのギターサウンドが欲ほしいときには、通常つうじょうのギターをダウンチューニングする事ことが一般いっぱん的てきだが、ある程度ていど以上いじょうになると弦つるのテンションの確保かくほが難むずかしく、また、7弦げんギターや8弦げんギターなどの多た弦つるギターを使用しようすると、コードフォームがノーマルギターと違ちがってくる、ネックの幅はばが通常つうじょうのギターより広ひろくなることなどから演奏えんそうが難むずかしくなる。そういう理由りゆうから、通常つうじょうのギターと同おなじコード・フォームで弾はじけるバリトンを選択せんたくするのである。

• メタリカのジェームズ・ヘットフィールドは、自身じしんの名なを冠かんしたモデルを出だしていて("James Hetfield Signature Grynch"、ESP社しゃのモデルでギブソン・SGに準じゅんじた"Viper"シェイプ、27インチ)、アルバム『セイント・アンガー』でそのサウンドを聴きくことができる。
• マシーン・ヘッドのロブ・フリンはエピフォンのシグネチュアモデルのバリトンを使用しようしている(Epiphone Baritone Flying V "Love/Death"、27インチ)。
• 数すう多おおくの7弦げん、8弦げんギターがバリトン・スケールを採用さいようしており、8弦げんギターにおいては寧むしろ通常つうじょうの25.5インチ以下いかは稀まれである。

調律ちょうりつ

通常つうじょうのギターの調律ちょうりつから長ちょう三さん度ど(4フレット分ぶん)下さげた「C–F–B♭–E♭–G–C」や完全かんぜん四よん度ど(5フレット分ぶん)下さげた「B-E-A-D-F#-B」、完全かんぜん五ご度ど(7フレット分ぶん)下さげた「A-D-G-C-E-A」が使用しようされ、特とくに明確めいかくな決きまりはない。しかし、フェンダー・ベースVIのようにノーマル・チューニングのギターを1オクターブ下さげた「E-A-D-G-B-E」の場合ばあい、6弦げんから3弦げんはノーマル・チューニングの4弦げんベースと同おなじピッチになることから、ピッチのみに着目ちゃくもくすれば「1オクターブ下さげたギター＝ベース」と考かんがえることができ、いわゆる多た弦つるベースとの区別くべつが曖昧あいまいになってしまう。

一方いっぽう、多彩たさいなゲージを発売はつばいしていることで知しられるアーニーボール(ERNIE BALL)社しゃでは、「ダウンチューニングした際さいでも適切てきせつな弦つるのテンションを保たもつことができる」としている「Not Even Slinky」(太ふとさは、1弦げんから.12,.16,.24P,.32,.44,.56)を「Electric Guitar Strings」に分類ぶんるいし、「6-String Baritone Slinky」(太ふとさは、1弦げんから.13,.18,.30,.44,.56,.72)を「Electric Bass Guitar String」に分類ぶんるいしている。

フェンダー社しゃは25.5インチスケール、ギブソン社しゃは24.75インチスケールの製品せいひんが多おおく、バリトン・ギターのスケールは28インチ前後ぜんこうのものが多おおいことを考慮こうりょすると「6-String Baritone Slinky」は4度どから5度ど下さげのチューニングを想定そうていしているものと推定すいていできる。

主おもなバリトンギター機種きしゅ

• Danelectro Baritone Electric 6 String Hodad (27.75インチ)
• Danelectro Neptune Longhorn Bass 6 (30インチ)
• Ernie Ball Silhouette Baritone 6 string (29-5/8インチ)
• Fender Bajo Sexto Telecaster (28.5インチもしくは30-1/4インチ)
  • メキシコ音楽おんがくで用もちいられる"Bajo Sexto"ギター(スペイン語ごで"Bass Six"の意い)のエレクトリック版ばんである
• Fender Bass VI (30インチ)
• Fender Jaguar Baritone Custom (28.5インチ)
• Fender Jaguar Baritone Special HH (27インチ)
• Fender Sub-Sonic Baritone Stratocaster (27インチ)
• Gretsch G6144 Spectra Sonic Baritone (29-1/4インチ)
• Hagström Viking Baritone (28インチ)

ヘヴィメタルに使用しようされる機種きしゅ

• 26.5インチ (673.2 mm)
  • Ibanez RGDシリーズ、7弦げんモデルのみ存在そんざい
  • Jackson いくつかの7・8弦げんモデル (DKA7, DKA8, SLATTXMGQ3-7, およびSLATFXQMG 3-8)
  • Schecter 7弦げんモデル
• 27インチ (686 mm)
  • ESP Stephen Carpenter baritone models
  • Gibson Buckethead Signature Les Paul (24フレットのレス・ポール)
  • Ibanez RG "XL"シリーズ 6弦げん・7弦げんモデル
  • Ibanez RG2228 8弦げんギター (F#-B-E-A-D-G-B-E)
  • Jackson B7 7弦げんおよび B8 8弦げんギター
• 28インチ (711 mm)
  • Schecter 8弦げんモデル
• 29.4インチ (749 mm)
  • Ibanez Meshuggah signature 8弦げんギター M8M and M80M
• 30インチ (762 mm)
  • Agileが30インチを上限じょうげんとしたモデルを用意よういし、カスタムメイドを受うけ付つけている。