九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう

九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう（97しきちゅうはくげきほう）は、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんの迫撃はくげき砲ほうである。年とし式しきは皇紀こうき2597年ねん（昭和しょうわ12年ねん：西暦せいれき1937年ねん）を示しめす九きゅう七なな式しきであるが、これは設計せっけい着手ちゃくしゅ年度ねんどから取とったものと思おもわれる。実際じっさいの制式せいしき制定せいていは1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）6月がつであった。

九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう

制式せいしき名めい	九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう
砲ほう口径こうけい	150.5mm
砲身ほうしん長ちょう	「長ちょう」1,935mm 「短たん」1,395mm
放列ほうれつ砲車ほうしゃ重量じゅうりょう	「長ちょう」342kg (木材もくざい砲ほう床ゆか 370kg) 「短たん」232.5kg
砲弾ほうだん初速しょそく	「長ちょう」212m/秒びょう 「短たん」130m/秒びょう
射程しゃてい	「長ちょう」100〜3,800m 「短たん」100〜1,600m
発射はっしゃ速度そくど	約やく15発はつ/分ぶん
水みず平射へいしゃ界かい	「長ちょう」180密みつ位い(約やく10.1度ど) 「短たん」145密みつ位い(約やく8.1度ど)
俯仰ふぎょう角かく	+45 - +80度ど
使用しよう弾だん種しゅ	九きゅう九きゅう式しき榴弾りゅうだん 二に式しき榴弾りゅうだん
使用しよう勢力せいりょく	大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん

上うえ:九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう(長ちょう) 下した：九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう(短たん)

なお、先行せんこうする兵器へいきである九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうが制式せいしき制定せいていされたのも1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）4月がつであり、この点てん、年とし式しきと実際じっさいの制式せいしき制定せいてい年次ねんじに大おおきな相違そういがある。

概要がいよう

ペリリュー島とうで捕獲ほかくされた九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう(長ちょう)。副ふく床板とこいたは設置せっちされていない。

本ほん砲ほうは九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうから駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きを省略しょうりゃくして運動うんどう性せいの向上こうじょうと構造こうぞうの簡略かんりゃく化かを図はかったものである。同どう砲ほうと同おなじく滑すべり腔砲であり有ゆう翼つばさ弾だんを発射はっしゃする。

1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）12月設計せっけいに着手ちゃくしゅ、翌年よくねん二に度どに亙わたる試験しけんを行おこない、「長ちょう」「短たん」の二に種しゅを製造せいぞうすることとなり、同年どうねん10月がつには両者りょうしゃの試験しけんを行おこなっている。同様どうように前作ぜんさくから駐ちゅう退すさ復ふく座ざ機きを割愛かつあいして運動うんどう性せいの向上こうじょうを図はかった九きゅう七なな式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうと同どう時期じきに並行へいこうする形かたちで研究けんきゅうされ、「短たん」は1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）1月がつ、「長ちょう」は同年どうねん4月がつに実用じつように適てきすると認みとめられ、1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）6月がつに制式せいしき制定せいていされた。「長ちょう」は九きゅう七なな式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうと同様どうように必要ひつように応おうじて木製もくせいの大型おおがた副ふく床板とこいたを鋼はがね製せいの本ほん床板とこいたの下したに敷しく形かたちとなっている。この木製もくせい副ふく床板とこいたの重量じゅうりょうは370kgに及および、「長ちょう」の総そう重量じゅうりょうは九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほうとほとんど変かわらなかった。

なお、本ほん砲ほう「短たん」より更さらに床板とこいたを小ちいさくし、砲身ほうしんを短みじかくして、短たん射程しゃていを忍しのび軽量けいりょう化かした試製しせい九きゅう九きゅう式しき短たん中ちゅう迫撃はくげき砲ほうが試作しさくされたが制式せいしき制定せいていはなされずに終おわった。砲身ほうしん長ちょう1215mm、放列ほうれつ砲車ほうしゃ重量じゅうりょう152kgで射程しゃていは770mと、九きゅう九きゅう式しき小しょう迫撃はくげき砲ほうや擲弾筒てきだんとうに近ちかい兵器へいきだった。

九きゅう七なな式しき軽けい迫撃はくげき砲ほうは墜発のみであるが、本ほん砲ほうは九きゅう六ろく式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう同様どうよう、墜発、撃げき発はつのどちらも可能かのうとされている。実質じっしつ的てきな後継こうけい砲ほうである二に式しき十じゅう二に糎せんちめーとる迫撃はくげき砲ほうもまた同様どうようであった。

大阪おおさか造兵ぞうへい廠しょう第だい一いち製造せいぞう所しょの調査ちょうさによると1942年ねん（昭和しょうわ17年ねん）10月がつ現在げんざいまでの生産せいさん数すう（火砲かほう製造せいぞう完成かんせい数すう）は171門もんであった。その後ごは後継こうけい砲ほうである二に式しき十じゅう二に糎せんちめーとる迫撃はくげき砲ほうの生産せいさんに移行いこうした。

構造こうぞう

本ほん砲ほうの主要しゅよう部ぶは砲身ほうしん、連結れんけつ架か、方向ほうこう照準しょうじゅん機き、高低こうてい照準しょうじゅん機き、脚あし、照準しょうじゅん具ぐ、床板とこいたからなっており各部かくぶの大おおまかな構造こうぞうは以下いかのようになっている。

