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温泉権 - Wikipedia

温泉おんせんけん(おんせんけん)とは、温泉おんせんげん利用りようする権利けんりのこと。土地とち存在そんざいする温泉おんせん利用りようけんのことをいい、土地とち所有しょゆうけんとはべつ取引とりひきすることができる。

概要がいよう

編集へんしゅう

温泉おんせんけんは、物権ぶっけんてき性質せいしつ権利けんりであると慣習かんしゅうばれている権利けんりであるが、日本にっぽん物権ぶっけん法定ほうてい主義しゅぎ民法みんぽう175じょう民法みんぽう施行しこうほう35じょう)をっているため、厳密げんみつには債権さいけんであって、信義しんぎそくによる保護ほごによって物権ぶっけんてき性質せいしつしめ[独自どくじ研究けんきゅう?]判例はんれい民法みんぽう施行しこう以降いこう発生はっせいしたものについて、債権さいけんてき法律ほうりつ関係かんけいによって形成けいせいされるとしている(東京とうきょう高裁こうさいれい元年がんねん金融きんゆう商事しょうじ判例はんれい1587ごう22ぺーじ)。なお、民法みんぽう施行しこうよりふる時代じだいからある温泉おんせん場合ばあいなど、土地とち所有しょゆうめい義人ぎじんとうとの総有そうゆう関係かんけいもとづく慣習かんしゅうともな場合ばあいは、民法みんぽうさだめる用益ようえき物権ぶっけんである入会にゅうかいけん温泉おんせん入会にゅうかいけん)に該当がいとうし、温泉おんせんけんとは別種べっしゅ権利けんりとなる。

法令ほうれいさだめのない物権ぶっけん設定せっていする契約けいやくは、物権ぶっけん設定せってい契約けいやくとしては無効むこうとなるが、債権さいけん契約けいやくとしては有効ゆうこうであり、当事とうじしゃあいだ効力こうりょくゆうする。また、土地とち使用しようかんする永続えいぞくてき債権さいけん設定せっていされていることをりつつ、これを第三者だいさんしゃ所有しょゆうけん取得しゅとくするひとし行為こういにより侵害しんがいすることは、土地とち所有しょゆうしゃによる共同きょうどう不法ふほう行為こうい成立せいりつし、信義しんぎそくじょうゆるされないとされている。大掛おおがかりな配管はいかん設備せつびもちいて温泉おんせん使用しようしている場合ばあいなど、現地げんち実際じっさいおとずれれば温泉おんせん永続えいぞくてき使用しようけん存在そんざいすることが予見よけんできる場合ばあいには、債権さいけんであっても信義しんぎそく適用てきようによって結果けっかてきに、物権ぶっけん同様どうよう第三者だいさんしゃ対抗たいこうりょくしょうじるのである。

温泉おんせんけんは、土地とち賃借ちんしゃくけん使用しよう貸借たいしゃくけんによる土地とち使用しようおなじく、土地とちにアクセスし管理かんりするための占有せんゆうけんともない、土地とち所有しょゆうしゃとうとも占有せんゆうけんゆうする。 温泉おんせんから温泉おんせんすいを、土地とち所有しょゆうしゃ負担ふたん敷地しきちがいおくとどける契約けいやくによる権利けんりや、土地とち所有しょゆうしゃ施設しせつ管理かんりにおいて温泉おんせん入浴にゅうよくサービスをける契約けいやくによる権利けんりは、占有せんゆうけんともなわないため、温泉おんせんけんではない。なお、占有せんゆうけん民法みんぽうさだめる物権ぶっけんであるが、そのことを理由りゆうほんけんである温泉おんせんけん物権ぶっけんかんがえるのはあやまりである。

裁判さいばんれいでは、温泉おんせんけん慣習かんしゅうじょうの「物権ぶっけんてき権利けんり」としょうするものがみられる。しかし、これらは当事とうじしゃ主張しゅちょう論理ろんりをそのまま採用さいようしたにすぎないとも理解りかいできる。判例はんれいは、第三者だいさんしゃへの対抗たいこう永続えいぞくてき温泉おんせん使用しよう実態じったいがあればりるとして、温泉おんせん使用しようかんする権利けんり設定せってい当初とうしょ時点じてんにおいて、永続えいぞくてき債権さいけんとして設定せっていされたのか、「物権ぶっけん」としょうして設定せっていされたのか、そのちがいについて立証りっしょう責任せきにんしてはいない。

