フレット

フレット（英えい: fret）とは、弦楽器げんがっきの指ゆび板ばんにある隆起りゅうきであり、指ゆびの位置いちを固定こていし、目的もくてきの音おと高だかを出だすために使用しようされるもの。 琵琶びわでは「柱はしら（じ）」と呼よんでいる。

ギターの指ゆび板ばんのネック寄よりの部分ぶぶん。最初さいしょの4つのフレットが見みえる。薬指くすりゆびは第だい2フレットと第だい3フレットの間あいだを押おさえている。

フレットのある状態じょうたいやその状態じょうたいの楽器がっきは「フレッティド、フレッテド　英語えいご: Fretted」と分類ぶんるいされる。

なお、弦楽器げんがっきのすべてがフレットを備そなえるわけではない。撥ばち弦楽器げんがっきはフレットを備そなえることが多おおい。擦こす弦楽器げんがっきはフレットを備そなえないことは多おおいが一部いちぶにフレットを備そなえる擦こす弦楽器げんがっきもある。

逆ぎゃくにフレットが無ない状態じょうたいやそのような弦楽器げんがっきは「フレットレス 英語えいご: Fretless」と分類ぶんるいされる。

概要がいよう

フレットの長所ちょうしょと短所たんしょ

近きん現代げんだいの西洋せいよう弦楽器げんがっきでは、フレットは指ゆび板ばんにはめ込こまれた金属きんぞく性せいの隆起りゅうき（針金はりがね状じょうのパーツ）である。リュートなどの古楽こがく器きや非ひ西洋せいようの楽器がっきではネックの周まわりにガットやひもを巻まき、フレットとする場合ばあいもある。フレットを持もつ楽器がっきでは、弦つるを押おさえると、弦つるの振動しんどうする長ながさは、押おさえた指ゆびの位置いちから最もっともブリッジ寄よりのフレットとブリッジとの間あいだに制限せいげんされる。その結果けっか、音おとの高たかさが変かわる。フレットはこのように弦つるの振動しんどう部分ぶぶんの遠とお位くらい端はしを明確めいかくに区切くぎる。撥ばち弦楽器げんがっきでは、柔やわらかな指ゆびで直接ちょくせつ弦つるを押おさえると音おとの減衰げんすいが速はやくなるため、フレットがあることは重要じゅうようである。もう一ひとつのフレットの利点りてんは、比較的ひかくてき正ただしい音程おんていを出だしやすくなることで、和音わおんを演奏えんそうする際さいにはさらにそれが際立きわだつ。

一方いっぽう、フレットがあると、フレットの位置いちによって決きまる調律ちょうりつ法ほうに縛しばられてしまう。それでも、ある程度ていどの微ほろ調整ちょうせいは可能かのうで、例たとえば弦つるを横よこに引ひくと張力ちょうりょくが増まして音おとが高たかくなる。この技法ぎほうはロック及およびジャズのギタリストが用もちいるし、シタールなど、インド音楽おんがく文化ぶんか圏けんの弦楽器げんがっきでは極きわめて重要じゅうようである。フレットの指ゆび板ばんからの高たかさが高たかい楽器がっきでは、弦つるを押おす力ちからで音程おんていを調節ちょうせつすることができる（琵琶びわも参照さんしょう）。ブリッジ側がわに弦つるを引ひくこともでき、音程おんていが下さがる。逆ぎゃくに糸巻いとまき側がわに引ひくと音程おんていが上あがる。また、エレキギターでは、駒こまの側がわに弦つるの張力ちょうりょくを変化へんかさせて音おとの高たかさを変かえる機構きこうを持もっているものがある。しかし、大幅おおはばに張力ちょうりょくを変かえられるシタールなどを除のぞいては、音程おんていをコントロールできる幅はばはフレットのない楽器がっき（フレットレス、英語えいご: Fretless）には及およばない。

琵琶びわにおける「柱はしら」

清しん代だいの中国ちゅうごく琵琶びわ

日本にっぽんの琵琶びわとして知しられる盲めくら僧そう琵琶びわ、薩摩琵琶さつまびわ、筑前ちくぜん琵琶びわは高たかいフレット（柱はしら）を持もっており、それだけ弦つるを押おし込こむことができ、張力ちょうりょくを変化へんかさせることにより音程おんていを調節ちょうせつできる範囲はんいが広ひろいのに対たいし、中国ちゅうごくの琵琶びわはフレットを増ふやして、楽器がっきとしての機能きのう向上こうじょうによって表現ひょうげん力りょくを高たかめる工夫くふうがなされている。日本にっぽんではむしろ柱はしらを増ふやさず、場合ばあいによっては減へらし、その分ぶん演奏えんそう者しゃの技倆ぎりょうをできるだけ活いかして微妙びみょうな演奏えんそうを行おこなうことを好このんだ。

フレットの調律ちょうりつ原理げんり

西洋せいよう弦楽器げんがっきにおけるフレット

近きん現代げんだいの西洋せいよう弦楽器げんがっきのフレットは、一般いっぱんに十じゅう二に平均へいきん律りつに調律ちょうりつされている。即すなわちオクターブを12個この半音はんおんに分わけ、それぞれの周波数しゅうはすう比ひが同一どういつになるようになっている。隣となり合あった二ふたつの半音はんおんの周波数しゅうはすう比ひは ${\sqrt[{12}]{2}}$ （約やく 1.059463 ）であり、理論りろん的てきにはフレットもその間隔かんかくで並ならび、12番目ばんめのフレットは弦つるを二に等分とうぶんする場所ばしょにくる。実際じっさいには、弦つるを押おさえる時ときの張力ちょうりょく増加ぞうかを見込みこんで若干じゃっかん糸巻いとまき側がわになる。

つまり流通りゅうつうしている一般いっぱん的てきな弦楽器げんがっきのフレットは純正じゅんせい律りつの音おとを出だせない。

純正じゅんせい律りつ用ようのフレットの発案はつあん・実現じつげん

フレットが常つねに十じゅう二に平均へいきん律りつに固定こていされていることに憤慨ふんがいしたギタリスト、マーク・シュナイダーは純正じゅんせい律りつの作品さくひんを完全かんぜんに演奏えんそうできる為ためにさまざまに弦つる毎ごとのフレットの位置いちが点在てんざいするフレットボードを発案はつあんした。これでF♯とG♭の弾びき分わけが出来できるようになり、画期的かっきてきな発明はつめいとされている。これを用もちいて、ラリー・ポランスキーなどの幾いく人にんかの作曲さっきょく家かが新作しんさくを発表はっぴょうした。

他たの発明はつめい・工夫くふう

近年きんねんでは日本にっぽんのギターメーカーのフジゲンが独自どくじの技術ぎじゅつとして「サークル・フレッティング・システム」※という技術ぎじゅつを投入とうにゅうするなど、フレットに関かんして様々さまざまな工夫くふうがなされている。（※　弦つるはナット側がわ（ネック側がわ）が狭せまく、ブリッジ側がわが広ひろがっている（微妙びみょうに放射状ほうしゃじょうになっている）ことにともない音程おんていに微妙びみょうな誤差ごさが生しょうじていることを無なくすために、一種いっしゅの円周えんしゅうに位置いちするようにわずかに位置いちにあわせた曲きょく率りつで曲まがったフレットを用もちいるというもの。）