ラ・モンテ・ヤング

ラ・モンテ・ヤング (La Monte Young、1935年ねん10月14日にち - ) は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの現代げんだい音楽おんがくの作曲さっきょく家か。

ラ・モンテ・ヤング La Monte Young
ラ・モンテ・ヤング（1961年ねん）
基本きほん情報じょうほう
生誕せいたん	(1935-10-14) 1935年ねん10月14日にち（88歳さい）
出身しゅっしん地ち	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく アイダホ州しゅうバーン
ジャンル	ドローン・ミュージック ジャズ ミニマル・ミュージック 実験じっけん音楽おんがく
職業しょくぎょう	作曲さっきょく家か、ミュージシャン、芸術げいじゅつ家か
担当たんとう楽器がっき	サクソフォーン
活動かつどう期間きかん	1958年ねん -
共同きょうどう作業さぎょう者しゃ	シアター・オブ・エターナル・ミュージック マリアン・ザジーラ パンディット・プラン・ナート テリー・ライリー シャルルマーニュ・パレスタイン Just Alap Raga Ensemble トニー・コンラッド Jung Hee Choi ジョン・ハッセル フィル・ニブロック リース・チャタム マイケル・ハリソン ヘンリー・フリント ベン・ニール チャールズ・カーティス ジョン・ケイル キャサリン・クリスター・へニックス
公式こうしきサイト	melafoundation.org

人物じんぶつ

活動かつどう初期しょきからドローンのみに執着しゅうちゃくする特異とくいな作品さくひんを書かき、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごのアヴァンギャルド音楽おんがくあるいは実験じっけん音楽おんがくにおける、極きわめて重要じゅうような作曲さっきょく家かのひとりである。フルクサス (Fluxus) に影響えいきょうされた作品さくひんとミニマル音楽おんがく作品さくひんの双方そうほうにおいて、音楽おんがくの本質ほんしつは何なにかと問とい、通常つうじょうは用もちいられない特殊とくしゅな演奏えんそう要素ようそにしばしば比重ひじゅうをおいている。フィリップ・グラス、スティーヴ・ライヒ、テリー・ライリーと並ならんで、四よん大だいミニマル音楽おんがく作曲さっきょく家かのひとりとして名高なだかいものの、必かならずしも単一たんいつフィギュアの繰くり返かえしではなく、とどまる単音たんおんやドローンそのものなので、スペクトル楽らく派はより先駆せんく的てきに倍音ばいおんを駆使くししたシェルシ、楽曲がっきょくにモードと記しるしたにもかかわらず期きせずしてセリエル音楽おんがくの先駆せんく者しゃになったメシアン、セリーではない十じゅう二に音おと技法ぎほうの先駆せんく者しゃのヨーゼフ・マティアス・ハウアーのように、ミニマリズムというよりはドローン・ミュージックの教祖きょうそとして持もち上あげられることが多おおい。

経歴けいれき

アイダホ州しゅうバーンのモルモン教きょう徒との家いえに生うまれた。父親ちちおやが職しょくを転々てんてんとしたため、幼少ようしょう時じには転居てんきょを繰くり返かえしたが、結局けっきょくロスアンゼルスに落おち着ついた。ロサンゼルス・シティー・カレッジ で学まなび、優すぐれたサクソフォーン奏者そうしゃとして、エリック・ドルフィーが行おこなった学生がくせいジャズ・バンド・オーディションで頭角とうかくを現あらわした。ドルフィーだけではなく、オーネット・コールマン、ドン・チェリー、ビリー・ヒギンズのサイドマンとしても吹ふいた。

