(Translated by https://www.hiragana.jp/)
国家安全保障 - Wikipedia

国家こっか安全あんぜん保障ほしょう

国家こっかなんらかの脅威きょういおよばぬよう手段しゅだんこうじることで安全あんぜん状態じょうたい保障ほしょうする活動かつどう
安全あんぜん保障ほしょうから転送てんそう

国家こっか安全あんぜん保障ほしょう(こっかあんぜんほしょう、英語えいご: National security)は、国家こっか独立どくりつ国民こくみん生命せいめい財産ざいさんなどにたいしてなんらかの脅威きょういおよばぬよう手段しゅだんこうじることで安全あんぜん状態じょうたい保障ほしょうすることである。しゅとして他国たこくからの防衛ぼうえいをその主眼しゅがんとするものであり、国防こくぼうとほぼ同義語どうぎごである[1]

航空こうくう自衛隊じえいたいF-2戦闘せんとう
沖縄おきなわけん警察けいさつ国境こっきょう離島りとう警備けいびたい (BISF)
ウェストミンスター宮殿きゅうでんまえコンクリートブロックイングランド、2006ねん

概説がいせつ

編集へんしゅう

安全あんぜん保障ほしょうとは、国家こっか国民こくみんにとっての生存せいぞん独立どくりつ財産ざいさんなどかけがえのないなんらかの価値かち脅威きょういさらされないようなんらかの手段しゅだんによってまもることをおもすが、その概念がいねん非常ひじょう多様たようである。歴史れきしてき伝統でんとうてきには軍事ぐんじてき脅威きょういたいするものがおもであったが、冷戦れいせんこう大量たいりょう破壊はかい兵器へいき拡散かくさんPKO、また発展はってんてきには経済けいざいエネルギー資源しげんなどもふくめるものへと研究けんきゅう領域りょういき拡大かくだいし、一部いちぶ環境かんきょう問題もんだい人権じんけん包括ほうかつする主張しゅちょうもある。現代げんだいにおける国家こっかあいだ主要しゅよう安全あんぜん保障ほしょう軍事ぐんじりょく要素ようそもとづきながらも、外交がいこう経済けいざい環境かんきょうなどを広範こうはんなものをふくめるものである。

その研究けんきゅう対象たいしょうれいげると、軍事ぐんじ戦略せんりゃく安全あんぜん保障ほしょう体制たいせい文化ぶんか政策せいさくソフト・パワー)、広報こうほう教育きょういく宣伝せんでん政策せいさくプロパガンダ)、地域ちいき政策せいさく経済けいざい政策せいさく金融きんゆう政策せいさく人的じんてき国際こくさい交流こうりゅう地政学ちせいがく(ジオポリティクス)、国際こくさい関係かんけいろんエネルギー安全あんぜん保障ほしょう宇宙うちゅう政策せいさくRMA軍縮ぐんしゅくしょう火器かきかんする安全あんぜん保障ほしょう(DDRなど)、大量たいりょう破壊はかい兵器へいき地雷じらい環境かんきょう人口じんこう問題もんだいみず資源しげん貧困ひんこん問題もんだい食糧しょくりょう問題もんだいなどがある。とく貧困ひんこん民族みんぞく部族ぶぞく対立たいりつなどの国内こくない問題もんだい安全あんぜん保障ほしょう問題もんだいいたるような事態じたいになることを安全あんぜん保障ほしょうという。

概念がいねん

編集へんしゅう
 
だい24西成にしなり暴動ぼうどう出動しゅつどうした大阪おおさか警察けいさつ機動きどうたい(2008ねん
 
ギリシャおきでのシリアイラク難民なんみん(2016ねん

現代げんだいにおいて確固かっことした安全あんぜん保障ほしょう定義ていぎ存在そんざいせず、そのことはおおくの専門せんもんによって指摘してきされてきた。

安全あんぜん保障ほしょう古代こだいローマにおいて精神せいしんてきしん平穏へいおん意味いみするSecuritasを語源ごげんとし、英語えいごではSecurityやフランス語ふらんすごではSécurité、ドイツではSicherheit、イタリアではSicurezza、スペインではSeguridadと表記ひょうきされ、こうした欧州おうしゅう概念がいねん日本にっぽんなどが輸入ゆにゅうした結果けっか漢字かんじ表記ひょうきとしての安全あんぜん保障ほしょうという概念がいねん成立せいりつすることとなった。古代こだいローマにおけるsecuritasという概念がいねんストア哲学てつがく基本きほん概念がいねんのひとつであり、政治せいじてき社会しゃかいてき意味いみびた結果けっかマ帝国まていこく時代じだいにおける「ローマによる平和へいわすなわパクス・ロマーナ(Pax Romana)という概念がいねんむすけられるようになった。

伝統でんとうてき安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんとは、軍事ぐんじてき意味いみでの国家こっか平和へいわ独立どくりつあるいは国家こっかあいだ関係かんけいなかでとらえられてきたが、今日きょうでは人間にんげん安全あんぜん保障ほしょうをはじめとして国家こっかてき軍事ぐんじてき概念がいねん派生はせいしており、その概念がいねん時代じだいによって変化へんかし、また文脈ぶんみゃく使用しようしゃ学派がくは価値かちかんによってもその意味いみことなることがある。このため、正確せいかく安全あんぜん保障ほしょうという概念がいねんをとらえるうえで、使用しようには注意ちゅういようする。

きん現代げんだいでは理論りろんじょう安全あんぜん保障ほしょう防衛ぼうえい厳密げんみつ区別くべつされる。安全あんぜん保障ほしょうとは『脅威きょういおよばないようにすることで安全あんぜん状態じょうたい保障ほしょうすること』を目的もくてきとしているのにたいし、防衛ぼうえいは『およんできた脅威きょうい対抗たいこうなんらかの強制きょうせいりょくによってそれを排除はいじょする』ことが目的もくてきである。

以下いかでは、ここでは伝統でんとうてき安全あんぜん保障ほしょうをはじめ、あらたな安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんふくめて今日きょう国際こくさい政治せいじじょう論議ろんぎされる代表だいひょうてき安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんについて解説かいせつする。

伝統でんとうてき安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

伝統でんとうてき安全あんぜん保障ほしょうとは国家こっか領土りょうど政治せいじてき独立どくりつ外部がいぶからの脅威きょうい軍事ぐんじてき手段しゅだんによる牽制けんせいによってまもることを主眼しゅがんにおいた、もっと基本きほんてき安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。国防こくぼうがこれに該当がいとうする。今日きょうにおいても軍事ぐんじりょくもちいて国家こっか生存せいぞん独立どくりつ国民こくみん財産ざいさん安全あんぜん保証ほしょうすることはきわめて重要じゅうよう国家こっか役割やくわりひとつとされている。今日きょうでは国家こっかそう力戦りきせん核兵器かくへいき登場とうじょうにより戦争せんそうわりわないものになったため十分じゅうぶん抑止よくしりょく整備せいびすれば、先進せんしんこく同士どうし戦争せんそうきにくくなっている。

人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

人間にんげん安全あんぜん保障ほしょうとは国際こくさい社会しゃかい秩序ちつじょ人間にんげん社会しゃかい延長えんちょうとして認識にんしきし、国家こっかよりもむしろその最小さいしょう構成こうせい単位たんいである人間にんげん注目ちゅうもくし、武力ぶりょく行使こうしふせぐためのシステム確立かくりつし、その基本きほんてき人権じんけん平等びょうどう民主みんしゅ主義しゅぎ発展はってんをグローバルな市民しみん社会しゃかい協力きょうりょくによって目指めざし、平和へいわ創出そうしゅつするグローバリズム学派がくは安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。またエイズ環境かんきょう問題もんだいなどを研究けんきゅう対象たいしょうふくめる場合ばあいもあるため、非常ひじょうにさまざまな要素ようそ包括ほうかつする概念がいねんである。

総合そうごう安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

総合そうごう安全あんぜん保障ほしょうとは脅威きょういたいする手段しゅだん軍事ぐんじてきなものにかぎらず、軍事ぐんじてきなものも最大限さいだいげんれ、同時どうじ対象たいしょうとなる脅威きょうい国外こくがいだけでなく、国内こくない自然しぜん脅威きょういをも対象たいしょうとする安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。1980ねん内閣ないかく総理そうり大臣だいじん大平おおひら正芳まさよし総合そうごう安全あんぜん保障ほしょう問題もんだい研究けんきゅう政策せいさく研究けんきゅうかい報告ほうこくしょにおいて理論りろんされた。

集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうとは国家こっか連合れんごうにおいて、正当せいとうせいのない一方いっぽうてき軍事ぐんじりょく行使こうし原則げんそく禁止きんしし、またその原則げんそく違反いはんして武力ぶりょく行使こうしいたった国家こっかたいしては構成こうせい諸国しょこく連合れんごうして軍事ぐんじてき手段しゅだんふく集団しゅうだんてき制裁せいさいをかける安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。国際こくさい連盟れんめいにおいてはじめて採用さいようされ、現在げんざいでは国際こくさい連合れんごうがこの集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう機能きのうさせる国際こくさい機関きかんであるが、いまだ実現じつげんしておらず、国連こくれん憲章けんしょうさだめられた体制たいせいととのっていない。

