情報じょうほう局きょく

情報じょうほう局きょく（じょうほうきょく、旧きゅう字体じたい：情じょう󠄁報むくい局きょく、英語えいご: Intelligence Bureau）は、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん当時とうじの日本にっぽんの内閣ないかく直属ちょくぞくの情報じょうほう機関きかんである。戦争せんそうに向むけた世論せろん形成けいせい、プロパガンダと思想しそう取締とりしまりの強化きょうかを目的もくてきに、内閣ないかく情報じょうほう部ぶと外務省がいむしょう情報じょうほう部ぶ、陸軍りくぐん省しょう情報じょうほう部ぶ、海軍かいぐん省しょう軍事ぐんじ普及ふきゅう部ぶ、内務省ないむしょう警保局きょく検閲けんえつ課か、逓信ていしん省しょう電でん務つとむ局きょく電でん務つとむ課か、以上いじょうの各省かくしょう・各かく部課ぶかに分ぶん属ぞくされていた情報じょうほう事務じむを統一とういつ化かすることを目指めざして、1940年ねん 12月6日にちに発足ほっそくした。職員しょくいんは情報じょうほう官かん以上いじょう55名めい、属官ぞっかん89名めいの合計ごうけい144名めい。

国内こくないの情報じょうほう収集しゅうしゅう、戦時せんじ下かにおける言論げんろん・出版しゅっぱん・文化ぶんかの検閲けんえつ・統制とうせい、マスコミの統合とうごうや文化ぶんか人じんの組織そしき化か、および銃後じゅうごの国民こくみんに対たいするプロパガンダを内務省ないむしょう・陸軍りくぐん省しょう・海軍かいぐん省しょう・大本営だいほんえい陸軍りくぐん部ぶ・海軍かいぐん部ぶなどと並行へいこうして行いった政府せいふ機関きかんである。

「内閣ないかく情報じょうほう局きょく」（ないかくじょうほうきょく、英語えいご: Cabinet Intelligence Bureau）とも呼よばれるが、公式こうしき名称めいしょうは「情報じょうほう局きょく」である^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。中央ちゅうおう情報じょうほう局きょく（CIA）や内閣ないかく情報じょうほう調査ちょうさ室しつのようなインテリジェンス機関きかんというより、ナチス・ドイツ政権せいけん下したの国民こくみん啓蒙けいもう・宣伝せんでん省しょうのような機関きかんであった。

沿革えんかく

1932年ねんの満州まんしゅう国こく建国けんこくに際さいして、アメリカから日本にっぽんへの非難ひなんが高たかまり、外務省がいむしょうは帝国ていこく主義しゅぎ的てき外交がいこうで名高なだかい内田うちだ康哉こうさい外務がいむ大臣だいじんのもとで対外たいがい情報じょうほう戦略せんりゃくの練ねり直なおしを迫せまられた。外務省がいむしょう情報じょうほう部ぶの白鳥しらとり敏夫としおはこれまでの陸軍りくぐん省しょう新聞しんぶん班はんとの経緯けいいを水みずに流ながし、外務がいむ・陸軍りくぐん（鈴木すずき貞一さだいちほか）・参謀さんぼう本部ほんぶ（武藤むとう章あきらほか）の局部きょくぶ長ちょう・佐官さかん級きゅうによる連絡れんらく会議かいぎ「時局じきょく同志どうし会かい」を結成けっせいする。

同志どうし会かいは情報じょうほう宣伝せんでんに関かんする委員いいん会かい設置せっちを決定けってい。これにより結成けっせいされた非公式ひこうしきの連絡れんらく機関きかん「情報じょうほう委員いいん会かい」を前身ぜんしんとして、1936年ねん「内閣ないかく情報じょうほう委員いいん会かい」が設置せっちされる。内閣ないかく書記官しょきかん長ちょうのもと政府せいふ各かく省庁しょうちょうと陸海りくかい軍ぐんの官僚かんりょうにより、公安こうあん維持いじのために積極せっきょく的てきな情報じょうほう統制とうせいや情報じょうほう発信はっしんをする機関きかんとして活動かつどうしたが、国内こくないの統制とうせいではなく外務省がいむしょうの対たい中国ちゅうごく戦略せんりゃくがメインであった。