砲身ほうしん

砲身ほうしんの主要しゅよう部ぶは砲身ほうしん体たいと砲ほう尾お体たいの２点てんからなっており､砲ほう身体しんたいと砲ほう尾お体たいはそれぞれの後端こうたんと前ぜん端はしに刻きざまれたネジによって結合けつごうされる。

砲身ほうしん体たいは前方ぜんぽうに連結れんけつ架かの取付とりつけ部ぶが設もうけられており､砲ほう尾お体たいは砲弾ほうだんを発射はっしゃするための機構きこうである撃げき発はつ機きと床板とこいたと結合けつごうするための球たま頭部とうぶを有ゆうしている。撃げき発はつ機きは撃げき針はり、撃げき針はり準じゅん桿、安全あんぜん筒とう等とうからなっており､安全あんぜん筒とうは本ほん砲ほうの安全あんぜん装置そうちの役割やくわりを成なすと共ともに､備そなえられているつまみを回まわす事ことで安全あんぜん、撃げき発はつ､墜発の切せつ換かわができる。

連結れんけつ架か

連結れんけつ架かは砲身ほうしん前方ぜんぽうの取付とりつけ部ぶに取付とりつけられ､下部かぶに2本ほんの緩衝かんしょう機きを砲身ほうしんと並行へいこうに取付とりつけられるようになっている。

緩衝かんしょう機きは発射はっしゃ時じに照準しょうじゅん機きや照準しょうじゅん具ぐに掛かかる衝撃しょうげきを緩和かんわする役割やくわりをもつ共ともに､方向ほうこう照準しょうじゅん機きと連結れんけつ架かを接続せつぞくする。

方向ほうこう照準しょうじゅん機き

方向ほうこう照準しょうじゅん機きは誘導ゆうどうネジ託たく架かにより連結れんけつ架かと連つらなり､且かつ高低こうてい照準しょうじゅん機きの昇降しょうこうネジに対たいして砲ほうの方向ほうこう移動いどうを行おこなうものであり､その主要しゅよう部ぶは誘導ゆうどうネジ、誘導ゆうどう雌めネジ、誘導ゆうどうネジ託たく架か、ハンドルからなる。誘導ゆうどうネジ託たく架かの中央ちゅうおうには緩衝かんしょう機きを通とおすための孔あなが二ふたつあり､左側ひだりがわにはハンドルと照準しょうじゅん具ぐの取付とりつけ部ぶを備そなえる。また誘導ゆうどう雌めネジによって高低こうてい照準しょうじゅん機きと接続せつぞくされる。

高低こうてい照準しょうじゅん機きおよび脚あし

高低こうてい照準しょうじゅん機きは砲ほうの昇降しょうこう移動いどうを行おこなう物もので､その主要しゅよう部ぶは昇降しょうこうネジ（甲きのえ、乙おつ）、歯車はぐるま室しつ、起動きどう歯車はぐるま、伝導でんどう歯車はぐるま、ハンドル、締しめネジよりなる。

昇降しょうこうネジは上部じょうぶが締しめネジによって方向ほうこう照準しょうじゅん機きの誘導ゆうどう雌めネジと接続せつぞくされておりハンドルの操作そうさによって砲ほうを昇降しょうこうさせる。また高低こうてい照準しょうじゅん機き下部かぶには開閉かいへい式しきの2本ほんの「脚あし」が接続せつぞくされている。

照準しょうじゅん具ぐ

照準しょうじゅん具ぐは砲ほうに射い角かく、射い向むこうの付与ふよを行おこなうために使用しようされるもので､本体ほんたいと眼鏡めがね部ぶよりなり､眼鏡めがねは倍率ばいりつ3倍ばいのＬ型がた眼鏡めがねとなっている。

照準しょうじゅん具ぐは方向ほうこう照準しょうじゅん機きの左側ひだりがわにある取付とりつけ部ぶに装着そうちゃくされる。

床板とこいた

床板とこいたは砲ほう尾お体たいと接続せつぞくされてこれを支ささえるもので､本体ほんたいと木製もくせいの副ふく床板とこいたからなる。

床板とこいた本体ほんたいは鋼鉄こうてつ製せいで中央ちゅうおうに砲ほう尾お受をもち､左右さゆうに各かく2個こずつの提さげ手しゅをもつ。

副ふく床板とこいたは甲かぶと、乙おつ、丙へいの三みっつの受台、連結れんけつ板ばん、杭くいなどからなり､使用しようの際さいは受台を連結れんけつ板ばんにより繋つないだあとに四隅よすみを杭くいで止とめ、その上うえに床板とこいた本体ほんたいを設置せっちしてボルト止とめする事ことで本体ほんたいの安定あんていを保持ほじする。

参考さんこう文献ぶんけん

• 佐山さやま二郎じろう「日本にっぽん陸軍りくぐんの火砲かほう　迫撃はくげき砲ほう　噴進砲ほう　他た」光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ　ISBN 978-4-7698-2676-7 2011年ねん　117-132頁ぺーじ
• 陸軍りくぐん省しょう第だい1陸軍りくぐん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ　「九きゅう七なな式しき中ちゅう迫撃はくげき砲ほう取扱とりあつかい法ほう（案あん）」　国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん　1943年ねん　1-21頁ぺーじ

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外部がいぶリンク

• Taki