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石炭 - Wikipedia

石炭せきたん

古代こだい植物しょくぶつ腐敗ふはい分解ぶんかいするまえ地中ちちゅううずもれ、なが期間きかん地熱じねつあつけて変質へんしつしたことにより生成せいせいした物質ぶっしつ

石炭せきたん(せきたん、英語えいご: coal)とは、太古たいこすうせんまんねんすうおくねんまえ)の植物しょくぶつ完全かんぜん腐敗ふはい分解ぶんかいするまえ地中ちちゅううずもれ、そこで地熱じねつあつ長期間ちょうきかんけて変質へんしつ石炭せきたん)したことにより生成せいせいした物質ぶっしつ総称そうしょう見方みかたえれば植物しょくぶつ化石かせきでもある[1]

石炭せきたん
堆積岩たいせきがん
無煙炭むえんたん
構成こうせいぶつ
主要しゅよう構成こうせいぶつ 炭素たんそ
構成こうせいぶつ 硫黄いおう
水素すいそ
酸素さんそ
窒素ちっそ
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化石かせき燃料ねんりょうひとつとして火力かりょく発電はつでん製鉄せいてつなどに使つかわれるが、燃焼ねんしょうとき温暖おんだんガスである二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)を大量たいりょう排出はいしゅつする。このため地球ちきゅう温暖おんだん抑制よくせいのため石炭せきたん使用しよう削減さくげんもとめられている一方いっぽうで、2021ねん時点じてんで74おくトンの世界せかい需要じゅようがあり(国際こくさいエネルギー機関きかん推計すいけい)、炭鉱たんこう新規しんき開発かいはつ計画けいかくおお[2]

概要がいよう

編集へんしゅう

石炭せきたんは「くろダイヤモンド」としょうされたこともある[3]とく産業さんぎょう革命かくめい以後いご20世紀せいき初頭しょとうまでさい重要じゅうよう燃料ねんりょうとして、また化学かがく工業こうぎょう都市としガス原料げんりょうとして使つかわれてきた。しかし、だいいち世界せかい大戦たいせん前後ぜんごから、かんふね燃料ねんりょう石炭せきたんの2ばいエネルギー石油せきゆわりはじめた。せんあいだから中東ちゅうとうでの油田ゆでん開発かいはつすすみ、だい世界せかい大戦たいせんのち大量たいりょう石油せきゆ採掘さいくつされて1バレル1ドル時代じだいむかえると産業さんぎょう分野ぶんやでも石油せきゆ導入どうにゅうすすみ(エネルギー革命かくめい)、西側にしがわ先進せんしんこく採掘さいくつ条件じょうけんわる坑内こうない炭鉱たんこうすたれた。

1970年代ねんだい石油せきゆ危機きき石油せきゆがバレルあたり12ドルになると、産業さんぎょう燃料ねんりょう発電はつでん燃料ねんりょうふたた石炭せきたんもどったが、日本にっぽん国内こくない炭鉱たんこう復活ふっかつすることはかった。豪州ごうしゅう露天掘ろてんぼなど、採掘さいくつ条件じょうけん海外かいがい鉱山こうざん機械きかい採炭さいたんされた、安価あんか海外かいがいずみわっていたからである。海上かいじょう荷動にうご原油げんゆいで石炭せきたん鉄鉱てっこうせきおおく、30まんトンの大型おおがた石炭せきたんせん就役しゅうえきしている。

化石かせき燃料ねんりょうである石油せきゆ天然てんねんガスひとしくらべても、燃焼ねんしょうしたさいのCO2硫黄いおう酸化さんかぶつ(SOx)などの有害ゆうがい物質ぶっしつ排出はいしゅつりょうおおく、地球ちきゅう温暖おんだん大気たいき汚染おせんおも原因げんいんひとつとなっている。

日本にっぽんでは、一般いっぱんてき石炭せきたん(せきたん)ばれるようになったのは、明治めいじ初年しょねん西欧せいおう採炭さいたん技術ぎじゅつはいって、とくにドイツSteinkohleを和訳わやくしたものとされる[4]。それ以前いぜん地方ちほうによって、平太へいた(ごへいだ)、石炭せきたん(いしずみ)岩木いわき(いわき)、もえせき(もえいし)、がらす(うに)、がらすしゅ(うし)などと様々さまざま呼称こしょうされていた[4]

石炭せきたん起源きげん

編集へんしゅう
 
現存げんそんする泥炭でいたん 霧多布きりたっぷ湿原しつげん

石炭せきたんすうせんまんねんまえすうおくねんまえ植物しょくぶつ湖底こてい海底かいてい層状そうじょう堆積たいせきし、地殻ちかく変動へんどう造山つくりやま活動かつどうひとしによるあつ地熱じねつ影響えいきょうにより変化へんかし、しゅうして石炭せきたんしたものである[5][3]とく石炭せきたん成因せいいん植物しょくぶつとなっているのは、石炭せきたん時代じだい(2おく4せんまんねんまえ~3おくねんまえ)の湿地しっちたい森林しんりん形成けいせいしていた巨大きょだいシダるいと、だい三紀みき時代じだい(2せん5ひゃくまんねんまえ~6せんまんねんまえ)の針葉樹しんようじゅるいなどとかんがえられている[5]

古生代こせいだいにおいては、菌類きんるいひとし分解ぶんかいしゃがまだ出現しゅつげんしていなかったり少数しょうすうであったりしたため、大量たいりょう植物しょくぶつぐん分解ぶんかいまえ埋没まいぼつしていた。植物しょくぶつ遺体いたい分解ぶんかいされずに堆積たいせきする場所ばしょとして湿原しつげん湿地しっちたいげられる。これらの場所ばしょにおいては、植物しょくぶつ死体したい酸素さんそすくない水中すいちゅうしずむことによって生物せいぶつによる分解ぶんかい十分じゅうぶんすすまず、分解ぶんかいされずにのこった組織そしき泥炭でいたんとなって堆積たいせきする。泥炭でいたん植物しょくぶつ石炭せきたんになるくちとされている。成因せいいんとしてだい規模きぼ洪水こうずい大量たいりょう樹木じゅもく湖底こていひとし低地ていちながんで土砂どしゃまることもかんがえられる。地中ちちゅうまった植物しょくぶつ年代ねんだいるにしたがって 泥炭でいたん褐炭かったんれきあおずみ無煙炭むえんたんわってゆく。この変化へんか石炭せきたん[6]

石炭せきたん

編集へんしゅう

石炭せきたん多様たよう化学かがく反応はんのうともなった変化へんかである。セルロースリグニン構成こうせいする元素げんそ炭素たんそ酸素さんそ水素すいそであるが、石炭せきたんすすむにしたがって酸素さんそ水素すいそって炭素たんそ濃度のうどがってゆき、外観がいかん褐色かっしょくから黒色こくしょくわり、かたくなってゆく。炭素たんそ含有がんゆうりょう泥炭でいたんの70%以下いかから順次じゅんじ上昇じょうしょうして無煙炭むえんたん炭素たんそ濃度のうどは90%以上いじょうたっする。化学かがくてきには植物しょくぶつ生体せいたい由来ゆらい脂肪しぼうぞく炭化たんか水素すいそ脱水だっすい反応はんのうにより泥炭でいたん褐炭かったんになり、つぎだつ炭酸たんさん反応はんのうにより瀝青炭れきせいたんとなり、最後さいごだつメタン反応はんのうにより芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそ主体しゅたい無煙炭むえんたんわってゆく。植物しょくぶつ石炭せきたんする速度そくど地中ちちゅうでの圧力あつりょく温度おんど影響えいきょうける。日本にっぽん環太平洋かんたいへいよう造山つくりやまたい位置いち地殻ちかく変動へんどうさかんなため、しょ外国がいこく産地さんちよりも高温こうおんこうあつにさらされていし炭化たんか進行しんこうはやいとするせつもある[7]

