九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう

**九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう**
制式せいしき名めい	九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう
砲ほう口径こうけい	150.5 mm
砲身ほうしん長ちょう	1,325 mm
放列ほうれつ砲車ほうしゃ重量じゅうりょう	722 kg
砲弾ほうだん初速しょそく	214 m/秒びょう
最大さいだい射程しゃてい	3,900 m
水みず平射へいしゃ界かい	11.5度ど (誘導ゆうどう螺にし); 25度ど (脚あしの移動いどう)
俯仰ふぎょう角かく	+45 - +80度ど
使用しよう弾だん種しゅ	九きゅう六ろく式しき榴弾りゅうだん; 二に式しき水中すいちゅう弾だん;
使用しよう勢力せいりょく	大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん

九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう（96しきちゅうはくげきほう）は、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんの迫撃はくげき砲ほうである。実際じっさいの制式せいしき制定せいていは1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）4月がつであった。

概要がいよう

九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうと同様どうように駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きを持もつ大だい口径こうけいの迫撃はくげき砲ほうである。ストークブラン式しき迫撃はくげき砲ほうの拡大かくだい型がたであるものの、口径こうけい増大ぞうだいのために駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きを装備そうびして発射はっしゃ反動はんどうを低減ていげんさせる方針ほうしんを採とったことにより構造こうぞうは複雑ふくざつ化かし、取扱とりあつかいに不便ふべんな大だい重量じゅうりょうとなってしまった。

なお本ほん砲ほうが「中なか」迫撃はくげき砲ほうと呼よばれるのは、後述こうじゅつのようにその開発かいはつ経緯けいいによるものであり、実質じっしつは各国かっこくの重じゅう迫撃はくげき砲ほうに相当そうとうするものである。

開発かいはつ

1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）頃ごろ陸軍りくぐん科学かがく研究所けんきゅうじょでは毒どくガス弾だんの投射とうしゃ機きとして口径こうけい10 cmと15 cmのものを研究けんきゅうしていた。同どう時期じき、陸軍りくぐん技術ぎじゅつ本部ほんぶでも口径こうけい15 cmの九きゅう〇式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうを開発かいはつしていたため、1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）4月がつ、両所りょうしょの担当たんとう者しゃが合同ごうどう会議かいぎを開催かいさいし、改あらためて技術ぎじゅつ本部ほんぶにおいて軽けい・中ちゅう・重じゅうの各かく迫撃はくげき砲ほうを研究けんきゅうすることとされた。このうち軽けいは九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほう、重じゅうは九きゅう六ろく式しき重じゅう迫撃はくげき砲ほうとして完成かんせいした。中なかについては口径こうけい150 mmとされ、九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうに準じゅんずる構造こうぞうを採用さいようして1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）4月がつから設計せっけい試製しせいに入はいった。

1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）4月がつ大阪おおさか工廠こうしょうに試製しせい発注はっちゅう、同年どうねん11月がつ試製しせい砲ほうが完成かんせいして各種かくしゅ試験しけんを実施じっし後ご、翌年よくねん4月がつ陸軍りくぐん野戦やせん砲兵ほうへい学校がっこうに実用じつよう試験しけんを委託いたくし、実用じつように適てきするという判決はんけつを受うけた。この折おりには陸軍りくぐん習志野ならしの学校がっこうも立たち会あい、ガス弾だん投射とうしゃ機きとしての協定きょうていの成果せいかを確認かくにんした。更さらに実用じつよう上じょうの若干じゃっかんの改修かいしゅうを行おこなったものを1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）11月、昭和しょうわ11年度ねんど冬季とうき北きた満まん試験しけんに供きょう試ためした。

1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）7月がつ仮かり制式せいしき上申じょうしんし、1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）4月がつに九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうとして制定せいていされた。