共通きょうつう安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

戦争せんそう回避かいひ共通きょうつう利益りえきであるとの認識にんしきもとづいて、てきとも協力きょうりょくして戦争せんそう回避かいひ目指めざ安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。冷戦れいせんヨーロッパにおいてまれた概念がいねんであり、従来じゅうらい競争きょうそうてき対立たいりつてき安全あんぜん保障ほしょう否定ひていし、敵対てきたい勢力せいりょくとの相互そうご依存いぞんてき協力きょうりょく重視じゅうしする。この具体ぐたいれいとして1975ねん全欧ぜんおう安全あんぜん保障ほしょう協力きょうりょく会議かいぎ現在げんざい欧州おうしゅう安全あんぜん保障ほしょう協力きょうりょく機構きこう)がげられる。

協調きょうちょう安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

てき味方みかた流動的りゅうどうてき不安定ふあんてい地域ちいき国家こっか体制たいせいくわわり、各国かっこく協調きょうちょう主義しゅぎてき外交がいこう貿易ぼうえきによって危険きけん脅威きょうい制御せいぎょし、戦争せんそう抑止よくしし、戦争せんそう勃発ぼっぱつした場合ばあいもその拡大かくだい抑制よくせいすることを目的もくてきとする安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんである。軍事ぐんじてき側面そくめん重視じゅうしされているものの、体制たいせい潜在せんざいてき適性てきせいこくふくめてその地域ちいきすべての主要しゅようこく参加さんかする必要ひつようがあること、さらに潜在せんざいてき適性てきせいこくふくめて域内いきないぜん主要しゅようこく共同きょうどう行動こうどう参加さんかする意思いしつこと、また顕在けんざいてき敵性てきせいこく体制たいせいない存在そんざいしないことなどが体制たいせい機能きのうする前提ぜんてい条件じょうけんとなる。

以上いじょうからかるように、安全あんぜん保障ほしょう概念がいねん時代じだい世界せかいかん思想しそう政策せいさくなどによって変化へんかしているため、注意ちゅうい必要ひつよう包括ほうかつてき概念がいねんであることがかる。

安全あんぜん保障ほしょう歴史れきし

編集へんしゅう

古来こらいから人類じんるいにとって生存せいぞんさい重要じゅうよう課題かだいであり、そのために歴史れきしじょう為政者いせいしゃたちは自国じこく安全あんぜん確保かくほするために多大ただい労力ろうりょくついやしてきた。

19世紀せいきまでの国際こくさい社会しゃかいにおいては、対立たいりつする国家こっか同盟どうめいあいだちから均衡きんこうによって秩序ちつじょ安定あんていするという国際こくさい社会しゃかいにおいて、軍事ぐんじりょく造成ぞうせい同盟どうめい強化きょうかによってのみ自国じこく安全あんぜん保障ほしょうするという個別こべつ安全あんぜん保障ほしょうかんがかた支配しはいてきであった。ゆえ当時とうじ安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅう領域りょういきは、国家こっか外交がいこう政策せいさく軍事ぐんじ政策せいさくなどにとどまっていた。

しかし、この個別こべつ安全あんぜん保障ほしょうのもとでは、対立たいりつする国家こっかあいだ軍拡ぐんかく競争きょうそう発生はっせいし、対立たいりつする国家こっかあいだ緊張きんちょう不信ふしんかんをいたずらにたかめて戦争せんそうのリスクをたかめることとなる。また小規模しょうきぼ紛争ふんそう世界せかい戦争せんそうへと拡大かくだいする可能かのうせいたかめることとなる。だいいち世界せかい大戦たいせんは、個別こべつ安全あんぜん保障ほしょうあやうさをしめした最初さいしょ世界せかい戦争せんそうである。

そこで、このだいいち世界せかい大戦たいせんには、集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうかんがかたもとづく国際こくさい連盟れんめい設立せつりつされた。集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうとは、ぜん世界せかいすべての国々くにぐに体制たいせい参加さんかし、武力ぶりょく行使こうし原則げんそく禁止きんしするとともに、これに違反いはんした国家こっかたいしては構成こうせい諸国しょこく協力きょうりょくして軍事ぐんじりょくふくめて制裁せいさいする安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいである。ただし集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう制度せいどは、すべての国々くにぐに参加さんかすることや、顕在けんざいてき敵対てきたいこく体制たいせいない存在そんざいしないことが条件じょうけんとなるとかんがえられている。これによって国際こくさい緊張きんちょう緩和かんわされ、軍縮ぐんしゅく可能かのうせいもありうる。

しかし国際こくさい連盟れんめい権限けんげん体制たいせいにおいて欠陥けっかんがあり、だい世界せかい大戦たいせん開始かいしふせなかった。この歴史れきしまえ、設立せつりつされた国際こくさい連合れんごう集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうのための体制たいせいをいっそう整備せいび強化きょうかした。しかし国連こくれんべい対立たいりつによって当初とうしょかんがえられていたように円滑えんかつ機能きのうすることができなかった。冷戦れいせん突入とつにゅうしてからも国連こくれん機能きのう不全ふぜんこり、またアメリカにおいてはソ連それんとの対立たいりつがあったため、ソ連それんたいする軍事ぐんじ政策せいさく研究けんきゅう中心ちゅうしんったために、軍事ぐんじ理論りろん中心ちゅうしんであった。

安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうだいいち沈黙ちんもく

編集へんしゅう

1960年代ねんだい後半こうはんから1970年代ねんだい後半こうはんにかけて安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅう沈黙ちんもくした。この沈黙ちんもくは、べい緊張きんちょう緩和かんわ外交がいこう影響えいきょうとく危機ききてき紛争ふんそうきなかったことの理由りゆうつよい。なお、1970年代ねんだい以降いこう安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅう活発かっぱつは、べい緊張きんちょう緩和かんわ外交がいこう有効ゆうこうせいしめされなくなったことの影響えいきょうつよい。

安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうだい沈黙ちんもく

編集へんしゅう

1991ねん12月、ソ連それん崩壊ほうかいしたが、これを予見よけんできた研究けんきゅうしゃなかった。また崩壊ほうかいきたのちもそれを説明せつめいできる研究けんきゅうしゃなかった。以後いご国際こくさい政治せいじ学者がくしゃ、そのなかでも安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうする人々ひとびと沈黙ちんもくした。ソ連それん崩壊ほうかいによって「安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうんだ」という意見いけんすら出回でまわった。冷戦れいせん国際こくさいてき相互そうご依存いぞん関係かんけいつよまりや、国際こくさい経済けいざい発展はってん背景はいけいに、安全あんぜん保障ほしょうひろ政治せいじてき経済けいざいてき利益りえきを、軍事ぐんじてき手段しゅだんのみならず外交がいこう経済けいざいりょく文化ぶんかなどをももちいてまもることをすようになった。

PFP協定きょうていさい保証ほしょうがた安全あんぜん保障ほしょう制度せいど

編集へんしゅう

ソ連それん脅威きょういくなり、西欧せいおう所有しょゆうする戦術せんじゅつかく7400はつおおくは不要ふようとされ、だい部分ぶぶん廃棄はいきとなった。これにより NATO性質せいしつ変化へんかもとめられたが、NATO解体かいたいはむしろ地域ちいき情勢じょうせい悪化あっかさせるとして存続そんぞくされることになる。1994ねん1がつ、NATO拡大かくだいとそれにつよ反対はんたいするロシアへの妥協だきょうあんとして PFP協定きょうてい提唱ていしょうされた。1997ねん9がつ日米にちべい防衛ぼうえい協定きょうてい指針ししん改訂かいてい作業さぎょうおこなわれ、日本にっぽん本土ほんど防衛ぼうえいだけでなく「周辺しゅうへん事態じたい」(当時とうじ)にも対応たいおうすることが決定けっていされる。この安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいさい保証ほしょうがた(リアシュアランスがた安全あんぜん保障ほしょう制度せいどという。

国際こくさい安全あんぜん保障ほしょう体制たいせい理論りろん

編集へんしゅう

国際こくさい社会しゃかいという視点してんで、安定あんていてき世界せかい秩序ちつじょ維持いじする国際こくさい体制たいせいかんする理論りろん安全あんぜん保障ほしょうにおいて主要しゅよう課題かだいである。ここでは代表だいひょうてきなモデルや理論りろんべる。

平和へいわ理論りろん

編集へんしゅう

国際こくさい秩序ちつじょちから均衡きんこうや、国際こくさい経済けいざい影響えいきょうなどによって安定あんてい不安定ふあんてい状態じょうたい歴史れきしじょう長年ながねんしてきた。ここではその安定あんていした国際こくさい秩序ちつじょ維持いじされている国際こくさい関係かんけい定式ていしきおこなった理論りろんについてべる。