学説がくせつでも、温泉おんせんけんを「物権ぶっけん」や「慣習かんしゅうじょう物権ぶっけん」に分類ぶんるいするものがおおい。しかし、これは、世界せかい各国かっこくほう制度せいど比較ひかく検討けんとうし、物権ぶっけん一般いっぱんてき性質せいしつ定義ていぎしたうえでのものであり、日本にっぽん法体ほうたいけいにおける形式けいしきてき分類ぶんるいによれば、「物権ぶっけん」に分類ぶんるいしないのであれば、「債権さいけん」に分類ぶんるいされ、温泉おんせんけんは「債権さいけん」に分類ぶんるいされるものである。そして、物権ぶっけん法定ほうてい主義しゅぎは、債権さいけん信義しんぎそく適用てきようによって物権ぶっけんてき性質せいしつびることを否定ひていするものではない。

また、そもそも日本にっぽん法体ほうたいけいを「物権ぶっけん」でなければ「債権さいけん」になるからとして、一般いっぱんてき債権さいけん性質せいしつ理解りかいしようとすることについては、ふるくから批判ひはんもある。しかし、そうであるからこそ、裁判さいばんれいでは信義しんぎそく適用てきようした法益ほうえき調整ちょうせいおこなわれており、いかなる場合ばあいにおいて信義しんぎそくによる法益ほうえき調整ちょうせいようするかという判断はんだん基準きじゅんかんがかたについては、下記かきのように様々さまざま学説がくせつとなえられていると理解りかいすることができる。

