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特別高等警察 - Wikipedia
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特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ

戦前せんぜん日本にっぽんの秘密ひみつ警察けいさつ

特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ（とくべつこうとうけいさつ、英語えいご: Special Higher Police, SHP）[1]は、日本にっぽんの秘密ひみつ警察けいさつ。国事こくじ警察けいさつとして発足ほっそくした「高等こうとう警察けいさつ」から分離ぶんりし、国体こくたい護持ごじのために無む政府せいふ主義しゅぎ者しゃ・共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ・社会しゃかい主義しゅぎ者しゃ、および国家こっかの存在そんざいを否認ひにんする者ものや過激かげきな国家こっか主義しゅぎ者しゃを査察ささつ・内偵ないていし、取とり締しまることが目的もくてきであった[2][3]。内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課かを総そう元締もとじめとして、警視庁けいしちょうをはじめとする一道いちどう三さん府ふ七なな県けん[注釈ちゅうしゃく 1]に設置せっちされたが、その後ご、1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）に全国ぜんこく一律いちりつに未み設置せっち県けんにも設置せっちされた[4]。略称りゃくしょうは特高警察とっこうけいさつ（とっこうけいさつ）、特高とっこう（とっこう）と言いい、構成こうせい員いんを指さしても言いう[5]。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごの1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）に、連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ（GHQ）の人権じんけん指令しれいにより廃止はいしされた。

警視庁けいしちょう特別とくべつ高等こうとう部ぶ検閲けんえつ課かによる検閲けんえつ事務じむの様子ようす（1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん））

概要がいよう

編集へんしゅう

特別とくべつ高等こうとう警察けいさつは、高等こうとう警察けいさつの機能きのうを持もつ組織そしきである。高等こうとう警察けいさつとは、「国家こっか組織そしきの根本こんぽんを危あやうくする行為こういを除去じょきょするための警察けいさつ作用さよう」と定義ていぎされる[3]。いわゆる政治せいじ警察けいさつや思想しそう警察けいさつのことである。戦前せんぜんの日本にっぽんでは、治安ちあん警察けいさつ法ほう・出版しゅっぱん法ほう・新聞紙しんぶんし法ほうに基もとづいて、この種たねの警察けいさつ作用さようが行おこなわれた。特別とくべつ高等こうとう警察けいさつでは、このうち特とくに共産きょうさん主義しゅぎ運動うんどう、社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどう、労働ろうどう運動うんどう、農民のうみん運動うんどうなどの左翼さよくの政治せいじ運動うんどうや、右翼うよくの国家こっか主義しゅぎ運動うんどうや不敬ふけい罪ざいを徹底的てっていてきに取とり締しまった[3]。なんといっても暴力ぼうりょく行為こういなどを用もちいた極端きょくたんな取とり締しまりが一般いっぱん大衆たいしゅうに恐おそれられた。

沿革えんかく

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1910年ねん（明治めいじ43年ねん）、明治天皇めいじてんのうの暗殺あんさつを計画けいかくしたとして、大逆だいぎゃく罪ざいの容疑ようぎで多おおくの共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ、社会しゃかい主義しゅぎ者しゃ、無む政府せいふ主義しゅぎ者しゃが逮捕たいほ・処刑しょけいされた（幸徳こうとく事件じけん（大逆だいぎゃく事件じけん））。これを受うけ、翌よく1911年ねん（明治めいじ44年ねん）に、それまで高等こうとう警察けいさつ事務じむの一部いちぶであった危険きけん思想しそう取締とりしまりのため、内務省ないむしょうが枢要すうよう地ちに特とくに専任せんにん警部けいぶを配置はいちすることを勅みことのり令れいで決定けっていし、同年どうねん8月がつ21日にちに警視庁けいしちょうの官房かんぼう内ないに従来じゅうらいより存在そんざいした政治せいじ運動うんどう対象たいしょうの高等こうとう課かが分課ぶんかされて、社会しゃかい運動うんどう対象たいしょうの特別とくべつ高等こうとう課かが設置せっちされた。

