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物質 - Wikipedia

物質ぶっしつ

材料ざいりょう注目ちゅうもくする場合ばあいものかた

物質ぶっしつぶっしつは、もっと初等しょとうてきには、場所ばしょをとり一定いっていりょう(mass)をもつもののことである[1]おなじことを、もうすこ技術ぎじゅつてき用語ようご使つかえば、ものが質量しつりょう体積たいせきっていれば物質ぶっしつであるというのが古典こてんてき概念がいねんである[2]

  • いわゆる「もの」のことで、生命せいめい精神せいしんしん)と対比たいひされる概念がいねん[3]。「生命せいめい世界せかい物質ぶっしつ世界せかい」などと使つかう。
  • 哲学てつがく感覚かんかくによってその存在そんざいみとめられるもの[3]人間にんげん意識いしきえいじはするが、意識いしきからは独立どくりつして存在そんざいするとかんがえられるもの[3]
  • 物理ぶつりがく物体ぶったいをかたちづくり、任意にんい変化へんかさせることのできない性質せいしつをもつ存在そんざい空間くうかん一部いちぶめ、有限ゆうげん質量しつりょうをもつもの。[3]
  • (化学かがく) 化学かがくひん分類ぶんるいおよび表示ひょうじかんする世界せかい調和ちょうわシステム(GHS)においては、「物質ぶっしつ」(Substance) という用語ようごつぎ意味いみ使用しようされる。自然しぜん状態じょうたいにあるか、または任意にんい製造せいぞう過程かていにおいてられる化学かがく元素げんそおよびその化合かごうぶつをいう。製品せいひん安定あんていせいたもうえ必要ひつよう添加てんかぶつもちいられる工程こうてい由来ゆらいする不純物ふじゅんぶつふくむが、当該とうがい物質ぶっしつ安定あんていせい影響えいきょうせず、またその組成そせい変化へんかさせることなく分離ぶんりすることが可能かのう溶媒ようばいのぞく(GHS7はん 1.3.3.1.2)。

諸説しょせつ

編集へんしゅう

「matter(物質ぶっしつ)」という概念がいねん西洋せいよう哲学てつがくにおいて、古代こだいギリシアで発祥はっしょうしたが、その正体しょうたいについて、20世紀せいき初頭しょとう以前いぜん科学かがくしゃ哲学てつがくしゃ宗教しゅうきょう論争ろんそうかえした[4]。1930年代ねんだい初頭しょとう以降いこう原子げんし構造こうぞうあきらかになり、その性質せいしつ説明せつめいする量子力学りょうしりきがく成立せいりつすると、物質ぶっしつ本質ほんしつ厳密げんみつかつ統一とういつてき理解りかいすること可能かのうになった。これは、20世紀せいきにおける最大さいだい科学かがくてき成果せいかひとつである。

古代こだいギリシャでは物質ぶっしつは「本質ほんしつてき活性かっせいなもの」となすひとがいたが、ビュヒナーやマルクス主義まるくすしゅぎでは「運動うんどう活動かつどう一体いったいはなせないもの(つまり活性かっせいのあるもの)」となした[4]デカルトが「本質ほんしつてき空間くうかん延長えんちょうする(空間くうかんめる)もの」となしたのにたいライプニッツボスコヴィチ物質ぶっしつを「延長えんちょうい(空間くうかんめない)、エネルギーの中心ちゅうしん」となしたし[4]バークリーカント物質ぶっしつを「本質ほんしつてき理解りかい不能ふのうのもの(あるいは可知かちのもの)」となしたが、ホッブズは「哲学てつがくにとっての唯一ゆいいつ明瞭めいりょう根拠こんきょ」となしたし[4]デモクリトスが「その本質ほんしつとして永遠えいえん現実げんじつてき」となしたが、プラトンヘーゲルは「可能かのうたい以上いじょうのものではありえないあるしゅ存在そんざい」となした、といった具合ぐあいである[4]