たんきょく平和へいわろん
圧倒的あっとうてきちからった大国たいこく存在そんざい世界せかい平和へいわにするという理論りろんである。この平和へいわろんおおくはパクス・アメリカーナ意味いみするが、なかには世界せかい政府せいふ思想しそうなどもある。
双極そうきょく平和へいわろん
圧倒的あっとうてきちからった2ヶ国かこく勢力せいりょく)の存在そんざいが、おたがいに拮抗きっこうすることで結果けっかとして世界せかい平和へいわにするという理論りろんである。この平和へいわろんおおくはべい冷戦れいせん意味いみする。
きょく平和へいわろん
複数ふくすうこくによる均衡きんこう拮抗きっこう状態じょうたいにより世界せかい秩序ちつじょ平和へいわ維持いじするという理論りろんである。つまり、国連こくれんなどの国際こくさい機関きかん中心ちゅうしんとした平和へいわろん意味いみする。
民主みんしゅてき平和へいわろん
民主みんしゅ主義しゅぎもとづいた政治せいじ体制たいせい採用さいようする国家こっか同士どうしでは戦争せんそううったえる可能かのうせいすくないという学説がくせつである。おもブルース・ラセットによってろんじられており、民主みんしゅ主義しゅぎ国家こっか好戦こうせんてきでないとはかぎらないが、歴史れきしてき経験けいけんそくにおいては民主みんしゅ主義しゅぎ国家こっか同士どうし戦争せんそうおこなうことが比較ひかくてきすくない傾向けいこうがあるとされる。したがって世界中せかいじゅう国家こっか体制たいせい民主みんしゅすることによって、世界せかい安全あんぜん保障ほしょう確保かくほすることができるというかんがかた基礎きそとなっている。相互そうご高度こうど民主みんしゅ体制たいせい構築こうちくできれば、軍事ぐんじバランスとは関係かんけいなく平和へいわ関係かんけい維持いじできるというてんで、安全あんぜん保障ほしょうろんとは一線いっせんかくしている。その発想はっそう源流げんりゅうカント平和へいわ思想しそうにあるといわれ、カントてき国際こくさい主義しゅぎともいわれる。しかしながら、なぜ民主みんしゅ主義しゅぎ体制たいせい国際こくさい関係かんけいにおける戦争せんそう抑制よくせいするのかについては議論ぎろん余地よちがある。

覇権はけんモデル

編集へんしゅう

覇権はけんモデル(hegemony model)とは、ある地域ちいきない国々くにぐに圧倒あっとうするだけの国力こくりょくつ「覇権はけん国家こっか」が存在そんざいし、それが周辺しゅうへん諸国しょこく主導しゅどうてき指導しどうする国際こくさい秩序ちつじょのモデルのひとつである。

この覇権はけんモデルはさらに種類しゅるい区分くぶんされる。直接的ちょくせつてき軍事ぐんじりょくなどをもちいてしょ外国がいこく支配しはいする「専制せんせい帝国ていこく」は周辺しゅうへんこく属国ぞっこくとしてあつかい、属国ぞっこく反抗はんこうがあれば武力ぶりょく鎮圧ちんあつする。間接かんせつてき経済けいざいりょくなどをもちいてしょ外国がいこく支配しはいてき指導しどうする「民主みんしゅ帝国ていこく」(別名べつめい「リベラル・エンパイア」もしくは「帝国ていこくてき共和きょうわこく」)は、周辺しゅうへん諸国しょこく協力きょうりょくながらひろ地域ちいき利害りがい共通きょうつうする安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいと、国際こくさいてき経済けいざい枠組わくぐみを提供ていきょうし、勢力せいりょくけんしょ外国がいこく安定あんてい目指めざす。

勢力せいりょく均衡きんこうモデル

編集へんしゅう

勢力せいりょく均衡きんこうモデル(balance of power model)とは、ひとつの勢力せいりょく国家こっか国家こっかぐん)が強大きょうだいした場合ばあい、その国々くにぐに連合れんごう軍事ぐんじりょく強化きょうかなどによって、勢力せいりょく拮抗きっこうしようとする現象げんしょうのモデルである。

この勢力せいりょく均衡きんこうモデルはさらに「きょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデル」と「きょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデル」がある。きょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデルとは、ふたつの勢力せいりょくのみがおも勢力せいりょく均衡きんこうさせようとするものであり、冷戦れいせんアメリカソ連それん関係かんけいがこれにあたるとかんがえられているが、歴史れきしてきにはまれ場合ばあいである。きょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデルは、複数ふくすう勢力せいりょく同時どうじ勢力せいりょく拡張かくちょうし、均衡きんこうさせようとするものである。歴史れきしてきにはこの場合ばあいおおく、だいいち世界せかい大戦たいせんだい世界せかい大戦たいせんはこのモデルに合致がっちするとかんがえられている。

大国たいこくあいだ協調きょうちょうモデル

編集へんしゅう

きょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデルの発展はってんモデルであり、いくつかの大国たいこく利害りがい関係かんけいについては相互そうご妥協だきょう協調きょうちょうし、処理しょりして秩序ちつじょ維持いじするモデルである。1815ねんウィーン会議かいぎ以降いこうからだいいち世界せかい大戦たいせんまでのやく1世紀せいきあいだヨーロッパ基本きほんてききょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデルであるとかんがえられているが、同時どうじ大国たいこくあいだ協調きょうちょうモデルが並存へいそんしていた時代じだいでもあるとされている。しかし、アフリカ植民しょくみん分割ぶんかつ議題ぎだいとするベルリン会議かいぎでどうしても協調きょうちょうできない問題もんだい顕在けんざいしてしまい、さんこく同盟どうめいさんこく協商きょうしょう国際こくさい関係かんけい成立せいりつした時点じてんきょくがた勢力せいりょく均衡きんこうモデルへと逆行ぎゃっこうしていった。

集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうモデル

編集へんしゅう

集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうモデルとは特定とくてい体制たいせい国家こっかはいり、原則げんそくてき武力ぶりょく行使こうしきんじ、もし構成こうせいこくがこれを違反いはんすればその構成こうせいこく協調きょうちょうして軍事ぐんじ経済けいざいなどの手段しゅだんによって制裁せいさいくわえる国際こくさい安全あんぜん保障ほしょうモデルである。勢力せいりょく均衡きんこうモデルによって世界せかい大戦たいせんをもたらしたという反省はんせいもとづいて、このモデルが国際こくさい連合れんごうというかたち実現じつげんされることとなった。ただし地域ちいき連合れんごうにおいても、集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうモデルが採用さいようされている場合ばあいがあり、アメリカしゅう機構きこうアフリカ統一機構あふりかとういつきこうNATOワルシャワ条約じょうやく機構きこうげられ、地域ちいき集団しゅうだん防衛ぼうえい条約じょうやく機構きこうばれる。

軍事ぐんじてき側面そくめん

編集へんしゅう
 
陸上りくじょう自衛隊じえいたい特殊とくしゅ部隊ぶたい特殊とくしゅ作戦さくせんぐん (SFGp)

現代げんだいにおいても、安全あんぜん保障ほしょうにとって軍事ぐんじ非常ひじょう根幹こんかんてき存在そんざいである。なぜなら安全あんぜん保障ほしょう本質ほんしつてき課題かだいである国家こっか生存せいぞん独立どくりつ保持ほじ領土りょうど防衛ぼうえいなどは軍事ぐんじりょくいまなおふか関係かんけいがあるからである。

軍事ぐんじりょく

編集へんしゅう

軍事ぐんじりょく(military capability)とは国家こっかがその政治せいじてき目的もくてき国益こくえき達成たっせいするためにもちいる物理ぶつりてき破壊はかいりょく支配しはいりょく強制きょうせいりょくであり、広義こうぎてき軍事ぐんじりょく軍隊ぐんたいだけでなく、さまざまな国力こくりょくによって構成こうせいされる。 安全あんぜん保障ほしょうにおける軍事ぐんじりょく役割やくわりは、強制きょうせい抵抗ていこう抑止よくしそれぞれの機能きのう対外たいがいてきしめし、攻撃こうげきたい予期よきされる損害そんがい攻撃こうげき戦略せんりゃく戦術せんじゅつじょう困難こんなんさを意識いしきさせることである。

核兵器かくへいき

編集へんしゅう
 
トライデント I ミサイルとそのさい突入とつにゅうたい

大量たいりょう破壊はかい兵器へいきとく核兵器かくへいき安全あんぜん保障ほしょうとく注目ちゅうもくするテーマのひとつである。ここではかく戦略せんりゃくかんする理論りろんなどについてべる。