同どう課かの設置せっちにより、地方ちほう長官ちょうかんや警察けいさつ部長ぶちょうなどを介かいさず、内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課かの直接ちょくせつ指揮しき下かに置おかれ、内務省ないむしょうと一体いったいとなって社会しゃかい運動うんどう（同盟罷業どうめいひぎょう・社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどう・共産きょうさん主義しゅぎ運動うんどう・諜報ちょうほう活動かつどう・爆発ばくはつ物ぶつ・印刷物いんさつぶつ等とう）の取締とりしまりにあたった。これにはフランスの秘密ひみつ警察けいさつの影響えいきょうがみられる。特別とくべつ高等こうとう警察けいさつを指揮しきした内務ないむ官僚かんりょうには安倍あべ源みなもと基はじめや町村ちょうそん金きん五ご（町村ちょうそん信孝のぶたかの父ちち）などがいる。

1911年ねんには大阪おおさか府ふにも警察けいさつ部長ぶちょう直属ちょくぞくの「高等こうとう課か別室べっしつ」が設置せっちされ、翌よく1912年ねんに特別とくべつ高等こうとう課かに昇格しょうかくした。

1913年ねんの警視庁けいしちょう官制かんせいの改正かいせいによって、特別とくべつ高等こうとう課かは、特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ・外事がいじ警察けいさつ・労働ろうどう争議そうぎ調停ちょうていの三さん部門ぶもんを担当たんとうする課かとして位置いちづけられた。

1922年ねんに日本にっぽん共産党きょうさんとうが結成けっせいされると、1922年ねんから1926年ねんにかけて、北海道ほっかいどう・神奈川かながわ・長野ながの・愛知あいち・京都きょうと・兵庫ひょうご・山口やまぐち・福岡ふくおか・長崎ながさきなど主要しゅよう府県ふけんの警察けいさつ部ぶにも特別とくべつ高等こうとう課かが設もうけられ、1925年ねんには治安ちあん維持いじ法ほうが制定せいていされ取締とりしまりの法的ほうてき根拠こんきょが整備せいびされた。

三さん・一いち五ご事件じけんをうけ、1928年ねんには「赤化せっかへの恐怖きょうふ」を理由りゆうに全ぜん府県ふけんに特別とくべつ高等こうとう課かが設もうけられ、また、主おもな警察けいさつ署しょには「特別とくべつ高等こうとう係がかり」が配置はいちされ、全国ぜんこく的てきな組織そしき網もうが確立かくりつされた。1932年ねん6月がつに警視庁けいしちょうの特別とくべつ高等こうとう課かは「特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ部ぶ」に昇格しょうかくした。

1932年ねんに岩田いわた義道よしみち、1933年ねんには小林こばやし多喜二たきじに過酷かこくな尋問じんもんを行おこなって死亡しぼうさせるなど、当初とうしょは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃや共産きょうさん党員とういんを取締とりしまりの対象たいしょうとしているが、後のちに日本にっぽんが戦時せんじ色しょくを強つよめるにつれ、挙国一致きょこくいっち体制たいせいを維持いじするため、その障害しょうがいとなりうる反戦はんせん運動うんどうや類似るいじ宗教しゅうきょう（当時とうじの政府せいふ用語ようごで、新しん宗教しゅうきょうをこう呼よんだ。）など、反はん政府せいふ的てきとみなした団体だんたい・活動かつどうに対たいする監かん視しや取締とりしまりが行おこなわれるようになった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかには「鵜うの目め鷹たかの目め」の監視かんし網もうを張はり巡めぐらせたほか、横浜よこはま事件じけんや俳句はいく弾圧だんあつ事件じけんなど言論げんろん弾圧だんあつといわれる事件じけんをひきおこした。

1941年ねん、治安ちあん維持いじ法ほうの改正かいせいで予防よぼう拘禁こうきん制度せいどが発足ほっそく。これに対応たいおうするため警視庁けいしちょうの特高とっこう第だい一いち課かの例れいでは警部補けいぶほ16人にん、巡査じゅんさ部長ぶちょう16人にん、巡査じゅんさ9人にんの大幅おおはば増員ぞういん。他たに特高とっこう第だい二に課か4人にん、検閲けんえつ課かも4人にんが増員ぞういんされている[6]。

