山砲さんぽう

山砲さんぽう（さんぽう、英えい: Mountain Gun、Pack gun、Pack howitzer、独どく: Gebirgsgeschütz）は、大砲たいほうの一種いっしゅ。同どう口径こうけいの野砲やほうないし軽けい榴弾りゅうだん砲ほうと比くらべて軽量けいりょう・小型こがたかつ分解ぶんかいが可能かのうで、砲ほう口こう直径ちょっけいに対たいする砲身ほうしん長ちょうが短みじかく、低ひく初速しょそく・短たん射程しゃていである。

概要がいよう編集へんしゅう

分解ぶんかいされロバに乗のせられたQF 2.95インチ山砲さんぽう

山砲さんぽうは文字通もじどおり山岳さんがく地帯ちたいや不ふ整地せいちなど、通常つうじょうの野砲やほうが行動こうどう力りょくを発揮はっきできない地形ちけいで軽快けいかいな機動きどうを行おこなうことができる野戦やせん砲ほうである。野砲やほうのように輓馬ばんばや自動車じどうしゃ・牽引けんいん車しゃによる牽引けんいんのみならず、分解ぶんかいして駄だ載の・車載しゃさいする他ほか、人力じんりきでも搬送はんそうが可能かのうな点てんが大おおきな特徴とくちょうである。そのため一般いっぱん的てきに各かく部品ぶひんは同どう口径こうけいの野砲やほうと比較ひかくし極きわめて軽かるく作つくられており、火砲かほう自体じたいのサイズもコンパクト。しかしながら分解ぶんかい可か・軽量けいりょう化かのため各部かくぶの強度きょうどは必然ひつぜん的てきに下さげられている。また野砲やほうと同おなじ弾頭だんとうを使用しようする場合ばあいもあるが、これをより少すくない装そう薬やくで短たん砲身ほうしんから発射はっしゃするため、野砲やほうに比くらべて低てい初速しょそく・短たん射程しゃていである。

山岳さんがく部隊ぶたいなど高低こうてい差さの激はげしい地域ちいきに投入とうにゅうされる部隊ぶたいが保有ほゆうすることが多おおいほか、装備そうびの軽量けいりょう化かを厳きびしく要求ようきゅうされる空挺くうてい師団しだんに配備はいびされることも多おおい。ほとんどの場合ばあい、野砲やほうに代かわって師団しだん砲兵ほうへい（師団しだん隷下れいかの山砲さんぽう兵へい連隊れんたい等ひとしを意味いみする）に配備はいびされる。本国ほんごくおよび作戦さくせん地域ちいきに地形ちけい上じょう険けわしい山やまが多おおいイタリアやフランス、オーストリア=ハンガリー（帝国ていこく解体かいたい後ごはチェコスロバキアが製造せいぞう）、日本にっぽんなどでは特とくに山砲さんぽうの需要じゅようが高たかく、多た種類しゅるいの山砲さんぽう・山砲さんぽう兵へい部隊ぶたいが整備せいびされている。

大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんは各種かくしゅの重じゅう歩兵ほへい砲ほうを試作しさくしていたが、実際じっさいには旧式きゅうしき山砲さんぽう（四よん一式いっしき山砲さんぽう）を歩兵ほへい連隊れんたいに配備はいびして歩兵ほへい砲ほうとして大々的だいだいてきに運用うんようした。製造せいぞうと運用うんようが容易よういで歩兵ほへいとともに第だい一線いっせんで行動こうどうでき、その大だい口径こうけいを生いかし支援しえん射撃しゃげきのみならず、火ひ点てんの制圧せいあつや対戦たいせん車しゃ戦せんまでこなせる等ひとし、汎用はんよう性せいが高たかい山砲さんぽうは歩兵ほへい砲ほうとしても有力ゆうりょくな装備そうびであった。また中国ちゅうごく戦線せんせん・南方みなかた戦線せんせん・北方ほっぽう戦線せんせんといった複雑ふくざつな地形ちけいが主戦しゅせん場じょうであった日本にっぽんにとっては、山砲さんぽうは砲兵ほうへい・歩兵ほへいともに扱あつかいやすく、ほぼ全すべての戦線せんせんに投入とうにゅうされ効果こうか的てきに使用しようされている。一部いちぶの野砲やほう兵へい連隊れんたいは作戦さくせん地域ちいきによっては臨時りんじ的てきに野砲やほうではなく山砲さんぽうを装備そうびしている。

Mod56 105mm榴弾りゅうだん砲ほう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以降いこうの現代げんだいでは、パラシュート（空中くうちゅう投下とうか）やヘリコプター（ヘリボーン）の発達はったつにより軽けい榴弾りゅうだん砲ほうなど比較的ひかくてき大型おおがたの火砲かほうも山上さんじょうへの運搬うんぱんが容易よういとなり、また迫撃はくげき砲ほうの進化しんかによって狭義きょうぎの「山砲さんぽう」は「野砲やほう」とともに消滅しょうめつした砲ほう種類しゅるいとなっている。ただし、1950年代ねんだいにイタリアのオート・メラーラが開発かいはつした山砲さんぽうMod56は、60年代ねんだいにイギリスおよびイギリス連邦れんぽう諸国しょこくが、野砲やほう・軽けい榴弾りゅうだん砲ほう兼用けんよう砲ほうとして運用うんようしていたQF 25ポンド砲ほうの後続こうぞく（L5 105mm榴弾りゅうだん砲ほう）として制式せいしき採用さいようしたこともあり、メキシコなどの中小ちゅうしょう国軍こくぐんを中心ちゅうしんに一いち定数ていすうが現役げんえきである。

空挺くうてい部隊ぶたいや山岳さんがく部隊ぶたいには小しょう口径こうけいの105mm / 122mm榴弾りゅうだん砲ほうもしくは口径こうけい120mmの重じゅう迫撃はくげき砲ほうを配備はいびすることが多おおいが、国くにによっては牽引けんいん式しきの155mm / 152mm榴弾りゅうだん砲ほうを配備はいびすることもある。