中井なかい紀夫のりお

（なかいのりお、1952年ねん11月がつ20日はつか -）は日本にっぽんの作家さっか、SF作家さっか。日本にっぽんSF作家さっかクラブ会員かいいん。

経歴けいれき

武蔵大学むさしだいがく人文学部じんぶんがくぶ卒業そつぎょう。ピアノ演奏えんそう者しゃとして活動かつどう。また、1982年ねんに創刊そうかんされた雑誌ざっし『SFの本ほん』にライターとしてSF評論ひょうろんを発表はっぴょうする。

1985年ねん、『SFマガジン』主催しゅさいの第だい11回かいハヤカワ・SFコンテストにおいて、「竜りゅうの降おりる夜よる」が参考さんこう作さくとなり、作家さっかデビュー。『山やまの上うえの交響楽こうきょうがく』で1988年度ねんど星雲せいうん賞しょう日本にっぽん短編たんぺん部門ぶもんを受賞じゅしょう。ホルヘ・ルイス・ボルヘス、イタロ・カルヴィーノや、南米なんべいマジック・リアリズムの影響えいきょうを受うけた奇妙きみょうな味あじの作風さくふうで知しられる。テレビドラマ「世よにも奇妙きみょうな物語ものがたり」の代表だいひょう的てきな原作げんさく者しゃ、ノベライズ担当たんとう者しゃでもあった。

80年代ねんだい後半こうはんから90年代ねんだい初期しょきにかけては短たん・長編ちょうへんを問とわず精力せいりょく的てきに作品さくひんを発表はっぴょうした（短編たんぺんはSFマガジンかSFアドベンチャーへの掲載けいさいが、長編ちょうへんは書かき下おろしが多おおい）。代表だいひょう作さく〈能無のうなしワニ〉シリーズもこの時期じきに書かかれた。これはシャーマニズムを扱あつかった特異とくいなSF西部せいぶ劇げきである。また、〈タルカス伝でん〉シリーズは、「想像そうぞう力りょくの限界げんかいに挑いどんだ」フランソワ・ラブレー的てきな異い世界せかいファンタジーで、発表はっぴょう当時とうじ、大森おおもり望のぞむから「オールタイム・ベスト級きゅうの傑作けっさく」と絶賛ぜっさんされたが、発表はっぴょうされた時期じきが「SF冬ふゆの時代じだい」であったためか、いまだに読者どくしゃの正当せいとうな評価ひょうかを受うけていない。なお2013年ねんから2014年ねんにかけてシリーズ全作ぜんさくがKindle版ばんで再刊さいかんされた。

90年代ねんだい中期ちゅうきからはペースダウンし、2001年ねん10月がつに『イルカと私わたしが歩あるく街まち』を刊行かんこうして以降いこう、短篇たんぺん以外いがいでは沈黙ちんもくを続つづけている。

2010年ねん11月より、東京とうきょう・飯田橋いいだばしで「barでこや」を営業えいぎょう。

主おもな著作ちょさく

〈能無のうなしワニ〉シリーズ

植民しょくみん惑星わくせいナインガックは、ハリウッド的てきな西部せいぶ開拓かいたく時代じだいの風俗ふうぞくを持もつのが特徴とくちょう。もう1つの特徴とくちょうは住民じゅうみんのほとんど全員ぜんいんが何なんらかの超ちょう能力のうりょくを持もっていること。もっとも超ちょう能力のうりょくと言いっても、念力ねんりき、テレパシーといった派手はでなものもあれば、「美味おいしいお茶ちゃを抽出ちゅうしゅつするための正確せいかくな時間じかんが判わかる」といった微妙びみょうな超ちょう能力のうりょくも含ふくむ。

主人公しゅじんこうのワニは、本当ほんとうに何なにの超ちょう能力のうりょくも持もたない「能無のうなし」であった。ワニは能無のうなしの悔くやしさから拳銃けんじゅうの腕うでを磨みがいた。

『南みなみから来きた拳銃けんじゅう使づかい』（1987年ねん）
『裏切うらぎり砦とりでの拳銃けんじゅう無頼ぶらい』（1987年ねん）
『恋こいの拳銃けんじゅう無宿むしゅく』（1987年ねん）
『ワニよ銃じゅうを取とれ』（1988年ねん）
『続ぞく・ワニよ銃じゅうを取とれ』（1988年ねん）
『荒野あらののトカゲ・ライダーズ』（1989年ねん）
『遥はるかなる大だい渓谷けいこく』（1989年ねん）

（※以上いじょう、ハヤカワ文庫ぶんこJAより。沖おき一いちイラスト）

〈タルカス伝でん〉第だい一部いちぶ

血ちと精液せいえきの匂においに満みちた狂乱きょうらんの国くにグユを治おさめる狂きょう熱ねつ風雲ふううん王おうは、辺境へんきょうの小国しょうこくアムネシアの王おうの娘むすめにひと目め惚ほれし、娘むすめを手てに入いれるためにアムネシアに攻せめ込こみ、激戦げきせんの末すえに娘むすめを手てに入いれた。

