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出家 - Wikipedia

出家しゅっけ

家庭かてい生活せいかつ仏教ぶっきょうコミュニティにはいること

出家しゅっけ(しゅっけ、ともえ: pabbajjā: प्रव्रज्या pravrajyā) とは、師僧しそうからただしい戒律かいりつである『沙弥さや』や『具足ぐそく』をさずかって世俗せぞくはなれ、家庭かてい生活せいかつ仏教ぶっきょうコミュニティ(そうとぎ)にはいることである。落飾らくしょく(らくしょく)ともいう。帰依きえするもの信者しんじゃ)のなかでは在家ありいえ(Upāsaka; ざいけ)と対比たいひされる。対義語たいぎご還俗げんぞく(げんぞく、“俗界ぞっかいかえる”の)。

仏教ぶっきょう用語ようご
出家しゅっけ
パーリ pabbajjā
サンスクリット प्रव्रज्या, pravrajya
中国ちゅうごく 出家しゅっけ
日本語にほんご 出家しゅっけ
英語えいご to go forth
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インドでは、紀元前きげんぜん5世紀せいきころバラモン教ばらもんきょう伝統でんとうてき権威けんいみとめない沙門しゃもん(しゃもん,サマナ)とばれる修行しゅぎょうしゃあらわれ、解脱げだつ(げだつ)へのみちもとめて禅定ぜんじょう苦行くぎょうなどの修行しゅぎょういそしんだ。有力ゆうりょく沙門しゃもんしたにはおおくの弟子でしあつまり、出家しゅっけしゃ集団しゅうだん形成けいせいしたが、釈迦しゃかもその沙門しゃもん1人ひとりであった。仏教ぶっきょうにおける出家しゅっけ伝統でんとうはこれに由来ゆらいする。

仏教ぶっきょう教団きょうだんにおいて剃髪ていはつ(ていはつ)して袈裟けさおおい、「正式せいしき受戒じゅかい(じゅかい)して入門にゅうもんした沙弥さや沙弥さやあま」になることをうが、その、「具足ぐそくけて正規せいきそうとなった比丘びく比丘尼びくに」を場合ばあいにも使つかう。

解説かいせつ

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Sambādho'yaṃ gharāvāso rajassāyatanaṃ iti,

Abbhokāso va pabbajjā iti disvāna pabbaji.

この在家ざいけ(gharāvāso)の生活せいかつさまたげで、ちりのつもる場所ばしょである。
出家しゅっけはひろびろとした野外やがいである、と出家しゅっけした。

仏教徒ぶっきょうとは、在家ありいえ出家しゅっけしゃであるそうとに大別たいべつできる。

在家ありいえ

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在家ありいえしゃゆうばばふさがゆうばばえびす)には、三宝さんぽう帰依きえする「さん帰依きえ戒」と、「五戒ごかい」(ろくときには「はち斎戒さいかい」)がさづけられる。

出家しゅっけ

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それにたい出家しゅっけしゃ場合ばあい見習みならそう沙弥さや沙弥さやあま)の段階だんかいでは、「さん帰依きえ戒」と、「沙弥さや」・「沙弥さやあま戒」としての「十戒じっかいとうさずかって出家しゅっけする。(沙弥さやあま場合ばあい、そのしきまたせいがくおんな)という六法ろっぽうされたねん期間きかんもうけられる。)

そして、20さいえてから、「具足ぐそく」(なみひさげまた)がさづけられ、この具足ぐそく戒をさずかることにより、正式せいしきそうとぎ僧団そうだん)の一員いちいんとしての出家しゅっけ修行しゅぎょうしゃ比丘びく比丘尼びくに)となる。

条項じょうこう

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具足ぐそく戒の条項じょうこうかずおおくかつ具体ぐたいてきであり、『よんふんりつ』では比丘びくやく250戒、比丘尼びくにやく350戒にものぼる。釈迦しゃかとし出家しゅっけ修行しゅぎょうおこなうことはすなわちこの戒をまもった修行しゅぎょうスタイルを維持いじすることにならない。また、戒をさずかった修行しゅぎょうしゃにはえないちからである戒体そなわるとされる。

律蔵りつぞう

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具足ぐそく戒やそうとぎ運営うんえい方法ほうほうは、仏典ぶってん律蔵りつぞうおさめられており、釈尊しゃくそん制定せいていしたこれらは弟子でし勝手かって変更へんこうすることはできない[1]

宗派しゅうはべつ

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上座かみざ仏教ぶっきょう

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ミャンマーマンダレー出家しゅっけしき(Shinbyu)

上記じょうきした出家しゅっけ雛形ひながたは、初期しょき仏教ぶっきょう仏教ぶっきょう時代じだいつうじて継承けいしょうされ、現在げんざいでも上座かみざ仏教ぶっきょうでは基本きほんてき維持いじされている。

中国ちゅうごく日本にっぽんきたでん仏教ぶっきょう

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大乗だいじょう仏教ぶっきょう密教みっきょう段階だんかいてき伝播でんぱしてきた中国ちゅうごく仏教ぶっきょうでは、りつむねのぞいては、全般ぜんぱんてき仏教ぶっきょう時代じだい具足ぐそく重視じゅうしされることはなかった。くわえて、『梵網けい』にもとづく菩薩戒ぼさつかいなどもつくられ、日本にっぽん仏教ぶっきょうにもおおきな影響えいきょうあたえることになった。