20世紀せいき初頭しょとうまで、科学かがくかいにおいて原子げんし存在そんざい有無うむについて論争ろんそうつづいたために、物質ぶっしつについて様々さまざま解釈かいしゃく共存きょうぞんした。たとえば、物質ぶっしつはもののかり姿すがたにすぎず、エネルギーのみが本質ほんしつであるとする Energetiker ろんしゃ原子げんし存在そんざい否定ひていした。1930年代ねんだい初頭しょとうまでに電子でんし陽子ようし中性子ちゅうせいし相次あいついで実験じっけんてき発見はっけんされて、量子力学りょうしりきがく完成かんせいすることによって、矛盾むじゅんい、物質ぶっしつ統一とういつてき理解りかいがはじめて可能かのうになった。物質ぶっしつ物理ぶつり化学かがくてきには「原子げんし構成こうせいされるもの」、初等しょとう量子力学りょうしりきがくまたはだいいち量子りょうし範囲はんいでは「質量しつりょうをもつなみ」、量子りょうしろんまたはだい量子りょうしにおいては「励起れいき状態じょうたい」と理解りかいされる。一般いっぱんに、1/2のスピンかく運動うんどうりょうをもつクオークやレプトンなど物質ぶっしつ構成こうせいするフェルミ粒子りゅうしパウリの排他はいた原理げんりしたがい、ふた以上いじょう粒子りゅうし同一どういつ量子りょうし状態じょうたいめることができないため、「場所ばしょをとるもの」の性質せいしつつ。一方いっぽう光子こうしのようにスピンかく運動うんどうりょうが1であるような素粒子そりゅうしは、複数ふくすう粒子りゅうし同一どういつ量子りょうし状態じょうたい占有せんゆうすることがゆるされるボース粒子りゅうしであるために、パウリの排他はいた原理げんりしたがわず、「場所ばしょをとる」という物質ぶっしつ特有とくゆう性質せいしつたない。また、光子こうしはゲージ粒子りゅうし一種いっしゅであり、質量しつりょうをもたない。光子こうし光子こうし直接ちょくせつ相互そうご作用さようしたり、原子げんしのような構造こうぞうつくったりはしない。このため日常にちじょう生活せいかつにおいても、ひかり電波でんぱは「物質ぶっしつ一種いっしゅ」であるとは認識にんしきされない。

クオークやレプトンそのものは元来がんらい、SU(2)L ゲージ対称たいしょうせいたも性質せいしつつために質量しつりょうたないが、ビッグバン宇宙うちゅう冷却れいきゃくする過程かていヒッグスじょう自発じはつてき対称たいしょうせいやぶれにより有限ゆうげん真空しんくう期待きたい獲得かくとくすると、この量子りょうしじょうとの相互そうご作用さようにより質量しつりょうをもつ物質ぶっしつ粒子りゅうし出現しゅつげんしたとかんがえられている。一方いっぽう、ヒッグスじょうのうち、電荷でんかをもつSU(2)じゃくアイソスピンゲージぐんのz成分せいぶん真空しんくう期待きたいをもたないために、ひかりとは相互そうご作用さようせず、光子こうし質量しつりょう獲得かくとくしない。この理論りろんは、2012ねんヒッグス粒子りゅうし発見はっけんにより実証じっしょうされた。こうして「場所ばしょをとり、質量しつりょうがあるような物質ぶっしつ」の背景はいけいにある複雑ふくざつ機構きこう解明かいめいされた。宇宙うちゅうには重力じゅうりょく相互そうご作用さようはするが、直接的ちょくせつてき検出けんしゅつむずかしい、正体しょうたい不明ふめい暗黒あんこく物質ぶっしつ充満じゅうまんしている証拠しょうこられつつある。また、中性子ちゅうせいしのみで構成こうせいされた中性子星ちゅうせいしせいや、ちょう高温こうおん出現しゅつげんするクオークグルーオンプラズマなど、あらたな物質ぶっしつ形態けいたい存在そんざいすることがわかってきた。