かく抑止よくし種類しゅるい

編集へんしゅう

冷戦れいせんにおけるべい対立たいりつちゅうにアメリカにて発展はってんしたかく抑止よくしには以下いか種類しゅるいがある。

存在そんざいてき抑止よくし実存じつぞんてき抑止よくし
核兵器かくへいき場合ばあいすうはつ国家こっか消滅しょうめつさせるほどの威力いりょくつ、よってかく存在そんざいするというだけで国家こっか指導しどうしゃ為政者いせいしゃかんがかた政策せいさく方針ほうしん関係かんけい抑制よくせい機能きのう抑止よくしりょく)がはたらくというかんが
戦略せんりゃくてき抑止よくし
核兵器かくへいきであっても、存在そんざいだけにたよるのでなく危機きき場合ばあいにはちゃんと機能きのうさせてはじめて抑止よくしりょくまれるというかんが
懲罰ちょうばつてき抑止よくし
ソ連それん侵略しんりゃく行為こういれば、ソ連それん都市とし工業こうぎょう地帯ちたい懲罰ちょうばつ攻撃こうげきてき報復ほうふくくわえて抑止よくしりょくたせるというかんが
拒否きょひてき抑止よくし
ソ連それん政治せいじてき軍事ぐんじてき目的もくてき達成たっせい拒否きょひし、あるいは目的もくてき達成たっせいのためのコストがたかぎることを認知にんちさせ抑止よくしりょくたせるというかんが

抑止よくし戦略せんりゃくモデル

編集へんしゅう

敵対てきたい国家こっか(または潜在せんざいてき敵性てきせい国家こっか)にたいする抑止よくし戦略せんりゃく

演繹えんえき法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくモデル
演繹えんえき法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくてることをいう、1970年代ねんだいまではこのかんがかた中心ちゅうしんであった
帰納きのう法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくモデル
帰納きのう法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくてることをいう、1970年代ねんだいからはこのかんがかた中心ちゅうしんとなる

演繹えんえき法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくモデル批判ひはん

編集へんしゅう

アレキサンダー・ジョージかく抑止よくし地域ちいき紛争ふんそう危機きき抑止よくしみっつの抑止よくしうちかく抑止よくし以外いがい変動へんどう要素ようそ目的もくてき手段しゅだん選択肢せんたくし事態じたい悪循環あくじゅんかん可能かのうせい)がおおく、単純たんじゅん損得そんとく勘定かんじょうでは戦争せんそう勃発ぼっぱつ説明せつめいできないと批判ひはんした。これ以降いこう帰納きのう法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくモデルのかんがかた主流しゅりゅうとなる。たとえばきゅう日本にっぽんぐん南下なんか政策せいさく真珠湾しんじゅわん攻撃こうげき演繹えんえき法的ほうてき抑止よくし戦略せんりゃくモデルによる単純たんじゅん利害りがいろんでは説明せつめいできない。

相互そうご確証かくしょう破壊はかい

編集へんしゅう

安全あんぜん保障ほしょうとき「いかにてきめるか」「いかにてき被害ひがいあたえるか」ということかんがえて、逆説ぎゃくせつてき「いかに平和へいわたもつか」さぐ手段しゅだんもちいる。有名ゆうめいかんがかた核兵器かくへいきの「相互そうご確証かくしょう破壊はかい」(mutually assured destruction、MAD)である。

1965ねんソ連それん抑止よくしりょくとしての核兵器かくへいきから、攻撃こうげきとしての核兵器かくへいき性質せいしつ変化へんかさせ、アメリカを攻撃こうげきした場合ばあいに、アメリカはかくによる報復ほうふく攻撃こうげきおこなソ連それん人口じんこうの25%、工業こうぎょうりょくの50%を破壊はかいするというかんがかたである。しかし、このかんがかたてくるとソ連それんではたいべい確証かくしょう破壊はかいりょく強化きょうかされ、ソ連それんのGNP15%を軍備ぐんび投資とうしするというだい軍拡ぐんかくおこなった。 このあいだべい両国りょうこくあいだかく戦争せんそうきなかったことから「相互そうご確証かくしょう破壊はかいろん」は有効ゆうこうであったとのかんがかた一時期いちじき主流しゅりゅうになったが、相互そうご確証かくしょう破壊はかいろんによるかく抑止よくし結果けっかとして過剰かじょう軍拡ぐんかくこしたため、その抑止よくしのための軍備ぐんび管理かんりとして SALTおこなわれ、とくべい両国りょうこくあいだ軍縮ぐんしゅくすすんだ。 これを教訓きょうくんかくによる報復ほうふく攻撃こうげきたして本当ほんとう価値かちがあるのか、というたい価値かち攻撃こうげき戦略せんりゃく(counter value strategy)のかんがかた浮上ふじょうした。1971ねんにはかく戦略せんりゃく選択せんたくてき活用かつようすべき、とのかんがかたひろがり「相互そうご確証かくしょう破壊はかいろん」の「全面ぜんめん報復ほうふく」のかんがかた後退こうたいした。1974ねんに、柔軟じゅうなん目標もくひょう設定せってい発表はっぴょうされ、兵器へいき命中めいちゅう精度せいどたかい(たかくする)という前提ぜんていで、敵対てきたいこくからの攻撃こうげき報復ほうふく段階だんかいたせた。

軍縮ぐんしゅく軍備ぐんび管理かんり

編集へんしゅう

軍縮ぐんしゅく(arms reduction、disarmament)とは戦争せんそうのリスクを抑制よくせいすることを目的もくてきとして軍備ぐんび縮小しゅくしょうしていくプロセスをす。軍備ぐんび管理かんり(arms control)とは軍備ぐんびかんする政策せいさくせられる抑制よくせい措置そちす。近年きんねんでは軍備ぐんび管理かんりというほう主流しゅりゅうになりつつある。

軍事ぐんじてき側面そくめん

編集へんしゅう
 
1952ねんアメリカ国家こっか安全あんぜん保障ほしょうきょく11月4にち結成けっせいされたインテリジェンス・コミュニティー情報じょうほう機関きかん共同きょうどうたい)の中核ちゅうかく組織そしきのひとつである。

安全あんぜん保障ほしょう冷戦れいせん軍事ぐんじてき側面そくめんたいする関心かんしんたかまりから経済けいざい資源しげん環境かんきょうなどの分野ぶんやにも研究けんきゅう領域りょういき拡大かくだいした。

軍事ぐんじてき側面そくめんかんする議論ぎろん

編集へんしゅう

ただし、安全あんぜん保障ほしょう概念がいねんをどこまで拡大かくだいするかについては、「なににでも安全あんぜん保障ほしょう概念がいねん適応てきおうできるのか」という議論ぎろんのこっている。たとえば環境かんきょう問題もんだい安全あんぜん保障ほしょう観点かんてんから研究けんきゅうする場合ばあい、その「安全あんぜん保障ほしょうする対象たいしょう」は、国家こっかなのか、特定とくてい地域ちいきなのか、地球ちきゅう全体ぜんたいなのか、もし地球ちきゅう全体ぜんたいまも対象たいしょうとする問題もんだいだとするならば、それは普通ふつうの「環境かんきょう問題もんだい」であるのではないか、などの議論ぎろんがある。

また、国政こくせいにおいては安全あんぜん保障ほしょう政争せいそうであり、あらゆる事象じしょう事柄ことがら安全あんぜん保障ほしょうむすびつけることで危機ききかんあおみずからの権力けんりょく拡大かくだい役立やくだてる政治せいじ手法しゅほうもちいられる場合ばあいがある。しかし、すべてを安全あんぜん保障ほしょうからめてしまうと、必要ひつよう以上いじょう危機ききかん不安ふあんかんおおくの人々ひとびとあたえてしまう場合ばあいがある。また、本来ほんらい対話たいわなどの平和へいわてき解決かいけつ安全あんぜん保障ほしょうふくまれているにもかかわらず、安全あんぜん保障ほしょうかたよった外交がいこう方針ほうしんくと外交がいこう硬直こうちょくし、妥協だきょう協力きょうりょくてき国家こっかとして孤立こりつむすびつく可能かのうせいがある。同時どうじに、集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう国家こっかにおいては同盟どうめいこくへの必要ひつよう以上いじょう譲歩じょうほむすびつき国益こくえきそこなう可能かのうせいもある。それは本来ほんらい安全あんぜん保障ほしょう目的もくてきとする「国家こっか人々ひとびと安全あんぜん状態じょうたいたもつ」とはいえず、安全あんぜん保障ほしょうが「国家こっか危険きけん状態じょうたいみ、人々ひとびと不安ふあん状態じょうたいむ」といった事態じたいしょうじてしまう。

経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう目的もくてきはその国家こっか経済けいざい国民こくみん経済けいざい生活せいかつ維持いじ改善かいぜんすることにある。経済けいざいとは国家こっか人間にんげん生活せいかつそのものである。ゆえ経済けいざいりょくきわめて重要じゅうよう国力こくりょくであり、また国際こくさい経済けいざいにおける競争きょうそうりょく維持いじし、経済けいざいてき自立じりつ達成たっせいすることは国家こっか存続そんぞく直接ちょくせつかかわることであるといえる。