構造こうぞう

砲ほう口こう装填そうてん式しき(前ぜん装そう)で有ゆう翼つばさ弾だんを発射はっしゃする滑すべり腔砲である。構造こうぞう要領ようりょうは九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうと同一どういつだが、墜発式しき・撃げき発はつ式しき併用へいようとされた。砲ほう口こう装填そうてん式しきの迫撃はくげき砲ほうの場合ばあい、撃げき発はつ使用しよう時じに二に重じゅう装填そうてんの危険きけん性せいがあり、実際じっさいに十じゅう一いち年ねん式しき曲射きょくしゃ歩兵ほへい砲ほうなどで事故じこの報告ほうこくも上あがっていた。砲ほう口こうから砲弾ほうだんを滑すべり落おちとして発射はっしゃする墜発の場合ばあいはこの問題もんだいを解決かいけつできるため、九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうでは墜発を採用さいようしたが、本ほん砲ほうの場合ばあい仮かりに二に重じゅう装填そうてんをしてしまっても砲ほう口こうから砲弾ほうだんの頭部とうぶが露出ろしゅつするため発見はっけんが容易よういであり、事故じこを防止ぼうしできるとの見地けんちから撃げき発はつも併用へいようすることとなった。

本ほん砲ほうの特徴とくちょうである砲身ほうしん後ご座ざ式しきの駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きは駐ちゅう退すさ機きが水圧すいあつ式しき、復ふく座ざ機きがばね式しきで、基準きじゅん後ご座長ざちょうは270 mm、最大さいだいで300 mmであった。高低こうてい照準しょうじゅん具ぐは複ふく螺にし式しきと呼よばれる、内側うちがわと外側そとがわの支柱しちゅうが同時どうじに上下じょうげする構造こうぞうであり、以後いご九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう等とうでも使用しようされた。

大だい口径こうけいのため本ほん砲ほうの駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きは重おもく複雑ふくざつなものとなり、放列ほうれつ砲車ほうしゃ重量じゅうりょうは722 kgとなった。確たしかに大だい威力いりょくではあるもののストークブラン式しき迫撃はくげき砲ほうの最大さいだいの特徴とくちょうである軽便けいべんさからは程遠ほどとおい兵器へいきとなってしまった。このため後継こうけい砲ほうである九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうでは駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きを省略しょうりゃく、発射はっしゃ反動はんどうについては大型おおがたの副ふく床板とこいたを併用へいようすることで解決かいけつを図はかったが、副ふく床板とこいたを含ふくめると総そう重量じゅうりょうは有意ゆういな変化へんかがなく、最終さいしゅう的てきには威力いりょく低下ていかを忍しのんで口径こうけい120 mmの二に式しき十じゅう二に糎せんちめーとる迫撃はくげき砲ほうが開発かいはつされることになる。

生産せいさんと配備はいび

制式せいしきはされたものの、大阪おおさか陸軍りくぐん造兵ぞうへい廠しょう第だい一いち製造せいぞう所しょで昭和しょうわ12年ねんに3門もん製造せいぞうされた後のちは暫しばらく生産せいさんされなかった。ガス弾だん発射はっしゃ機きとしては九きゅう四よん式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうを全面ぜんめん的てきに使用しようすることとなった。このため本ほん砲ほう用ようのガス弾だんは製造せいぞうされていない。一説いっせつには約やく90門もんが生産せいさんされたとも言いわれるが、大阪おおさか造兵ぞうへい廠しょう第だい一いち製造せいぞう所しょの調査ちょうさによると1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）10月がつ現在げんざいまでの生産せいさん数すう（火砲かほう製造せいぞう完成かんせい数すう）は僅わずか17門もんであった^[1]。どちらにしても、この時点じてんで既すでに九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうが生産せいさんに入はいっており、更さらに二に式しき十じゅう二に糎せんちめーとる迫撃はくげき砲ほうも開発かいはつ中ちゅうであったため、本ほん砲ほうの製造せいぞう数すうがごく僅わずかだったことには変かわりがない。

脚注きゃくちゅう

^ 「日本にっぽん陸軍りくぐんの火砲かほう　迫撃はくげき砲ほう　噴進砲ほう　他た」92頁ぺーじ。

参考さんこう文献ぶんけん

佐山さやま二郎じろう「日本にっぽん陸軍りくぐんの火砲かほう　迫撃はくげき砲ほう　噴進砲ほう　他た」光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ　ISBN 978-4-7698-2676-7 2011年ねん　82-93頁ぺーじ
佐山さやま二郎じろう『大砲たいほう入門にゅうもん』光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ　ISBN 978-4769822455