その後ご、カリフォルニア大学だいがくロサンゼルス校こう (UCLA) 、ついでカリフォルニア大学だいがくバークレー校こう (UCB) に入学にゅうがくして音楽おんがくを学まなんだ。また、リチャード・マクスフィールドと共ともに電子でんし音楽おんがくを学まなび、ダルムシュタットでカールハインツ・シュトックハウゼンが開ひらいた夏期かきコースにも参加さんかした。この間あいだに、サクソフォーンの演奏えんそうは事実じじつ上じょう諦あきらめ、作曲さっきょくに専念せんねんするようになった。アントン・ウェーベルンに加くわえ、グレゴリオ聖歌せいかや他たのさまざまな異い文化ぶんかの音楽おんがくに影響えいきょうされた。例たとえばインド古典こてん音楽おんがく、インドネシアのガムラン音楽おんがくである。こういった音楽おんがくへの関心かんしんおよび、音楽おんがくの間あいだを自分じぶんの耳みみでき取きとりたいという願ねがいから、1970年ねんからはプラン・ナートの下したで学まなぶようになった（他ほかにも妻つまマリアン・ザジーラ、作曲さっきょく家かのテリー・ライリーらが参加さんかした）。

特徴とくちょう

ヤングの初期しょきの作品さくひんはアルノルト・シェーンベルクの十じゅう二に音おと技法ぎほうを主おもにしている（LAでシェーンベルクの教授きょうじゅをうけたことがある）が、その幾いくつかは後のちに作曲さっきょく家か自身じしんの手てで破棄はきされた。ダルムシュタットではシュトックハウゼンを介かいしてジョン・ケージを知しるようになり、音楽おんがくの理論りろん面めんに興味きょうみを深ふかめることとなった。また、非ひ西洋せいよう音楽おんがくの影響えいきょうで、ドローンを取とり入いれるようになった。

フルクサス運動うんどうに関かかわった後のち、1960年ねん、最もっとも良よく知しられた作品さくひん群ぐん「コンポジションズ 1960」を書かいた。作品さくひんでは、演奏えんそう会場かいじょうそのものを音楽おんがく要素ようそとして強調きょうちょうした「直線ちょくせんを描えがきそれを辿たどれ」、「火ひをおこせ」、「蝶ちょうを放はなて」などの、演奏えんそう者しゃには通常つうじょうの楽譜がくふの代かわりにユニークな指示しじが書かいてある。

他たの作品さくひんとしては、ピアノを用もちいたものがある。演奏えんそう者しゃはピアノを一番いちばん近ちかい壁かべまで押おすことが要求ようきゅうされる。壁かべを越こえて押おしていけるなら、押おし続つづける。そうでなければ、疲つかれ果はてたので一度いちど休やすみ、放尿ほうにょうすることが指示しじされている。この作品さくひんにおいても、ピアノの移動いどうには持続じぞく音おんがついて回まわるので、聴衆ちょうしゅうは結果けっか的てきにドローンのみの音響おんきょうを聴きくことになる。

ヤングはもっと一般いっぱん的てきな曲きょくも書かいていた。初期しょきの作品さくひんの中なかでよく知しられた物ものに「弦楽器げんがっきのための三重奏さんじゅうそう」(1958年ねん)がある。発表はっぴょう当時とうじは大変たいへん斬新ざんしんな作品さくひんと考かんがえられていたが、現在げんざいではヤングとしては保守ほしゅ的てきな作品さくひんと見みられている。セリーを用もちいてはいるものの、厚あつく複雑ふくざつな音楽おんがくを構成こうせいする技法ぎほうのほうが目立めだつ。緩ゆるやかで総体そうたいとしては静しずかな音楽おんがくであり、ドローンで満みちている。