1944年ねんに大阪おおさか府ふ警察けいさつ局きょくに「治安ちあん部ぶ」が設置せっちされ、特別とくべつ高等こうとう課かも配置はいちされた。

敗戦はいせん後こうは、進駐軍しんちゅうぐんの不法ふほう行為こういの監視かんしを行おこなった（特殊とくしゅ慰安いあん施設しせつ協会きょうかい参照さんしょう）。当初とうしょ、内務省ないむしょうは陸海りくかい軍ぐんの解体かいたい・廃止はいしに伴ともなう治安ちあん情勢じょうせいの悪化あっかに対応たいおうするために、警察けいさつ力りょくの増強ぞうきょうと、特高警察とっこうけいさつの拡充かくじゅうを行おこなうつもりでいた[7]。「昭和しょうわ21年度ねんど警察けいさつ予算よさん概算がいさん要求ようきゅう書しょ」には、特高警察とっこうけいさつの拡充かくじゅう・強化きょうかのために、1,900万まん円えんが予算よさん要求ようきゅうされていた。内容ないようは、1.視察しさつ内偵ないていの強化きょうか（共産きょうさん主義しゅぎ運動うんどう、右翼うよくその他たの尖鋭せんえい分子ぶんし、連合れんごう国こく進駐しんちゅう地域ちいきにおける不穏ふおん策動さくどうの防止ぼうし）、2.労働ろうどう争議そうぎ、小作こさく争議そうぎの防止ぼうし・取締とりしまり、3.朝鮮ちょうせん人じん関係かんけい、4.情報じょうほう機能きのうの整備せいび、5.港湾こうわん警備けいび、6.列車れっしゃ移動いどう警察けいさつ、7.教養きょうよう訓練くんれん（特高とっこう講習こうしゅう、特高とっこう資料しりょうの作成さくせい）の計けい7点てんである[8]。

日本国にっぽんこく政府せいふ・内務省ないむしょうは、警察けいさつ力りょくの武装ぶそう化かと特高警察とっこうけいさつの拡充かくじゅう・強化きょうかによって、敗戦はいせんによる未み曽そ有ゆうの社会しゃかい的てき悪条件あくじょうけんの下したにある民心みんしんの動揺どうようを未然みぜんに防止ぼうしし、不穏ふおんな策動さくどうを徹底的てっていてきに防止ぼうしすることを狙ねらっていた。1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）10月5日にち、政府せいふはGHQに上記じょうきの警察けいさつ力りょく拡充かくじゅう計画けいかくの許可きょかを求もとめたが、GHQはこれを拒否きょひしている[8]。

1945年ねん10月4日にち、連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ（GHQ）の人権じんけん指令しれいにより、治安ちあん維持いじ法ほうと共ともに廃止はいしされた。しかし、内務省ないむしょう上層じょうそう部ぶは、日本にっぽん共産党きょうさんとうなどの反はん政府せいふ的てき動静どうせいに対処たいしょするためにも、全国ぜんこくの特高警察とっこうけいさつ網もうを温存おんぞんさせる必要ひつようがあると考かんがえており、1945年ねん12月19日にち、特高警察とっこうけいさつに「代かわるべき組織そしき」として、内務省ないむしょう警保局きょくに公安こうあん課かが設置せっちされ、各かく都道府県とどうふけん警察けいさつ部ぶにも警備けいび課か[注釈ちゅうしゃく 2]が設置せっちされた（公安こうあん警察けいさつ）。

GHQによる人権じんけん指令しれいにより、特別とくべつ高等こうとう警察けいさつに在籍ざいせきしていた官僚かんりょう・警察官けいさつかんは、公職こうしょく追放ついほうの対象たいしょうになったものの、戦争せんそう犯罪はんざい人ひととして指定していされ、問責もんせき・処罰しょばつの対象たいしょうとなった者ものは、内務省ないむしょう・特高警察とっこうけいさつ関係かんけい者しゃには1人ひとりもいなかった。1万まん500人にんの特高警察とっこうけいさつ関係かんけい者しゃの中なかで、内務ないむ大臣だいじん、警保局長きょくちょう、保安ほあん・外事がいじ・検閲けんえつ各かく課長かちょうおよび各かく府県ふけんの警察けいさつ部長ぶちょう級きゅう51人にん、特高とっこう課長かちょう・外事がいじ課長かちょう55人にん、警部けいぶ168人にん、警部補けいぶほ1,000人にん、巡査じゅんさ部長ぶちょう1,587人にん、巡査じゅんさ2,127人にんの合計ごうけい4,990人にんが休職きゅうしょくとなり、その後ご「依願いがん退職たいしょく」の形かたちで罷免ひめんとなった。ただし、公職こうしょく追放ついほうG項こう該当がいとう追放ついほう者しゃはわずかに319人にん、一斉いっせい罷免ひめん者しゃの数かずはさらに少すくない86人にんでしかなかった。茨城いばらき県けん警察けいさつ部ぶ土浦つちうら警察けいさつ署しょの署長しょちょうであった池田いけだ博彦ひろひこは、特高警察とっこうけいさつ関係かんけい者しゃの半数はんすう近ちかくが罷免ひめんされたことによって、警察けいさつの情報じょうほう収集しゅうしゅう能力のうりょくが落おちたことを嘆なげいていた。