なお、哲学てつがくてきえば、物質ぶっしつ宇宙うちゅう構成こうせいするもろ存在そんざいのうちの1つである。哲学てつがくてきには物質ぶっしつ対置たいちされる概念的がいねんてき存在そんざいは「物質ぶっしつ」とばれ、空間くうかん時間じかん情報じょうほうはじめとして、多数たすう存在そんざいする。一方いっぽう現代げんだい科学かがくにおける量子りょうしろんにおいては、真空しんくう基底きてい状態じょうたい物質ぶっしつはスピン1/2の励起れいき状態じょうたいひかりはスピン1の励起れいき状態じょうたいであると理解りかいされる。一方いっぽう時間じかん空間くうかん量子りょうしして重力じゅうりょく現象げんしょう説明せつめいする量子りょうし重力じゅうりょく理論りろんは、まだ成立せいりつにいたっていない。なお、WMAPひとし人工じんこう衛星えいせいによる宇宙うちゅうマイクロ背景はいけい放射ほうしゃ観測かんそく結果けっかにより、原子げんしとう通常つうじょう物質ぶっしつ宇宙うちゅうぜんエネルギーの5%程度ていど相当そうとうしているにぎないことが見積みつもられている。一方いっぽうのこりの70%は暗黒あんこくエネルギー、25%前後ぜんこう暗黒あんこく物質ぶっしつ構成こうせいされているとかんがえられている。このように、人間にんげん日常にちじょうてきせっする物質ぶっしつは、宇宙うちゅう全体ぜんたい存在そんざいする物質ぶっしつ形態けいたいのうちの一部いちぶぎないことがわかっている。

現代げんだい日常にちじょうてき用法ようほう

編集へんしゅう

物質ぶっしつ変化へんか現象げんしょう出来事できごとなどと区別くべつされることがおおい。変化へんか物質ぶっしつしょうじる1つの出来事できごと現象げんしょうでありうるが、変化へんか自体じたい物質ぶっしつではない。ある現象げんしょうやある出来事できごとも、そこに物質ぶっしつ関与かんよしていることはあるが、それ自体じたいとしては物質ぶっしつではない。物質ぶっしつはそうした現象げんしょう出来事できごとこる対象たいしょうのような位置いちめている。日本語にほんごではこの区別くべつは、ものこと区別くべつ、「モノ」と「コト」の区別くべつとして、日常にちじょうてきもちいられている。

このように、観念かんねんてきには物質ぶっしつ概念がいねん存在そんざい概念がいねん分離ぶんりすることはむずかしい。このよう観念論かんねんろんは、デカルトの「われおもう、ゆえにわれあり」という観念論かんねんろんより派生はせいしており、「物体ぶったい認識にんしきすることが、すなわち存在そんざいである」と概念がいねんけられるためならない。存在そんざいむすけられた物質ぶっしつは、その性質せいしつ物性ぶっせい以外いがいにも哲学てつがくてき属性ぞくせい記事きじ 存在そんざい参照さんしょうのこと)が付加ふかされる。そして、物質ぶっしつ着目ちゃくもく執着しゅうちゃくする姿勢しせいは「物質ぶっしつ主義しゅぎ」とばれる。また、そのような信念しんねんぬしは「物質ぶっしつ主義しゅぎしゃ」とばれる。

すなわち物質ぶっしつ対比たいひされることのある概念がいねんとして、しん精神せいしん意識いしき)、情報じょうほうエネルギー空間くうかんなどがあるが、これは人間にんげん直感ちょっかんによる区分くぶんであり、現代げんだい科学かがく知見ちけんとはかならずしも一致いっちしない。