ヤングが最初さいしょに純正じゅんせい律りつでドローンに基もとづいた曲きょくを書かいたのは1962年ねんのことである。「高圧こうあつ送電そうでん線せんの降圧こうあつ用よう変電へんでん器きが見みる第だい2の夢ゆめ (The Second Dream of the High-Tension Line Stepdown Transformer)」というタイトルで、これはまた電子でんし音楽おんがく作品さくひんとしても彼かれの最初さいしょのものである。「The Four Dreams of China」の中なかの一ひとつの作品さくひんは周波数しゅうはすう比ひ「24:32:35:36」の4つの音おと(G、C、+Cis、D）からなり、音おとの組くみ合あわせも制限せいげんした。これ以降いこうの作品さくひんはいくつかの選択せんたくされた周波数しゅうはすうで演奏えんそうされる時間じかん的てきに持続じぞくしたドローンに基もとづくようになり、その上うえに持続じぞく音おんの一群いちぐんが現あらわれ消きえる。「The Four Dreams of China」のためにヤングは「夢ゆめの家いえ (Dream House)」を計画けいかくした。一いち日にち24時間じかんいつでも音楽家おんがくかが住すみ音楽おんがくを創造そうぞうできるような光ひかりと音響おんきょうの装備そうびである。これらを実現じつげんするべく、シアター・オブ・エターナル・ミュージックを創立そうりつした。グループには最初さいしょ、妻つまのマリアン・ザジーラが参加さんかしていた。彼女かのじょは照明しょうめいを用もちいたショー「The Ornamental Lightyears Tracery」を提供ていきょうした。1965年ねんからはアンガス・マクリーズとビリー・ネームが参加さんかした。1964年ねんにはヤング、歌うたのザジーラの他ほかに弦つるのジョン・ケイルとトニー・コンラッドが参加さんかし、時々ときどき歌うたでテリー・ライリーも参加さんかした。1966年ねんからは「夢ゆめの劇場げきじょう」を実現じつげんしたが、金銭きんせん問題もんだいで頓挫とんざした。

作品さくひんのほとんどには長大ちょうだいなタイトルがつけられている。たとえば、「緑色みどりいろで鋸歯きょしのオセロットと高圧線こうあつせん降圧こうあつ交流こうりゅう器き、製材せいざい所しょに照てらされ、旋風せんぷうと黒曜石こくようせきのゴングの夢ゆめで明あきらかにされた聖せいなる数字すうじのドローンを想起そうきさせるカメ。 (The Tortoise Recalling the Drone of the Holy Numbers as they were Revealed in the Dreams of the Whirlwind and the Obsidian Gong, Illuminated by the Sawmill, the Green Sawtooth Ocelot and the High-Tension Line Stepdown Transformer.)」。同様どうように、その作品さくひんはしばしば極きわめて長大ちょうだいである。始はじまりも終おわりもなく、目めの前まえの演奏えんそうが始はじまる前まえから存在そんざいし、それが終おわっても存在そんざいするような曲きょくが多おおい。

傑作けっさくとして知しられる、本人ほんにんの第だい7倍ばい音おんへのこだわりによる純正じゅんせい律りつで調律ちょうりつされた独奏どくそうピアノのための作品さくひん、「よく調律ちょうりつされたピアノ」は、作者さくしゃ本人ほんにんの演奏えんそうに従したがうと6時じ間あいだを超こえる長ながさにまでなる。厳格げんかくに構成こうせいされたインプロヴィゼーションの例れいであり、数学すうがく的てき作曲さっきょく法ほうとヒンドゥー古典こてん音楽おんがくの演奏えんそうに強つよく影響えいきょうされている。これはアメリカにおけるミニマル音楽おんがくの中なかで特とくに優すぐれたものの一ひとつである。この作品さくひんの演奏えんそうに際さいし、ヤングは必かならずベーゼンドルファーのインペリアルを使つかうように念ねんを押おしている。スタインウェイ全盛ぜんせいの北米ほくべい圏けんに対たいする、ささやかなアンチテーゼのようにも映うつる。