1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）1月がつ3日にち、アメリカ人じんジャーナリストのマーク・ゲインが、山梨やまなし県けん警察けいさつ部ぶ大月おおつき警察けいさつ署しょの署長しょちょうに対たいして、「特高警察とっこうけいさつが解体かいたいされて、破壊はかい分子ぶんしを監視かんしする機関きかんがなくなったのはまことに困こまったことではないか」と質問しつもんしたところ、署長しょちょうは「それはたいしたことではない、なぜなら特高警察とっこうけいさつの仕事しごとは県庁けんちょうの公安こうあん課かの司法官しほうかんの手てに引ひき継つがれたから」と説明せつめいしている。署長しょちょうは続つづけて「私わたしもちょうど県庁けんちょう所在地しょざいちでの会議かいぎに出席しゅっせきして帰かえったばかりです。その会議かいぎは12月28日にち、29日にちの2日間にちかん開ひらかれて、いま公安こうあん課かにいるもとの特高とっこう係長かかりちょうがわれわれの仕事しごとについて、いろいろ新あたらしい指示しじを与あたえました。とくに今度こんどの選挙せんきょについての」と語かたっている。このように、特高警察とっこうけいさつの業務ぎょうむは、公安こうあん警察けいさつに継承けいしょうされていた[9]。

GHQ参謀さんぼう第だい2部ぶ（G2）は、特高警察とっこうけいさつ関係かんけい者しゃの中なかから、公職こうしょく追放ついほうされた者ものを多おおく雇用こようして、元もと特高とっこう警察官けいさつかんの知識ちしきや経験けいけんを情報じょうほう収集しゅうしゅうや謀略ぼうりゃく活動かつどうに利用りようしており[9]、内務省ないむしょう調査ちょうさ局きょくと、その後身こうしんである法務ほうむ庁ちょう特別とくべつ審査しんさ局きょくに入局にゅうきょくさせて、レッドパージの先鋒せんぽうとしての役割やくわりを担になわせていた。特別とくべつ審査しんさ局きょくの調査ちょうさ第だい三さん課かは、特高警察とっこうけいさつの元締もとじめであった内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課か[注釈ちゅうしゃく 3]と編成へんせいが酷似こくじしており、団体だんたい等とう規正きせい令れい第だい11条じょうにより解散かいさん処分しょぶんとなった日本にっぽん共産党きょうさんとうや全労連ぜんろうれんの動向どうこうを監視かんししていた[10]。G2は公安こうあん警察けいさつとも密接みっせつな関係かんけいにあり、日本にっぽんの各かく地方ちほうに置おかれたG2管下かんかの対敵たいてき諜報ちょうほう部隊ぶたい（CIC）は、各かく都道府県とどうふけん警察けいさつ部ぶの警備けいび課か（公安こうあん課か）と緊密きんみつな連絡れんらくを取とり合あって諜報ちょうほう活動かつどうに従事じゅうじしていた。後のちにG2は、中央ちゅうおう集権しゅうけん的てきな警察けいさつ機構きこうの存続そんぞくを望のぞむ内務省ないむしょう警保局きょくを支持しじし、警察けいさつ機構きこうの分権ぶんけん化か・細分さいぶん化かを進すすめるGHQ民政みんせい局きょく（GS）と鋭するどく対立たいりつしている[9]。

