ピアース (ISS)

ピアース・ドッキング室しつ(The Pirs docking compartment)は、国際こくさい宇宙うちゅうステーション（ISS）のロシアのモジュール。ピアース（Пирс：ロシア語ごで「埠頭ふとう」を意味いみする）、またはスティカヴァチヌイ・オステク1（Стыковочный отсек：ロシア語ごで「ドッキング室しつ」）、または英語えいごの頭文字かしらもじをとって「DC-1」、ロシア語ごの頭文字かしらもじを取とって「SO-1」とも呼よばれる。

初期しょきのISS計画けいかくで予定よていしていた、ロシアの2つのドッキングモジュールのうちの1つで、2001年ねん 9月に打うち上あげられた。ISSの居住きょじゅう・生命せいめい維持いじモジュールであるズヴェズダにドッキングして、エアロック・補給ほきゅう船せんのドッキングポートとして活用かつようされてきた。

2021年ねん7月がつ26日にち、多目的たもくてき実験じっけんモジュール（MLM）ナウカ（Nauka）へドッキングポートを譲ゆずるため、無人むじん宇宙うちゅう補給ほきゅう機きプログレスMS-16と共ともに大気圏たいきけんに投棄とうきされ、20年ねんにわたる長期ちょうきの任務にんむを終おえた^[1]。

概要がいよう

ピアース内ないの第だい10次じ長期ちょうき滞在たいざいチーム

RKKエネルギアにて整備せいび中ちゅうのピアース

ピアースには2つの主要しゅような機能きのうがある。ひとつはISSへの宇宙船うちゅうせんや貨物かもつ船せんのためのドッキング装置そうちであり、もうひとつは2人ふたりのISS宇宙うちゅう飛行ひこう士しがロシアのオーラン宇宙うちゅう服ふくを着きて宇宙うちゅう遊泳ゆうえいのために出入でいりするエアロックである。アメリカ区画くかくのエアロックであるクエストからでもオーラン宇宙うちゅう服ふくでの出入でいりに対応たいおうしているが、ロシアが管理かんりするモジュールに関かんして船ふね外がい活動かつどうをおこなうときは、ピアースを利用りようして実施じっしすることが原則げんそくとなっている。

またピアースは、ドッキングしているプログレスM補給ほきゅう船せんの推進すいしん剤ざいタンクから、ズヴェズダの推進すいしんシステムかザーリャ機能きのう的てき貨物かもつブロックへ推進すいしん剤ざいを補給ほきゅうすることができる。また反対はんたいに、ズヴェズダとザーリャから、ドッキング中ちゅうのプログレスの推進すいしんシステムへ推進すいしん剤ざいを補給ほきゅうすることもできる。

設計せっけいと製造せいぞう

ピアースは、RKKエネルギアによって製造せいぞうされた。ドッキング室しつは、ミール宇宙うちゅうステーションで使つかわれたミールドッキングモジュールと少すこし似にており、ソユーズTMA宇宙船うちゅうせんやプログレスM補給ほきゅう船せんとのドッキング装置そうちを備そなえている。

打うち上あげ

ピアースは2001年ねん9月14日にちに、ISS組立くみたてミッション4Rとして、ロシアのソユーズU ロケットで打うち上あげられ、プログレスM-SO1の推進すいしんモジュールを使用しようしてズヴェズダサービスモジュールの底そこ側がわ（地球ちきゅうに面めんした）結合けつごう部ぶに2001年ねん9月16日にちにドッキングし、第だい3次じ長期ちょうき滞在たいざいクルーが3回かいの船ふね外がい活動かつどうで接続せつぞく作業さぎょうを行おこなった。

歴史れきし

ISS-65 ISS側がわから見みたピアース分離ぶんり動画どうが

2001年ねんにISSのロシア区画くかくが再さい見直みなおしされたとき、新あらたな計画けいかくからは「SO-2」（もうひとつのドッキングモジュール）がキャンセルされ、製造せいぞうは中止ちゅうしされた。^[2]当初とうしょの計画けいかくでは「SO-2」がISSに設置せっちされると、ピアースは廃棄はいきされて大気圏たいきけん突入とつにゅうする予定よていだった。しかし「SO-2」は資金しきん不足ふそくのために製造せいぞう中止ちゅうしされ、計画けいかくから削除さくじょされたため、代かわりにピアースが使つかわれ続つづけることになった。

なお、このDC-2（SO-2）はその後ごMRM-2と名称めいしょうを変更へんこうし、2009年ねん11月に打うち上あげられて、ズヴェズダの上部じょうぶに結合けつごうした。多目的たもくてき実験じっけんモジュール(MLM)には(有人ゆうじん対たい応用おうようの)エアロック機能きのうはないため、MRM-2がDC-1の機能きのうを引ひき継つぐ。

ISSの一部いちぶとしてのピアースの設計せっけい寿命じゅみょうは5年ねんであり、寿命じゅみょうを大幅おおはばに越こえていることやISSロシア区画くかくの拡張かくちょうの都合つごう上じょう、2021年ねん7月がつ26日にちに多目的たもくてき実験じっけんモジュール(MLM)へドッキングポートを譲ゆずるために分離ぶんりして大気圏たいきけんに投棄とうきされた。分離ぶんりしたピアースとプログレスMS-16は大気圏たいきけん再さい突入とつにゅうを行おこない南太平洋みなみたいへいよう上空じょうくうで破壊はかいが確認かくにんされた^[3]。