  • 水口みずぐちひろしら『物権ぶっけんほう』(あおりん書院しょいん)は、判例はんれいは、「慣習かんしゅうじょう物権ぶっけん」たる温泉おんせんけんにつき、「正面しょうめんから物権ぶっけんといわずに、一種いっしゅ物権ぶっけんてき権利けんりであるという表現ひょうげんながら、肯定こうていしたとみられるものがあらわれている」(大判おおばん昭和しょうわ15ねん9がつ18にちみんしゅう19-1611)としたうえ(9ぺーじ)、慣習かんしゅうじょう物権ぶっけんみとめる学説がくせつについて、(1)民法みんぽう175じょうおよ民法みんぽう施行しこうほう35じょうは、社会しゃかい現実げんじつ遊離ゆうりした規定きていであるから、無視むしすべきであるとするせつ、(2)民法みんぽう施行しこうほう35じょうは、民法みんぽう施行しこう発生はっせいする慣習かんしゅうほうじょう物権ぶっけん否認ひにんする趣旨しゅしではないとするせつ、(3)民法みんぽう175じょうにいう「法律ほうりつ」には、慣習かんしゅうほうふくむとするせつ、(4)法例ほうれい2じょう根拠こんきょもとめるせつなどがあると整理せいりする(10ぺーじ)。同書どうしょは、これらの学説がくせつ整理せいりたり、「信義しんぎそく」というかんがかたれないが、これをほん項目こうもく説明せつめいしたがってぜんかいすれば、前記ぜんき(1)から(4)は、信義しんぎそくによる法益ほうえき調整ちょうせい判断はんだん基準きじゅんとなるかんがかた整理せいりしたものとなろう。
  • 川島かわしまたけしむべへん注釈ちゅうしゃく民法みんぽう(7)』(有斐閣ゆうひかく)・610ぺーじ以下いか川島かわしまたけしむべ執筆しっぴつ)は、江戸えど時代じだいまでの旧慣きゅうかんとしての温泉おんせんけん近代きんだいほうわくないにおける温泉おんせんけん区別くべつしつつ、いずれについても、法例ほうれいじょうにいわゆる「法令ほうれい規定きていナキ事項じこう」にたるとし、「独立どくりつ物権ぶっけんとして承認しょうにんするのは当然とうぜん」(616ぺーじ)、「これを独立どくりつした物権ぶっけんとして承認しょうにんすることは民法みんぽう175じょう矛盾むじゅんしない」(620ぺーじ)とする。どう論文ろんぶんには、「信義しんぎそく」という用語ようごもちいられていないが、これをほん項目こうもく説明せつめいしたがってぜんかいすれば、第三者だいさんしゃ対抗たいこうできるものを「物権ぶっけん」と理解りかいし、信義しんぎそくによる法益ほうえき調整ちょうせい判断はんだん基準きじゅんとして法例ほうれい2じょう立法りっぽう趣旨しゅしもちいられたかんがかた採用さいようしたということになろう。
  • 内田うちだたか民法みんぽうI[だい2はん]』(東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい)・328ぺーじは、「物権ぶっけん法定ほうてい主義しゅぎをとると、早速さっそくしょうじてくるのが、慣習かんしゅうほうとして存在そんざいしている物権ぶっけんまったみとめられないか、という問題もんだいである。」、「判例はんれいは、いくつかの物権ぶっけん慣習かんしゅうほうじょう物権ぶっけんとしてみとめている。有名ゆうめいなのは、温泉おんせん専用せんようけん(いわゆる「湯口ゆぐちけん」)をみとめた大判おおばん昭和しょうわ15ねん9がつ18にちみんしゅう19-1611)である。」とする(ただし、同書どうしょ指摘してきする大審院だいしんいん判例はんれいは、「物權ぶっけんてき權利けんり」という表現ひょうげんもちいている。)。
  • 山形やまがた地裁ちさい昭和しょうわ43ねん11月25にち判決はんけつ判例はんれい時報じほう543ごう70ぺーじ)は、「本件ほんけん温泉おんせん利用りようけん性質せいしつ」が「物権ぶっけん」か「債権さいけん」かという論点ろんてんについて、当該とうがい地域ちいきにおいて「源泉げんせんけんとは別個べっこに、自由じゆう譲渡じょうと取引とりひき対象たいしょうとなし、源泉げんせんけんしゃあるい利用りよう権利けんりしゃのいずれに変更へんこうがあつても、その権利けんり関係かんけい覆滅ふくめつさせないものとした契約けいやくのなされる事例じれい」があり、これは「一定いってい温泉おんせんりょうにつき直接ちょくせつ排他はいたてき利用りようすることを内容ないようとする権利けんりとして把握はあくるものと理解りかいされ」るなどとして、「慣習かんしゅうほうじょう用益ようえき物権ぶっけん」の成立せいりつみとめ、「現行げんこう民法みんぽうしたにおいても一定いってい慣行かんこうにもとづいて発生はっせいし、法的ほうてき確信かくしんるにいたり、慣習かんしゅうほうたる物権ぶっけんとしてその存立そんりつみとめることはけっしてほう理想りそうはんするものでないとする。」と判示はんじする。この裁判さいばんれいは、一般いっぱんてきな「物権ぶっけん」の性質せいしつ定義ていぎしめしたものではなく、物権ぶっけん成立せいりつかんし「信義しんぎそく」という単語たんごもちいていないが(他方たほうべつ論点ろんてんでは「信義しんぎそく」が問題もんだいとなっている。)、ほん項目こうもく説明せつめいしたがってぜんかいすれば、どう裁判さいばんれいは、物権ぶっけん性質せいしつ例示れいじすることで「物権ぶっけん」を定義ていぎしたうえで、「法的ほうてき確信かくしん」を信義しんぎそくによる法益ほうえき調整ちょうせい判断はんだん基準きじゅんとして、性質せいしつめんにおいて「物権ぶっけん」となる権利けんりしょうじることをしめし、法益ほうえき調整ちょうせいをしたものということになる。
  • 高松たかまつ高裁こうさい昭和しょうわ56ねん12月7にち判決はんけつ判例はんれい時報じほう1044ごう383ぺーじ)は、問題もんだいとなった温泉おんせん旅館りょかん明治めいじ以前いぜんからの営業えいぎょう実態じったい近隣きんりん住民じゅうみんとの関係かんけいとう詳細しょうさい認定にんていし、「泉源せんげんである…の山林さんりん所有しょゆうけんとは別個べっこ独立どくりつ慣習かんしゅうほうじょう物権ぶっけんとしての温泉おんせんけん成立せいりつし」たと判示はんじしている。どう裁判さいばんれいは、具体ぐたいてき事実じじつ認定にんていした問題もんだいとされる権利けんりが、「物権ぶっけんとしての温泉おんせんけん」にたると判示はんじしたものであり、そこでいう「物権ぶっけん」とはなにかを明示めいじてきろんじたものではないが、ほん項目こうもく説明せつめいしたがってぜんかいすると、権利けんり性質せいしつめんから(独自どくじに)「物権ぶっけん」を定義ていぎし、そのような意味いみでの「物権ぶっけん」の成立せいりつみとめたにすぎないということになる。

