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現実主義 - Wikipedia

現実げんじつ主義しゅぎ

政府せいふ状態じょうたい国際こくさい関係かんけい国益こくえき勢力せいりょく均衡きんこう観点かんてんから分析ぶんせきする国際こくさい政治せいじがく主要しゅよう理論りろん

現実げんじつ主義しゅぎ(げんじつしゅぎ、えい: realism)とは、政府せいふ状態じょうたい国際こくさい関係かんけい国益こくえき勢力せいりょく均衡きんこう観点かんてんから分析ぶんせきする国際こくさい政治せいじがく主要しゅよう理論りろんう。

概要がいよう

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国際こくさい関係かんけいにおける現実げんじつ主義しゅぎは、世界せかい政府せいふ状態じょうたいであるというかんがえを基礎きそき、国際こくさい関係かんけい行為こうい主体しゅたい国家こっか以外いがいになく、政府せいふ世界せかいにおける国家こっか至上しじょう目標もくひょうのこりであるために安全あんぜん保障ほしょうさい優先ゆうせんとなり、そのためにパワーがもちいられ、国際こくさいてき様々さまざま事象じしょう発生はっせいする、というかんがかたである。あらゆる価値かちかん排除はいじょして国際こくさい関係かんけい客観きゃっかんてき分析ぶんせきしようとするてん特徴とくちょうがあり、国際こくさい協調きょうちょう国際こくさいほう重視じゅうしする理想りそう主義しゅぎたいして批判ひはんてきである。軍事ぐんじりょく国益こくえき重視じゅうしするが、好戦こうせんてきであることを意味いみしない。

長年ながねんにわたっておおくの外交がいこう政策せいさく基礎きそ理論りろんとして採用さいようされつづけている。近年きんねん従来じゅうらい性悪説せいあくせついしずえとする悲観ひかんてき現実げんじつ主義しゅぎ対比たいひされる楽観らっかんてき現実げんじつ主義しゅぎ、すなわち積極せっきょくてき国家こっかあいだ協力きょうりょくして勢力せいりょく均衡きんこうひいては安全あんぜん保障ほしょう達成たっせいしようという現実げんじつ主義しゅぎろんじられるようになっている。

この意味いみでは、二者択一にしゃたくいつ次元じげんえ、国際こくさい協調きょうちょう重視じゅうしする理想りそう主義しゅぎ軍事ぐんじりょく重視じゅうしする現実げんじつ主義しゅぎぜたあたらしいかたち議論ぎろんえてきているとえる。

現実げんじつ主義しゅぎ思想しそう系譜けいふ古代こだいギリシア歴史れきしであるトゥキュディデスはじまるとしばしばわれる。かれペロポネソス戦争せんそう叙述じょじゅつつうじてその根本こんぽんてき戦争せんそう原因げんいんをアテネとスパルタの勢力せいりょく均衡きんこうにあるとろんじ、戦争せんそう脅威きょうい個人こじん心理しんり状態じょうたいではなく外部がいぶてき勢力せいりょく状態じょうたいると強調きょうちょうした。

イタリア政治せいじ学者がくしゃマキャベリはまず倫理りんりてき道徳どうとくてき議論ぎろん安全あんぜん保障ほしょう問題もんだいから一切いっさい排除はいじょし、そのうえ国家こっか生存せいぞんするために必要ひつよう手段しゅだんを、たとえそれが道徳どうとくてきでなくても、とることが必要ひつようであるとろんじ、西洋せいよう政治せいじ思想しそうおおきな影響えいきょうあたえた。

またイギリス政治せいじ思想家しそうかホッブズ国際こくさい関係かんけい政府せいふ状態じょうたいであることを「まんにんまんにんたいする闘争とうそう」とべ、世界せかい戦争せんそうがなくてもつね戦争せんそう暴力ぼうりょく恐怖きょうふ潜在せんざいしている状態じょうたいであるとろんじた。

系統けいとう

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伝統でんとうてき現実げんじつ主義しゅぎ(Classical realism)
人間にんげん権力けんりょくよくから権力けんりょく闘争とうそうおこなうというかんがえから、国際こくさい関係かんけい戦争せんそうなどの出来事できごと国益こくえきめぐるパワーの均衡きんこう起因きいんするものだという理論りろん
しん現実げんじつ主義しゅぎ構造こうぞうてき現実げんじつ主義しゅぎ(Neorealism)
伝統でんとうてき現実げんじつ主義しゅぎ基礎きそてき理論りろん継承けいしょうしながらも、権力けんりょくほしすなわち性悪説せいあくせつですべてを説明せつめいしていたてん反省はんせいし、国際こくさいシステムにおけるパワー分布ぶんぷにも注目ちゅうもくしている理論りろん
防御ぼうぎょてき現実げんじつ主義しゅぎ(Defensive realism)
しん現実げんじつ主義しゅぎから派生はせいし、国際こくさい協力きょうりょく可能かのうせい楽観らっかんし、最低限さいていげん安全あんぜん保障ほしょう確保かくほして勢力せいりょく均衡きんこう維持いじするという理論りろん
攻撃こうげきてき現実げんじつ主義しゅぎ(Offensive realism)
しん現実げんじつ主義しゅぎから派生はせいしながらも伝統でんとうてき現実げんじつ主義しゅぎ同様どうよう国際こくさい協力きょうりょく悲観ひかんし、国家こっか覇権はけん獲得かくとく目指めざしてパワーを最大さいだいするという理論りろん
しん古典こてんてき現実げんじつ主義しゅぎ
伝統でんとうてき現実げんじつ主義しゅぎしん現実げんじつ主義しゅぎわせた理論りろん

