九きゅう三さん式しき戦車せんしゃ地雷じらい

九きゅう三さん式しき戦車せんしゃ地雷じらい（きゅうさんしきせんしゃじらい）は、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかに日本にっぽん陸軍りくぐんによって使用しようされた円形えんけいの対戦たいせん車しゃ地雷じらいである。1933年ねんから使用しようされた。追加ついかの爆薬ばくやくを地雷じらいの下部かぶに加くわえることで、破壊はかい力りょくを増大ぞうだいさせることができる。

開発かいはつ

テニアン島とう、埋設まいせつ状態じょうたい

九きゅう三さん式しき戦車せんしゃ地雷じらいは、対戦たいせん車しゃ用途ようとを主眼しゅがんとする。本ほん地雷じらいは戦車せんしゃの履くつ帯たいを破損はそんさせて行動こうどう不能ふのうにするのが役割やくわりであり、戦車せんしゃを完全かんぜんに破壊はかいする効果こうかはなかった^[1]。行動こうどう不能ふのうにした後のちは、（太平洋戦争たいへいようせんそう末期まっきの場合ばあい、）エンジンルーム上面うわつらに設置せっちした布団ふとん爆雷ばくらいを起爆きばくさせ完全かんぜんに破壊はかいするなどの運用うんようが想定そうていされていたという。

開発かいはつは昭和しょうわ4年ねん（1929年ねん）6月1日にちに始はじまった。研究けんきゅうのための審査しんさが行おこなわれ、結果けっかはできるかぎり軽量けいりょう化かを目指めざすこととなった。昭和しょうわ8年ねん（1933年ねん）4月がつから本格ほんかく的てきに研究けんきゅうが行おこなわれ、同年どうねん5月がつ、伊良湖いらこ射場しゃじょうにて爆薬ばくやくを使用しようし、威力いりょくと薬くすり量りょうを算出さんしゅつした。試験しけんには八はち九きゅう式しき中ちゅう戦車せんしゃを使用しようし、履くつ帯たいの最もっとも頑強がんきょうな部分ぶぶんを切断せつだんするには炸薬さくやく670gが必要ひつようと判明はんめいした。形状けいじょうは円盤えんばん状じょうとするのが適当てきとうとされた。6月に予備よび試験しけんを実施じっしし、試製しせいに入はいった。地雷じらいは、幅はば158mm、高たかさ55.8mm、炸薬さくやく量りょう700g、総そう重量じゅうりょう1,150gとされた。7月に完成かんせいした試製しせい品ひんを習志野ならしの演習えんしゅう場じょうで試験しけんし、信管しんかん高たかさの低減ていげん、履くつ帯たいとの地雷じらいの密着みっちゃくなどの改修かいしゅうすべき点てんが明あきらかになった。8月に伊良湖いらこ射場しゃじょうで再さい試験しけんを行おこなった。試験しけん車両しゃりょうは同おなじく八はち九きゅう式しき中ちゅう戦車せんしゃであった。この試作しさく型がたはそれまでの地雷じらいと比較ひかくして、威力いりょくは約やく2個こ分ぶんだった。10月、形状けいじょうを円盤えんばん型がたに決定けっていした。12月には輸送ゆそう試験しけんが駄だ載の、車載しゃさいにて行おこなわれ、安全あんぜんが確認かくにんされた。昭和しょうわ9年ねん（1934年ねん）1月がつ、北きた満州まんしゅうチチハル付近ふきんで寒かん地ち試験しけんが行おこなわれた。信管しんかんを一部いちぶ修正しゅうせいし、実用じつように達たっした。

構造こうぞうと運用うんよう

円盤えんばん形がた金属きんぞく製せいで、本体ほんたい円周えんしゅう部ぶには環たまき（外縁がいえん部ぶに2ヶ所かしょ）と紐ひも（外縁がいえん部ぶに2ヶ所かしょ）が対称たいしょうに付ついており、地雷じらい同士どうしの結合けつごうや、紐ひもを伸のばしての投擲とうてきに使用しようできる。作動さどうは圧力あつりょく発火はっかによる。140kgの荷重かじゅうが信管しんかんにかかると、信管しんかん内部ないぶの駐ちゅう栓せんが切きれ、撃げき針はりが解放かいほうされる。撃げき針はりはばねによって推進すいしんし、雷管らいかんを叩たたいて発火はっかさせる。

九きゅう三さん式しき地雷じらい信管しんかんは全長ぜんちょう45.5mm、直径ちょっけい18mm、重量じゅうりょう約やく50gで、防湿ぼうしつのため収容しゅうよう筒とう内ないに1個いっこずつ密封みっぷうして保管ほかんされる。信管しんかんにも撃げき針はりストッパーとなる、安全あんぜん螺にしという安全あんぜん装置そうちがある。これは、信管しんかんの頂点ちょうてんに取とりつけられたキャップ状じょうのねじ蓋ぶたのことで、キャップには「安やす」の字じが印しるされている。信管しんかんは接続せつぞく覆おおいを除去じょきょして地雷じらいの中央ちゅうおうにねじ込こみ接続せつぞくする。

地雷じらい本体ほんたいには安全あんぜん器きがあり、信管しんかん装着そうちゃく後ごにも信管しんかんと蓋ぶた螺にし（地雷じらいの上面うわつら中央ちゅうおう部ぶにある蓋ぶた）の間あいだにこの安全あんぜん器きが装着そうちゃくされ、「安やす」の文字もじを表示ひょうじしてストッパーがかかっていることを示しめす。信管しんかん装着そうちゃくの際さいには、安全あんぜん器きの安やすの字じを上方かみがたに向むけ、安全あんぜん器きの上下じょうげに塞ふさが環たまきをあて、これを信管しんかんの上部じょうぶにはめこみ、最後さいごに蓋ぶた螺にしをつける。使用しようの直前ちょくぜんには螺にし蓋ぶたを外はずし、安全あんぜん器きを除去じょきょしてから用もちいる。

九きゅう三さん式しき戦車せんしゃ地雷じらいは通常つうじょう1個いっこを埋設まいせつし、威力いりょくを補おぎなう際さいには2個この底部ていぶを合あわせ、付属ふぞくの紐ひもを結束けっそくして埋設まいせつする。地表ちひょうから5センチ以下いかの深ふかさに埋設まいせつすることとされ、軟弱なんじゃく地ちでは底そこに板いたを敷しいて用もちいた。凍結とうけつ地帯ちたいや道路どうろ上じょうでは、本体ほんたいが地面じめんよりもわずかに高たかく露出ろしゅつするよう埋設まいせつすることとされた。設置せっち時じに安全あんぜん器き・安全あんぜん螺にしは捨すてないよう指示しじされた。

仕様しよう

断面だんめん図ず

直径ちょっけい：17cm
全高ぜんこう：5cm
全ちょん重しげる：1,450g
炸薬さくやく量りょう：890g（黄色おうしょく薬やく）
作動さどう荷重かじゅう：140kg

参考さんこう文献ぶんけん

陸軍りくぐん省しょう『九三式戦車地雷九三式地雷信管取扱法規程の件けん』昭和しょうわ15年ねん1月がつ。アジア歴史れきし資料しりょうセンター C01005110000
陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶ『爆破ばくは用よう火薬かやく火ひ具ぐ九三式戦車地雷及九三式地雷信管仮制式制定の件けん』昭和しょうわ9年ねん4月がつ。アジア歴史れきし資料しりょうセンター C01001324000

脚注きゃくちゅう

^ 『帝国ていこく陸軍りくぐん　戦車せんしゃと砲戦ほうせん車しゃ』学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ、153頁ぺーじ。