曲射きょくしゃ砲ほう

曲射きょくしゃ砲ほう（きょくしゃほう）とは、弾丸だんがんが放物線ほうぶつせん軌道きどうを描えがいて飛翔ひしょうし目標もくひょうを攻撃こうげきする大砲たいほうの事ことである。間接かんせつ射撃しゃげきなどで用もちいられる。直接ちょくせつ相手あいてを狙ねらう“直射ちょくしゃ”砲ほうに対たいする種類しゅるい。

概要がいよう

曲射きょくしゃ砲ほうは、射撃しゃげき距離きょりが遠とおい条件じょうけんで主おもに用もちいられる。

このような条件じょうけんでは、直接ちょくせつ相手あいてを狙ねらう射撃しゃげきでは弾丸だんがんが地球ちきゅうの重力じゅうりょくによって高度こうどを下さげてしまい命中めいちゅうしない。そのため遠距離えんきょりの目標もくひょうに無む誘導ゆうどうの弾丸だんがんを命中めいちゅうさせるためには、弾丸だんがんを上うえ方向ほうこうに発射はっしゃして落下らっか地点ちてんと目標もくひょう物ぶつが同おなじ位置いちになるように砲身ほうしんに仰角ぎょうかくを持もたせる必要ひつようがある^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。

利点りてんと欠点けってん

直接ちょくせつ射撃しゃげきを行おこなう砲ほう、または同おなじ砲ほうを用もちいて直接ちょくせつ射撃しゃげきと曲射きょくしゃを行おこなった場合ばあいを比較ひかくすると、曲射きょくしゃには以下いかの利点りてん、欠点けってんがある。

利点りてん

放物線ほうぶつせん軌道きどうによる飛ひ距離きょりの増大ぞうだい
着弾ちゃくだん時じの弾たま速そく≒初速しょそくとなり威力いりょくが増大ぞうだい
障害しょうがい物ぶつの向むこうにいる目標もくひょうに攻撃こうげき可能かのう。飛ひ距離きょりがあれば地平線ちへいせん（水平すいへい線せん）の下したの相手あいても攻撃こうげき可能かのう。

欠点けってん

着弾ちゃくだんまでの時間じかんが長ながくなる。
動うごく目標もくひょうを狙ねらうのは極きわめて困難こんなんで、目標もくひょうの未来みらいの位置いちを予測よそくする必要ひつようがある。
運用うんようの手間てまや人員じんいんがかさむ。砲撃ほうげきを行おこなう人員じんいんの他ほかに、少すくなくとも目標もくひょうまでの距離きょりを計測けいそくして弾道だんどう計算けいさんを行おこなう人員じんいん、着弾ちゃくだん点てんから弾道だんどう計算けいさんのズレを報告ほうこくする観測かんそく員いんが必要ひつようである。

直接ちょくせつ射撃しゃげきを行おこなう砲ほうに比くらべて曲射きょくしゃ砲ほうは欠点けってんもあるが、射程しゃていの長ながさは戦術せんじゅつ的てき優位ゆうい性せいに直結ちょっけつする要素ようそであると同時どうじに長距離ちょうきょり兵器へいきを保有ほゆうしている事ことで戦略せんりゃく的てき優位ゆうい性せいにも寄与きよするので、曲射きょくしゃ砲ほうの研究けんきゅう開発かいはつは盛さかんに行おこなわれた。

弾道だんどう計算けいさん

曲射きょくしゃ砲ほうでの砲撃ほうげきには弾道だんどう計算けいさんが不可欠ふかけつである。基本きほんは自分じぶんの位置いちを原点げんてんとした二に次じ方程式ほうていしきを解とく事ことにより、相手あいてに命中めいちゅうする弾道だんどうを求もとめる。通常つうじょう、弾丸だんがんの初速しょそくは砲ほうによって決きまっているので、算出さんしゅつすべきは砲ほうの仰角ぎょうかくである。しかし砲ほうの性能せいのうが向上こうじょうするにつれ射程しゃていが伸のび、空気くうき抵抗ていこう、温度おんど、湿度しつど、気圧きあつ、風向かざむき、砲台ほうだいが固定こていされている地盤じばんの固かたさ、地球ちきゅうの自転じてんによるコリオリの力ちからなど弾道だんどう計算けいさんで考慮こうりょすべき条件じょうけんが増ふえ、計算けいさんは極きわめて複雑ふくざつなものとなる。弾道だんどう計算けいさんに関かんしては弾道だんどう学がくを参照さんしょうされたい。