政府せいふ状態じょうたい

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国際こくさい関係かんけいにおいてはかく国家こっか上位じょういにたって権力けんりょくを以ってほう執行しっこうする中央ちゅうおう政府せいふ不在ふざいである政府せいふ状態じょうたい(アナーキー)であるから、ホッブズべたように自然しぜん状態じょうたい(state of nature)つまり「まんにんまんにんたいする闘争とうそう(bellum omnium contra omnes)」になると現実げんじつ主義しゅぎではかんがえられる。この根拠こんきょとして国内こくない社会しゃかい比較ひかくげられる。

権力けんりょく機構きこうととのった国内こくない社会しゃかいにおいては市民しみん各々おのおの武装ぶそうして自衛じえいする必要ひつようせいはなく、社会しゃかいない紛争ふんそう発生はっせいしても警察けいさつ治安ちあん維持いじし、裁判所さいばんしょ紛争ふんそう調停ちょうてい裁定さいていする。しかし、国際こくさい社会しゃかいにおいては国内こくない社会しゃかいのような権力けんりょく機構きこうがないために紛争ふんそう発生はっせいしても当事とうじしゃ独自どくじ解決かいけつするしかない。

また政府せいふ状態じょうたいは、無秩序むちつじょ混乱こんらん混沌こんとん意味いみしないてん注意ちゅういしなければならない。政府せいふ状態じょうたい政府せいふ存在そんざいしない状態じょうたい意味いみするのであって、そこに一定いってい秩序ちつじょ存在そんざいみとめる概念がいねんである。

国家こっか中心ちゅうしん主義しゅぎ

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世界せかい政府せいふ状態じょうたいであるために国家こっか自助じじょ努力どりょく要求ようきゅうされるため、つね利益りえきめぐ競争きょうそう状態じょうたいにあると現実げんじつ主義しゅぎではかんがえられている。すなわち国際こくさい社会しゃかい主体しゅたい国家こっかであり、国家こっか主体しゅたいである国際こくさい機関きかん国籍こくせき企業きぎょう行為こうい主体しゅたいとしての地位ちい国家こっかおとるとる。なぜなら国家こっか軍事ぐんじりょく独占どくせんし、法律ほうりつ執行しっこうする能力のうりょくち、個人こじん組織そしきまも効果こうかてき手段しゅだん行為こうい主体しゅたいであるからである。国際こくさい機関きかん国家こっか集合しゅうごうたい以上いじょうではなく、国籍こくせき企業きぎょう国家こっか支援しえん不可欠ふかけつであると認識にんしきされている。

安全あんぜん保障ほしょう重視じゅうし

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世界せかい政府せいふ状態じょうたいであるために国家こっか自衛じえいすることがもとめられると現実げんじつ主義しゅぎではかんがえられる。そのために安全あんぜん保障ほしょうさい重要じゅうよう課題かだいであるとられるようになる。国家こっか安全あんぜん保障ほしょう確保かくほする手段しゅだんには自立じりつ同盟どうめい種類しゅるいけられる。自立じりつ他国たこく裏切うらぎられる危険きけんせいがない一方いっぽう軍事ぐんじりょく準備じゅんびにコストがかかる。同盟どうめい最低限さいていげん軍事ぐんじりょくむが、同盟どうめいこく戦争せんそうまれる危険きけんせいや、戦争せんそうになって裏切うらぎられる危険きけんせいがある。

権力けんりょく闘争とうそう

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国際こくさい関係かんけいはパワー・ポリティックス(権力けんりょく政治せいじ)の原理げんりうごいており、すなわち国家こっかはそれぞれがみずからのパワー(power 権力けんりょく勢力せいりょく)を最大さいだいするためにあらそっていると現実げんじつ主義しゅぎではかんがえている。国家こっかはパワーをめぐ競争きょうそうつねっており、その結果けっかとして相互そうごにパワーは拮抗きっこうするように作用さようすることとなる。これが勢力せいりょく均衡きんこうとして理解りかいされているメカニズムである。さらに勢力せいりょく均衡きんこうはその勢力せいりょく分布ぶんぷから国際こくさいシステムとしていちきょくシステム(覇権はけんシステム)、きょくシステム、きょくシステムに分類ぶんるいされる。

