山本やまもと春はる正ただし

初代しょだい山本やまもと 春はる正ただし（やまもと しゅんしょう、慶長けいちょう15年ねん1月がつ25日にち（1610年ねん2月がつ18日にち） - 天和てんわ2年ねん9月8日にち（1682年ねん10月8日にち））は、江戸えど時代じだい初期しょきの蒔絵まきえ師し、地下ちか歌人かじん、国文学こくぶんがく者しゃ。通称つうしょうは次郎じろう三郎さぶろう、次郎じろう兵衛ひょうえ、治ち三さん郎ろう。舟木ふなきと号ごうする。蒔絵まきえ師山もろやま本家ほんけの祖そとなった。

概略がいりゃく

京都きょうとに生うまれる。父ちちは山本やまもと俊正としまさといい、源義光みなもとのよしみつの孫まごである山本やまもと義よし定じょうの末裔まつえいという。松永まつなが貞徳さだのり、木下きのした勝俊かつとし、飛鳥井あすかい雅章まさあきに和歌わかを学まなび、伊藤いとう仁斎じんさいを友ともとし漢籍かんせきにも通つうじたといわれる。漆うるし工こうに巧だくみで蒔絵まきえを得意とくいとし、春はる正せい塗ぬりの名なで世よにもてはやされる。晩年ばんねんは剃髪ていはつして法橋ほっきょうに叙じょせられ、舟木ふなきと号ごうした。享年きょうねん73で没ぼっし西林にしばやし寺てらに葬ほうむられた。長男ちょうなんに山本やまもと景正かげまさ。

国学こくがく者しゃ・漆山うるしやま天童てんどうは春はる正せいを「多芸たげい多能たのうなること本ほん阿弥あみ光悦こうえつ以後いごただ一人ひとり」と評ひょうし、同どう時代じだいでは雛ひな屋や立圃りゅうほに比ひせられるのみと賞賛しょうさんした。

編著へんちょ

• 『挙きょ白しろ集しゅう』（1649年ねん。10巻かん。木下きのした勝俊かつとしの歌うた文集ぶんしゅう。兄弟きょうだい弟子でしの打だ它公軌が編集へんしゅうしていたが、公おおやけ軌が他界たかいしたため春はる正せいが引ひき継ついで完成かんせいさせた。この翌年よくねんに尋ひろ旧きゅう坊ぼうという人物じんぶつが『挙きょ白しろ集しゅう』を攻撃こうげきする目的もくてきで『難なん挙きょ白しろ集しゅう』を出版しゅっぱんしたことは近世きんせい歌壇かだん史しではよく知しられた事件じけんである）
• 『絵え入にゅう源氏物語げんじものがたり』（1650年ねん11月自じ跋ばつ。『源氏物語げんじものがたり』の絵入えいり版本はんぽんで、近世きんせいの源氏物語げんじものがたり受容じゅように大おおきな役割やくわりを果はたした）
• 『古今ここん類句るいく』（1666年ねん）
• 『正木まさきのかづき』（1674年ねん。徳川とくがわ光圀みつくにの命いのちにより、主おもに地下ちか歌人かじんの歌うたを撰えらんだ歌集かしゅう）
• 『語句ごく類るい葉は集しゅう』
• 『舟木ふなき集しゅう』（春はる正せいの和歌集わかしゅう）
• 『法華経ほけきょう仮名がな新しん注ちゅう抄しょう』

春はる正せいの家系かけい

春はる正せいの子こ、景正かげまさも蒔絵まきえを職業しょくぎょうにしてその技工ぎこうを伝つたえ継ついだ。

• 山本やまもと景正かげまさ - 姓せいを春はる正せいとする。
• 山本やまもと政幸まさゆき - 剃髪ていはつし山本やまもと常つね照あきらと号ごうする。元もと文ぶん5年ねん（1740年ねん）に87才さいで没ぼっする。
• 山本やまもと春はる継つぎ - 宝たから暦れき12年ねん（1762年ねん）に柏木かしわぎ伴ばん助すけと改名かいめい。明和めいわ7年ねん（1770年ねん）、68才さいで没ぼっする。
• 山本やまもと正ただし令れい - 姓せいを春はる正せいとする。天明てんめい8年ねん（1788年ねん）の禁裏きんりの火事かじで自身じしんも被害ひがいに合あい、寛政かんせいに尾張おわりへ移うつり住すみその後ご剃髪ていはつ。享とおる和わ3年ねんに没ぼっした。
• 山本やまもと正之まさゆき - 文政ぶんせい8年ねん（1825年ねん）、剃髪ていはつし敬道よしみちと号ごうする。天保てんぽう2年ねん（1831年ねん）に58才さいで没ぼっする。
• 山本やまもと正徳まさのり - 静せい一いち庵あんと号ごうする。53才さいで剃髪ていはつし正せい周しゅうに家督かとくを譲ゆずる。
• 山本やまもと正ただし周しゅう - 正之まさゆきの末子まっし。明治めいじ10年ねん（1877年ねん）に没ぼっした。
• 山本やまもと正章まさあき - 弘ひろし化か3年ねん（1846年ねん）生うまれ。明治めいじ11年ねんに家督かとくを正せい兼けんに譲ゆずる。
• 山本やまもと正ただし兼けん

参考さんこう文献ぶんけん

• 飯島いいじま虚心きょしん『蒔絵まきえ師伝しでん・塗師ぬりし伝でん』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1925年ねん。 
• 横井よこい時じ冬ふゆ『工芸こうげい鏡きょう.2』六ろく合ごう館かん、1894年ねん。NDLJP:854118。 
• 五十嵐いがらし公一こういち『山本やまもと春はる正ただし「絵え入にゅう源氏物語げんじものがたり」の一いち受容じゅよう例れい』兵庫ひょうご県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかん紀要きよう 塵界じんかい 第だい26号ごう、2015年ねん3月がつ31日にち、2015年ねん。 

関連かんれん項目こうもく

• 絵え入にゅう源氏物語げんじものがたり
• 蒔絵まきえ