メソポタミアでは紀元前きげんぜん3000ねんまでに、液体えきたい蒸留じょうりゅうおよび鉱石こうせき昇華しょうかよう巧妙こうみょう考案こうあんされた過熱かねつポットがもちいられていた[5]。それからほどなくして、ひがし地中海ちちゅうかいあたりには合金ごうきんガラス香料こうりょう製造せいぞう技術ぎじゅつひろがっていった[5]一方いっぽう物質ぶっしつ変化へんかかんするもろもろの過程かてい当時とうじ人々ひとびとは、自然しぜんしんはんかみたちの人格じんかくてき関係かんけい、という神話しんわのかたちで説明せつめいしたものもあった[5]バビロニアには「ななつのしゅ天体てんたい」「ななつの金属きんぞく」「ななつの人体じんたい部位ぶい」「ななつのいろ」「(いち週間しゅうかんの)ななつの」「たましい目覚めざめのななつの段階だんかい」といった複雑ふくざつ理論りろん体系たいけいがあったが、現代げんだいの「物質ぶっしつ」に相当そうとうするような概念がいねんがはっきりとあったとはえず、経験けいけん様々さまざま要素ようそ側面そくめん一部いちぶとしてほかこんしか一体いったいであった[5]

哲学てつがく

編集へんしゅう

ギリシア哲学てつがく

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ソクラテス以前いぜん

編集へんしゅう

つぎ学術がくじゅつ世界せかいで「フォアゾクラティカーVorsokratiker」とばれているソクラテス以前いぜん哲学てつがくしゃ紀元前きげんぜん6世紀せいきころ~まえ4世紀せいきころ)は、さかんに自然しぜんについて考察こうさつしていたわけであるが、現代げんだいまでつたわっているのは基本きほんてきに、哲学てつがくしゃたちがいた文章ぶんしょうなかふくまれる断片だんぺんてきなテキストなので、かれらがどのようにかんがえていたのか正確せいかくることはむずかしい。かれらはふか思想しそうをたたえていたようにもめるが、つたえられたのが断片だんぺんてきみじか言葉ことばであるがゆえにそういう印象いんしょうんでいるだけなのか判断はんだんのつきかねるめんもある[5]

イオニアじんたちは、αあるふぁρろーχかいηいーた アルケー探求たんきゅうしたが、このアルケーというのは現代げんだいではぴったり一致いっちする概念がいねんがあるわけではないが、「原理げんり」とも「起源きげん」とも、知識ちしき理論りろんの「公理こうり」とも、物質ぶっしつ世界せかいの「(構成こうせい単位たんい」ともえるようなものであったのかもれない[5]。(アルケーの探求たんきゅうなどと関連かんれんさせて)「イオニアじんたちはミュトス(神話しんわ)をえてソピア()へとかった」などとわれる。アルケーは、タレスみずと、アナクシメネス空気くうきと、ヘラクレイトスったとつたわるが、それはそこにかたられるみず空気くうきが、生命せいめいしん思考しこうなどもふくめてすべての自然しぜんしょ現象げんしょう説明せつめいするのに充分じゅうぶんなほどに精巧せいこうなものだ、とする見方みかたしめしている[5]。またアナクシメネスにおいては空気くうきが「すべてのものがそこにおいて構成こうせいされている」といった性質せいしつのものとされていたことからすると、それは形而上学けいじじょうがくてき宇宙うちゅうろんへとつらなるものであったともいえる[5]。こうしたかんがかたは、現代げんだいでは唯物ゆいぶつろんりのものとなされることがおおいが、その一方いっぽうかれらは物質ぶっしつてき存在そんざいうち生命せいめいりょく見出みいだしていた[5]

デモクリトス原子げんしろんを、プラトンゆう機体きたいろんを、アリストテレス質料しつりょう形相ぎょうそうろん提示ていじした[5]。これら、紀元前きげんぜん400ねんから紀元前きげんぜん300ねんころにかけて提示ていじされた競合きょうごうてき理論りろんは、この時代じだいにしてすでに、その時代じだい哲学てつがく学問がくもんせることになるおおまかな輪郭りんかくをあらかじめしめしており[5]、これらの観念かんねんぐんは、その 物質ぶっしつかんする知識ちしき進展しんてんするなかで、かえあらわれてくることになり、おおきな影響えいきょうあたえることになった[5]