経済けいざいにおける安全あんぜん定義ていぎすることは軍事ぐんじにおける安全あんぜんとその性質せいしつ本質ほんしつてきことなっているためむずかしい。市場いちば経済けいざい本質ほんしつてき不安定ふあんていせい内在ないざいするものであり、保護ほご主義しゅぎてき関税かんぜい設定せっていするなどの手段しゅだん市場いちば過剰かじょう介入かいにゅうすることは国内こくない産業さんぎょう競争きょうそうりょく低下ていかさせるおそれがある。また市場いちば制御せいぎょするために市場いちば独占どくせん必要ひつようになるが、それは市場いちば経済けいざい原理げんりそのものにはんする行為こういである。国外こくがいからの直接ちょくせつ投資とうし輸入ゆにゅうなどを断絶だんぜつして自給自足じきゅうじそく目指めざすことも近年きんねん経済けいざい相互そうご依存いぞん関係かんけいすすんでいるため、不可能ふかのうちかい。ゆえ経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくおこな場合ばあいはこのような経済けいざい特性とくせい市場いちば原理げんり十分じゅうぶん把握はあくして実行じっこうすることがきわめて重要じゅうようである。

アメリカ通商つうしょう拡大かくだいほうだい232じょうには、安全あんぜん保障ほしょう理由りゆう輸入ゆにゅう制限せいげんおこなうことができる規定きていさだめられており、2018ねん3月23にち以降いこう、アメリカに輸入ゆにゅうされる鉄鋼てっこうアルミニウム製品せいひんたいして追加ついか関税かんぜい措置そちおこなわれた[2]

天然てんねん資源しげん安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

資源しげんエネルギー経済けいざい活動かつどうおこない、資本しほん価値かち増殖ぞうしょくさせていくのにかせない国力こくりょく前提ぜんていてき存在そんざいである。歴史れきしてきても、資源しげん地域ちいきめぐ領土りょうど紛争ふんそう非常ひじょうおおい。戦略せんりゃくてき重要じゅうよう資源しげん・エネルギーとしては、てつアルミクロムコバルトプラチナ石炭せきたん石油せきゆ天然てんねんガスなどがげられ、これらは近年きんねん科学かがく技術ぎじゅつ工業こうぎょう発展はってん大量たいりょう消費しょうひ社会しゃかい拡大かくだいから重要じゅうよう価値かちつようになっている。

資源しげん安全あんぜん保障ほしょうたいする脅威きょういには、禁輸きんゆ措置そち供給きょうきゅうりょう削減さくげんによる価格かかくげなどがある。代表だいひょうれいとして1973ねんOPEC原油げんゆ価格かかくげがげられる。また自然しぜん災害さいがい戦争せんそうなどによる供給きょうきゅうシステムの停止ていしという脅威きょういかんがえられる。だいオイルショックイラン革命かくめいおも要因よういんとなってこされた。

資源しげん安全あんぜん保障ほしょう手段しゅだんとして、天然てんねん資源しげん自給自足じきゅうじそく準備じゅんび国内こくないにおける消費しょうひ抑制よくせいなどの脅威きょうい発生はっせい防止ぼうしする方法ほうほう、さらに緊急きんきゅう事態じたいそなえた備蓄びちく危機きき発生はっせいにおける対策たいさく準備じゅんびなどの脅威きょういによる被害ひがい最小さいしょうこころみる方法ほうほうがある。しかし、これらはおおきな費用ひようともな措置そちであるため、慎重しんちょう検討けんとうしなければいけない。

環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

現代げんだい大量たいりょう生産せいさん大量たいりょう消費しょうひ経済けいざい活動かつどう世界せかいてき人口じんこう増加ぞうかなどが自然しぜん環境かんきょうおおきな影響えいきょうおよぼしている。環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょうはこうした自然しぜん環境かんきょうへの影響えいきょう人間にんげん生存せいぞん深刻しんこく悪影響あくえいきょうおよぼすことがないようにこころみることにある。 あらゆる環境かんきょう問題もんだい安全あんぜん保障ほしょう対象たいしょうになるわけではなく、基本きほんてき国民こくみん生存せいぞん国家こっか利益りえきなどにたいする間接かんせつてき直接的ちょくせつてき影響えいきょうする可能かのうせいがある問題もんだいおもとなる。 1990年代ねんだい環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょう活発かっぱつになり、とくにアメリカではさかんに議論ぎろんされた。 しかし、アメリカでの環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょう議論ぎろんは、しばしば環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょう目的もくてきとするものやその実際じっさい手段しゅだん混乱こんらんられた。 結果けっかとして、環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょうについての議論ぎろん低迷ていめいした。 現在げんざい国民こくみん活動かつどう国家こっか役割やくわり企業きぎょう環境かんきょうたいする責務せきむという観点かんてんからの環境かんきょう安全あんぜん保障ほしょう議論ぎろん現在げんざいつづいている。 しかし、具体ぐたいてきかつ明確めいかくされたルールが確立かくりつされるまでにはいたっていない。

思想しそう文化ぶんか安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

思想しそう文化ぶんか安全あんぜん保障ほしょうとは、統治とうち原理げんり文化ぶんか思想しそう宗教しゅうきょう国民こくみんせいなどの思想しそうてき文化ぶんかてき国家こっか基幹きかんてき要素ようそまもることである。選挙せんきょなどをつうじて大衆たいしゅう政治せいじへの関係かんけいおおきくなれば、その行動こうどう世論せろん政治せいじてき影響えいきょうりょくつようになる。また同時どうじ交通こうつう通信つうしん高速こうそく密接みっせつ増大ぞうだいすれば国外こくがい思想しそう文化ぶんか流入りゅうにゅうするようになる。そうすれば、これらを活用かつようして宣伝せんでん広報こうほうなどをつうじて世論せろん外部がいぶから間接かんせつてき誘導ゆうどうすることが可能かのうとなる。たとえば、マスコミつうじてそのくに正統せいとうせい主張しゅちょうすることによって、国際こくさい社会しゃかいたいして好意こういてき印象いんしょう形成けいせいするなどがかんがえられる。宣伝せんでんおこな場合ばあい、あからさまなにせ情報じょうほうながせば宣伝せんでんしゃ信頼しんらいせい減退げんたいさせる。ゆえ宣伝せんでん活動かつどうながされる情報じょうほう露骨ろこつ宣伝せんでんではなく、さりなく、かつ継続けいぞくてき戦略せんりゃくてき大衆たいしゅう宣伝せんでんとなる。ただし、近年きんねん宣伝せんでん客観きゃっかんせいもとめられるようになっており、広報こうほうとの差異さい曖昧あいまいになりつつある。ジョセフ・ナイは冷戦れいせん国際こくさい関係かんけいにおける問題もんだいとして「脅威きょうい種類しゅるい程度ていど曖昧あいまいせい」にあると指摘してきしている。

学派がくは視点してん

編集へんしゅう

安全あんぜん保障ほしょう観察かんさつしゃ視点してんによってもその内容ないようおおきくわる。ここでは主要しゅよう学派がくは安全あんぜん保障ほしょうかんについてべる。

脅威きょうい

編集へんしゅう

脅威きょういとは安全あんぜん保障ほしょうにおいててきまたは潜在せんざいてきてきして使用しようする。脅威きょういには政治せいじてき思想しそうてき経済けいざいてきなものが各種かくしゅ存在そんざいするが、純粋じゅんすい軍事ぐんじてき脅威きょういは「能力のうりょく」と「意思いし」から判断はんだんされるのが一般いっぱんてきである。すなわち、あるくに自国じこくたいして侵略しんりゃくする国家こっか意思いしゆうしていたとしても、それを実行じっこうするための軍事ぐんじりょく存在そんざいしないのであれば、また自国じこく軍事ぐんじりょく圧倒あっとうしている場合ばあいは、そのくに脅威きょういではない。またあるくに膨大ぼうだい軍事ぐんじりょく保有ほゆうしていたとしても、非常ひじょう友好ゆうこうてき関係かんけいがあり、侵略しんりゃく国家こっか意思いしがない場合ばあいはこれも脅威きょういとはならない。

また非対称ひたいしょう脅威きょういという言葉ことばがある。これは従来じゅうらい国家こっかたい国家こっかという対称たいしょうてき脅威きょういではなく、国家こっかたい国家こっかという対称たいしょうではない脅威きょういをいう。つまり対称たいしょう脅威きょういとは国家こっかたい国家こっかたいあいだしょうじる脅威きょういをいうが、非対称ひたいしょう脅威きょういとは、国家こっかたい国家こっかたいあいだしょうじる脅威きょういについていう。

国益こくえき

編集へんしゅう

国益こくえきとは国家こっかにとっての価値かちまたは利益りえきである。狭義きょうぎには国家こっか生存せいぞん独立どくりつ広義こうぎには国家こっか経済けいざいてき繁栄はんえい国際こくさい社会しゃかいでの地位ちい増進ぞうしんなどが国益こくえきにあたる。現実げんじつ主義しゅぎ理論りろん重要じゅうよう概念がいねんひとつであり、あらゆる国家こっかはこの国益こくえき追求ついきゅうして行動こうどうしているとかんがえる。一方いっぽう理想りそう主義しゅぎリベラリズムではいちこく利益りえきである国益こくえき重視じゅうししない。何故なぜなら、より国際こくさいてき共通きょうつうてき利益りえきたとえば国際こくさい公共こうきょうざい国際こくさいレジーム重要じゅうようし、また国益こくえき政策せいさく決定けっていしゃ主観性しゅかんせいによってその内容ないよう変化へんかするからである。