その後ご、GHQの占領せんりょう政策せいさくの転換てんかんに伴ともなう公職こうしょく追放ついほう者しゃの処分しょぶん解除かいじょ（逆ぎゃくコース）により、1951年ねん9月がつ以降いこう、自治省じちしょう・警察庁けいさつちょう（警備けいび局きょく）・警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶ・公安調査庁こうあんちょうさちょう・厚生省こうせいしょう・労働省ろうどうしょう・防衛庁ぼうえいちょう・宮内庁くないちょう・文部省もんぶしょう・日本にっぽん育英いくえい会かい・住宅金融公庫じゅうたくきんゆうこうこ・年金福祉事業団ねんきんふくしじぎょうだん・日本にっぽん住宅じゅうたく公団こうだん・首都高速道路公団しゅとこうそくどうろこうだん・阪神はんしん高速こうそく道路どうろ公団こうだん・日本にっぽん観光かんこう協会きょうかいなどの上級じょうきゅう幹部かんぶ職しょくに復職ふくしょくしていった[11]。

また、公職こうしょく復帰ふっき後ごに知事ちじや副ふく知事ちじを足掛あしがかりに、国会こっかい議員ぎいんとなり、その後ご、自治じち大臣だいじん兼けん国家こっか公安こうあん委員いいん会かい委員いいん長ちょう（石原いしはら幹みき市郎いちろう、山崎やまざき巌いわお、町村ちょうそん金きん五ご）や、文部もんぶ大臣だいじん（奥野おくの誠まこと亮あきら）、法務大臣ほうむだいじん（古井ふるい喜き実み、奥野おくの誠まこと亮あきら、唐沢からさわ俊樹としき）となる者ものもいた。

全国ぜんこく組織そしきとしての陣容じんよう

編集へんしゅう

特高警察とっこうけいさつの総そう元締もとじめである内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課かの課長かちょうは、課長かちょう級きゅうでは唯一ゆいいつの勅みことのり任官にんかんであり、重要じゅうような役職やくしょくであった。ベルリンやロンドンに海外かいがい駐ちゅう在官ざいかんを置おいていたほか、新あらたに警務けいむ官かん制度せいどが新設しんせつされ、北海道ほっかいどう・東北とうほく・関東かんとう・中部ちゅうぶなど、全国ぜんこく5地区ちくの警務けいむ官かんに各かく府警ふけいの警察けいさつ部長ぶちょうや特高とっこう課長かちょうを指揮しきできる権限けんげんを与あたえていた[12]。

内務省ないむしょう警保局きょく図書としょ課かは、新聞しんぶん・出版しゅっぱん物ぶつの検閲けんえつと外国がいこく語ご出版しゅっぱん物ぶつの調査ちょうさを行おこない、検閲けんえつ制度せいどの統一とういつや内外ないがい出版しゅっぱん物ぶつの論調ろんちょうの調査ちょうさ研究けんきゅうも行おこなっていた[12]。

特高警察とっこうけいさつは二に層そう構造こうぞうになっており、内務省ないむしょうの保安ほあん課長かちょうや事務じむ官かんのポストを占しめるのは、高等こうとう文官ぶんかん試験しけんを合格ごうかくした内務省ないむしょうのエリートであった。彼かれらは入省にゅうしょう後ご5年ねん程ほどで小規模しょうきぼ県けんの特高とっこう課長かちょうとなり、その後ご、2～3年ねん程度ていどで特高とっこう課長かちょうに就任しゅうにんし、入省にゅうしょうから10年ねん程度ていどで本省ほんしょう保安ほあん課かの事務じむ官かんクラスに昇進しょうしんする。特高とっこう課長かちょうや外事がいじ課長かちょうは内務省ないむしょうの「指定してい課長かちょう」であり、内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課長かちょうが任命にんめい権限けんげんを握にぎっていた[13]。

上記じょうきの内務ないむ官僚かんりょうのエリートとは対極たいきょく的てきに、特高警察とっこうけいさつの実戦じっせん部隊ぶたいである各かく府警ふけい特高とっこう課かや各かく警察けいさつ署しょ特高とっこう係がかりには多数たすうの専任せんにん警察官けいさつかんがいた。これら〝たたき上あげ組ぐみ〟が実務じつむの中心ちゅうしんを担になっており、その任務にんむの特殊とくしゅ性せいから長期ちょうきにわたることが多おおかった。代表だいひょう的てきな人物じんぶつとして1911年ねんに警視庁けいしちょう特高とっこう課か労働ろうどう係がかりに配属はいぞくされた毛利もうり基はじめや、1929年ねんに警視庁けいしちょう特高とっこう課か特高とっこう係がかりに配属はいぞくされた宮下みやした弘ひろしがおり、2人ふたりとも敗戦はいせん後ごの辞職じしょくにいたるまで特高警察とっこうけいさつに在職ざいしょくしていた[14]。