デモクリトス(B.C 460-367)の原子げんしろんについては「原子げんしろん」の記事きじ説明せつめいゆずろう。

エンペドクレス
編集へんしゅう

エンペドクレスは、紀元前きげんぜん440ねんごろに、空気くうき物質ぶっしつであることを実証じっしょうした。 オリジナルとは少々しょうしょうことなるが簡単かんたん確認かくにんすることができる。おおきなバケツにみずいちはいれる。そのバケツに漏斗ろうとほそくちゆびふさぎながら、ひろ開口かいこうしたけてバケツにれると、漏斗ろうとにはみずはいってこない。ゆび漏斗口じょうごぐちからはずすとそこにみずながみ、空気くうきがそのくちからいきおいよくでてくる。空気くうきみず空間くうかんめるのを邪魔じゃましていたことから、空気くうき物質ぶっしつであるというわけである。物質ぶっしつ基本きほんてき属性ぞくせいひとつである、空間くうかん占有せんゆうする(体積たいせきつ)という性質せいしつ空気くうきっていたことを実証じっしょうしたわけである。[6] これは、物質ぶっしつ(Matter)の基本きほんてき古典こてんてき定義ていぎひとつである「物質ぶっしつ質量しつりょうをもち、空間くうかん占有せんゆうするもの」[7]という後者こうしゃ属性ぞくせい実証じっしょうするものである。

 
プラトン

プラトンイデアろんとなえ、永遠えいえん不変ふへんなのはidea イデアである、としたのであるが、それにたいして物質ぶっしつをどのようになしたかというと、永遠えいえん現実げんじつてきなものではない、とした[5]物質ぶっしつてきなものは「いつも生成せいせい過程かていなかにあって、真実しんじつにあるものではない」(『ティマイオス』27e-28a)としたのである。弁論べんろんじゅつ方法ほうほう階層かいそう秩序ちつじょもちいているイデアろんは、部分ぶぶんによって全体ぜんたい説明せつめいするのではなく、全体ぜんたいによって部分ぶぶん説明せつめいするゆう機体きたいろんてき傾向けいこうしめしている[5]

イデアは普遍ふへんてき絶対ぜったいてき永遠えいえんてき遍在へんざいてき可知かちてき調和ちょうわてき完全かんぜんなものであったのにたいして、物質ぶっしつというのは特殊とくしゅてき相対そうたいてき時間じかんてき局所きょくしょてきで、混乱こんらんし、協和きょうわで、欠陥けっかんのあるものであった[5]

 
せいよん面体めんてい
 
せいはち面体めんてい
 
せいじゅう面体めんてい

こうした見方みかたをしていたにもかかわらずプラトンが原子げんしてき構造こうぞうについての仮説かせつべていた(『ティマイオス』53c-58c)とるとおおくのひとおどろ[5]。プラトンにおいては物質ぶっしつ空間くうかんは《受容じゅようたい》として同一どういつされた[5]かれ原子げんしてき理論りろんは、物質ぶっしつ空間くうかん同一どういつし、(材料ざいりょうではなく)幾何きかがくてき構造こうぞうもちいて説明せつめいされている[5]かれはエンペドクレスのよん元素げんそテアイテトス確立かくりつしたいつつのせい立体りったい同一どういつした。せいよん面体めんていがひとつの「原子げんし」、せいはち面体めんていが2の「空気くうき原子げんし」、せいじゅう面体めんてい1個いっこの「みず原子げんし」、だとかんがえた[5]。①正方形せいほうけい半分はんぶんにした三角形さんかっけい ②正三角形せいさんかっけい半分はんぶん三角形さんかっけい、 これらをわせてできる幾何きかがくてき立体りったいもちいて幾何きかがくてき説明せつめいおこなったのである[5]いちみず原子げんし(=せいじゅう面体めんてい)は2空気くうき原子げんし(=せいはち面体めんてい)および1個いっこ原子げんし(=せいよん面体めんてい)になることができる、ということになる。物質ぶっしつ秩序ちつじょかんしてこれほどまで幾何きかがくてき仮説かせつ提示ていじされているのは画期的かっきてきなことである[5]