ネオ・リアリズム

編集へんしゅう

ネオ・リアリズムとは国際こくさい構造こうぞうがあらゆる国家こっか行動こうどう影響えいきょうすると仮定かていした理論りろん体系たいけいであり、これにはウォルツ (K.N. Waltz) による国際こくさい政治せいじ政府せいふ状態じょうたい勢力せいりょく分布ぶんぷ説明せつめいする Theory of International Politics (1979)、またギルピン (R.Gilpin) による戦争せんそうだけが国際こくさい構造こうぞうえるとする War and Change in World Politics (1981) などがある。

ネオ・リアリストであるウォルト (S. M. Walt) はバンドワゴン理論りろんした。これは同盟どうめい体制たいせい脅威きょうい対抗たいこうするだけでなく、脅威きょういこく同調どうちょうされるときにも形成けいせいされるというかんがえであり、つまりバンドワゴン(る)行動こうどうしめすことをべた。 たとえば1930年代ねんだいちゅうおうバルカン諸国しょこく中小ちゅうしょうこくドイツヒトラー)に次々つぎつぎくみし、協力きょうりょくしていった。またにちえい同盟どうめいにちどくさんこく同盟どうめい現在げんざい日米にちべい同盟どうめいなどは勢力せいりょく均衡きんこう理論りろんった同盟どうめいではなく、バンドワゴン理論りろんもとづく同盟どうめいであると指摘してきしている。

リベラリズム

編集へんしゅう

機能きのう主義しゅぎ

編集へんしゅう

リベラルな国際こくさい政治せいじ学者がくしゃは、「国家こっか」とは個人こじん自由じゆう権利けんりまもるための「必要ひつようあく」としてかんがえており、その「必要ひつようあく同士どうし議論ぎろんもうけて平和へいわ構築こうちく国際こくさい秩序ちつじょ形成けいせいねらった。(詳細しょうさい機能きのう主義しゅぎ (国際こくさい関係かんけい)項目こうもく参照さんしょう

機能きのう主義しゅぎ反省はんせいと、リベラルな勢力せいりょくによって しん機能きのう主義しゅぎ提唱ていしょうされた。 ようするに国家こっか国家こっかたい)ではなく、民間みんかん国家こっかたい)による外交がいこうと、国家こっか暴走ぼうそう歯止はどめ、国籍こくせき企業きぎょう、それらが発展はってん国家こっかたい国家こっかたい国家こっか主権しゅけん制約せいやくさえ可能かのうというかんがえがてくる(詳細しょうさいしん機能きのう主義しゅぎ項目こうもく参照さんしょう)。

地政学ちせいがく

編集へんしゅう

地政学ちせいがく観点かんてんではハートランドリムランドや、ランドパワーシーパワー対立たいりつなどから非常ひじょう大局たいきょくてきかつ包括ほうかつてき国際こくさい関係かんけい観察かんさつする。シーパワーの理論りろんとして『海上かいじょう権力けんりょく史論しろん The Influence of Sea Power upon History, 1660 - 1783』(1890ねん)という、マハン(Alfred Thayer Mahan)が執筆しっぴつしたものがあり、シーパワー海洋かいようちから海洋かいよう権力けんりょく)の重要じゅうようせいいた。またランドパワーの理論りろんハルフォード・マッキンダー提唱ていしょうした概念がいねんであり、ハートランドを支配しはいする大陸たいりく国家こっかゆうするパワーであり、これはニコラス・スパイクマンによってシーパワーとリムランドにおいて対立たいりつするとろんじた。

構造こうぞうてき暴力ぼうりょく

編集へんしゅう

構造こうぞうてき暴力ぼうりょくとはある社会しゃかい体制たいせい秩序ちつじょ自体じたい貧困ひんこん飢餓きが抑圧よくあつなどをもたらす場合ばあい、これも間接かんせつてきには暴力ぼうりょくであるというかんがかたがある。これは平和へいわがく分野ぶんやヨハン・ガルトゥング(J.Galtung)が提唱ていしょうした。ガルトゥングは「構造こうぞうてき暴力ぼうりょく存在そんざいする状態じょうたい社会しゃかいてき正義せいぎぶ」と定義ていぎしている。

シカゴ学派がくは

編集へんしゅう

安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅう国際こくさい政治せいじがく非常ひじょうつよ影響えいきょうあたえた学派がくは。シカゴ学派がくはだいいち世界せかい大戦たいせんだい世界せかい大戦たいせんりょう大戦たいせん影響えいきょうられる。1900ねんチャールズ・メリアム(C.E.Merriam) 就任しゅうにんからシカゴ学派がくはおおきな潮流ちょうりゅうまれる。具体ぐたいてきには以下いかことをした。

  1. 政治せいじがく隣接りんせつ科学かがく導入どうにゅうし、分析ぶんせき発展はってんさせた。フロイト精神せいしん分析ぶんせき応用おうようなど。
  2. 分析ぶんせきつよ権力けんりょく権威けんいたせた。徹底的てっていてき検証けんしょう至上しじょう主義しゅぎというべき価値かちかん政治せいじ安全あんぜん保障ほしょう科学かがくてき分析ぶんせき可能かのうにした。
  3. アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう現実げんじつのアメリカ社会しゃかい乖離かいり不信ふしんかんいだき、経済けいざいてき側面そくめんから憲法けんぽう解釈かいしゃくした。
  4. 政策せいさく科学かがく重視じゅうしした。プロパガンダ分析ぶんせきとう

世界せかい最終さいしゅうせんろん

編集へんしゅう

石原いしはら莞爾かんじは、1940ねん出版しゅっぱんされた『世界せかい最終さいしゅうせんろん』で、フリードリヒ大王だいおう時代じだいの「持久じきゅう戦争せんそう」、フランス革命かくめいナポレオンの「決戦けっせん戦争せんそう」に大別たいべつし、戦争せんそう持久じきゅう決戦けっせんふたつにけている。だがこれらのかんがかた科学かがくてき理論りろんもとづくものではなく、仏教ぶっきょうてき価値かちかん根底こんていにある。まただいいち世界せかい大戦たいせんつぎ世界せかい戦争せんそう人類じんるい最終さいしゅう戦争せんそう位置付いちづけ、東亜とうあ連盟れんめい(つまりだい東亜とうあ共栄きょうえいけん)が世界せかい勝者しょうしゃとなり天皇てんのう世界せかい盟主めいしゅとなるとほんなか主張しゅちょうした。

ソフト・パワー

編集へんしゅう

ソフト・パワーとは軍事ぐんじりょく(ハードパワー)の対義語たいぎごであり、強要きょうようするのではなく、間接かんせつてき相手あいて影響えいきょう共感きょうかんあたえることによって相手あいてのある行動こうどう態度たいど能力のうりょく総称そうしょうである。軍事ぐんじりょくだけでは国家こっか安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくとしては不完全ふかんぜんだとかんがえられており、このような能力のうりょく総合そうごうてきもちいるべきだというかんがえは古来こらいよりあるが、近年きんねんとく戦争せんそう違法いほうながれなどから注目ちゅうもくされている。

具体ぐたいてきには映画えいが古典こてん芸能げいのうしょく文化ぶんかドラマ海外かいがいへの宣伝せんでん進出しんしゅつ政治せいじ思想しそう宗教しゅうきょうイデオロギーなどの浸透しんとう科学かがく技術ぎじゅつちから経済けいざいりょくなどがげられる。近年きんねん日本にっぽんでは世界せかいてきアニメ漫画まんが人気にんき背景はいけいに、これらをソフトパワーとして活用かつようすべきとの意見いけんおおい。

エアパワーとは航空こうくうかんするその国家こっか能力のうりょく総称そうしょうである。イタリアじん ドゥーエ (Giulio Douhet) は 1921ねんに『せい空論くうろん』を執筆しっぴつし、航空こうくう戦力せんりょく(エアパワー)の重要じゅうようせいろんじた。これは当時とうじ陸海りくかいぐん抵抗ていこうもあってすぐにその重要じゅうようせい認識にんしきされることはなかったが、のち核兵器かくへいき登場とうじょう、ミサイル技術ぎじゅつ発達はったつ航空こうくう戦力せんりょく高度こうどなどから各国かっこくぐんでも重要じゅうようされるようになっていった。

国際こくさい連合れんごう安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

国際こくさい連合れんごうだい世界せかい大戦たいせん終結しゅうけつ国際こくさい社会しゃかい秩序ちつじょ安定あんていさせることを目的もくてきとして、創設そうせつされた集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいである(詳細しょうさい国際こくさい連合れんごう参照さんしょう)。