温泉おんせんけん設定せってい

編集へんしゅう

温泉おんせんけんは、永久えいきゅう期間きかんたいする温泉おんせん利用りようりょう前納ぜんのうすることによってしょうじる(永久えいきゅう期間きかんたいする温泉おんせん利用りようりょう前納ぜんのうすることをやくしたうえで、これの支払しはらい免除めんじょされた場合ばあいふくむ。)。これを慣習かんしゅうてきに「温泉おんせんけん設定せってい」という。温泉おんせんけんは、温泉おんせん存在そんざいする土地とち所有しょゆうしゃたいして永年えいねん利用りようみとめさせる債権さいけんであるから、土地とち所有しょゆうしゃがこれをのぞくためには、すくなくとも、永年えいねん利用りよう相当そうとうする補償ほしょう必要ひつようとなる。 土地とち利用りようかんする債権さいけんは、土地とち所有しょゆうしゃわれば消滅しょうめつするのが原則げんそくである。しかし、温泉おんせんけん存在そんざいりつつ土地とち所有しょゆうしたもの温泉おんせんけん消滅しょうめつ主張しゅちょうすることは、永年えいねん利用りようけんとしての温泉おんせんけんもの多大ただい損害そんがいあたえる反面はんめん土地とち所有しょゆうしゃがわ利益りえきるものであるから、信義しんぎそくはんするとしてみとめられない。もっとも、あたらしい土地とち所有しょゆうしゃ十分じゅうぶん補償ほしょう支払しはらえば、信義しんぎそくによる保護ほごはずれるから、温泉おんせんけん消滅しょうめつする。これを「滌除(てきじょ)」という。「滌除」は、物権ぶっけんである抵当ていとうけんについて民法みんぽう規定きていされていた用語ようご(ただし現在げんざいほう改正かいせいによって削除さくじょされている)であって、補償ほしょうきんによって、その土地とちたいする所有しょゆうけん以外いがい権利けんり消滅しょうめつさせる行為こういである。ただし、温泉おんせんけんの「滌除」は、権利けんり濫用らんようとなる場合ばあいみとめられない。判例はんれいによれば、温泉おんせんげる装置そうち配管はいかんとう費用ひよう膨大ぼうだいであり、容易ようい移転いてんすることが不可能ふかのう場合ばあいは、正当せいとう権限けんげんゆうする場合ばあいであっても、権利けんり濫用らんようとしてみとめられないとされる。 なお、まったくの不毛ふもうえい小作こさくけん設定せっていできるのとおなじく、まった温泉おんせん存在そんざいしない土地とちであっても、投機とうき目的もくてき温泉おんせんけん設定せっていできるが、そのような場合ばあいにおいても、「滌除」を回避かいひすることができるかどうかについては、信義しんぎそくによる保護ほごかんがかたによって判断はんだんかれるところであるが、このてんかんする判例はんれいいまされていない。

温泉おんせんけんあかりみとめ方法ほうほう

編集へんしゅう

温泉おんせんけんは、あかりみとめ方法ほうほう設置せっちがなければ善意ぜんい第三者だいさんしゃ対抗たいこうできない。あかりみとめ方法ほうほう設置せっちとは、温泉おんせん存在そんざいする土地とち看板かんばんもうけるとう方法ほうほう温泉おんせんけん存在そんざいしめすことである。あかりみとめ方法ほうほう設置せっちは、信義しんぎそくにより第三者だいさんしゃ善意ぜんい否定ひていし、または相手方あいてがたおも過失かしつ主張しゅちょうするためのものである。現地げんち実際じっさいおとずれれば温泉おんせんけん存在そんざい想定そうていできる場合ばあいには、配管はいかん設備せつびなどもあかりみとめ方法ほうほうとなる。判例はんれいによれば、温泉おんせんけんあかりみとめ方法ほうほうは、地方ちほうによっては、温泉おんせん組合くみあい地方ちほう官庁かんちょうへの登録とうろくでもりるとされる。有名ゆうめい温泉おんせんにおいて温泉おんせん存在そんざいする土地とち購入こうにゅうする場合ばあいにおいては、温泉おんせんけん存在そんざいについて温泉おんせん組合くみあい地方ちほう官庁かんちょうへのわせをおこなうことが慣習かんしゅうであり、これをおこなわないことは信義しんぎそく違反いはんするからである。

