残留ざんりゅう農薬のうやく

残留ざんりゅう農薬のうやく（ざんりゅうのうやく）とは、食物しょくもつに残のこった農薬のうやくのこと。

概要がいよう

食品しょくひん衛生えいせい法ほうでは、農薬のうやく取締とりしまり法ほうで定義ていぎされる農薬のうやくに加くわえ飼料しりょう添加てんか物ぶつや動物どうぶつ医薬品いやくひんについても、その残留ざんりゅう量りょうが基準きじゅんを超こえてはならないと定さだめられている。残留ざんりゅう基準きじゅんは厚生こうせい労働省ろうどうしょう薬事やくじ・食品しょくひん衛生えいせい審議しんぎ会かいの答申とうしんを受うけて厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめ^[1]、別べつに定さだめのない限かぎり、厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんの定さだめる残留ざんりゅう基準きじゅんは0.01ppmとされており、これを一律いちりつ基準きじゅんと呼よぶ^[2]。

農薬のうやくの残留ざんりゅう基準きじゅんは作物さくもつの種類しゅるいごとに定さだめられている。これは少量しょうりょうしか摂取せっしゅしない作物さくもつと大量たいりょうに摂取せっしゅする作物さくもつとでは残留ざんりゅう濃度のうどが同おなじでも体内たいないに取とり込こむ量りょうが異ことなることや、調理ちょうりの仕方しかたによって取とり除のぞかれる割合わりあいが異ことなることなどによる。残留ざんりゅう基準きじゅんを定さだめるには動物どうぶつ実験じっけんを行おこなって一いち日にち摂取せっしゅ許容きょよう量りょうを決定けっていするなど多大ただいな時間じかんとコストがかかるため、あらゆる作物さくもつに残留ざんりゅう基準きじゅんを定さだめることはできない。

基準きじゅん値ちを超こえた残留ざんりゅう農薬のうやくが検出けんしゅつされて問題もんだいとなるよくあるケースに、その作物さくもつに適用てきようのない農薬のうやく（無む登録とうろく農薬のうやく）がドリフトなどによって付着ふちゃくしてしまったという例れいがある。この場合ばあい、残留ざんりゅうしていた量りょうが適用てきようのある作物さくもつで定さだめられた残留ざんりゅう基準きじゅんに満みたなくても、適用てきようのない作物さくもつでは一律いちりつ基準きじゅんが用もちいられるため、安全あんぜん性せいとは無関係むかんけいに基準きじゅん値ち超過ちょうかとなってしまうことがある。

歴史れきし

日本にっぽんでは1951年ねん、厚生省こうせいしょうがリンゴにおけるDDTの残留ざんりゅう農薬のうやく基準きじゅんを7ppmと定さだめたが、指導しどう通知つうちであり法的ほうてきな拘束こうそく力りょくは無なかった。1968年ねんに厚生こうせい大臣だいじんの諮問しもん機関きかんである食品しょくひん衛生えいせい調査ちょうさ会かいが四よん食品しょくひん（リンゴ、ブドウ、キュウリ、トマト）別べつに砒素ひそ、鉛なまり、ベンゼンヘキサクロリド（BHC）、DDT、パラチオンの残留ざんりゅう農薬のうやく許容きょよう量りょうを答申とうしん。都道府県とどうふけんや農業のうぎょう団体だんたいに通達つうたつされた^[3]。

日本にっぽん国内こくないにおいて、残留ざんりゅう農薬のうやくへの不安ふあんは昭和しょうわ30年代ねんだいから高たかまりを見みせていた。1956年ねん（昭和しょうわ31年ねん）8月がつにライオン油脂ゆしから初はじめて発売はつばいされた台所だいどころ用よう洗剤せんざいには、野菜やさいについた残留ざんりゅう農薬のうやくも低減ていげんできる効能こうのうがうたわれていた^[4]^[5]。

定量ていりょうが困難こんなんな薬剤やくざい

テトラサイクリン系けい抗生こうせい物質ぶっしつ（TC系けい）はカルシウムなど2価かの金属きんぞくイオンとキレートを形成けいせいする為ため、厚生こうせい労働省ろうどうしょう通知つうちの動物どうぶつ用よう医薬品いやくひん一斉いっせい試験しけん法ほうで定量ていりょうすることは困難こんなんであった^[6]。TC系けいは主おもに成長せいちょう促進そくしん剤ざいとして使用しようされている^[7]。また、耐たい性せい菌きんを発現はつげんさせる原因げんいんにもなりえる。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 食品しょくひん衛生えいせい法ほう第だい十じゅう一いち条じょう
^ 『平成へいせい17年ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじ第だい497号ごう食品しょくひん衛生えいせい法ほう第だい１１条じょう第だい３項こうの規定きていにより人ひとの健康けんこうを損そこなうおそれのない量りょうとして厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめる量りょうを定さだめる件けん』（プレスリリース）厚生こうせい労働省ろうどうしょう医薬いやく食品しょくひん局きょく食品しょくひん安全あんぜん部ぶ、2005年ねん11月。
^ 残留ざんりゅう農薬のうやくから食卓しょくたく守まもる四よん食品しょくひんに許容きょよう量りょう『朝日新聞あさひしんぶん』1968年ねん（昭和しょうわ48年ねん）3月がつ21日にち夕刊ゆうかん 3版はん 11面めん
^ “石鹸せっけん洗剤せんざい知識ちしき除菌じょきんや時短じたんの訴求そきゅうが本格ほんかく化か台所だいどころ用よう洗剤せんざいが生うまれて60年ねん”. 日本にっぽん石鹸せっけん洗剤せんざい工業こうぎょう会かい (2016年ねん6月がつ15日にち). 2024年ねん9月がつ29日にち閲覧えつらん。
^ 世相せそう風俗ふうぞく観察かんさつ会かい『現代げんだい世相せそう風俗ふうぞく史し年表ねんぴょう：1945-2008』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2009年ねん3月がつ、75頁ぺーじ。ISBN 9784309225043。
^ Yoshida E「Study of simultaneous determination of residual veterinary drugs including tetracycline antibiotics in milk and dairy products. （乳ちちおよび乳製品にゅうせいひん中ちゅうのテトラサイクリン系けい抗生こうせい物質ぶっしつを含ふくめた動物どうぶつ用よう医薬品いやくひん一斉いっせい分析ぶんせきの検討けんとう）」『食品しょくひん衛生えいせい学がく雑誌ざっし.』第だい50巻かん第だい5号ごう、日本にっぽん食品しょくひん衛生えいせい学会がっかい、2009年ねん10月がつ、216-22頁ぺーじ、doi:10.3358/shokueishi.50.216、PMID 19897947、2016年ねん10月がつ18日にち閲覧えつらん。
^ 「家畜かちくに使用しようされる抗菌こうきん性せい物質ぶっしつに対たいする農林水産省のうりんすいさんしょうのリスク管理かんり農水省のうすいしょう (PDF)