内閣ないかく官房かんぼうを間あいだに挟はさんで外務省がいむしょうと陸軍りくぐんとの綱引つなひきが水面すいめん下かで行おこなわれた結果けっか1937年ねん、「内閣ないかく情報じょうほう部ぶ」に改あらためられ、一元いちげん的てきな対外たいがい情報じょうほう収集しゅうしゅうや対外たいがい宣伝せんでん活動かつどうが職務しょくむに加くわえられた。これは山本やまもと五十六いそろく海軍かいぐん次官じかんと須磨すま弥わたる吉郎よしろう南京なんきん総領事そうりょうじの肝煎きもいりだとされている^[1]。1939年ねんには「国民こくみん精神せいしん総動員そうどういんに関かんする一般いっぱん事項じこう」がさらに加くわわり、国民こくみんに対たいする宣伝せんでんを活発かっぱつ化かさせ、それを担になうマスコミ・芸能げいのう・芸術げいじゅつへの統制とうせいを進すすめた。 1940年ねんには、帝国ていこく劇場げきじょうを内閣ないかく情報じょうほう部ぶが庁舎ちょうしゃとして利用りようすることとし^[2]、演劇えんげきを提供ていきょうする場ばを潰つぶした。

1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）、第だい2次じ近衛このえ内ない閣かくは内閣ないかく情報じょうほう部ぶに外務省がいむしょう・内務省ないむしょう・逓信ていしん省しょう・陸軍りくぐん省しょう・海軍かいぐん省しょうの情報じょうほう・報道ほうどう関係かんけい部門ぶもんを統合とうごうさせ、情報じょうほう収集しゅうしゅう・統制とうせい・発信はっしんの一元化いちげんかをめざす局きょくに昇格しょうかくさせることを決定けってい^[3]。10月3日にちに閑院宮みや載の仁じん親王しんのうが参謀さんぼう総長そうちょうを離任りにんし後任こうにんに杉山すぎやま元はじめ陸軍りくぐん大将たいしょうが就任しゅうにんすると、8日にちには米国べいこく国務省こくむしょうは極東きょくとう在住ざいじゅう米国べいこく市民しみんに引ひき上あげを勧告かんこくした。それから4日にち後ごの10月がつ12日にち、大政たいせい翼賛よくさん会かいの発会はっかい式しきが挙行きょこうされ、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが総裁そうさいに就任しゅうにんし、3日にち後ごの10月がつ15日にちには内閣ないかく情報じょうほう局きょく官制かんせい案あん要綱ようこうが閣議かくぎで決定けっていされた^[4]。

1940年ねん12月6日にち、内閣ないかく情報じょうほう局きょくは総そう力戦りきせん態勢たいせいを整備せいびし「挙国きょこく的てき世論せろんの形成けいせいを図はかる」目的もくてきで発足ほっそくした。初代しょだい総裁そうさいは外務省がいむしょう官僚かんりょうの伊藤いとう述じゅつ史し、副ふく総裁そうさいはジャーナリストで大政たいせい翼賛よくさん会かい宣伝せんでん部長ぶちょうの久富ひさとみ達夫たつお（敗戦はいせんまでに日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい専務せんむ理事りじとなった）。

しかし陸軍りくぐんと海軍かいぐんは、大本営だいほんえい陸軍りくぐん部ぶ・海軍かいぐん部ぶに報道ほうどう部ぶを設置せっちしたほか、陸軍りくぐん省しょうには報道ほうどう部ぶ、海軍かいぐん省しょうには軍事ぐんじ普及ふきゅう部ぶを設置せっちするなど、情報じょうほう局きょくへの協力きょうりょく姿勢しせいや権限けんげん移譲いじょうの意志いしがまるで無なく、その結果けっか、情報じょうほう局きょくは内務省ないむしょう警保局きょく検閲けんえつ課か（旧きゅう図書としょ課か）の職員しょくいんが大半たいはんを占しめて、検閲けんえつの実務じつむを遂行すいこうしていた^{[注釈ちゅうしゃく 2]}。