  • 大審院だいしんいん昭和しょうわ15ねん9がつ18にち大審院だいしんいん民事みんじ判例はんれいしゅう19かん1611ぺーじ)は、民法みんぽう177じょう類推るいすいし、温泉おんせんけん移転いてんを「第三者だいさんしゃ」に対抗たいこうするには、温泉おんせん組合くみあい地方ちほう官庁かんちょうとうへの登録とうろく看板かんばん設置せっちなどあかりみとめ方法ほうほうをしなければならないとしたものである。なお、判決はんけつぶんにおいて、善意ぜんい悪意あくいという表現ひょうげんしていない。
  • 福岡ふくおか高裁こうさい昭和しょうわ34ねん6がつ20日はつか下級かきゅう裁判所さいばんしょ民事みんじ裁判さいばんれいしゅう10かん6ごう1315ぺーじ)は、問題もんだいとなった温泉おんせんについて、温泉おんせん台帳だいちょうへの登録とうろくがされているひとし事実じじつみとめたうえ、「台帳だいちょう制度せいど温泉おんせん濫掘らんくつ防止ぼうし公衆こうしゅう衛生えいせい保健ほけんかんする取締とりしまりとうしゅたる目的もくてきとするものとみとめられ、本件ほんけん温泉おんせん所在しょざい地方ちほうにおいてみぎ台帳だいちょう記載きさいをもつて温泉おんせんかんする権利けんり変動へんどう公示こうじ方法ほうほうとする一般いっぱん慣行かんこうそんする事実じじついまみとめられない」とする。
  • 高松たかまつ高裁こうさい昭和しょうわ56ねん12月7にち判決はんけつ判例はんれい時報じほう1044ごう383ぺーじ)は、「本件ほんけん温泉おんせんけんがAにぞくした時代じだいから現在げんざいいたるまで、引湯施設しせつ設置せっちおよ旅館りょかん営業えいぎょうとうによって、現実げんじつかく温泉おんせんけんしゃ本件ほんけん温泉おんせん採取さいしゅ利用りよう管理かんりしている客観きゃっかんてき事実じじつ」の存在そんざいをもって、温泉おんせんけんあかりみとめ方法ほうほうであるとみとめた。

温泉おんせんけん妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅう

編集へんしゅう

温泉おんせんけんもとづく土地とち使用しよう妨害ぼうがいすることは不法ふほう行為こういとなるから、妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅうは、不法ふほう行為こうい債権さいけんもとづく請求せいきゅうとして当然とうぜん可能かのうである。不法ふほう行為こういめてくれという請求せいきゅうであるから、賃借ちんしゃくけん物権ぶっけんてき性質せいしつさだめる特別とくべつ規定きていもとづく妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅう最高裁さいこうさい昭和しょうわ30ねん4がつ5にち判決はんけつ)とはことなる。下記かき裁判さいばんれいは,温泉おんせんけん侵害しんがいという不法ふほう行為こうい事件じけんにつき、物権ぶっけんじゅんじた妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅうみとめている。

  • 東京とうきょう地裁ちさい昭和しょうわ45ねん12月19にち判決はんけつ判例はんれい時報じほう636ごう60ぺーじ)は、「そもそも源泉げんせんけんとは、それにもとづいて温泉おんせん採取さいしゅ利用りよう管理かんりすることができる一種いっしゅ物権ぶっけんてき権利けんりであるとするから、その権利けんり行使こうし妨害ぼうがいするものにたいしその妨害ぼうがい排除はいじょもとめることができることはいうまでもない。」としている。

土地とち所有しょゆうしゃ破産はさんした場合ばあい

編集へんしゅう

土地とち所有しょゆうしゃ破産はさんした場合ばあい債権さいけんとしての温泉おんせんけんは、賃借ちんしゃくけんとして解釈かいしゃくされる場合ばあいであっても、民法みんぽうさだめにより、温泉おんせん使用しよう最長さいちょう設定せっていから1期間きかんとして20年間ねんかんであり、それをえる期間きかん収益しゅうえきけんは、破産はさん財団ざいだんまれる。「温泉おんせんけん」としょうしていた場合ばあいであっても、実質じっしつ法律ほうりつさだめられた物権ぶっけん下記かき参照さんしょう)であって、かつ、信義しんぎそくによって第三者だいさんしゃ対抗たいこう可能かのう場合ばあいは、その主張しゅちょう立証りっしょうをすることによって、破産はさん財団ざいだんとはならずに温泉おんせん使用しよう継続けいぞく可能かのうとなる。