狂きょう熱ねつ風雲ふううん王おうとその娘むすめの間あいだに産うまれた子こグレンが15歳さいになったとき、アムネシアの残党ざんとうは復興ふっこうの旗印はたじるしとしてグレンを担かつごうとするがグレンにはその気きはまったく無なく、放浪ほうろうの末すえ、ある町まちを持もち前まえの運うんと才覚さいかくによって支配しはいする。

その頃ころ、アクラ山さんの頂上ちょうじょう火口かこうでは、存在そんざいするものすべてを敵てきとする、究極きゅうきょくの破壊はかい者しゃ“タルカス”が誕生たんじょうする。一方いっぽう、グユの圧政あっせいからアムネシアは蜂起ほうきし、狂きょう熱ねつ風雲ふううん王おうとの間あいだに再ふたたび戦たたかいがおきる。そこへ“タルカス”が姿すがたを現げんわす。

『いまだ生うまれぬものの伝説でんせつ』（1990年ねん）
『炎ほのおの海うみより生うまれしもの』（1991年ねん）
『剣けんをとりて炎えんをよべ』（1992年ねん）
『火ひの山やまよ目覚めざめよ』（1993年ねん）
『火ひの山やまの彼方かなたに』（1993年ねん）

（※以上いじょう、ハヤカワ文庫ぶんこJA。ひろき真冬まふゆイラスト。第だい二に部ぶ以降いこうは未刊みかん）

その他たの長編ちょうへん

『漂着ひょうちゃく神しん都市とし（ロボゴッド・シティ）』トクマ・ノベルズ・ミオ、1988年ねん
『闇やみの迷路めいろ』徳間とくまノベルズ、1989年ねん
『ミュータント・プラネット』大陸たいりく書房しょぼう、1992年ねん
『アナベル・クレセントムーン』電撃でんげき文庫ぶんこ、1999年ねん
『遺のこ響ひびきの門もん -サイレント・ゲート-』徳間とくまデュアル文庫ぶんこ、2000年ねん
『モザイク -少年しょうねんたちの震ふるえる荒野あらの-（全ぜん3巻かん）』徳間とくまデュアル文庫ぶんこ、2001年ねん5・6・7月がつ
『イルカと私わたしが歩あるく街まち』 EXノベルズ、2001年ねん10月がつ

短たん編集へんしゅう

『山やまの上うえの交響楽こうきょうがく』ハヤカワ文庫ぶんこJA、1989年ねん
『ブリーフ、シャツ、福神漬ふくじんづけ』波なみ書房しょぼう、1991年ねん
『山手やまて線せんのあやとり娘むすめ』医事いじ薬やく業ぎょう新報しんぽう社しゃ、1992年ねん
『死神しにがみのいる街角まちかど』出版しゅっぱん芸術げいじゅつ社しゃ、1995年ねん
『日本にっぽんSFの臨界りんかい点てん中井なかい紀夫のりお山やまの上うえの交響楽こうきょうがく』伴とも名めい練ねり編へん、ハヤカワ文庫ぶんこJA、2021年ねん

ノベライズもの

『世よにも奇妙きみょうな物語ものがたり1』太田出版おおたしゅっぱん、1990年ねん
『世よにも奇妙きみょうな物語ものがたり6』太田出版おおたしゅっぱん、1991年ねん
『世よにも奇妙きみょうな物語ものがたり（文庫ぶんこ版ばん）1』太田出版おおたしゅっぱん、1992年ねん
『世よにも奇妙きみょうな物語ものがたり（文庫ぶんこ版ばん）2』太田出版おおたしゅっぱん、1993年ねん
『国境こっきょうの銃声じゅうせい（ヤング・インディ・ジョーンズ）』文春ぶんしゅん文庫ぶんこ、1993年ねん
『人中ひとなかの鬼神きじん・呂りょ布ぬの（三国志さんごくし武将ぶしょう列伝れつでん）』光栄こうえい、1993年ねん
『ソウルエッジ―風ふう翔かける剣けん姫ひめ美那みな編へん』アスキー、1997年ねん
『ソウルエッジ―昏き森もりの彷徨ほうこうジークフリート編へん』アスキー、1997年ねん

アンソロジー収録しゅうろく作さく

『異形いぎょうコレクションラヴ・フリーク』廣済堂こうさいどう文庫ぶんこ、1998年ねん1月がつ　「テレパス」
『日本にっぽんSF短篇たんぺん50 3──日本にっぽんSF作家さっかクラブ創立そうりつ50周年しゅうねん記念きねんアンソロジー』ハヤカワ文庫ぶんこJA、2013年ねん10月がつ　「見み果はてぬ風ふう」
『日本にっぽんSFの臨界りんかい点てん［恋愛れんあい篇へん］死しんだ恋人こいびとからの手紙てがみ』ハヤカワ文庫ぶんこJA、2020年ねん7月がつ　「死しんだ恋人こいびとからの手紙てがみ」
『異形いぎょうコレクションLI 秘密ひみつ』光文社こうぶんしゃ文庫ぶんこ、2021年ねん6月がつ「明日あしたへの血脈けちみゃく」

外部がいぶリンク

中井なかい紀夫のりお (@nakainorio) - X（旧きゅうTwitter）
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