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ヴェーダの韻律 - Wikipedia

ヴェーダの韻律いんりつ(ヴェーダのいんりつ、サンスクリット: छन्दस् chandas)は、リグ・ヴェーダ賛歌さんか使つかわれる韻律いんりつをいう。

概要がいよう

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ヴェーダ賛歌さんかぶし(r̥c[1])から構成こうせいされる。ひとつの賛歌さんか構成こうせいするぶしかずは3から58まで多様たようであるが、ふつうは12以下いかである[2]かくぶしまったかず(パーダ)からなる。ヴェーダの韻律いんりつは、かずあたりの音節おんせつすう音節おんせつ長短ちょうたんによって規定きていされる。なお押韻おういんはしない。

あたりの音節おんせつすうには5音節おんせつ・8音節おんせつ・11音節おんせつ・12音節おんせつの4種類しゅるいがある。

音節おんせつは、たん母音ぼいんわるものをみじかい(かるい)音節おんせつとし、それ以外いがいちょう母音ぼいん重母音じゅうぼいん子音しいん)でわるものをながい(おもい)音節おんせつとする。なお、たん母音ぼいんでおわる音節おんせつのうしろに複数ふくすう子音しいんではじまるかたりがつづく場合ばあい、その音節おんせつながいとみなされ、ぎゃくたん母音ぼいん+子音しいんわる音節おんせつのうしろに母音ぼいんではじまるかたりがつづく場合ばあい、その音節おんせつみじかいとみなされる。

後世こうせいサンスクリットプラークリットかれたインド古典こてん韻律いんりつおおくはヴェーダの韻律いんりつから発達はったつしたものであり[3]韻律いんりつめいおなじであることがおおいが、同名どうめいのヴェーダの韻律いんりつとはかならずしも同一どういつではない。

韻律いんりつ種類しゅるい

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韻律いんりつ種類しゅるいは15種類しゅるいほどがかぞえられるが、よく使つかわれるのは7種類しゅるいぎない[2]おおじゅんtriṣṭubh, gāyatrī, jagatī, anuṣṭubh, uṣṇih, paṅkti, br̥hatī[4]

一般いっぱんに、最初さいしょ最後さいご音節おんせつ長短ちょうたん規定きていされない。また、ヴェーダではかく末尾まつび4-5音節おんせつ以外いがい部分ぶぶん長短ちょうたんについては厳格げんかくでない[5]

以下いか説明せつめいではなが音節おんせつを「-」、みじか音節おんせつを「u」、どちらでもよいものを「+」であらわす。「,」はカエスーラである。

8音節おんせつ

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8音節おんせつ場合ばあいかく以下いかかたちをしていることがもっともおお[6]

  • + - + - | u - u +

8音節おんせつ3からなるものをガーヤトリー(gāyatrī)とぶ。ヴェーダ全体ぜんたいの25%ちかく(2450ぶし)[7]める一般いっぱんてき詩型しけいである。有名ゆうめいな『リグ・ヴェーダ』3.62.10 のサヴィトリ賛歌さんかをとくにガーヤトリーぶことがある。

4のものをアヌシュトゥブ(anuṣṭubh)とぶ。ヴェーダではガーヤトリーの13しか存在そんざいしないが、後世こうせいにはシュローカばれてもっとも一般いっぱんてき詩型しけいになった。ただしシュローカでは奇数きすう偶数ぐうすう韻律いんりつことなるのにたいし、ヴェーダのアヌシュトゥブではすべてのおな韻律いんりつつ。ヴェーダでも時代じだいあたらしくなるにつれてシュローカにちかづく傾向けいこうられる[8]

5のものをパンクティ(paṅkti)、6マハーパンクティ(mahāpaṅkti)、7シャクヴァリー(śakvarī)とぶが、6以上いじょうはまれである。

11音節おんせつ

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トリシュトゥブ(triṣṭubh)は11音節おんせつ4からなるぶしで、ヴェーダ全体ぜんたいやく40%をめるもっとも一般いっぱんてき形式けいしきである。かくは4または5音節おんせつめのうしろにカエスーラがある。

  • + - + -,u u - | - u - +(4音節おんせつめのうしろにカエスーラ)
  • + - + - +,u u | - u - +(5音節おんせつめのうしろにカエスーラ)

12音節おんせつ

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ジャガティー(jagatī)は12音節おんせつ4からなるぶしで、トリシュトゥブの末尾まつびみじか音節おんせつをひとつしたかたちをしている。トリシュトゥブとガーヤトリーについでおお使つかわれる。

  • + - + -,u u - | - u - u +(4音節おんせつめのうしろにカエスーラ)
  • + - + - +,u u | - u - u +(5音節おんせつめのうしろにカエスーラ)

5音節おんせつ

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5音節おんせつ頻度ひんどすくない。おもu - u - + または - - u - +形式けいしきる。

5音節おんせつ4のものをdvipadā virājぶ(文字通もじどおりには10音節おんせつ2意味いみする)。

混合こんごう

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ごとの音節おんせつすうことなる韻律いんりつがある。通常つうじょうは8音節おんせつと12音節おんせつあいだ交代こうたいする[9]

  • uṣṇih : 8 8 12
  • purauṣṇih : 12 8 8
  • kakubh : 8 12 8
  • br̥hatī : 8 8 12 8
  • satobr̥hatī : 12 8 12 8
  • atśakvarī : 8 8 8, 8 8, 12 8
  • atyaṣṭī : 12 12 8, 8 8, 12 8

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ リグ・ヴェーダの「リグ」(r̥g)は、r̥cサンディーかたち。Macdonell(1900) p.30
  2. ^ a b Macdonell (1900) pp.54-55
  3. ^ Macdonell (1900) p.436
  4. ^ Sharma (2000) p.32
  5. ^ Macdonell (1900) pp.55-56
  6. ^ Macdonell (1900) p.438
  7. ^ Macdonell (1900) p.56
  8. ^ Macdonell (1900) p.57
  9. ^ Macdonell (1916) p.443

参考さんこう文献ぶんけん

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