批判ひはん反論はんろん

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国際こくさい関係かんけいける現実げんじつ主義しゅぎかんがかたは、おおきくけて、以下いかのような傾向けいこうつ。

  1. 国際こくさい関係かんけいにおける行為こうい主体しゅたい(Actor)は単一たんいつ合理ごうりてき行動こうどうする主権しゅけん国家こっかである。
  2. 国家こっか追求ついきゅうする目標もくひょうは、安全あんぜん保障ほしょうである。
  3. 国際こくさい関係かんけいにおけるパワーは軍事ぐんじりょくである。
  4. 国際こくさい政治せいじ権力けんりょく闘争とうそう色彩しきさいつよつ。

以下いかは、上記じょうきたいしての批判ひはん反論はんろんである。

  1. 国際こくさい関係かんけいにおける行為こうい主体しゅたい主権しゅけん国家こっかかぎらない(れい国際こくさい機関きかんNGO個人こじんなど)
  2. 国家こっか追求ついきゅうする目標もくひょう安全あんぜん保障ほしょうかぎらない(れい経済けいざいてき文化ぶんかてき繁栄はんえいなど)
  3. 国際こくさい関係かんけいにおけるパワーは軍事ぐんじりょくかぎらない(れい経済けいざいりょく文化ぶんかりょくソフトパワーなど)
  4. 国際こくさい政治せいじ権力けんりょく闘争とうそう色彩しきさいのみではない(れい政治せいじ社会しゃかい経済けいざい金融きんゆう文化ぶんか交流こうりゅう協調きょうちょうなど)

20世紀せいきの2世界せかい大戦たいせんて、だい世界せかい大戦たいせん国際こくさい協調きょうちょう経済けいざい発展はってん相互そうご依存いぞん深化しんか国家こっか以外いがいのアクターの隆盛りゅうせい国家こっか目標もくひょう多様たよう軍事ぐんじりょく効果こうか限定げんていせいなどを考慮こうりょれると、現代げんだい国際こくさい関係かんけいかならずしも現実げんじつ主義しゅぎ想定そうてい沿うものではないとして批判ひはんされる。しかし、国際こくさい政治せいじがくにおける基本きほんてき視座しざとしてこれらの見方みかた提供ていきょうした現実げんじつ主義しゅぎ功績こうせきおおきいといえ、現在げんざいでも東北とうほくアジア中東ちゅうとうのような不安定ふあんてい要素ようそおおかかえる地域ちいきでは、現実げんじつ主義しゅぎ見方みかた妥当だとうであるとかんがえることもできる。

フランシス・フクヤマは、現実げんじつ主義しゅぎでは説明せつめいできない現象げんしょうとして:(1)有史ゆうし以来いらい慢性まんせいてき交戦こうせん状態じょうたいであり、2世界せかい大戦たいせん震源しんげんとなったヨーロッパが、いまでは戦争せんそうなどどこふう平和へいわ共存きょうぞん状態じょうたいにあること。(2)核兵器かくへいきという究極きゅうきょく兵器へいきったソビエト連邦れんぽうが、世界せかい最強さいきょう軍事ぐんじりょくったまま消滅しょうめつしたこと。(3)民主みんしゅ革命かくめいひがしヨーロッパでは、だい規模きぼ軍縮ぐんしゅく軍事ぐんじ削減さくげんおこなわれたこと;などをげている。戦争せんそう本質ほんしつてき原因げんいん政治せいじ思想しそう(イデオロギー)葛藤かっとうにあるとかんがえ、軍事ぐんじ均衡きんこうではなく政治せいじ思想しそう世界せかいほうが、国家こっか軍事ぐんじ行動こうどうかんがえるうえではわかりやすい。安全あんぜん保障ほしょう世界せかい平和へいわ達成たっせいするためには、軍事ぐんじてき相手あいて抑圧よくあつするよりも、政治せいじ思想しそう葛藤かっとう排除はいじょしたほう効果こうかてきだとかんがえ、その実例じつれいとして、民主みんしゅてき平和へいわろんげている。しかし、ナチスドイツ成立せいりつ平和へいわ会談かいだんでは防止ぼうしできなかったように、政治せいじ思想しそう葛藤かっとう放棄ほうきしない相手あいてには、軍事ぐんじてき圧力あつりょく威嚇いかくによる現実げんじつ主義しゅぎいまでも有効ゆうこうだとかんがえている。

おも論者ろんしゃ

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伝統でんとうてき現実げんじつ主義しゅぎしゃ

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しん現実げんじつ主義しゅぎしゃ

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しん古典こてん現実げんじつ主義しゅぎしゃ

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日本にっぽん現実げんじつ主義しゅぎしゃ

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関連かんれん項目こうもく

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