弾ひき語がたり(ひきがたり)は、一人ひとりで歌唱かしょうとその伴奏ばんそうを担になう楽器がっきの演奏えんそうを同時どうじに行おこなうこと。また、弾びき歌うたい、弾びき唄うたい(ひきうたい)も同おなじ意味いみ。
歌手かしゅが歌うたに合あわせて弾ひく楽器がっきは、主おもにアコースティックギターやピアノなどのアンプラグド(アコースティック)楽器がっきのうちメロディー楽器がっきに限かぎられるが、最近さいきんは、エレクトリックギター、エレクトーン、シンセサイザーなどの電気でんき増幅ぞうふく楽器がっきや電子でんし振動しんどう楽器がっきなどでもそう呼よばれることがある。基本きほん的てきに歌うたが主体しゅたいの行為こういであるが、楽器がっき演奏えんそうについては、歌うたに簡単かんたんなコードを添そえる程度ていどのものから、凝こったアレンジや奏法そうほうで、演奏えんそうとしても魅了みりょうされるようなものまで様々さまざまである。また、作詞さくし・作曲さっきょくと歌唱かしょうをも自みずから行おこなうミュージシャンを、シンガーソングライターと呼よぶが、そういった形態けいたいにかかわらず、同時どうじに一人ひとりで演奏えんそうし歌うたう場合ばあいには、「弾ひき語がたり」が当あてはまる。
弾ひき語がたりはポピュラー音楽おんがくの範囲はんいで使つかわれる言葉ことばであり、三味線しゃみせんを弾ひきながら長唄ながうたを歌うたう、ピアノを弾ひきながら童謡どうようを歌うたう、などの場合ばあいは弾ひき歌うたいという。よって、弾ひき語がたりの起源きげんを吟遊詩人ぎんゆうしじんや琵琶びわ法師ほうしなどにまで遡さかのぼる説せつもあるが、現在げんざいの弾ひき語がたりと直接的ちょくせつてきな繋つながりがあるかどうかは明確めいかくになっていない。
日本にっぽんにおける現在げんざいにつながる大衆たいしゅう音楽おんがくの範囲はんいでの「弾ひき語がたり」の起源きげんおよび普及ふきゅうは、昭和しょうわ40年ねん頃ころから徐々じょじょに広ひろまったフォークソングブームといわれ、1970年代ねんだい初頭しょとうには、井上いのうえ陽水ようすい、吉田よしだ拓郎たくろうなどのシンガーソングライターがさらに若者わかものにアピールする形かたちで普及ふきゅうさせたといえる。その後ご、1980年代ねんだい後半こうはんから1990年代ねんだい前半ぜんはんまでにピークだった、アンプラグドブームをきっかけとしたものなど、小ちいさな波なみが何なん度どか訪おとずれた(例れい:KAN、槙原まきはら敬之たかゆき、楠瀬くすのせ誠志郎せいしろう)。ただし「アンプラグド」の本来ほんらいのコンセプトは「エレクトリックサウンドの演奏えんそうをアコースティック楽器がっきの演奏えんそう中心ちゅうしんにアレンジし直なおす」ということであり、必かならずしも「アコースティック楽器がっきによる『弾ひき語がたり』」である必要ひつようはなく、「ブーム復活ふっかつのきっかけの一ひとつ」という意味いみにすぎない。
日本にっぽんでは、ライブハウス中心ちゅうしんに一人ひとりで活動かつどうしているアーティストに「弾ひき語がたり」の形態けいたいを主おもとしている人ひとが多おおい。また、邦くに洋楽ようがくにおいて、ロック、ポップスなどを問とわず「バンド」形態けいたいのミュージシャンであっても、その構成こうせいメンバーの一人ひとりを押おし出だす目的もくてきなどでスタジオ録音ろくおん作品さくひんの中なかやライヴパフォーマンスの一環いっかんとして弾ひき語がたりのコーナーを設もうける例れいもあり、その行為こういも「弾ひき語がたり」と呼よぶ(例れい:ビートルズのアルバムザ・ビートルズ(俗称ぞくしょう:ホワイトアルバム)に収録しゅうろくの「ブラックバード」、奥田おくだ民生たみお「ひとり股旅またたび」など)。近年きんねん広範囲こうはんいでブームとなった、ストリートミュージシャンの中なかにも、特とくに一人ひとりでプレイする場合ばあいは「弾ひき語がたり」の形態けいたいをとるものが多おおい。
ゆずは2001年ねん6月29日にちに東京とうきょうドームにおいて、アンジェラ・アキは2006年ねん12月26日にちに日本武道館にほんぶどうかんにおいて弾ひき語がたり形式けいしきでのワンマンライブを成功せいこうさせており、近年きんねんでは「一切いっさいバックバンドを置おかない形式けいしき」という大型おおがた会場かいじょうのライブも増ふえつつある。
2014年ねん頃ごろからはYUIのブレイクを契機けいきとしてギター弾ひき語がたり形式けいしきをとる女性じょせいミュージシャンが増加ぞうかした。メディアなどでは「ギター女子じょし」ブームと呼よばれており、miwa、chay、山本やまもと彩あや、大原おおはら櫻子さくらこ、阿部あべ真央まお、片平かたひら里菜りな、大森おおもり靖子やすこ、藤原ふじわらさくら、井上いのうえ苑子そのこらが活躍かつやくしている[1][2][3]。
近年きんねんでは、動画どうが配信はいしんサイトを中心ちゅうしんに弾ひき語がたり活動かつどうを行おこなうアーティストも台頭たいとうしている。