石炭せきたん産出さんしゅつする地層ちそう歴史れきし

編集へんしゅう

石炭せきたんもととなった植物しょくぶつ繁茂はんもしていた時代じだい相当そうとうする地層ちそうから産出さんしゅつされる。古生代こせいだい地層ちそう石炭せきたん産出さんしゅつする地層ちそうとしてはもっとふるく、産出さんしゅつ無煙炭むえんたん主体しゅたい古生代こせいだい繁茂はんもしていた植物しょくぶつ現在げんざいのシダるいトクサるい祖先そせん相当そうとうするが、当時とうじ代表だいひょうてき植物しょくぶつであるリンボクたかさ30メートルになる大木たいぼくで、だい森林しんりん形成けいせいしていたとかんがえられている。

中生代ちゅうせいだいソテツイチョウなどの裸子植物らししょくぶつ優勢ゆうせいとなった。この時代じだい地層ちそうから産出さんしゅつする石炭せきたん海外かいがいではほとんど瀝青炭れきせいたんだが、日本にっぽん産出さんしゅつするのは無煙炭むえんたん主体しゅたいである。

  • さんじょう(1おく9せんまんねんまえごろ): ヨーロッパ中部ちゅうぶ北米ほくべい大陸たいりく中国ちゅうごく南部なんぶインドシナ
  • ジュラ紀じゅらき(1おく5せんまんねんまえごろ): ヨーロッパちゅう南部なんぶ北米ほくべい大陸たいりく、アジア東部とうぶ
  • はく亜紀あき(1おく2せんねんまんまえごろ): ヨーロッパ中部ちゅうぶ 北米ほくべい南米なんべい大陸たいりく、アフリカ大陸たいりく

新生代しんせいだいだい三紀みき(7~2せんまんねんまえ)の植物しょくぶつは、現在げんざいちかしゅ主体しゅたい産出さんしゅつする石炭せきたんは、外国がいこくでは石炭せきたんひく褐炭かったん主体しゅたいだが、日本にっぽん炭鉱たんこうでは瀝青炭れきせいたん産出さんしゅつされる。

植物しょくぶつからだセルロースリグニンタンパク質たんぱくしつ樹脂じゅしなどなどで構成こうせいされている。このうち古生代こせいだい繁茂はんもしたシダるいではセルロースが40~50%リグニンが20~30%であり、中生代ちゅうせいだい以後いご主体しゅたいとなる針葉樹しんようじゅるいではセルロースが50%以上いじょうリグニンが30%である(いずれも現生げんなましゅのデータ)。これらの生体せいたい物質ぶっしつもとにして石炭せきたん形成けいせいされた。

石炭せきたんおも参考さんこう文献ぶんけん - 『石炭せきたん技術ぎじゅつ総覧そうらん』Batman、『太陽たいよう化石かせき:石炭せきたんだい1しょう石炭せきたん

シルルおさむ後期こうきにリグニンをゆうした植物しょくぶつ登場とうじょうした。歴史れきしじょう上陸じょうりくした植物しょくぶつがるためにはセルロース、ヘミセルロースかためるためのリグニンが必要ひつようであった。リグニンを分解ぶんかいできる微生物びせいぶつがその当時とうじはいなかったので植物しょくぶつくさりにくいまま地表ちひょうたくわえられていった。これが石炭せきたん由来ゆらいとなる。石炭せきたん石炭せきたんになった植物しょくぶつフウインボクリンボクロボクなどであり、大量たいりょう植物しょくぶつくさらないままかさなり、良質りょうしつ無煙炭むえんたんとなった。石炭せきたん以降いこう石炭せきたん生成せいせいされたが時代じだいくだるにしたがって生成せいせいされる石炭せきたんりょうしつ低下ていかすることとなった[8]白色はくしょく腐朽ふきゅうきんは、地球ちきゅうじょう唯一ゆいいつリグニンをふく木材もくざい完全かんぜん分解ぶんかいできる生物せいぶつで、リグニン分解能ぶんかいのう獲得かくとくしたのは古生代こせいだい石炭せきたん末期まっきごろやく2おく9せんまんねんまえ)であると分子ぶんし時計とけいから推定すいていされた。石炭せきたんからペルムにかけてこった有機ゆうき炭素たんそ貯蔵ちょぞうりょう急激きゅうげき減少げんしょう白色はくしょく腐朽ふきゅうきんのリグニン分解ぶんかい能力のうりょく獲得かくとくによるものとかんがえられている[9][10]

石炭せきたん種類しゅるい

編集へんしゅう
 
石炭せきたん化学かがく構造こうぞうれい瀝青炭れきせいたん

いし炭化たんかによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

石炭せきたん炭素たんそしゅう度合どあい炭素たんそ濃縮のうしゅく程度ていど) によりいし炭化たんかたかほうから、無煙炭むえんたん瀝青炭れきせいたん瀝青炭れきせいたん褐炭かったん亜炭あたん泥炭でいたん分類ぶんるいされる[5][3]日本にっぽん一般いっぱん石炭せきたんばれているものは、このうち無煙炭むえんたんから褐炭かったんまでである[5]。なお、いし炭化たんか発熱はつねつりょう燃料ねんりょう(固定こてい炭素たんそ÷揮発きはつぶん通常つうじょうでは無煙炭むえんたん:4以上いじょう瀝青炭れきせいたん:1~4、褐炭かったん:1以下いか)をもちいているが、国際こくさいてきには一般いっぱん揮発きはつぶんもちいられている[5]

(いし炭化たんかたかじゅんに)