温泉おんせんけん類似るいじ権利けんり

編集へんしゅう

温泉おんせんけん類似るいじ権利けんりとして、以下いかのものがある。ただし、「温泉おんせんけん」という言葉ことば自体じたいは、温泉おんせんかんする権利けんり物権ぶっけんてき性質せいしつのものをいちまとめにしてばれることがあり、そのてんにおいては、以下いか権利けんりも「温泉おんせんけん」であるということができる。

温泉おんせん入会にゅうかいけん

編集へんしゅう

温泉おんせん存在そんざいする共有きょうゆう入会にゅうかいでは、入会にゅうかいけんしゃ温泉おんせん利用りようすることができるが、これは、入会にゅうかい収益しゅうえきけん入会にゅうかいけん項目こうもく参照さんしょうのこと。)であって、温泉おんせんけんとは別物べつものである。

しかし、2めい総有そうゆう状態じょうたいにある土地とちにおいて、両者りょうしゃ合意ごういにより、片方かたがた温泉おんせん収益しゅうえきとくし、もう片方かたがた温泉おんせん収益しゅうえき以外いがい収益しゅうえきとくした場合ばあい温泉おんせんけんとほぼ同様どうよう性質せいしつゆうするものとなる。温泉おんせん利用りようかか入会にゅうかい収益しゅうえきけん取得しゅとく喪失そうしつなど、入会にゅうかいけん運用うんよう慣習かんしゅうによることもみとめられており、その意味いみにおいて「慣習かんしゅうによる物権ぶっけん」とばれることもある。なお、入会にゅうかいけん民法みんぽう規定きていする物権ぶっけんであり、また、土地とちたいする支配しはいけん用益ようえきごとに分割ぶんかつするというてんにおいても物権ぶっけんである。

温泉おんせん地役ちえきけん

編集へんしゅう

温泉おんせん湧出ゆうしゅつこうのある土地とちうけたまわやくとし、温泉おんせん旅館りょかんとう温泉おんせん利用りよう施設しせつようやくとする地役ちえきけん地役ちえきけんは、登記とうきによらなければ第三者だいさんしゃ対抗たいこうできないのが原則げんそくであるが、地役ちえきけんかんする判例はんれい通行つうこう地役ちえきけん事例じれい)によれば、現地げんち実際じっさいおとずれれば存在そんざい確認かくにんできる場合ばあいは、信義しんぎそくはたらきにより、登記とうきがなくても、原則げんそくとして第三者だいさんしゃ対抗たいこうできるとされる(最高裁さいこうさい平成へいせい10ねん2がつ13にち判決はんけつみんしゅう52かん1ごう65ぺーじ)。温泉おんせん地役ちえきけんあかりみとめ方法ほうほうは、相手方あいてがた善意ぜんい過失かしつ否定ひていできればりるから、「温泉おんせんけん」と表示ひょうじされたものであっても有効ゆうこうである。

部分ぶぶんてき土地とち所有しょゆうけん

編集へんしゅう

一筆いっぴつ土地とちのうち、温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう部分ぶぶんのみを所有しょゆうする土地とち所有しょゆうけん土地とち所有しょゆうけんは、登記とうきによらなければ第三者だいさんしゃ対抗たいこうできないのが原則げんそくであるが、判例はんれいによれば、現地げんち実際じっさいおとずれることで部分ぶぶんてき土地とち所有しょゆうけん存在そんざい確認かくにんできる場合ばあいは、信義しんぎそくはたらきにより、登記とうきがなくても、第三者だいさんしゃ対抗たいこうできるとされる。部分ぶぶんてき土地とち所有しょゆうけんあかりみとめ方法ほうほうは、相手方あいてがた善意ぜんい過失かしつ否定ひていできればりるから、「温泉おんせんけん」と表示ひょうじされたものであっても有効ゆうこうである。