検閲けんえつの実務じつむにあたったのは、放送ほうそうについては逓信ていしん省しょうの出先でさき機関きかんである東京とうきょう、大阪おおさか、名古屋なごや、広島ひろしま、熊本くまもと、札幌さっぽろ、仙台せんだいの各かく逓信ていしん局きょくの逓信ていしん省しょう監督かんとく課かの職員しょくいん230名めい、新聞しんぶんや雑誌ざっしについては、各かく府県ふけんの警察けいさつ部ぶの担当たんとう課か（特高とっこう課かや検閲けんえつ課か）であった^[5]。

局きょく舎しゃは当初とうしょ、接収せっしゅうした帝国ていこく劇場げきじょうが充あてられたが、1942年ねん2月がつには三宅みやけ坂ざかの参謀さんぼう本部ほんぶ庁舎ちょうしゃに移転いてんしており、間あいだもなく、霞かすみが関せきの内務省ないむしょう庁舎ちょうしゃ5階かい（警保局きょくのある階かい）に再さい移転いてんしている。

1945年ねん4月がつに陸軍りくぐん省しょう・海軍かいぐん省しょう・外務省がいむしょう・大だい東亜とうあ省しょうの報道ほうどう対策たいさく・対外たいがい宣伝せんでん部門ぶもんが情報じょうほう局きょく管轄かんかつ下かとなった。この内うち、重要じゅうような部署ぶしょである情報じょうほう収集しゅうしゅうと調査ちょうさを担当たんとうする第だい一部いちぶ（企画きかく）には海軍かいぐん少将しょうしょうが、報道ほうどうに関かんする全すべての実権じっけんを握にぎる第だい二に部ぶ（報道ほうどう）には陸軍りくぐん少将しょうしょうがそれぞれ配属はいぞくされたが、軍部ぐんぶは情報じょうほう局きょくを通とおさずに、大本営だいほんえい陸軍りくぐん部ぶ・海軍かいぐん部ぶの報道ほうどう部ぶなどを活用かつようしていたため、情報じょうほう局きょくは実質じっしつ的てきに内務省ないむしょうの出先でさき機関きかん化かしていた。

降伏ごうぶくの3ヵ月かげつ後ご、年末ねんまつに廃止はいしされた。

任務にんむおよび組織そしき

国策こくさく遂行すいこうの基礎きそたる事項じこうに関かんする情報じょうほう蒐集しゅうしゅう、報道ほうどうおよび啓発けいはつ宣伝せんでん
内務省ないむしょう警保局きょくの検閲けんえつ（日本にっぽんにおける検閲けんえつ参照さんしょう）業務ぎょうむの引ひき継つぎ。
新聞しんぶん紙かみその他たの出版しゅっぱん物ものに関かんする国家こっか総動員そうどういん法ほう第だい二に十じゅう条じょうに規定きていする取締とりしまりと処分しょぶん（掲載けいさいの制限せいげんまたは禁止きんし）
ラジオなどの放送ほうそう無線むせん、電話でんわによる放送ほうそう事項じこうに関かんする指導しどう及および取締とりしまり
映画えいが・蓄音機ちくおんきレコード・演劇えんげき・演芸えんげいの国策こくさく遂行すいこうの基礎きそたる事項じこうに関かんする啓発けいはつ宣伝せんでん上じょう必要ひつようなる指導しどうおよび取締とりしまり

トップには親任しんにん官かんで、民間みんかんから人材じんざいを求もとめ任命にんめいされた総裁そうさい、下したに次長じちょうを置おき、その下したに第だい一部いちぶ（企画きかく - 情報じょうほう収集しゅうしゅう、調査ちょうさ）、第だい二に部ぶ（報道ほうどう - 新聞しんぶん、出版しゅっぱん、放送ほうそう）、第だい三さん部ぶ（対外たいがい - 宣伝せんでん、報道ほうどう、文化ぶんか活動かつどう）、第だい四よん部ぶ（検閲けんえつ）、第だい五ご部ぶ（文化ぶんか - 映画えいが、演劇えんげき、芸術げいじゅつ等ひとし）および官房かんぼうを置おいた。さらに後日ごじつ、第だい四よん部ぶと第だい五ご部ぶは統合とうごう、簡略かんりゃく化かされ、1944年ねんには戦時せんじ資料しりょう室しつ（国内こくない動向どうこうと敵国てきこく動向どうこうの調査ちょうさ）を置おいた。