主要しゅよう作品さくひん

• 弦楽げんがく三さん重奏じゅうそう曲きょく
• コンポジションズ1960
• よく調律ちょうりつされたピアノ

影響えいきょう

ヤングは、即興そっきょう音楽おんがくのジャンルを越こえて幅広はばひろい層そうへ大おおきな影響えいきょうを与あたえた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドにおけるジョン・ケイルの貢献こうけんに始はじまり、彼かれ自身じしんのフォロワーであるトニー・コンラッド、ジョン・ハッセル、リース・チャタム、マイケル・ハリソン、ヘンリー・フリント、キャサリン・クリスター・へニックス、ヨシ・ワダといった人々ひとびとに及およぶ。ランディ・ノードショウ (Randy Nordschow)のエレクトリック・ボウとピアノと二人ふたりの奏者そうしゃのための作品さくひんでは、エレクトリック・ボウの使用しようによりピアノの持続じぞく音おんを無限むげんに引ひき伸のばすことができるが、これもヤングの影響えいきょう抜ぬきには語かたれないであろう。

著書ちょしょ

• Young, La Monte, ed. 1963. An Anthology of Chance Operations. New York: La Monte Young & Jackson Mac Low.

関連かんれん文献ぶんけん

• Duckworth, William. 1995. Talking Music: Conversations with John Cage, Philip Glass, Laurie Anderson, and Five Generations of American Experimental Composers. New York: Schirmer Books; London: Prentice-Hall International. ISBN 0-02-870823-7 Reprinted 1999, New York: Da Capo Press. ISBN 0-306-80893-5
• Eno, Brian, and Russell Mills. 1986. More Dark than Shark. London: Faber & Faber. ISBN 0-571-13883-7
• Ghosn, Joseph. 2010. "La Monte Young". Marseilles, France : Le Mot Et Le Reste.
• Grimshaw, Jeremy. 2005. "Music of a 'More Exalted Sphere': Compositional Practice, biography, and Cosmology in the Music of La Monte Young." Doctoral dissertation, Eastman School of Music. Ann Arbor: UMI/ProQuest.
• Herzfeld, Gregor. 2007. Zeit als Prozess und Epiphanie in der experimentellen amerikanischen Musik. Charles Ives bis La Monte Young. Stuttgart: Franz Steiner Verlag, 285–341. ISBN 978-3-515-09033-9
• Howard, Ed. 2003. "The Dream House". Stylus (online magazine, 17 November).
• Husslein, Uwe (ed.). 1990. Pop Goes Art: Andy Warhol & Velvet Underground: anläßlich der gleichnamigen Ausstellung in der Hamburger Kunsthalle, 30.11.1990–3.2. 1991. Schriftenreihe des Instituts für Popkultur 1. Wuppertal: Institut für Popkultur.
• LaBelle, Brandon. 2006. Background Noise: Perspectives on Sound Art. New York and London: Continuum International Publishing.
• Potter, Keith. 2000. Four Musical Minimalists: La Monte Young, Terry Riley, Steve Reich, Philip Glass. Music in the Twentieth Century series. Cambridge, UK; New York City: Cambridge University Press.
• Scherman, Tony, and David Dalton. 2009. POP: The Genius of Andy Warhol. New York: Harper Collins.
• Journal of Experimental Music Studies (21 June)Dave Smith. 2004. "Following a Straight Line: La Monte Young." Updated reprint of Contact 18 (1977–78), 4–9.
• Solare, Juan María. 2006. "El Trío serial de La Monte Young". [About Young's Trio for Strings (1958)]. Doce Notas Preliminares, no. 17:112–42.
• Strickland, Edward. 2001. "Young, La Monte". The New Grove Dictionary of Music and Musicians, ed. S. Sadie and J. Tyrrell. London: Macmillan.
• Watson, Steven. 2003. Factory Made: Warhol and the Sixties. New York: Pantheon Books. ISBN 0-679-42372-9

外部がいぶリンク

• Mela Foundation: La Monte Young
• Kyle Gann on La Monte Young
• ラモンテ・ヤング礼拝れいはい堂どう ※ 現在げんざいはインターネットアーカイブ内うちに残存ざんそん