集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいは、構成こうせいこく武力ぶりょく行使こうし原則げんそくおこなわず、外交がいこう交渉こうしょうによって問題もんだい解決かいけつし、まんいち構成こうせいこく違反いはんして武力ぶりょく行使こうしおこなえばその体制たいせい構成こうせいこく協力きょうりょくして軍事ぐんじりょくふくめた制裁せいさい措置そちおこなうことによって、国際こくさい秩序ちつじょ安定あんていさせる体制たいせいである。

国連こくれんぐん

編集へんしゅう

国連こくれんぐんとは国連こくれん憲章けんしょうもとづいて安全あんぜん保障ほしょう理事りじかい要請ようせいを以って武力ぶりょく制裁せいさい実施じっしする軍隊ぐんたいである。ただし、冷戦れいせんべい対立たいりつによって国連こくれん機能きのう不全ふぜんこったため、現在げんざいいたるまで存在そんざいしない組織そしきである(国連こくれんぐん参照さんしょう)。

国連こくれん平和へいわ維持いじ活動かつどう

編集へんしゅう

国連こくれん平和へいわ維持いじ活動かつどうと(PKO、peace-keeping operation)は国連こくれん集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいべい対立たいりつという時代じだい背景はいけいにより冷戦れいせんには機能きのう不全ふぜんになっていたために代替だいたいあんとして発達はったつした紛争ふんそう管理かんり活動かつどうである。代替だいたいあんとして発展はってんしたものであるため、国連こくれん憲章けんしょう国連こくれんによって公的こうてき定義ていぎされたことはない(詳細しょうさい国連こくれん平和へいわ維持いじ活動かつどう参照さんしょう)。

基本きほんてき平和へいわ維持いじ活動かつどう紛争ふんそう当事とうじしゃ停戦ていせん合意ごういし、かつ活動かつどうへの合意ごういることが前提ぜんていで、中立ちゅうりつてき立場たちばによって実行じっこうされる。具体ぐたいてきには小規模しょうきぼ平和へいわ維持いじぐん(PKF)や軍事ぐんじ監視かんしだんなどを派遣はけんし、選挙せんきょ支援しえん治安ちあん維持いじ兵力へいりょくはなしなどの機能きのうたす。武力ぶりょく制裁せいさいなどの任務にんむになうことはなく、あくまで強制きょうせいてき範囲はんい平和へいわ状態じょうたい支援しえんする。

ガリ構想こうそう

編集へんしゅう

1992ねん6がつ17にち国際こくさい連合れんごう事務じむ総長そうちょうのガリ(ブトロス・ブトロス=ガーリ)は、ガリ構想こうそうなかで5種類しゅるい平和へいわ機能きのう提示ていじした。

  1. 予防よぼう外交がいこうちゅう予防よぼう外交がいこう定義ていぎは50以上いじょう存在そんざいし、明確めいかく定義ていぎい)
  2. 平和へいわてき手段しゅだんによる平和へいわ創造そうぞう紛争ふんそう平和へいわてき手段しゅだんもちいて平和へいわてき解決かいけつする)
  3. 強制きょうせいてき措置そちほどこし、平和へいわ創造そうぞうする(平和へいわ強制きょうせい
  4. 平和へいわ維持いじ停戦ていせんなど)
  5. 紛争ふんそう平和へいわ建設けんせつ構築こうちく

以上いじょうの5種類しゅるい平和へいわ機能きのううち国連こくれんが(正当せいとうせい不当ふとうせい判断はんだんして)関与かんよするのは「強制きょうせいてき措置そちほどこし、平和へいわ創造そうぞうする(平和へいわ強制きょうせい)」のみである。

これは国連こくれん憲章けんしょうだいろくしょうおよ国連こくれん憲章けんしょうだいななしょう理念りねんわせて提言ていげんしたものであるが、すうおおくの国々くにぐに有識者ゆうしきしゃから批判ひはんびた。批判ひはんおおくは、平和へいわ強制きょうせいによって国連こくれん介入かいにゅうさき国家こっか主権しゅけん無視むしすることにかんして、より「積極せっきょくてき」になること比重ひじゅうかれたためである。

よってガリ構想こうそうしめした平和へいわ強制きょうせい部隊ぶたい(Peace enforcement units)はおおくのひとによって問題もんだいてん指摘してきされ有効ゆうこうせい疑問ぎもんされ、1994ねんにはソマリアにおける紛争ふんそうなどの解決かいけつ失敗しっぱいしたため、今後こんごおこなわないことをガリ自身じしん宣言せんげんした。

安全あんぜん保障ほしょうかかえる問題もんだい

編集へんしゅう

セキュリティ・パラドックス

編集へんしゅう

セキュリティ・パラドックス(security paradox)、あるいは安全あんぜん保障ほしょうのジレンマ(security dilemma)とは安全あんぜん保障ほしょう政策せいさく立案りつあんじょうのジレンマをいう。

AこくとBこく対立たいりつし、AこくがBこくたいする明確めいかく安全あんぜん保障ほしょうさだ強化きょうかすると、BこくもAこくたいして安全あんぜん保障ほしょう強化きょうかする。これらが悪循環あくじゅんかんし、平和へいわのための安全あんぜん保障ほしょう逆説ぎゃくせつてきにかえって軍拡ぐんかく軍事ぐんじてき緊張きんちょうぶことになる。

脅威きょうい創出そうしゅつ

編集へんしゅう

安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくはしばしば国民こくみん世論せろんだけでなく、近隣きんりん諸国しょこく世界せかい世論せろんうごかすため、特定とくてい方向ほうこう意図いとった政治せいじ勢力せいりょくによって安全あんぜん保障ほしょう政争せいそう道具どうぐ使つかわれることがしばしばある。

文明ぶんめい衝突しょうとつ」の著者ちょしゃであるサミュエル・P・ハンティントンは、かつてソ連それん崩壊ほうかいのちあらたな脅威きょういさがし、日米にちべいあいだ貿易ぼうえき摩擦まさつげ、日本にっぽん経済けいざいてきてき仮定かていし、経済けいざい戦争せんそうしょう経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう必要ひつようだと提起ていきした。これによって日米にちべいあいだ関係かんけい崩壊ほうかいする程度ていどまではかなかったが、きわめて深刻しんこく意見いけん対立たいりつしょうじた。なお、経済けいざい安全あんぜん保障ほしょうではスピンオフ今後こんご期待きたいできないとし、とく石原いしはら慎太郎しんたろう著作ちょさくの「NOとえる日本にっぽん」はアメリカ安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうしゃおおくを刺激しげきした。石原いしはら慎太郎しんたろう指摘してきするアメリカぐん日本にっぽん高度こうど軍事ぐんじ技術ぎじゅつ依存いぞんしているてんに、安全あんぜん保障ほしょうじょう問題もんだいがあるとして高度こうど技術ぎじゅつすべ国産こくさんにすべきとのかんがかたがアメリカにひろまった。しかしそれを実現じつげんするには自由じゆう貿易ぼうえき否定ひていし、保護ほご主義しゅぎ強化きょうかしなければならないため、結果けっかとして経済けいざいてき衰退すいたいまねくことが判明はんめいし、現在げんざい経済けいざい安全あんぜん保障ほしょう議論ぎろん低迷ていめいしている。その、ハンティントンはあらたな脅威きょういさがし、中国ちゅうごく脅威きょういろん提起ていきし、そのつぎ宗教しゅうきょう対立たいりつ文明ぶんめい衝突しょうとつという脅威きょうい提起ていきした。ハンティントンのろん間違まちがっているということではなく、安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうおこなっている人々ひとびと脅威きょういを「さがし」「あおる」傾向けいこうにあるということをいて物事ものごとなければならない。

自由じゆう抑圧よくあつ

編集へんしゅう
 
特高警察とっこうけいさつ警視庁けいしちょう特別とくべつ高等こうとう検閲けんえつによる検閲けんえつ事務じむ様子ようす。(1938ねん昭和しょうわ13ねん〉)

基本きほんてき人権じんけん言論げんろん自由じゆう抑圧よくあつ弾圧だんあつなどにも治安ちあん安全あんぜん保障ほしょうじょう名分めいぶん使つかわれることがある。

大日本帝国だいにっぽんていこくは1928ねん治安ちあん維持いじほう改正かいせいおこなった。これにより日本にっぽん共産党きょうさんとうおよ党員とういんと、その支持しじしゃ、また労働ろうどう組合くみあい農民のうみん農業のうぎょう従事じゅうじしゃ組合くみあいプロレタリア文化ぶんか運動うんどうなど左翼さよく参加さんかしゃ摘発てきはつおこなった。これは結果けっかとして、特高警察とっこうけいさつ独立どくりつせいちいさい司法しほうなどをみ、基本きほんてき人権じんけん言論げんろん自由じゆう抑圧よくあつ加速かそくさせた。また治安ちあん維持いじほうによって、送検そうけんしゃふく逮捕たいほしゃかずすうじゅうまんにんえていたといわれている。政府せいふ発表はっぴょうでは送検そうけんしゃ7まん5681にん起訴きそ5162にん送検そうけんしゃふく逮捕たいほしゃかず不明ふめいとなっている。