プラトンの物質ぶっしつかんでもうひとつ重要じゅうようなのは《ざい》という概念がいねんである。かれはイデアという永遠えいえん完全かんぜん理解りかい可能かのう原型げんけいかんがえたわけであるが、だとするとその感覚かんかくてきあらわれが多様たようなのはなにによるものなのか? という疑問ぎもんしょうじるが、それを解決かいけつするために、《ざい》がある(『ソピステス』241e)とべる必要ひつようかんじたのであった。(デモクリトス同様どうように)充満じゅうまんする存在そんざい対立たいりつする原理げんり必要ひつようせいかんじたのである[5]

なおしんプラトン主義しゅぎには「物質ぶっしつ慣性かんせいてき受動じゅどうせい」という概念がいねんがあるが、マックス・ヤンマーが「質量しつりょう概念がいねん起源きげんさぐったときにたどりいたのはその概念がいねんであった[5]

世界せかい物質ぶっしつだけからなるとか、すべての物事ものごと物質ぶっしつてき作用さようとして説明せつめいできるとかんがえる立場たちば唯物ゆいぶつろんなどとぶ。唯物ゆいぶつろんという単語たんごは、マルクス主義まるくすしゅぎのような思想しそう通俗つうぞくてき信念しんねん反映はんえいしたものであり、通俗つうぞくてき用法ようほうおおい。これとはことなり、複数ふくすう実体じったい根本こんぽん原理げんりとする実体じったい二元論にげんろんもある。 これ以前いぜんに、哲学てつがく分野ぶんやでは、機械きかいろん自体じたい絶対ぜったいてきなものではなく、生気せいきせつられている。

物質ぶっしつもしくは物質ぶっしつてき対象たいしょう存在そんざいであるとか、本質ほんしつ対置たいちされる概念がいねんとしての現象げんしょうであるとするかんがかたもある。代表だいひょうてき研究けんきゅうしゃとしてバークリーげることがゆるされるが、かれ哲学てつがく主観しゅかんてき観念論かんねんろん典型てんけい[8]であると看做みなされる。懐疑かいぎろん不可知論ふかちろん生気せいきせつ哲学てつがく分野ぶんやでは、現代げんだいでも主題しゅだいになる。

自然しぜん科学かがく

編集へんしゅう

ドルトン原子げんしせつ提唱ていしょうし、アボガドロ分子ぶんしせつ提唱ていしょうした。ラボアジェによる質量しつりょう保存ほぞんそく確立かくりつ以来いらい質量しつりょう物質ぶっしつ特徴とくちょうづける本質ほんしつてきりょうかんがえられるようになった。物質ぶっしつかれた条件じょうけんにより種々しゅじゅあい転移てんいこす。とく分子ぶんし原子げんしあつまって構成こうせいされたおおくの物質ぶっしつは、固体こたい液体えきたい気体きたいばれる3つのそうをとる。それ以外いがいにも、ボース=アインシュタイン凝縮ぎょうしゅくちょう流動りゅうどうそうちょう臨界りんかい流体りゅうたいなどの特殊とくしゅ形態けいたいをとることもある。

物理ぶつりがく化学かがく

編集へんしゅう

20世紀せいき初頭しょとうまでは、おも哲学てつがく分野ぶんやから派生はせいして、物体ぶったい力学りきがくてき運動うんどう法則ほうそくなど根元ねもとてき原理げんり解明かいめい目的もくてきとした物理ぶつりがく(Physics)と、中世ちゅうせい産業さんぎょう革命かくめい以降いこうあらたな化合かごうぶつ合成ごうせいとうおも目的もくてきとして、より工学こうがくてき要素ようそともなって発展はってんした化学かがく(Chemistry)の境界きょうかい割合わりあい明確めいかくであった。しかし原子げんし存在そんざい確認かくにんされると、化学かがく分野ぶんやにおいて量子力学りょうしりきがくとう理論りろんもちいて化合かごうぶつ構造こうぞう化学かがく反応はんのう解明かいめいしようとする化学かがく物理ぶつりがくや、原子核げんしかく物理ぶつり化学かがく融合ゆうごうしたかく化学かがくばれる分野ぶんや出現しゅつげんした。現在げんざいでは、物理ぶつり化学かがく明確めいかく境界きょうかい見出みいだすことはむずかしく、おも学校がっこう教育きょういくにおける伝統でんとうてき区分くぶん慣習かんしゅうてきつづいている側面そくめんもある。