無煙炭むえんたん (anthracite)
炭素たんそ含有がんゆうりょう90%以上いじょう[5]もっといし炭化たんか炭素たんそぶん)がたかやしてもけむりをほとんどさない[5][3]カーバイド原料げんりょう工業こうぎょう燃料ねんりょう使つかわれるほか、家庭かていよう練炭れんたん豆炭まめたん原料げんりょうとなることもある[5]。かつては軍艦ぐんかんよう燃料ねんりょうおもんじられた。ただし揮発きはつぶんひくく、着火ちゃっかせいおとる。しょうゆい使用しよう可能かのうていりんのものは原料げんりょうずみ一種いっしゅとしてこう価格かかく取引とりひきされる。
はん無煙炭むえんたん (semianthracite)
炭素たんそ含有がんゆうりょう80%以上いじょう無煙炭むえんたんいでいし炭化たんかたかいが、こな鉄鉱てっこうしょうゆいにもてきさない一方いっぽう電力でんりょくとう微粉びふんずみボイラーようとしては揮発きはつぶんすくなすぎててきさず、比較的ひかくてき安値やすね取引とりひきされる一般いっぱんずみ。セメント産業さんぎょう燃料ねんりょう流動りゅうどうゆかボイラに使つかわれる。着火ちゃっかせいおとるが比較的ひかくてき発熱はつねつりょうたかく、内陸ないりく工場こうじょうへの輸送ゆそうコストがやすむ。
瀝青炭れきせいたん(れきせいたん) (bituminous coal)
炭素たんそ含有がんゆうりょう70~75%[5]石炭せきたんとしてもっと一般いっぱんてきなもの[3]加熱かねつによりけてかたまるねばむすぶせいたかく、コークス原料げんりょう製鉄せいてつよう燃料ねんりょうとなる[5]
瀝青炭れきせいたん (subbituminous coal)
瀝青炭れきせいたん性質せいしつつが、水分すいぶんを15~45%ふくむため比較ひかくするとあつかいにくい[5]ねばむすぶせいがほとんどないものがおおい。コークス原料げんりょうには使つかえないが、揮発きはつぶんおおくて火付ひつきがく、熱量ねつりょう無煙炭むえんたんはん無煙炭むえんたん瀝青炭れきせいたんいでたかい。とくボイラーよう燃料ねんりょうとして需要じゅようがある[5]豊富ほうふ埋蔵まいぞうりょうひろ分布ぶんぷしており、日本にっぽん生産せいさんされていた石炭せきたんおおくも瀝青炭れきせいたんであった[5]
褐炭かったん (brown coal)
炭素たんそ含有がんゆうりょう60%以上いじょう[5]いし炭化たんかひく植物しょくぶつかたちのこすものもふくまれ、水分すいぶん酸素さんそおおてい品位ひんい石炭せきたんである[5][3]練炭れんたん豆炭まめたんなどの一般いっぱんよう燃料ねんりょうとして使用しようされる[5]いろはそのしめとおりの褐色かっしょく水分すいぶんたかすぎてほろ粉炭ふんたんボイラの燃料ねんりょうとしては粉砕ふんさい/乾燥かんそう能力のうりょくえてしまう場合ばあいおおく、重量じゅうりょうたり発熱はつねつりょうひくいので輸送ゆそうコストがかさみ、脱水だっすいすれば自然しぜん発火はっかしやすくなるというあつかいにくい石炭せきたんなので価格かかくさい安価あんかで、輸送ゆそうコストの関係かんけい鉱山こうざん周辺しゅうへん発電はつでんなどに使つかわれる場合ばあいおおい。褐炭かったん脱水だっすいする様々さまざま技術ぎじゅつ開発かいはつおこなわれている。また、水素すいそ原料げんりょうとして有望ゆうぼうされている[11]
亜炭あたん (lignite)
褐炭かったんしつわるいものにけられた俗名ぞくみょう[5]炭素たんそ含有がんゆうりょう60%未満みまん[5]。ただし、亜炭あたん基準きじゅんきわめて曖昧あいまいである。学名がくめい褐色かっしょく褐炭かったんうも亜炭あたん一種いっしゅである。日本にっぽんでは太平洋戦争たいへいようせんそうなか燃料ねんりょう不足ふそくのためおお利用りようされた。現在げんざいでは亜炭あたん肥料ひりょう原料げんりょうとしてごく少量しょうりょう利用りようされているにすぎない[5]
泥炭でいたん (peat)
どろじょうすみ石炭せきたん成長せいちょう過程かていにあるもので、品質ひんしつわるいため工業こうぎょうよう燃料ねんりょうとしての需要じゅようすくない[5]ウイスキー使用しようするピートは、大麦おおむぎ麦芽ばくが乾燥かんそうさせる燃料ねんりょうとしてかおけをねる[5]。このほか、繊維せんいしつたもち、保水ほすいせい通気つうきせいむことから、園芸えんげい用土ようどとして使用しようされる。
日本にっぽん産業さんぎょう規格きかくによる分類ぶんるい (JIS M 1002[12])
分類ぶんるい 発熱はつねつりょう
補正ほせい無水むすいはいもと
kJ/kg (kcal/kg)
燃料ねんりょう ねばむすぶせい おも用途ようと 備考びこう
炭質たんしつ 区分くぶん
無煙炭むえんたん (A)
Anthracite
A1 --- 4.0 以上いじょう ねばゆい 一般いっぱんずみ
原料げんりょうずみ
A2 火山岩かざんがん作用さようしょうじたせんせき
瀝青炭れきせいたん (B, C)
Bituminous
B1 35,160 以上いじょう
(8,400 以上いじょう
1.5 以上いじょう つよねばゆい 一般いっぱんずみ
原料げんりょうずみ
B2 1.5 未満みまん
C 33,910 以上いじょう 35,160 未満みまん
(8,100 以上いじょう 8,400 未満みまん
ねばゆい 一般いっぱんずみ
原料げんりょうずみ
瀝青炭れきせいたん (D, E)
Sub-Bituminous
D 32,650 以上いじょう 33,910 未満みまん
(7,800 以上いじょう 8,100 未満みまん
じゃくねばゆい 一般いっぱんずみ
E 30,560 以上いじょう 32,650 未満みまん
(7,300 以上いじょう 7,800 未満みまん
--- ねばゆい 一般いっぱんずみ
褐炭かったん (F)
Lignite
F1 29,470 以上いじょう 30,560 未満みまん
(6,800 以上いじょう 7,300 未満みまん
--- ねばゆい (一般いっぱんずみ)
F2 24,280 以上いじょう 29,470 未満みまん
(5,800 以上いじょう 6,800 未満みまん
---

用途ようとによる分類ぶんるい

編集へんしゅう

原料げんりょうとして製鉄せいてつようコークス、石炭せきたん化学かがく工業こうぎょう都市としガスなどに使用しようされるものを原料げんりょうずみ燃料ねんりょうとして火力かりょく発電はつでん一般いっぱん産業さんぎょうようボイラー、セメント回転かいてん燃料ねんりょうなどに使つかわれる石炭せきたん一般いっぱんずみという[5][3]

つぶによる分類ぶんるい

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石炭せきたん形状けいじょうまたはつぶから、おおきいじゅん切込きりこみずみかたまりずみちゅうかたまりずみしょうかたまりずみ粉炭ふんたん微粉びふんずみ分類ぶんるいされる[5]

石炭せきたん採掘さいくつ

編集へんしゅう
 
ワイオミング炭鉱たんこう露天掘ろてんぼ

石炭せきたん太古たいこ植物しょくぶつ遺体いたい堆積たいせきしたものであるため、地中ちちゅうには地層ちそうかたち存在そんざいする。石炭せきたん鉱山こうざんとく炭鉱たんこうび、炭鉱たんこう集中しゅうちゅうしている地域ちいき炭田たんでんぶ。

石炭せきたんそう炭層たんそうという)が地表ちひょうまたは地表ちひょうちかいところに存在そんざいする場合ばあい地面じめんから直接ちょくせつドラッグラインという巨大きょだいなパワーショベルとうすす露天掘ろてんぼおこなわれる。アメリカやオーストラリアのだい規模きぼ炭鉱たんこうおおられる。中国ちゅうごくなでじゅん炭鉱たんこうは、700ねんほどまえから露天掘ろてんぼりがなされたとわれており、当時とうじ陶器とうき製造せいぞうのための燃料ねんりょうとしてもちいられたとされる。そのきよしあさは「風水ふうすいがいあり」との理由りゆうから採掘さいくつ禁止きんしとしていたが、1901ねん政府せいふ許可きょかのもとで民族みんぞく資本しほんにより採掘さいくつはじまった。そのロシア資本しほん進出しんしゅつ、さらににち戦争せんそうこうあずまきよし鉄道てつどうおよびその付属ふぞく日本にっぽんわたることとなり、1907ねんにはみなみ満州まんしゅう鉄道てつどう管理かんりうつって、鞍山あんざん鉄鋼てっこうぎょう発展はってん寄与きよした。

20世紀せいき初頭しょとう英国えいこくウェールズには600以上いじょうもの炭鉱たんこうがあり、やく20まんにんはたらいて経済けいざいささえていた。1911ねんには石炭せきたん重量じゅうりょう輸出ゆしゅつの9わりめていた。

一方いっぽう地下ちかふかいところに石炭せきたんがある場合ばあい日本にっぽん在来ざいらい採炭さいたんほうでは炭層たんそうまで縦坑たてこうり、その炭層たんそう沿って水平すいへいまたはななめ(斜坑しゃこう)にすすむ。石炭せきたん層状そうじょう存在そんざいするので採掘さいくつひろ面積めんせきおこなわれるため、放置ほうちすれば採掘さいくつ現場げんば天井てんじょうくずちる危険きけんせい非常ひじょうたかい。石炭せきたん採掘さいくつするさいには、天井てんじょうくずれないように支柱しちゅうむなど様々さまざま対処たいしょおこないながらすすむ。従来じゅうらい採炭さいたんほうでは手持てもそぎがんダイナマイト併用へいようおおかったが、採掘さいくつ手間てまがかかり、くずした石炭せきたんトロッコむのも手作業てさぎょうで、ったあとに支柱しちゅうむので能率のうりつわるかった。

オーストラリアやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなどでは日本にっぽんくら坑内こうないりでも炭層たんそう水平すいへいあつく、あつすうメートルにもおよ場合ばあいがあり、ロングウォールという一種いっしゅシールドマシンによって機械きかい採炭さいたんおこなっている。これはコの断面だんめんのシールドをよこながならべ、コの内側うちがわ機織はたおりのシャトルのようにドリルが往復おうふくして炭層たんそうけずってゆくもので、ベルトコンベアで石炭せきたん機械きかいてきにトロッコにまれてゆく。しょう人員じんいん生産せいさん能率のうりつ露天掘ろてんぼりにいでたかく、ていコストである。ロングウォール炭鉱たんこう場合ばあい上層じょうそうから採炭さいたんして採炭さいたん空間くうかん支柱しちゅうてずにくず場合ばあいもある。(ただし、上層じょうそうこう硫黄いおうずみ下層かそうひく硫黄いおうすみで、保証ほしょうスペックにあわせるため上層じょうそうずみ下層かそうずみブレンドしたい場合ばあいなどもおおく、かなら支柱しちゅうはぶけるわけでもない) 最近さいきん中国ちゅうごくなどでもロングウォールをれている炭鉱たんこうもあるが、人件じんけんやすいので依然いぜん従来じゅうらい採炭さいたんほう鉱山こうざんおおい。きゅうソ連それんなどでは石炭せきたん地層ちそうない不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうさせガスしてして採炭さいたん簡略かんりゃくするという、かなり乱暴らんぼう手法しゅほう研究けんきゅうされていたようである。

世界せかい埋蔵まいぞうりょう

編集へんしゅう

比較的ひかくてき埋蔵まいぞうりょうおおくにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくロシア連邦れんぽう中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくいにしえ造山つくりやまたいおお産出さんしゅつされる。炭層たんそうあつく、広範囲こうはんい分布ぶんぷすることから、露天掘ろてんぼりがおおい。輸出ゆしゅつけの実績じっせきはオーストラリア、インドネシアが堅調けんちょう推移すいい。インドネシアは良質りょうしつ瀝青炭れきせいたん埋蔵まいぞうりょう減少げんしょう傾向けいこうにあり、今後こんご瀝青炭れきせいたん生産せいさんりょう増加ぞうかしていくものとられる。

( )ないは2017ねん埋蔵まいぞうりょうおくトン、BP統計とうけい[13]

  • アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく(2484)
  • ロシア(1604)
  • オーストラリア(1419)
  • 中国ちゅうごく(1386)
  • インド(972)
  • ドイツ(362)
  • ウクライナ(341)
  • ポーランド(258)

おもさんすみ

編集へんしゅう

( )ない上位じょうい5こくの2018ねん産出さんしゅつりょう割合わりあい(%)。とし合計ごうけいやく78.13おくトン[14]

上位じょうい5こくの2018ねん産出さんしゅつりょう割合わりあい

  中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく (45.4%)
  インド (9.9%)
  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく (8.8%)
  インドネシア (7.0%)
  オーストラリア (6.2%)
  その (22.7%)

おも消費しょうひこく

編集へんしゅう

平成へいせい29ねん(2017ねん)の主要しゅよう消費しょうひこく上位じょうい6ヶ国かこく中国ちゅうごく(48.2%)、インド(12.4%)、アメリカ(8.4%)、ロシア(3.0%)、ドイツ(2.9%)、日本にっぽん(2.5%)である[15]

日本にっぽん炭鉱たんこう

編集へんしゅう

日本にっぽんは、オーストラリア、インドネシア、中国ちゅうごく、ロシアなどから年間ねんかんやく1おく8せんまんトンもの石炭せきたん輸入ゆにゅうしている。

日本にっぽん炭鉱たんこうはアメリカやオーストラリアのだい規模きぼ炭鉱たんこうくらべて地層ちそう構成こうせい複雑ふくざつなため、石炭せきたん地下ちか深部しんぶにあることがおおい。そのためなんキロメートルにもおよ坑道こうどう採掘さいくつしていたが、労働ろうどう条件じょうけんわるく、後述こうじゅつのようにメタンガス粉塵ふんじんによる爆発ばくはつ事故じこ落盤らくばんなどが多発たはつし、おおくの殉職じゅんしょくものしてきた。

明治維新めいじいしん以後いご石炭せきたん燃料ねんりょう工業こうぎょう原料げんりょうとく製鉄せいてつぎょう)として使用しようりょう増大ぞうだいした。北海道ほっかいどう福島ふくしまけん山口やまぐちけん福岡ふくおかけん佐賀さがけん長崎ながさきけんしゅ産地さんちで、最盛さいせいにはこれらの地域ちいき中心ちゅうしん全国ぜんこくに800以上いじょう炭鉱たんこうひらかれ、だい世界せかい大戦たいせんちゅう年間ねんかん産出さんしゅつりょうは6000まんトンにたっした。終戦しゅうせん急激きゅうげき減少げんしょうし、その産業さんぎょう回復かいふくにつれて産出さんしゅつりょう再度さいど増加ぞうかした。

1950ねん以降いこうほぼ5000まんトンをえるレベルに回復かいふくしたが、石油せきゆ大量たいりょう輸入ゆにゅうエネルギー革命かくめい)、コストめん外国がいこくさんのものに太刀打たちうちできないなどの問題もんだいで1961ねんをピークに徐々じょじょ衰退すいたいし、2002ねん以降いこう国内こくない操業そうぎょうしている坑内こうない炭鉱たんこうは、北海道ほっかいどう釧路くしろ炭鉱たんこうの1箇所かしょのみとなった。この炭鉱たんこうのある釧路くしろ炭田たんでんは、推定すいてい埋蔵まいぞうりょう20おくトンとだい規模きぼであり、炭層たんそうあつ水平すいへいひろがり、機械きかい(SD採炭さいたん採掘さいくつ容易よういであることから、採炭さいたん技術ぎじゅつ継承けいしょう海外かいがい技術ぎじゅつしゃ研修けんしゅう受入うけいれさきとしても活用かつようされている。2007年度ねんど以降いこう年間ねんかん60まんトン体制たいせいでの採炭さいたんつづけていた。

しかし石炭せきたん価格かかく高騰こうとうともない、国産こくさん石炭せきたんもコスト競争きょうそうりょくをもつようになってきたため、露天掘ろてんぼ炭鉱たんこう次々つぎつぎ開発かいはつされる。また福島ふくしまだいいち原発げんぱつ事故じこ国内こくない原子力げんしりょく発電はつでんしょ順次じゅんじ運転うんてん停止ていしするなか電力でんりょく会社かいしゃ電力でんりょく安定あんてい供給きょうきゅうのため、既存きそん石炭せきたん火力かりょく発電はつでんしょをフル稼働かどうさせるようになったため、採掘さいくつ事業じぎょうしゃたいして増産ぞうさんもとめるうごきもあった[16][17]

2015年度ねんど石炭せきたん生産せいさん坑内こうないりと露天掘ろてんぼりをわせて120まんトンじゃくで、内訳うちわけ坑内こうないり(釧路くしろコールマイン)がやく47まんトン、露天掘ろてんぼり(7しゃ)がやく73まんトンとなっている[18]

2018年度ねんどは96まんトンが国内こくない生産せいさんされた[19]

