幸福こうふく論ろん

幸福こうふく論ろん（こうふくろん、Eudaemonics）とは幸福こうふくひいては人生じんせいそのものについての考察こうさつ・論究ろんきゅうのことをいう。

今日きょう「三さん大だい幸福こうふく論ろん」と言いえば、ヒルティの『幸福こうふく論ろん』（1891年ねん）、アランの『幸福こうふく論ろん』（1925年ねん）、ラッセルの『幸福こうふく論ろん』（1930年ねん）による3つの幸福こうふく論ろんを指さす。

主おもな幸福こうふく論ろんの特徴とくちょう

• アリストテレス
  • 『ニコマコス倫理りんり学がく』
    • 幸福こうふくとは快楽かいらくを得えることだけではなく、政治せいじを実践じっせんし、または人間にんげんの霊魂れいこんの固有こゆうの形相ぎょうそうである理性りせいを発展はってんさせることであるとして、幸福こうふく主義しゅぎをとなえた。
• エピクテトス
  • 『語録ごろく』
    • 己おのれの力ちからの及およぶものと及およばないものを識別しきべつし、自己じこ抑制よくせいをもって生いきることを説とく。
• スピノザ
  • 『エチカ』
    • 物事ものごとを永遠えいえんの相そうのもとで見みることが幸福こうふく（神かみに対たいする知的ちてき愛あい）への道みちであるとする。
• ショーペンハウエル
  • 『幸福こうふくについて』
    • 目先めさきの環境かんきょうに振ふり回まわされるのをやめ、すべては空むなしいと諦観ていかんすることで精神せいしん的てき落おち着つきを得えるべきである。世俗せぞく的てきな幸福こうふくの源泉げんせんを人ひとのあり方かた・人にんの有ゆうするもの・人にんの印象いんしょうの与あたえ方かたに大別たいべつした上うえ、肝心かんじんなのは「人ひとのあり方かた」であるとする。
  • 『意志いしと表象ひょうしょうとしての世界せかい第だい四よん部ぶ』
    • 自他じたの区別くべつを去さった意志いしの否定ひていを説とく。
• アラン
  • 『幸福こうふく論ろん』
    • 健全けんぜんな身体しんたいによって心しんの平静へいせいを得えることを強調きょうちょう。すべての不運ふうんやつまらぬ物事ものごとに対たいして、 上機嫌じょうきげんにふるまうこと。また社会しゃかい的てき礼節れいせつの重要じゅうよう性せいを説とく。
• ラッセル
  • 『幸福こうふく論ろん』
    • 己おのれの関心かんしんを外部がいぶに向むけ、活動かつどう的てきに生いきることを勧すすめる。
• ヒルティ
  • 『幸福こうふく論ろん』
    • 神かみのそば近ちかくあることが永続えいぞく的てきな幸福こうふくを約束やくそくするとする宗教しゅうきょう的てき幸福こうふく論ろん。
• 福田ふくだ恆ひさし存そん
  • 『私わたしの幸福こうふく論ろん』
    • 不ふ公正こうせいな世よの現実げんじつを見据みすえ、弱点じゃくてんを弱点じゃくてんと認識にんしきした上うえでとらわれなく生いきること。望のぞむものを手てに入いれるために戦たたかい、敗北はいぼくしても悔くいないこと。

関連かんれん書籍しょせき

• ヒルティ『幸福こうふく論ろん』岩波書店いわなみしょてん, ISBN 4003363833
• アラン『幸福こうふく論ろん』集英社しゅうえいしゃ1993 ISBN 4087520374
• ラッセル『幸福こうふく論ろん』岩波書店いわなみしょてん, ISBN 4003364937
• 神谷かみや美恵子みえこ『生いきがいについて』 みすず書房しょぼう, 2004, ISBN 4622081814
• 飯田いいだ史彦ふみひこ『生いきがいの本質ほんしつ―私わたしたちは、なぜ生いきているのか』PHP研究所けんきゅうじょ 2001, ISBN 4569575943
• 渡邊わたなべ二郎じろう『人生じんせいの哲学てつがく』放送大学ほうそうだいがく出版しゅっぱん協会きょうかい
• 中島なかじま義道よしみち『不幸ふこう論ろん』PHP新書しんしょ

関連かんれん項目こうもく

• 人生じんせいの意義いぎ
• 幸福こうふく主義しゅぎ

外部がいぶリンク

• バートランド・ラッセル『幸福こうふく論ろん』全訳ぜんやく（対訳たいやく）