なかんずく重要じゅうようなのは第だい二に部ぶ（報道ほうどう）で、内閣ないかく情報じょうほう部ぶ所管しょかんの「新聞しんぶん雑誌ざっし用紙ようし統制とうせい委員いいん会かい」（1940年ねん5月がつ設置せっち）による用紙ようしの割わり当あて・配給はいきゅう統制とうせいを通つうじて、全国ぜんこくの新聞しんぶん社しゃ・出版しゅっぱん社しゃに対たいして影響えいきょう力りょくを行使こうしし、記事きじの内容ないようへの介入かいにゅうなど言論げんろん統制とうせいを図はかり、今いまに至いたる「一いち県けん一いち紙し」を目指めざす新聞しんぶん統制とうせいを指導しどうした。1942年ねんには各かく県けんの新聞しんぶんはほとんど一いち社しゃに統合とうごうされ、現在げんざいの新聞しんぶん社しゃはこの際さいの統合とうごうをルーツとする会社かいしゃが多おおい。

歴代れきだい総裁そうさい

1940年ねん12月6日にち - : 伊藤いとう述じゅつ史し
1941年ねん10月がつ18日にち - : 谷たに正之まさゆき
1942年ねん9月がつ17日にち - : （兼けん）谷たに正之まさゆき（外務がいむ大臣だいじん）
1943年ねん4月がつ20日はつか - : 天羽あもう英二えいじ
1944年ねん7月がつ22日にち - : （兼けん）緒方おがた竹虎たけとら（国務大臣こくむだいじん）（元もと朝日新聞社あさひしんぶんしゃ副ふく社長しゃちょう）
1945年ねん4月がつ7日にち - : （兼けん）下村しもむら宏ひろし（国務大臣こくむだいじん）（元もと朝日新聞社あさひしんぶんしゃ副ふく社長しゃちょう、元もと日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい会長かいちょう）
1945年ねん8月がつ17日にち - : （兼けん）緒方おがた竹虎たけとら
1945年ねん9月がつ13日にち - : 河相かあい達夫たつお（外務がいむ次官じかん兼任けんにん）・1945年ねん12月29日にち退任たいにん
1945年ねん12月31日にち廃止はいし

歴代れきだい情報じょうほう局きょく次長じちょう

上記じょうきの通とおり兼任けんにんが多おおいため次長じちょうが事実じじつ上じょうのトップに位置いちしていた。中なかでも日本にっぽん新聞しんぶん會かいの創設そうせつ及および大だい部分ぶぶんの新聞しんぶん統合とうごう（新聞しんぶん統制とうせいを参照さんしょう）は奥村おくむら次長じちょうの任期にんきに集中しゅうちゅうしている。

1940年ねん12月6日にち - :久富ひさとみ達夫たつお（兼けん・大政たいせい翼賛よくさん会かい宣伝せんでん部長ぶちょう）
1941年ねん10月がつ23日にち - : 奥村おくむら喜和男きわお
1943年ねん4月がつ22日にち - : 村田むらた五郎ごろう
1944年ねん7月がつ28日にち - : 三好みよし重夫しげお
1945年ねん4月がつ10日とおか - : 久富ひさとみ達夫たつお
1945年ねん8月がつ22日にち - : 赤羽あかはね譲ゆずる
1945年ねん12月31日にち廃止はいし

関係かんけい機関きかん

下部かぶ組織そしきとして半官半民はんかんはんみんの組織そしきや外郭がいかく団体だんたい、マスコミ関係かんけいの会社かいしゃなど多数たすうの組織そしきを擁ようしていた。

日本にっぽん新聞しんぶん会かい
日本にっぽん出版しゅっぱん会かい（もと社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん出版しゅっぱん文化ぶんか協会きょうかい）
外郭がいかく団体だんたい
日本にっぽん出版しゅっぱん配給はいきゅう株式会社かぶしきがいしゃ　（全国ぜんこくの出版しゅっぱん取次とりつぎ業者ぎょうしゃを統合とうごうして1941年ねん設立せつりつ）