おも日本にっぽんさんすみ

編集へんしゅう
稼働かどうちゅう炭鉱たんこうあり
編集へんしゅう

現在げんざい日本にっぽん国内こくないにおいて稼働かどうちゅう炭鉱たんこうはすべて北海道ほっかいどう炭鉱たんこうである。

国内こくない唯一ゆいいつ坑内こうない炭鉱たんこうとしてとし50まんt生産せいさんちゅう採炭さいたんとベトナム・中国ちゅうごくとうへの石炭せきたん技術ぎじゅつ継承けいしょうおこなう。おもに発電はつでんよう
規模きぼちいさな露天掘ろてんぼりによる炭鉱たんこう数カ所すうかしょ存在そんざいする。
  • きたひし美唄びばいきたひし産業さんぎょう埠頭ふとう):美唄びばい[20]
  • 三美みよし炭鉱たんこう三美みよし鉱業こうぎょう):美唄びばい
  • 砂子いさご炭鉱たんこう砂子組すなごぐみ):三笠みかさ[21]
  • 空知そらちしん炭鉱たんこう空知そらち炭鉱たんこう):歌志内うたしない
  • ひがし芦別あしべつ炭鉱たんこう平野ひらの重機じゅうき鉱業こうぎょう):芦別あしべつ
  • 新旭しんあさひ芦別あしべつ鉱業こうぎょう):芦別あしべつ

出典しゅってん3.坑内こうない炭鉱たんこうについて” (PDF). 北海道庁ほっかいどうちょう (2017ねん3がつ9にち). 2017ねん11月26にち閲覧えつらん4.露天ろてん炭鉱たんこうについて” (PDF). 北海道庁ほっかいどうちょう (2017ねん3がつ9にち). 2017ねん11月26にち閲覧えつらん

すべ閉山へいざん
編集へんしゅう
日本にっぽんにはめずらしい無煙炭むえんたん炭鉱たんこう
おも海軍かいぐん国鉄こくてつけの官有かんゆう炭鉱たんこう

炭鉱たんこう事故じこ

編集へんしゅう

石炭せきたん鉱石こうせきいちじるしくことなるてんは「える」ことであり、それによるだい規模きぼ炭鉱たんこう災害さいがい度々どど発生はっせいしている。炭層たんそうないふくまれるメタンガスが突然とつぜん噴出ふんしゅつ引火いんかして爆発ばくはつしたり、炭鉱たんこうない飛散ひさんした石炭せきたん粉塵ふんじん炭塵たんじん)に引火いんかして炭塵たんじん爆発ばくはつこしたりして多数たすう犠牲ぎせいしゃ事故じこ過去かこなん発生はっせいしている。犠牲ぎせいしゃもっとおおかったのは日本にっぽん統治とうち満州まんしゅうもとけいみずうみ炭鉱たんこうで1943ねん発生はっせいした炭塵たんじん爆発ばくはつ事故じこで、死者ししゃかずは1,527めいたっした。日本にっぽん国内こくない事故じこでは1914ねん方城ほうじょう炭鉱たんこうでのガス爆発ばくはつ事故じこ死者ししゃ687めいしている。1910ねんごろまでヨーロッパでも死者ししゃ300にんえる事故じこがあったが、1913ねんのイギリスのセングヘニス炭鉱たんこう事故じこ死者ししゃ439めい以後いご欧米おうべいでは犠牲ぎせいしゃ300めい以上いじょう爆発ばくはつ事故じこ発生はっせいしていない。それにたいして日本にっぽんでは1963ねん三池みいけ炭鉱たんこう盆踊ぼんおど炭坑たんこうぶし有名ゆうめい炭塵たんじん爆発ばくはつ事故じこで458めい死者ししゃしている。アメリカにある炭鉱たんこう都市としセントラリアは、1962ねん発生はっせいした坑内こうない火災かさいまち全体ぜんたい退去たいきょ命令めいれいゴーストタウンした。現在げんざい地下ちかでは火災かさいつづいており、地上ちじょうではけむりがっている。

炭鉱たんこう災害さいがい参考さんこう文献ぶんけん - 『太陽たいよう化石かせき:石炭せきたん』2.5炭鉱たんこう災害さいがい保安ほあん技術ぎじゅつについて

産業さんぎょう分野ぶんや利用りよう

編集へんしゅう

石炭せきたん一般いっぱん家庭かてい産業さんぎょう分野ぶんや利用りようされているが、産業さんぎょう分野ぶんやでは電力でんりょく分野ぶんや製鉄せいてつ分野ぶんや、コークス製造せいぞう分野ぶんや土壌どじょう改良かいりょう分野ぶんやなどで利用りようされている[5]。また、石炭せきたんからは各種かくしゅ誘導ゆうどうひん製造せいぞうされる[5]

かく産業さんぎょう分野ぶんや

編集へんしゅう
電力でんりょく分野ぶんや
石炭せきたん蒸気じょうきボイラーよう燃料ねんりょうとして発電はつでん利用りようされる。
製鉄せいてつ分野ぶんや
製鉄せいてつ分野ぶんやでは精錬せいれん工程こうていでの還元かんげんざい熱源ねつげんとして使用しようされている[5]
コークス製造せいぞう分野ぶんや
製鉄せいてつ鋳造ちゅうぞう金属きんぞく鉱石こうせき精錬せいれん還元かんげんざい使用しようされるコークス石炭せきたん高温こうおん乾留かんりゅうしたものである[5]
土壌どじょう改良かいりょう資材しざい分野ぶんや
亜炭あたん泥炭でいたんおも土壌どじょう改良かいりょうざい利用りようされている[5]

各種かくしゅ誘導ゆうどうひん

編集へんしゅう
燃焼ねんしょうによる誘導ゆうどうひん
ボイラーで石炭せきたん燃焼ねんしょうして発生はっせいしたはいフライアッシュはい凝集ぎょうしゅうして底部ていぶのこったものをクリンカアッシュ(ボトムアッシュ)という[5]
乾留かんりゅうによる誘導ゆうどうひん
石炭せきたん乾留かんりゅうによる誘導ゆうどうひんがコークスであり、その工程こうていふく生成せいせいぶつとして石炭せきたんガス、コールタール、ガス軽油けいゆピッチなどがられる[5]
コークスと水蒸気すいじょうきとの反応はんのう
赤熱しゃくねつしたコークスと水蒸気すいじょうきとの反応はんのうにより水性すいせいガスられる[5]

石炭せきたん利用りよう歴史れきし

編集へんしゅう
石炭せきたん利用りよう歴史れきしこのしょうおも参考さんこう文献ぶんけん - 『石炭せきたん技術ぎじゅつ総覧そうらんだい3しょう石炭せきたん使つか

石炭せきたん使用しよう黎明れいめい

編集へんしゅう

古代こだいギリシアのテオプラストス記録きろく紀元前きげんぜん315ねん)に石炭せきたん鍛冶たんや燃料ねんりょうとして使つかわれたとかれている[22]。ほぼ同年代どうねんだい中国ちゅうごく戦国せんごく時代じだいでも石炭せきたん使用しようした遺跡いせきつかっている。かつて中国ちゅうごく華北かほくそうだいもちいられたとされ、どう時代じだい江南えなでは木炭もくたん四川しせんではたけずみ利用りようしていた。 日本にっぽんでの工業こうぎょう使用しようは、江戸えど時代じだい筑豊ちくほう炭田たんでん石炭せきたん瀬戸内海せとないかい製塩せいえんもちいられた記録きろくがある。元禄げんろく年間ねんかん貝原かいばら益軒えきけんあらわした『筑前ちくぜんこくぞく風土記ふどき』によれば、日本にっぽん筑前ちくぜんでは山野さんや露出ろしゅつした石炭せきたんを「もえせき」としょうして、庶民しょみんたきぎ代用だいよう燃料ねんりょうとしていたようで、風呂ふろ煮炊にたよう火持ひもちのもえせきもちいたとあらわされている。イギリスは国内こくない豊富ほうふ石炭せきたん資源しげんゆうし、一部いちぶ地表ちひょう露出ろしゅつしていたため700ねん以上いじょうまえから燃料ねんりょうとして使つかわれていた。