温泉おんせん地役ちえきけん部分ぶぶんてき土地とち所有しょゆうけん混合こんごう形態けいたい

編集へんしゅう

一筆いっぴつ土地とちのうち、温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう部分ぶぶんのみを所有しょゆうする場合ばあいにおいて、温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう部分ぶぶんようやく温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう以外いがい部分ぶぶんうけたまわやくとする地役ちえきけん設定せっていし、温泉おんせん湧出ゆうしゅつこういた温泉おんせんすい経路けいろ保全ほぜんしている場合ばあいがある。地下水ちかすいみゃく変動へんどうにより温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう移動いどうした場合ばあいにおいても、取水しゅすいかん延長えんちょうによって温泉おんせんすい確保かくほすることができる。この場合ばあいにおいても、あきらみとめ方法ほうほうは、前記ぜんき同様どうように「温泉おんせんけん」と表示ひょうじされたもので有効ゆうこうである。

部分ぶぶんてき地上ちじょうけん

編集へんしゅう

一筆いっぴつ土地とちのうち、温泉おんせん湧出ゆうしゅつこう部分ぶぶんのみを区分くぶんして設定せっていされた地上ちじょうけん配管はいかんなどの工作こうさくぶつ設置せっちすることを目的もくてきとして設定せっていされる物権ぶっけんは、当事とうじしゃあいだにおける呼称こしょうにかかわらず、民法みんぽうさだめる地上ちじょうけんならない。地上ちじょうけんは、土地とち分筆ぶんぴつおこなえば登記とうき可能かのうであり、登記とうきによらなければ第三者だいさんしゃ対抗たいこうできないのが原則げんそくである。しかし、現地げんち実際じっさいおとずれることで部分ぶぶんてき地上ちじょうけん存在そんざい確認かくにんできる場合ばあいは、信義しんぎそくはたらきにより、登記とうきがなくても第三者だいさんしゃ対抗たいこうできるとされる。部分ぶぶんてき地上ちじょうけんあかりみとめ方法ほうほうは、相手方あいてがた善意ぜんい過失かしつ否定ひていできればりるから、「温泉おんせんけん」と表示ひょうじされたものであっても有効ゆうこうである。

土地とち賃借ちんしゃくけん

編集へんしゅう

土地とち温泉おんせん利用りようのために借用しゃくようする債権さいけん契約けいやく配管はいかんともなうポンプしつなどの容易ようい移設いせつできない建物たてもの設置せっちしている場合ばあいあるいは、容易ようい移設いせつできない建物たてもの設置せっちする予定よていであるむねあかりみとめ方法ほうほう設置せっちしている場合ばあいは、借地しゃくち借家しゃくやほう適用てきようにより、登記とうきがなくても第三者だいさんしゃ対抗たいこうできるとされる。賃借ちんしゃくけんによる場合ばあいは、土地とち賃借ちんしゃくりょう支払しはらいは、1がつごとや1ねんごとなど、短期間たんきかんごととなることが一般いっぱんてきである。容易ようい移設いせつできない工作こうさくぶつあかりみとめ方法ほうほう場合ばあいで、前納ぜんのうした土地とち賃借ちんしゃくりょう残余ざんよがある場合ばあいは、信義しんぎそくにより、その残余ざんよ相当そうとうする期間きかんかぎり、悪意あくい第三者だいさんしゃにのみ対抗たいこうできるとされる。

温泉おんせん環境かんきょうけん別称べっしょうとしての「温泉おんせんけん

編集へんしゅう

土地とち使用しようけん温泉おんせんけんとはべつに、環境かんきょうけん分野ぶんやにおいても、「温泉おんせんけん」とばれる権利けんりがある。環境かんきょうけん代表だいひょうてきなものとして日照ひでりけんがある。たとえば、日照ひでりさえぎられることによって損害そんがいしょうじた場合ばあいは、日照ひでりけんによって補償ほしょう請求せいきゅうすることができる。同様どうように、温泉おんせん水脈すいみゃく上流じょうりゅう開発かいはつされることによって、温泉おんせん水量すいりょう減少げんしょうなどの損害そんがいしょうじた場合ばあいは、温泉おんせん環境かんきょうけんによって、補償ほしょう請求せいきゅうすることができる。温泉おんせん環境かんきょうけんは、温泉おんせんけんもとづいて温泉おんせん利用りようしている場合ばあいはもちろん、土地とち所有しょゆうけん借地しゃくちけんもとづいて温泉おんせん利用りようしている場合ばあいにおいても、主張しゅちょうすることができる。