脅威きょうい誇張こちょう

編集へんしゅう

存在そんざいしない危機ききやまだ危機ききといえるほどのものではない程度ていどのものを、恣意しいてきに「危機きき」「脅威きょうい」と過大かだい評価ひょうか世論せろん誘導ゆうどう国家こっか予算よさん獲得かくとくしようとするこころみがぐんさんふく合体がったいによっておこなわれる場合ばあいがある。

911テロ、2003ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう創設そうせつしたが、国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう自由じゆう使つかえる予算よさん配分はいぶんされる予算よさんうちの4%にぎず、その4%は人件じんけん設備せつび使つかってしまう。のこりの96%の予算よさん使途しとまっており、その使途しときわめて政治せいじてき意図いとによって左右さゆうされている。これは安全あんぜん保障ほしょうりて、国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう予算よさん特定とくてい政治せいじ勢力せいりょく自分じぶん政治せいじ勢力せいりょく権益けんえきのために予算よさん使つか危険きけんせいのこる。また国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう国防総省こくぼうそうしょう目的もくてき業務ぎょうむ内容ないようこうむっていると指摘してきされている。さらに国土こくど安全あんぜん保障ほしょうしょう国土こくど安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎと、国防総省こくぼうそうしょう国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎふたつの会議かいぎあいだ連絡れんらくもういことも指摘してきされている。

日本にっぽん安全あんぜん保障ほしょう

編集へんしゅう

幕府ばくふ末期まっき時代じだいには幕府ばくふ陸軍りくぐん幕府ばくふ海軍かいぐん創設そうせつし、独自どくじ安全あんぜん保障ほしょうになうことになった。明治維新めいじいしんによって近代きんだいした日本にっぽんは1871ねん日本にっぽんぐん創設そうせつされた。しかし当初とうしょほう整備せいびとうもされていないため、横浜よこはまえいふつ横浜よこはま駐屯ちゅうとんぐんイギリスぐんフランスぐん)の駐留ちゅうりゅうみとめていた。しかし、駐留ちゅうりゅうぐん経費けいひ明治めいじ政府せいふがわすべ負担ふたんしていたため、国家こっか主権しゅけん侵害しんがいおそれがあるためにちしん戦争せんそうまえ撤退てったい独自どくじ日本にっぽん安全あんぜん保障ほしょうになっていた。

にちしん戦争せんそうにち戦争せんそう勝利しょうりし、だいいち世界せかい大戦たいせんにはドイツ帝国ていこくオーストリア=ハンガリー帝国ていこく勝利しょうりした日本にっぽん国際こくさい連盟れんめい常任じょうにん理事りじこくにもなった。だい世界せかい大戦たいせんによって当初とうしょ日本にっぽんぐん優勢ゆうせいになり、東南とうなんアジア植民しょくみんしていたイギリスぐんやフランスぐん降伏ごうぶくさせ、占領せんりょうした。その日本にっぽんぐんによる真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきにより太平洋戦争たいへいようせんそう勃発ぼっぱつした。日本にっぽんアメリカぐん圧倒的あっとうてきつよさによって、日本にっぽん敗北はいぼくした。

太平洋戦争たいへいようせんそうでの敗戦はいせんによって、日本国にっぽんこく憲法けんぽう制定せいていし、憲法けんぽう精神せいしんとされた平和へいわ主義しゅぎした国権こっけん発動はつどうとしての武力ぶりょく放棄ほうきをしてきた。冷戦れいせん突入とつにゅうすると世界せかい資本しほん主義しゅぎくににより構成こうせいされた西側にしがわ諸国しょこくソ連それん盟主めいしゅとした共産きょうさん主義しゅぎくにとのあいだきょくがた勢力せいりょく形成けいせいされていったなか日本にっぽんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく主導しゅどうによる戦後せんご統治とうちなか資本しほん主義しゅぎ陣営じんえい一員いちいんとして、米国べいこく同盟どうめいこくとしての役割やくわりをはたしていった。当時とうじ日本にっぽん周辺しゅうへん極東きょくとう地域ちいき共産きょうさん勢力せいりょくつよく、日本にっぽんソ連それん中国ちゅうごくといっただい共産きょうさん主義しゅぎこく隣接りんせつするくにとして資本しほん主義しゅぎ陣営じんえい盟主めいしゅ米国べいこくにとって安全あんぜん保障ほしょうじょう重要じゅうよう拠点きょてんとして認識にんしきされ、日本にっぽん国内こくない各地かくちべいぐん基地きちもうけられ資本しほん主義しゅぎ陣営じんえい戦略せんりゃくてき橋頭堡きょうとうほとされていた。べいぐん指導しどうした警察けいさつ予備よびたい編成へんせいされ、以来いらい途中とちゅう保安ほあんたい自衛隊じえいたいへの改編かいへん今日きょういたっている。このようななかで独立どくりつ回復かいふく日本にっぽん安全あんぜん保障ほしょう戦略せんりゃく基本きほんてき米国べいこく世界せかい戦略せんりゃくもと構築こうちくされてきた。

自衛じえいりょく保持ほじについての是非ぜひ戦後せんご憲法けんぽう論争ろんそう国民こくみん世論せろんなかおおきな問題もんだいとなり、1960ねんには日米にちべい安全あんぜん保障ほしょう条約じょうやくもとづき、日米にちべい同盟どうめい締結ていけつされた。国内こくない世論せろん戦後せんご痛手いたでなか復興ふっこう途上とじょうにあり、国民こくみん感情かんじょうとしても安全あんぜん保障ほしょうろんずることが忌避きひされるムードがあり、日米にちべい同盟どうめい締結ていけつであった60ねん安保あんぽ、またしん日米にちべい安保あんぽ条約じょうやく締結ていけつ70ねん安保あんぽ闘争とうそうなどをときとして世論せろんおおきな反対はんたいけつつも日本にっぽんこくとしては専守防衛せんしゅぼうえい理念りねんした自衛隊じえいたい保有ほゆうつづけてきた。戦後せんご長期ちょうきにわたって政権せいけんになってきた自由民主党じゆうみんしゅとうはや時期じきから自衛じえいりょく保持ほじおよ集団しゅうだんてき自衛じえいけん保有ほゆうとう問題もんだいをめぐって有事ゆうじ法制ほうせい憲法けんぽう改正かいせい主張しゅちょうしてきたが、いまだだい世界せかい大戦たいせん記憶きおく生々なまなましいなか日本にっぽん社会党しゃかいとうほか護憲ごけん勢力せいりょく反対はんたいけ、きわめて抑制よくせいてき安全あんぜん保障ほしょう体制たいせいなかべいぐん軍事ぐんじりょくによる抑止よくしりょくをもって極東きょくとう地域ちいきにおける安全あんぜん保障ほしょう秩序ちつじょ維持いじしてきた。その最低限さいていげん自衛じえいりょく必要ひつようせいについては国民こくみん世論せろんおおいに見解けんかいかれるなか社会しゃかいなか理解りかいられていたといえようが、憲法けんぽう改正かいせいなどによる軍事ぐんじりょくたいしての抑制よくせいてき見解けんかい世論せろんおおっていたといえる。

しかし、冷戦崩壊れいせんほうかいのちべいきょく対立たいりつかげかくれてきた民族みんぞく宗教しゅうきょうてき価値かちかんによる地域ちいきあいだ対立たいりつ表面ひょうめんするとともに次第しだいPKO中心ちゅうしんとした平和へいわてき貢献こうけんみち模索もさくされるようになり、自衛隊じえいたいによる海外かいがい派遣はけん機会きかい次第しだいえていった。

今日きょう北朝鮮きたちょうせんミサイル度重たびかさなる発射はっしゃ中国ちゅうごく軍拡ぐんかくなど、以前いぜんとはことなる状況じょうきょう日本にっぽん安全あんぜん保障ほしょうにおいては専守防衛せんしゅぼうえいのありかた日米にちべい同盟どうめいのありかた自衛隊じえいたい運用うんよう範囲はんいなどがおおいに議論ぎろんんでおり、憲法けんぽう改正かいせいし、米国べいこく同盟どうめいこくとしての役割やくわりをはたしてきた戦後せんごあゆみを追認ついにんするとともに、今後こんご日米にちべい同盟どうめいしたでより積極せっきょくてき軍事ぐんじてき貢献こうけん模索もさくすべきとする改憲かいけんろんと、現行げんこう憲法けんぽう堅持けんじし、憲法けんぽうがうたう平和へいわ主義しゅぎ理想りそう具現ぐげんすべきという護憲ごけんろんとに二分にぶんし、国民こくみん世論せろん二分にぶんする事態じたいとなっている。  

安全あんぜん保障ほしょう分野ぶんやせんもん関連かんれん用語ようご

編集へんしゅう

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう

出典しゅってん

編集へんしゅう

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

外部がいぶリンク

編集へんしゅう