石炭せきたんだいいち黄金おうごん時代じだい

編集へんしゅう
 
1904ねんせい蒸気じょうき機関きかんしゃCity of Truro

18世紀せいきにイギリスで産業さんぎょう革命かくめいはじまり、製鉄せいてつぎょうをはじめとした工業こうぎょうだい規模きぼした。燃料ねんりょう消費しょうひりょうえ、従来じゅうらいたきぎ木炭もくたん使用しようした工業こうぎょうシステムでは森林しんりん資源しげん回復かいふくいつかなくなる問題もんだいがり、工業こうぎょうよう燃料ねんりょうとして石炭せきたん注目ちゅうもくされはじめた。ジェームズ・ワットによって蒸気じょうき機関きかん実用じつようされ、燃料ねんりょうとして石炭せきたん大量たいりょう使用しようされるようになった。またおなごろ石炭せきたん乾留かんりゅうしたコークスによる製鉄せいてつほう確立かくりつされ、良質りょうしつてつ安価あんか大量たいりょう生産せいさんできるようになり、産業さんぎょう革命かくめいおおきく推進すいしんさせた。

19世紀せいきまつになるとコークスを製造せいぞうするさい副産物ふくさんぶつとしててきたドロドロの液体えきたいコールタール原料げんりょうとして石炭せきたん化学かがく工業こうぎょうはじまり、染料せんりょうインディゴ薬品やくひんアスピリンナフタリンなどがつくられるようになった。石炭せきたん石灰岩せっかいがん高温こうおん(2,000℃)で反応はんのうさせてできた炭化たんかカルシウムからアセチレンつくられ、有機ゆうき化学かがく工業こうぎょうしゅ原料げんりょうとなった(現在げんざいこの地位ちい石油せきゆ起源きげんナフサ/エチレンわっている)。燃料ねんりょうとしての石炭せきたん工場こうじょう動力どうりょくのほか、鉄道てつどうふね蒸気じょうき機関きかん燃料ねんりょうとして使つかわれた。

都市とし照明しょうめい暖房だんぼう調理ちょうりよう石炭せきたん由来ゆらい合成ごうせいガス使つかわれた。これは石炭せきたんねつ分解ぶんかいからられたガスで、最初さいしょはコークスをつくさい発生はっせいするメタン水素すいそ主成分しゅせいぶんとするコークスガスがロンドンのガス灯がすとうなどに使つかわれた。つぎにもっと大量たいりょう生産せいさんできる都市としガス開発かいはつされた。灼熱しゃくねつしたコークスにみずをかけてられる一酸化いっさんか炭素たんそ水素すいそからなるガスで、大都市だいとしで1970年代ねんだいまで使用しようされたが、便利べんりではあるが毒性どくせいつよいものであったため現在げんざいでは毒性どくせいすくない天然てんねんガスにわりつつある。19世紀せいきまつから20世紀せいき中旬ちゅうじゅんにかけて、先進せんしん各国かっこく都市としでは工場こうじょう家庭かてい使用しようする石炭せきたんから煤煙ばいえんによる公害こうがい問題もんだいおおきくなっていった。


石炭せきたんから石油せきゆへの移行いこう

編集へんしゅう
 
だいいち大戦たいせん活躍かつやくしたドイツ巡洋艦じゅんようかんエムデン石炭せきたん燃焼ねんしょうによる目立めだくろけむりてきつかりやすい。
とくドイツにおいては地政学ちせいがくてき理由りゆうから英国えいこくのようなこう品質ひんしつ火力かりょくたか無煙炭むえんたん入手にゅうしゅ困難こんなんであったため不利ふり条件じょうけんかさなることになった。

20世紀せいきにはいると石油せきゆ採掘さいくつ技術ぎじゅつ発展はってんし、アメリカ国内こくない中東ちゅうとうインドネシアだい規模きぼ油田ゆでん開発かいはつされて、大量たいりょう安価あんか入手にゅうしゅできるようになった。石油せきゆ液体えきたいなので貯蔵ちょぞう移送いそう便利べんりうえ発熱はつねつりょうおおきく、煤煙ばいえんすくないので石炭せきたんわる燃料ねんりょうとして使つかわれるようになった。1910ねんだいまで世界せかい海軍かいぐん主要しゅよう艦艇かんてい燃料ねんりょう石炭せきたんであったが、イギリスでは1914ねん竣工しゅんこうしたけい巡洋艦じゅんようかんアリシューザきゅう1915ねん竣工しゅんこう戦艦せんかんクイーン・エリザベスきゅう以後いごかんは、燃料ねんりょう重油じゅうゆえた。日本にっぽんなどの国々くにぐにでも1920年代ねんだい以後いご建造けんぞうされたかん燃料ねんりょうはほとんどすべ石油せきゆわった。分野ぶんやでは石油せきゆへのえはすこおくれた。鉄道てつどう分野ぶんやでは当初とうしょ動力どうりょくしゃとして蒸気じょうき機関きかんしゃのみしかなかったが、1940年代ねんだいにはアメリカでこう出力しゅつりょくディーゼル機関きかんしゃ本格ほんかく運用うんようはじまった。ドイツはだい世界せかい大戦たいせんなかに、輸入ゆにゅう途絶とぜつした石油せきゆ代替だいたいとして石炭せきたん液化えきか技術ぎじゅつ実用じつようした。これは高温こうおん(500℃以上いじょうこうあつすうじゅう気圧きあつ以上いじょう)の条件下じょうけんか石炭せきたん水素すいそ反応はんのうさせて炭化たんか水素すいそ合成ごうせいする方法ほうほうであった。

だい世界せかい大戦たいせん敗戦はいせんした日本にっぽん疲弊ひへいした国内こくない産業さんぎょうなおしのために国策こくさくとして石炭せきたん増産ぞうさん実施じっしし(傾斜けいしゃ生産せいさん方式ほうしき)、戦後せんご復興ふっこうげた。当時とうじ火力かりょく発電はつでんはほとんど石炭せきたん燃料ねんりょうとしていた。しかし1960ねんから発電はつでんよう燃料ねんりょうとして石油せきゆ使用しようりょう増大ぞうだいし、1970年代ねんだいには石炭せきたんのみを使つか火力かりょく発電はつでんしょ新設しんせつされなくなった時期じきがあった。また既設きせつ石炭せきたん火力かりょく発電はつでんしょ石油せきゆ使用しよう改造かいぞうされた。

また、前述ぜんじゅつのアセチレンとうわって現在げんざい化学かがく工業こうぎょう基本きほんとなっているのは、石油せきゆてい沸点ふってん部分ぶぶんナフサ原料げんりょうとしたエチレンである。

石油せきゆ危機きき石炭せきたん回帰かいき天然てんねんガスとの競争きょうそう

編集へんしゅう

石油せきゆ危機きき以降いこう原油げんゆ価格かかく上昇じょうしょうし、発電はつでん工業こうぎょうようボイラ燃料ねんりょうセメント焼成しょうせい燃料ねんりょうは1980年代ねんだいふたた石炭せきたんもどった。一方いっぽう石油せきゆ代替だいたい燃料ねんりょうのライバルとして天然てんねんガス登場とうじょうした。日本にっぽん発電はつでん1980ねん以降いこう原子力げんしりょく発電はつでん石炭せきたん火力かりょく発電はつでん天然てんねんガスをもちいたコンバインドサイクル発電はつでんわせバランスよく使用しようするように方針ほうしん転換てんかんされている(電源でんげんベストミックス)。東京電力とうきょうでんりょく中部電力ちゅうぶでんりょく関西電力かんさいでんりょくのような大都市だいとしけん電力でんりょく会社かいしゃでは比較的ひかくてき天然てんねんガスの比率ひりつたかいものの、地方ちほう電力でんりょく会社かいしゃでは、沖縄電力おきなわでんりょくが2015ねん統計とうけい発送はっそう電電でんでん力量りきりょう構成こうせい石炭せきたん火力かりょく発電はつでんが62%をしめるのを筆頭ひっとうに、中国電力ちゅうごくでんりょくでも56%、北陸電力ほくりくでんりょくでも64%をめるなど石炭せきたん火力かりょく発電はつでん発電はつでんはしらとなっている会社かいしゃおお[23][24]