日本にっぽんには奈良なら時代じだいりつむね鑑真がんじんが『よんふんりつ』をつたえ、具足ぐそくのっとった伝統でんとうてきそうとぎ出家しゅっけ制度せいど確立かくりつされた。

しかし、中国ちゅうごくから天台宗てんだいしゅうつたえた最澄さいちょうは、具足ぐそく小乗しょうじょうの戒として軽視けいしし、『梵網けい』の菩薩戒ぼさつかいもとづく独自どくじ大乗だいじょう戒壇かいだん比叡山ひえいざん創設そうせつした。日本にっぽん天台宗てんだいしゅうや、そこから派生はせいした日蓮宗にちれんしゅうなどの宗派しゅうはは、当初とうしょから他国たこくのようなそうとぎ基本きほんは20にん以上いじょう出家しゅっけ僧侶そうりょからなる僧団そうだん)としての伝統でんとうをもたない。また、天台宗てんだいしゅうより派生はせいしたほか宗派しゅうは禅宗ぜんしゅうでは、具足ぐそく戒はがいして重視じゅうしされず、鎌倉かまくら時代ときよには、叡尊えいぞんはじまる真言しんごんりつむねなど一部いちぶのぞき、正式せいしき具足ぐそく戒、およ伝統でんとうてきそうとぎ出家しゅっけ制度せいど衰退すいたい消滅しょうめつした。この時期じきには浄土真宗じょうどしんしゅうのように教義きょうぎじょう公式こうしき妻帯さいたいみと開祖かいそ子孫しそんによる世襲せしゅうせいおこなった宗派しゅうは出現しゅつげんした。

江戸えど時代じだいには真言宗しんごんしゅうでは「せい法律ほうりつ」をとなえた慈雲じうん尊者そんじゃ天台宗てんだいしゅうでは天皇てんのうからとしてあおがれたごうしお律師りっしらの活躍かつやくにより日本にっぽんでも一時期いちじき正式せいしき出家しゅっけ戒律かいりつそうとぎがごく一部いちぶでは復活ふっかつしたが、ひろまりはなかった。

明治めいじ時代じだいになると、明治めいじ5ねん4がつ25にち公布こうふ太政官だじょうかん布告ふこくだい133ごう僧侶そうりょ肉食妻帯にくじきさいたい蓄髪ちくはつ等差とうさもとこと」にて、僧侶そうりょ妻帯さいたい肉食にくしょくとう公的こうてき許可きょかし、それが近代きんだい文明開化ぶんめいかいか一環いっかんとして好意こういてき受容じゅようされたことで、ますます在家ざいけ出家しゅっけ区別くべつ有名ゆうめい無実むじつした。さらには明治めいじ8ねん2がつ13にち公布こうふ平民へいみん苗字みょうじ必称義務ぎむれいによりすべての国民こくみん苗字みょうじ名字みょうじせい)を名乗なのることが義務付ぎむづけられ、僧侶そうりょ例外れいがいとされなかったので、日本にっぽん僧侶そうりょ出家しゅっけでありながら俗姓ぞくせい戒名かいみょううえけて名乗なのる(たとえば朝比奈あさひなそうはじめ高田たかだこうたねなど)ことになった。

なお、現在げんざい日本にっぽんではだい世界せかい大戦たいせん影響えいきょうもあって、それ以降いこう破戒はかいそうという言葉ことば死語しごとなり、「仏教ぶっきょうとしての僧侶そうりょ」における立場たちばよりも、釈尊しゃくそんおしえや仏教ぶっきょう戒律かいりつからは逸脱いつだつした葬式そうしき仏教ぶっきょう由来ゆらいする、個人こじん信仰しんこうによらない「職業しょくぎょう(さらには家業かぎょう)としての僧侶そうりょ」が定着ていちゃくした。一応いちおう剃髪ていはつした僧侶そうりょおおいとされるが、浄土真宗じょうどしんしゅう先例せんれいとしてなかには剃髪ていはつせず、ごく一般いっぱんてき髪型かみがたをしているもの数多かずおお存在そんざいする。また、仏教ぶっきょうでは本来ほんらい出家しゅっけしゃ在家ありいえしゃおしみちびき、在家ありいえしゃ出家しゅっけしゃ経済けいざいてきすけするものとされて、出家しゅっけ精神せいしんてき優位ゆういかれたが、紀元前きげんぜん1世紀せいきころはじまった大乗だいじょう仏教ぶっきょうにおいては、菩薩ぼさつ(ぼさつ)による衆生しゅじょう済度さいど(しゅじょうさいど)の観点かんてんから、在家ありいえ意義いぎ積極せっきょくてきみとめた。

チベット仏教ぶっきょう

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チベット仏教ぶっきょうでは、大乗だいじょう仏教ぶっきょう密教みっきょう混合こんごうしているとはいえ、アティーシャによって戒律かいりつ復興ふっこう運動うんどうがなされた結果けっか具足ぐそく戒をそうとぎ出家しゅっけ制度せいどは、現在げんざいおおくの宗派しゅうは維持いじされている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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出典しゅってん

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  1. ^ 『オウムという悪夢あくむ』(別冊べっさつ宝島たからじま229) P206 橋爪はしづめだい三郎さぶろうしる

関連かんれん項目こうもく

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