外部がいぶリンク

食品しょくひん中ちゅうの残留ざんりゅう農薬のうやく等とう - 厚生こうせい労働省ろうどうしょう
「残留ざんりゅう農薬のうやく許容きょよう量りょう:FAO, WHO共同きょうどう専門せんもん委員いいん会かいの発表はっぴょう」『栄養えいよう学がく雑誌ざっし』 26巻かん 2号ごう 1968年ねん p.106-108, doi:10.5264/eiyogakuzashi.26.106, 日本にっぽん栄養えいよう改善かいぜん学会がっかい
「伊東いとう幸恵ゆきえ、大浦おおうら裕二ゆうじ、清野きよの誠まこと喜き、農産物のうさんぶつの残留ざんりゅう農薬のうやくに対たいする消費しょうひ者しゃ意識いしき」『農林のうりん業ぎょう問題もんだい研究けんきゅう』 41巻かん 1号ごう 2005年ねん p.150-152, doi:10.7310/arfe1965.41.150, 地域ちいき農林のうりん経済けいざい学会がっかい
「梅津うめづ憲治けんじ、“農薬のうやくが危あぶない！”と誰だれが言いっているの？如何いかにして人々ひとびとの農薬のうやくに対たいする認識にんしきを変かえるか」『Journal of Pesticide Science.』 36巻かん 2号ごう 2011年ねん p.308-311, doi:10.1584/jpestics.W11-01, 日本農薬にほんのうやく学会がっかい

[1] 食品しょくひん衛生えいせい法ほう第だい十じゅう一いち条じょう

[2] 『平成へいせい17年ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょう告示こくじ第だい497号ごう食品しょくひん衛生えいせい法ほう第だい１１条じょう第だい３項こうの規定きていにより人ひとの健康けんこうを損そこなうおそれのない量りょうとして厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが定さだめる量りょうを定さだめる件けん』（プレスリリース）厚生こうせい労働省ろうどうしょう医薬いやく食品しょくひん局きょく食品しょくひん安全あんぜん部ぶ、2005年ねん11月。

[3] 残留ざんりゅう農薬のうやくから食卓しょくたく守まもる四よん食品しょくひんに許容きょよう量りょう『朝日新聞あさひしんぶん』1968年ねん（昭和しょうわ48年ねん）3月がつ21日にち夕刊ゆうかん 3版はん 11面めん

[4] “石鹸せっけん洗剤せんざい知識ちしき除菌じょきんや時短じたんの訴求そきゅうが本格ほんかく化か台所だいどころ用よう洗剤せんざいが生うまれて60年ねん”. 日本にっぽん石鹸せっけん洗剤せんざい工業こうぎょう会かい (2016年ねん6月がつ15日にち). 2024年ねん9月がつ29日にち閲覧えつらん。

[5] 世相せそう風俗ふうぞく観察かんさつ会かい『現代げんだい世相せそう風俗ふうぞく史し年表ねんぴょう：1945-2008』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2009年ねん3月がつ、75頁ぺーじ。ISBN 9784309225043。

[pmid19897947-6] Yoshida E「Study of simultaneous determination of residual veterinary drugs including tetracycline antibiotics in milk and dairy products. （乳ちちおよび乳製品にゅうせいひん中ちゅうのテトラサイクリン系けい抗生こうせい物質ぶっしつを含ふくめた動物どうぶつ用よう医薬品いやくひん一斉いっせい分析ぶんせきの検討けんとう）」『食品しょくひん衛生えいせい学がく雑誌ざっし.』第だい50巻かん第だい5号ごう、日本にっぽん食品しょくひん衛生えいせい学会がっかい、2009年ねん10月がつ、216-22頁ぺーじ、doi:10.3358/shokueishi.50.216、PMID 19897947、2016年ねん10月がつ18日にち閲覧えつらん。

[maff_siryou_4-7] 「家畜かちくに使用しようされる抗菌こうきん性せい物質ぶっしつに対たいする農林水産省のうりんすいさんしょうのリスク管理かんり農水省のうすいしょう (PDF)

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