近年きんねん中国ちゅうごくでの経済けいざい成長せいちょうによる需要じゅようきゅう拡大かくだいなどを背景はいけいに2000ねんごろにはやく50おくトンであった石炭せきたん消費しょうひりょう急増きゅうぞうしており2010ねん以降いこうやく80おくトンとなっている[14]

2010年代ねんだいには地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさく視点してんなどから、火力かりょく発電はつでんしょ使用しようされる石炭せきたん天然てんねんガスとくらべて二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつりょうおおいことが問題もんだいされるようになった。2016ねんおこなわれただい22かい気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく締約ていやくこく会議かいぎ(COP22)にわせ、フランス2023ねんイギリスは2025ねんカナダは2030ねんまでに石炭せきたん火力かりょく廃止はいしする方針ほうしんしている[25]。また、アメリカではメキシコ湾岸わんがん油田ゆでんなどの開発かいはつから、コストてき天然てんねんガスが優位ゆういとなり、石炭せきたん火力かりょく発電はつでんしょ次々つぎつぎ閉鎖へいさされる出来事できごともあった[26]

石炭せきたん資源しげん特徴とくちょう

編集へんしゅう
安価あんかなコスト
自動車じどうしゃ普及ふきゅうした先進せんしんこくでは石油せきゆめる割合わりあいたかいが、エネルギー消費しょうひ過半数かはんすうめる発電はつでん燃料ねんりょう産業さんぎょう燃料ねんりょうでは、コスト優位ゆういにより石炭せきたんいまだにすくなくない割合わりあいめているくにもある。アメリカも発電はつでん燃料ねんりょうは31%と天然てんねんガスとおなじぐらいである[27]中国ちゅうごく自動車じどうしゃ普及ふきゅう石油せきゆ輸入ゆにゅうりょう急増きゅうぞう日本にっぽんいたが、依然いぜんとしてぜんエネルギーのうち5わり以上いじょう石炭せきたんめている[28]
輸送ゆそう貯蔵ちょぞうのセキュリティ
石油せきゆ・ガスのような流体りゅうたいではないことや、かく燃料ねんりょうのようにコンパクトではないことは、輸送ゆそうのコストをげる要因よういんではあるが、一方いっぽうでは輸送ゆそう貯蔵ちょぞうさいしての事故じこやテロによる被害ひがい規模きぼ抑制よくせいする要因よういんでもある。
豊富ほうふ埋蔵まいぞうりょう
石炭せきたん燃料ねんりょうくらべて埋蔵まいぞうりょうおおく、かつ石油せきゆのようないち地域ちいきへの偏在へんざいがなく、ぜん世界せかい幅広はばひろ採掘さいくつ可能かのうなエネルギー資源しげんである。50ねん枯渇こかつ懸念けねんされている石油せきゆたいし、石炭せきたんは153ねん[29]採掘さいくつ可能かのうかんがえられている[30]。2017ねん世界せかい消費しょうひやく75おくt[31]、2017ねん時点じてんではそういちエネルギー消費しょうひの23%をめる[32]かく認可にんか埋蔵まいぞうりょうは、世界せかいやく1ちょう35おく t(2017ねん)(BP統計とうけい2005年版ねんばんではやく9091おく t)[31]。1990ねんのデータでは ウランふく燃料ねんりょう資源しげん石油せきゆ換算かんさんしたかく認可にんか埋蔵まいぞうりょう比率ひりつ石炭せきたんが61.9%にたっし、オイルサンドるいの16.1%、石油せきゆの10.8%、天然てんねんガスの9.7%にくらべて圧倒的あっとうてきおおい。また石油せきゆ世界せかい埋蔵まいぞうりょうのうち中東ちゅうとう地区ちくやく48%が偏在へんざいしたり(2016ねんのデータ)、天然てんねんガスがヨーロッパ及旧ソ連それん中東ちゅうとうで70%以上いじょう埋蔵まいぞうりょう占有せんゆうする状況じょうきょうである(2016ねんのデータ)のにくらべて 石炭せきたんはアメリカ(22.1%)、中国ちゅうごく(21.4%)、ロシア(14.1%)、オーストラリア(12.7%)、インド(8.3%)、ドイツ(3.2 %)と政情せいじょう安定あんていしているくに埋蔵まいぞうりょうおおきいことが特徴とくちょう(2016ねんのデータ)[33]
製鉄せいてつにおける石炭せきたん有利ゆうり
鉄鉱てっこうせきとはびたてつ酸化さんかてつみゃくせきかたまりであり、製鉄せいてつとは還元かんげん反応はんのうである。現在げんざい高炉こうろほうねばむすぶずみ瀝青炭れきせいたん)をきにしたコークス塊状かいじょう鉄鉱てっこうせき円筒えんとうがた高炉こうろげ、したから空気くうきんで発生はっせいする一酸化いっさんか炭素たんそ銑鉄せんてつつくるので、石炭せきたんとくねばむすぶずみ)が不可欠ふかけつである。
天然てんねんガスでも還元かんげんできるが温度おんどげにくいので、産油さんゆこくのような石油せきゆ採掘さいくつとき随伴ずいはんガスとしててきてしまう天然てんねんガスを無駄むだやしているくに以外いがいでは、石炭せきたんのほうが優位ゆういである。
豊富ほうふ埋蔵まいぞうりょうおも参考さんこう文献ぶんけん - 『エネルギー・セキュリティ』

欠点けってん

編集へんしゅう
健康けんこう被害ひがい

石炭せきたん燃料ねんりょうとして使用しようすると、健康けんこう障害しょうがい死亡しぼう原因げんいんになる。1952ねん12月5にちから9にちにかけてロンドンで発生はっせいした「ロンドンスモッグ」は、おも石炭せきたん大量たいりょう使用しようによってこされ、合計ごうけい1まん2000にん犠牲ぎせいしゃ大気たいき汚染おせんとしては史上しじょう最悪さいあく規模きぼ公害こうがいとなった[34]世界せかいてき石炭せきたんは、毎年まいとし80まんにん早死はやじにこすと推定すいていされている[35]