統制とうせい下かの芸術げいじゅつ家かやマスコミ

情報じょうほう局きょくは紙かみの配給はいきゅう権けんを掌握しょうあくしており、新聞しんぶん・出版しゅっぱん物ぶつの言論げんろん統制とうせいをすることが可能かのうであった。美術びじゅつ・出版しゅっぱんの仕事しごとをする者ものは情報じょうほう局きょくの指揮しき下かに入はいるか、さもなければ軍需ぐんじゅ工場こうじょうに徴用ちょうよう工こうとして配属はいぞくされるか、徴兵ちょうへいに応おうじ召集しょうしゅうされるかのいずれかである。1940年ねん頃ごろには情報じょうほう局きょくの指揮しき下かにある直属ちょくぞくの関係かんけい機関きかんがつくられた。

画家がか・写真しゃしん家かは印刷いんさつ会社かいしゃや新聞しんぶん社しゃなどに所属しょぞくすることになり、従軍じゅうぐん画家がか・従軍じゅうぐん写真しゃしん家かとして徴用ちょうようされ、満州まんしゅうや南方なんぽう戦線せんせんへ派遣はけんされた者ものも多おおい。戦地せんちではカメラフィルムより画家がかのスケッチのほうが安価あんかであるとして、悲惨ひさんな光景こうけいを描えがかされた者ものもいた。作成さくせい・撮影さつえいされた作品さくひん及および写真しゃしんはすべて情報じょうほう局きょくより検閲けんえつが行おこなわれ、検閲けんえつ「不ふ許可きょか」となれば没収ぼっしゅうされた。「不ふ許可きょか」が度重たびかさなると、処分しょぶんの対象たいしょうとされることもあった。

物資ぶっしの統制とうせいと同時どうじに平和へいわ工作こうさく物ぶつの制作せいさく禁止きんしがなされており、戦争せんそう協力きょうりょくを拒こばんで特別とくべつ高等こうとう警察けいさつに逮捕たいほされたり「非国民ひこくみん」のレッテルを貼はられたりする事ことを恐おそれた多おおくの文学ぶんがく者しゃ、芸術げいじゅつ家か、ジャーナリストらが、進すすんで、あるいは時局じきょくに流ながされ不承不承ふしょうぶしょう、情報じょうほう局きょくの宣伝せんでん活動かつどうに協力きょうりょくし戦争せんそう画がや軍歌ぐんか、ルポルタージュなど多おおくの作品さくひんを残のこした（情報じょうほう局きょく傘下さんかの組織そしきに加入かにゅうしなければ制作せいさく活動かつどうが許可きょかされず、紙かみや文具ぶんぐ、絵具えのぐ等とうの必要ひつような物資ぶっしも供給きょうきゅうされなかったためである）。

情報じょうほう局きょくの統制とうせいに反発はんぱつし、投獄とうごくされ拷問ごうもんを受うけたり活動かつどうを中断ちゅうだんした者ものも当初とうしょは少すくなからずいたが、結局けっきょくは新聞しんぶん・出版しゅっぱんにも芸能げいのう界かい・芸術げいじゅつ界かいにも統制とうせいの締しめ付づけに反発はんぱつする運動うんどうは出でず、むしろ紙しなどの統制とうせい物資ぶっしの割わり当あてやより大おおきな機会きかいを求もとめて情報じょうほう局きょくに擦すり寄より、協力きょうりょくする者ものの数かずが圧倒的あっとうてきに多おおかった。この点てんでは情報じょうほう統制とうせい、言論げんろん統制とうせいをマスコミに従したがわせることで、国民こくみんへの思想しそう統制とうせいをすみやかに行おこなうという目的もくてきが達たっせられた。

但ただし、『陸軍りくぐん』（監督かんとく木下きのした惠めぐみ介かい）のように、情報じょうほう局きょくの求もとめる展開てんかいを踏襲とうしゅうしつつも戦争せんそうがもたらす別離べつりといった現実げんじつを（当局とうきょくが不ふ許可きょかを出だせぬように巧たくみな表現ひょうげんで）描えがいた作品さくひんもある。