関係かんけいした事件じけん

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組織そしき図ず

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下図したずの通とおり、特別とくべつ高等こうとう警察けいさつは、各かく県けんの警察けいさつ部長ぶちょうを経由けいゆして地方ちほう長官ちょうかん（知事ちじ）の指揮しきを受うける、一般いっぱんの警察けいさつと異ことなり、内務省ないむしょうから直接ちょくせつ指揮しきを受うける、特殊とくしゅな警察けいさつ組織そしきであった。

1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）の「部ぶ昇格しょうかく」以降いこうのもの
内務ないむ大臣だいじん
警保局きょく
保安ほあん課か検閲けんえつ課か
（図書としょ課か）		外事がいじ課か
警視庁けいしちょう
特高とっこう部ぶ		道府県どうふけん
警察けいさつ部ぶ
特高とっこう課か		海外かいがい派遣はけん
事務じむ官かん
特高とっこう一いち課か特高とっこう二に課か労働ろうどう課か検閲けんえつ課か外事がいじ課か内うち鮮課調停ちょうてい課か
各かく警察けいさつ署しょ
特高とっこう係がかり

※「特別とくべつ高等こうとう」を「特高とっこう」と略りゃくしている。警視庁けいしちょう特高とっこう部ぶは「特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ部ぶ」を「特高とっこう部ぶ」と略りゃくしている。

逸話いつわ

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「票読ひょうよみ一ひとつ誤あやまらない」と恐おそれられた緻密ちみつさを持もち、ことに戦中せんちゅうは「銭湯せんとうの冗談じょうだんも筒抜つつぬけになる」とまで言いわれた[要よう出典しゅってん]。戦後せんご、日本にっぽん共産党きょうさんとうが機関きかん紙し『赤旗あかはた』（せっき）を復刻ふっこくしようとしたが、26号ごうまでは散逸さんいつしてしまったため、やむなく特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ資料しりょう第だい3号ごう[15]に全文ぜんぶん収録しゅうろくされていたものを使つかった[16]。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえや戦中せんちゅうは「特高とっこうの持もつ警察けいさつ手帳てちょうは赤色あかいろである」という噂うわさがあったが、実際じっさいは一般いっぱんの警察官けいさつかんと同様どうように黒色こくしょくであった。なお、過去かこに実際じっさいに赤色あかいろ系けいの手帳てちょうを持もっていた日本にっぽんの公務員こうむいんは、麻薬まやく取締とりしまり官かんと麻薬まやく取締とりしまり員いんで、これは戦前せんぜんも内務省ないむしょう衛生局えいせいきょくの下したにあり、色いろも同様どうようであった。

戦前せんぜんの批判ひはん

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  • 1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）7月がつ23日にち - 東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶんは同日どうじつ付づけの朝刊ちょうかん社説しゃせつの中なかで特別とくべつ高等こうとう警察けいさつを批判ひはん。東北とうほく某ぼう県けんでマルクス全集ぜんしゅう購入こうにゅう者しゃをリストアップした事例じれいを取とり上あげ、マルキシズムの是非ぜひはともかく、法ほうにより公刊こうかんが認みとめられた書物しょもつの購入こうにゅう者しゃを脅おびやかすごとき態度たいどに出でることは不穏当ふおんとうの沙汰さたであるとした。また、屋上おくじょう屋やを架かすると非難ひなんされた特高とっこう課かが、仕事しごとなき手持てもち無沙汰ぶさたのあまり強つよいて仕事しごとを作つくらんとする属僚ぞくりょう気質きしつにあることも言及げんきゅうしている[17]。　

特高警察とっこうけいさつが登場とうじょうする作品さくひん

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関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 北海道庁ほっかいどうちょう警察けいさつ部ぶ、警視庁けいしちょう、神奈川かながわ県けん警察けいさつ部ぶ、長野ながの県けん警察けいさつ部ぶ、愛知あいち県けん警察けいさつ部ぶ、京都きょうと府警ふけい察部、大阪おおさか府警ふけい察部、兵庫ひょうご県けん警察けいさつ部ぶ、山口やまぐち県けん警察けいさつ部ぶ、福岡ふくおか県けん警察けいさつ部ぶ
  2. ^ 1946年ねんの2月がつ～3月がつにかけて「公安こうあん課か」に改称かいしょうされている。
  3. ^ 警察庁けいさつちょう警備けいび局きょくの源流げんりゅうに当あたる。