  • 石炭せきたん燃焼ねんしょう二酸化にさんか硫黄いおう(SO2)のおも排出はいしゅつげんであり、窒素ちっそ成分せいぶんのエネルギーげんよりおおく、酸性さんせい大気たいき汚染おせんもっと危険きけん形態けいたいであるPM2.5粒子りゅうしじょう物質ぶっしつ生成せいせいする[36]煙突えんとつからの排出はいしゅつぶつは、喘息ぜんそく脳卒中のうそっちゅう知的ちてき障害しょうがい動脈どうみゃく閉塞へいそく心臓しんぞう発作ほっさうっけつせい心不全しんふぜん不整脈ふせいみゃく水銀すいぎん中毒ちゅうどく狭窄きょうさくしょうはいがんこす[37]石炭せきたん使用しようして発電はつでんすることによるヨーロッパの年間ねんかん医療いりょうは、最大さいだい430おくユーロ見積みつもられている[38]
  • 燃料ねんりょうくらべて煤塵ばいじん発生はっせいおおく、労働ろうどうしゃ塵肺じんぱいこす[39]。この影響えいきょうで、米国べいこくだけでも石炭せきたん産業さんぎょうもと従業じゅうぎょういん1,500にん毎年まいとし死亡しぼうすると推定すいていされている[40]
  • 石炭せきたん使用しようすると、毎年まいとしすうおくトンのはいやその廃棄はいきぶつ発生はっせいし、これらには、フライアッシュ、ボトムアッシュ、および排煙はいえん脱硫だつりゅうスラッジがふくまれ、これらには、セレンなどの非金属ひきんぞくとともに、水銀すいぎんウラントリウムヒ素ひそ、およびその重金属じゅうきんぞくふくまれている[41]。1990年代ねんだいにおけるアメリカ地質調査所ちしつちょうさしょ推計すいけいによると、アメリカじん平均へいきんして石炭せきたん由来ゆらい放射線ほうしゃせん自然しぜん放射線ほうしゃせんりょうの0.1%程度ていど石炭せきたん火力かりょく発電はつでんしょから1kmの場所ばしょんでいる場合ばあい最大さいだいで5%を追加ついか被曝ひばくしているとされる[42]
  • 放射ほうしゃせい物質ぶっしつ土中どちゅう微量びりょうふくまれているため、鉱物こうぶつてつどう、アルミ)など採掘さいくつ残土ざんど精製せいせい残土ざんどやそれらの工業こうぎょう製品せいひんにも製品せいひん品質ひんしつ人体じんたい影響えいきょうあたえない範囲はんいごく微量びりょう含有がんゆうしている。石炭せきたんだけが環境かんきょう破壊はかい非金属ひきんぞく重金属じゅうきんぞく放射ほうしゃせい)の影響えいきょうあたえているというかんがえはあやまりである。また、石炭せきたんかすであるはい廃棄はいきぶつは、石炭せきたん主成分しゅせいぶん炭素たんそ分離ぶんりした色々いろいろこう濃度のうど物質ぶっしつかたまりであり、環境かんきょう人体じんたいへの影響えいきょうかんがえたらりがい。だが、石炭せきたんだけげられる理由りゆうは、石炭せきたん消費しょうひしゃ火力かりょく発電はつでんしょ製鉄せいてつしょなど)が環境かんきょう意識いしきたか利用りようしゃ最終さいしゅう消費しょうひしゃ先進せんしんこく国民こくみん)にちかいから環境かんきょうアセスメント問題もんだいとしてさわがれているだけで、発展はってん途上とじょうこく公害こうがいたいする教育きょういくひくくに国民こくみんさわがないだけである。そのため、先進せんしんこくから、大型おおがた火力かりょく発電はつでんしょ製鉄せいてつしょ撤退てったいし、上記じょうきくに地域ちいきなら軽度けいど環境かんきょうアセスメントや経済けいざいてき移転いてんしている。また、前述ぜんじゅつしたとおり、石炭せきたんはい色々いろいろこう濃度のうど物質ぶっしつかたまりなので、都市とし鉱山こうざん一種いっしゅとして研究けんきゅうおこなわれている。
環境かんきょうへの影響えいきょう
石炭せきたん使用しよう最大さいだいかつもっと長期ちょうきてき影響えいきょうは、気候きこう変動へんどう地球ちきゅう温暖おんだんつよ影響えいきょうあたえる物質ぶっしつである温室おんしつ効果こうかガスである二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)の放出ほうしゅつである。石炭せきたんは、2017ねん時点じてん世界せかいいちエネルギーの4ぶんの1[43]供給きょうきゅうし、石炭せきたん火力かりょく発電はつでんは、2018ねん世界せかいのCO2排出はいしゅつりょう増加ぞうか最大さいだい要因よういんであり、化石かせき燃料ねんりょうからの温室おんしつ効果こうかガスそう排出はいしゅつりょうの40%となっている[44]石炭せきたん採掘さいくつは、べつ温室おんしつ効果こうかガスであるメタンを放出ほうしゅつする[45]
石炭せきたんこう品位ひんいになるほど炭素たんそ含有がんゆうりょうえて水素すいそ酸素さんそってゆき、無煙炭むえんたん炭素たんそ含有がんゆうりょうは90 %以上いじょうたっする。燃料ねんりょう燃焼ねんしょうするとおも二酸化炭素にさんかたんそ水蒸気すいじょうき発生はっせいするが、こう品位ひんい石炭せきたんやすと燃焼ねんしょう生成せいせいぶつだい部分ぶぶん二酸化炭素にさんかたんそとなる。含有がんゆう水素すいそすくなさを、炭素たんそ燃焼ねんしょうによってカバーしているため、燃料ねんりょう発熱はつねつりょう比較ひかくすると二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつおおくなる。硫黄いおう酸化さんかぶつ除去じょきょ実用じつようされており、二酸化炭素にさんかたんそ地中ちちゅう処分しょぶん検討けんとうされているが、日本にっぽんでは貯留ちょりゅうそうに70ねんぶん容量ようりょうしかないといい、既存きそん石炭せきたん火力かりょく発電はつでんしょ寿命じゅみょうまで使つかって次世代じせだい発電はつでんしょにバトンタッチするつな技術ぎじゅつされている。
エネルギーがちいさい
石油せきゆ比較ひかくした場合ばあいていエネルギーであり、重油じゅうゆくらべてやく半分はんぶんである。これは蒸気じょうきボイラーでおな出力しゅつりょくようとした場合ばあい石油せきゆ燃料ねんりょう使用しようする場合ばあいよりもおおきなボイラーが必要ひつようであることを意味いみする。
固体こたいのため、採掘さいくつ運搬うんぱん貯蔵ちょぞうさいしてコストがかかる
液体えきたい気体きたい圧縮あっしゅく液体えきたいさせれば)はポンプ配管はいかん輸送ゆそうできるが、石炭せきたん輸送ゆそうにはパワーショベルまたは人手ひとでによるとうずみホッパーベルトコンベアなどが必要ひつようである。貯蔵ちょぞうさいには屋内おくない屋外おくがい貯炭ちょたんじょうなどにげられることになる。坑内こうないりの場合ばあいは、粉塵ふんじんやガスの爆発ばくはつ事故じこや、ガスによるさんかけ事故じこ粉塵ふんじんによる塵肺じんぱい落盤らくばん事故じこなどの危険きけんともなう。
放置ほうちすると空気くうき緩慢かんまん酸化さんか自然しぜん発熱はつねつこし場合ばあいによっては自然しぜん発火はっかいたることもあるので注意ちゅうい必要ひつよう[46][47]。そのため、石炭せきたん貯蔵ちょぞう設備せつび日除ひよけや、粉塵ふんじん自然しぜん発火はっか防止ぼうし散水さんすい設備せつびなどの安全あんぜん費用ひようかり、石炭せきたん使用しようする直前ちょくぜんには、湿気しけ石炭せきたん乾燥かんそうさせてから投入とうにゅうするため、乾燥かんそう設備せつび乾燥かんそうねつはいねつ利用りよう)の費用ひようもかかる。
石炭せきたん欠点けってんおも参考さんこう文献ぶんけん - 『石炭せきたん技術ぎじゅつ総覧そうらんだい3しょう石炭せきたん使つか

出典しゅってん

編集へんしゅう
  1. ^ 石炭せきたんとは 資源エネルギしげんえねるぎちょう(2021ねん7がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ 石炭せきたん開発かいはつ世界せかい22おくトン、依存いぞんなお/ていコストで調達ちょうたつちゅうごうしるしロで7わり」『日経にっけい産業さんぎょう新聞しんぶん』2021ねん7がつ7にちSDGsめん
  3. ^ a b c d e f g 石炭せきたんとはなに”. 一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん 石炭せきたんエネルギーセンター. 2020ねん6がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ a b だい13かい工業こうぎょう技術ぎじゅつ研究けんきゅうかい石炭せきたんのはなし” 紫雲しうん せん鶴雄つるお”. www.ipej-hokkaido.jp. 日本にっぽん技術ぎじゅつかい北海道ほっかいどう支部しぶ. 2020ねん8がつ15にち閲覧えつらん
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参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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