戦後せんご処理しょり

戦時せんじに撮影さつえい・制作せいさくされた写真しゃしん・出版しゅっぱん物ぶつなどは敗戦はいせん時じに多おおくが処分しょぶんされた。日本にっぽんへのGHQの上陸じょうりくに備そなえ、日本にっぽん軍ぐん機はたや米べい軍ぐん機きの写うつるものや植民しょくみん地ちなどの「外地がいち」での写真しゃしんは新聞しんぶん社しゃなどで大量たいりょうに焼却しょうきゃくされた。戦意せんい高揚こうようを目的もくてきとし、戦時せんじ中なかに制作せいさくされた軍国ぐんこく映画えいがなどの映像えいぞう作品さくひんはGHQに没収ぼっしゅうされた。

戦後せんご、文壇ぶんだんや画壇がだん、楽壇がくだんでは、左派さは芸術げいじゅつ家からによって、これら組織そしきの旗はた振ふり役やくとなり皇国こうこくや聖戦せいせんを称たたえるような活動かつどうを行おこなった文学ぶんがく・芸術げいじゅつ界かいの重鎮じゅうちんら（例れい：山田やまだ耕筰こうさくなど）が、戦争せんそう協力きょうりょく者しゃとして追及ついきゅうされ吊つるし上あげられることがあった。これに対たいし多おおくは「自分じぶんは強制きょうせいされており何なにの権限けんげんも与あたえられなかった」と責任せきにんの所在しょざいを否定ひていし、文壇ぶんだんや画壇がだん、芸術げいじゅつ界かいを構成こうせいする弟子でしらも彼かれらを擁護ようごしたため、結局けっきょく今いまも当時とうじの詳細しょうさいは分わからないままである。また、追及ついきゅうした側がわにも、戦時せんじ中ちゅうの協力きょうりょく的てきな言動げんどうを隠蔽いんぺいしていた者ものもいたことが、戦時せんじ中ちゅうの動向どうこうを不透明ふとうめいにしているという意見いけんもある。

情報じょうほう局きょくが行おこなった新聞しんぶん社しゃ、映画えいが会社かいしゃ、出版しゅっぱん取次とりつぎなどの統合とうごうは、いくつかの会社かいしゃは分裂ぶんれつしたものの戦後せんごも解体かいたいされず、そのまま全国ぜんこく紙し・ブロック紙し・県内けんないを独占どくせんする地方紙ちほうし・映画えいが会社かいしゃ・巨大きょだい取次とりつぎ会社かいしゃなどとして存続そんぞくしている。

戦後せんご、情報じょうほう局きょくは存続そんぞくのために戦時せんじ色しょくを払拭ふっしょくすることとなり、外国がいこく文化ぶんかの紹介しょうかい、外字がいじ新聞しんぶん及および外人がいじん記者きしゃ関係かんけい事務じむの円滑えんかつを図はかる目的もくてきでの改革かいかくが1945年ねん11月1日にちより施行しこうされた。従来じゅうらいの第だい1部ぶ（企画きかく）・第だい2部ぶ（報道ほうどう）・第だい3部ぶ（対外たいがい）は廃止はいしし、新あらたに世論せろん調査ちょうさ課かと国際こくさい課かを設置せっちし、局員きょくいんを半減はんげんした。しかし、同年どうねん12月がつ26日にちの閣議かくぎで情報じょうほう局きょくは完全かんぜんに解体かいたいされることが決定けっていし、同年どうねん12月がつ31日にちには廃止はいしされた。

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 内閣ないかく情報じょうほう部ぶ情報じょうほう官かんだった井上いのうえ司朗しろうは「『情報じょうほう局きょく』はあっても、『内閣ないかく情報じょうほう局きょく』なんていう役所やくしょがないことは、環境庁かんきょうちょうはあっても、内閣ないかく環境庁かんきょうちょうなどという役所やくしょがないのと全まったく同断どうだんだ」と書かいている『証言しょうげん・戦後せんご文壇ぶんだん史し』p.8。
^ 内務省ないむしょう警保局きょく検閲けんえつ課かは、情報じょうほう局きょく設立せつりつ後ごも活動かつどうしていた。また、情報じょうほう局きょく第だい四よん部ぶの職員しょくいんは内務省ないむしょう警保局きょく検閲けんえつ課かの職員しょくいんが兼職けんしょくしていた。そのため、実質じっしつ的てきに情報じょうほう局きょく第だい四よん部ぶ=内務省ないむしょう警保局きょく検閲けんえつ課かという状態じょうたいになっていた。

出典しゅってん