出典しゅってん

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  1. ^ Christopher Aldous 『The Police In Occupation Japan: Control, Corruption and Resistance to Reform (Routledge Studies in the Modern History of Asia) 』 Routledge p.309
  2. ^ 荻野おぎの 2012, p.16
  3. ^ a b c 金子かねこ宏ひろし、新堂しんどう幸司こうじ、平井ひらい宜むべ雄ゆう『法律ほうりつ学がく小しょう辞典じてん』（第だい4版はん補ほ訂てい）有斐閣ゆうひかく、2008年ねん。ISBN 9784641000278。 
  4. ^ 荻野おぎの 2012, p.27
  5. ^ “特高とっこう”. コトバンク. 2014年ねん5月がつ14日にち閲覧えつらん。
  6. ^ 警視庁けいしちょう特高とっこう課か大だい増員ぞういん、左翼さよく取とり締しまり強化きょうか『東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん』（昭和しょうわ16年ねん5月がつ30日にち夕刊ゆうかん）『昭和しょうわニュース辞典じてん第だい7巻かん 昭和しょうわ14年ねん-昭和しょうわ16年ねん』p466 昭和しょうわニュース事典じてん編纂へんさん委員いいん会かい 毎日まいにちコミュニケーションズ刊かん 1994年ねん
  7. ^ 内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課長かちょうヨリ警察けいさつ部長ぶちょう宛あて暗号あんごう電報でんぽう訳文やくぶん 八はち月がつ十じゅう一いち日にち十じゅう時じ十じゅう分ふん受領じゅりょう
  8. ^ a b 大日方おびなた純夫すみお 『天皇てんのう制せい警察けいさつと民衆みんしゅう』 日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ p.256～259
  9. ^ a b c 荻野おぎの富士夫ふじお 『特高警察とっこうけいさつ体制たいせい史し 社会しゃかい運動うんどう抑圧よくあつ取締とりしまりの構造こうぞうと実態じったい』 せきた書房しょぼう p.444
  10. ^ 荻野おぎの富士夫ふじお 『戦後せんご治安ちあん体制たいせいの確立かくりつ』 岩波書店いわなみしょてん p.138～139
  11. ^ 柳やなぎ河瀬かわせ精きよし 『告発こくはつ！ 戦後せんごの特高とっこう官僚かんりょう』 日本にっぽん機関きかん誌し出版しゅっぱんセンター p.155
  12. ^ a b 荻野おぎの 2012, p.26
  13. ^ 荻野おぎの 2012, p.40
  14. ^ 荻野おぎの 2012, p.41
  15. ^ 内務省ないむしょう警保局きょく保安ほあん課か『特別とくべつ高等こうとう警察けいさつ資料しりょう第だい３号ごう』（PDF,JPEG）（レポート）国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かんアジア歴史れきし資料しりょうセンター、July 1929。https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F0000000000000093548。2020年ねん9月がつ19日にち閲覧えつらん。 
  16. ^ 奥原おくはら紀おさむ晴はれ (2008年ねん1月がつ27日にち). “ジャーナリズム対談たいだん/報道ほうどう写真しゃしん家か・石川いしかわ文洋ふみひろさん/赤旗あかはた編集へんしゅう局長きょくちょう・奥原おくはら紀おさむ晴はれ”. しんぶん赤旗あかはた (日本にっぽん共産党きょうさんとう). オリジナルの2011年ねん12月6日にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111206043927/http://www.jcp.or.jp/akahata/akahata_80th/200802_80th-taidan1.html 2009年ねん12月17日にち閲覧えつらん。 
  17. ^ 特高警察とっこうけいさつの運用うんよう誤あやまるな『東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん』昭和しょうわ3年ねん7月がつ23日にち（『昭和しょうわニュース事典じてん第だい1巻かん 昭和しょうわ元年がんねん-昭和しょうわ3年ねん』本編ほんぺんp538 昭和しょうわニュース事典じてん編纂へんさん委員いいん会かい 毎日まいにちコミュニケーションズ刊かん 1994年ねん）

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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