物理ぶつり変化へんか化学かがく変化へんかれい

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つぎ化学かがく変化へんかれいげる。

  • 化合かごう - 化学かがく変化へんかにより複数ふくすう物質ぶっしつから、べつ単純たんじゅん物質ぶっしつ生成せいせいする過程かてい
  • 分解ぶんかい - 化学かがく変化へんかによりある物質ぶっしつから、複数ふくすう物質ぶっしつ生成せいせいする過程かてい
  • 酸化さんか
  • 還元かんげん

たん複数ふくすう物質ぶっしつ混合こんごうした場合ばあい物理ぶつり変化へんかなされる。とく粒子りゅうし同士どうし混合こんごうかかにごえき調製ちょうせい、またはそのぎゃく分離ぶんり、は明確めいかく物理ぶつり変化へんかなされる。だが分子ぶんしレベルの混合こんごう場合ばあいには化学かがく変化へんかともな場合ばあいもあり、化学かがく変化へんかとも物理ぶつり変化へんかとも断定だんていしにくい場合ばあいもある。

つぎれい典型てんけいてき物理ぶつり変化へんかである。古代こだい以前いぜんから、これらの変化へんかでは材質ざいしつ変化へんかしないと認識にんしきされていたとかんがえられる。

  • 物体ぶったい変形へんけい破壊はかい切断せつだん接合せつごう
  • える混合こんごう 固体こたい粒子りゅうし液体えきたい固体こたい粒子りゅうし同士どうし

つぎれいは、もの性質せいしつ一部いちぶ変化へんかするが現在げんざいでは物理ぶつり変化へんか認識にんしきされているものである。

物質ぶっしつ分類ぶんるい

編集へんしゅう

われわれのまわりにあるみず、そして、空気くうき、あらゆるものが物質ぶっしつである。その物質ぶっしつじゅん物質ぶっしつ混合こんごうぶつ分類ぶんるいできる。じゅん物質ぶっしつとは混合こんごうぶつから単一たんいつ成分せいぶん分離ぶんり精製せいせいしたものである。混合こんごうぶつなに種類しゅるいかの物質ぶっしつじったものである。自然しぜん存在そんざいする物質ぶっしつのほとんどが混合こんごうぶつである。[9]

物質ぶっしつ種類しゅるい

編集へんしゅう

物質ぶっしつ化学かがくてき概念がいねん分類ぶんるいする場合ばあい化学かがく物質ぶっしつといいあらわされる。

物質ぶっしつ単一たんいつしゅたる成分せいぶん化学かがく物質ぶっしつ)で構成こうせいされる場合ばあいは「じゅん物質ぶっしつ」、複数ふくすう主成分しゅせいぶんから構成こうせいされる場合ばあいは「混合こんごうぶつ」とばれる。なお、じゅん物質ぶっしつ微量びりょうふく成分せいぶん不純物ふじゅんぶつばれ、不純物ふじゅんぶつ混合こんごうぶつとは存在そんざい程度ていどであり、その境界きょうかい曖昧あいまいである。

物質ぶっしつ成分せいぶん同一どういつであっても化学かがく構造こうぞうちがいによりことなる化学かがく物質ぶっしつとなる。

  • 同素体どうそたい - どういち元素げんそ単体たんたい化学かがく構造こうぞうことなり物理ぶつりてき性質せいしつ物性ぶっせい)がことなる物質ぶっしつ
  • 異性いせいたい - 分子ぶんし内部ないぶ構造こうぞうことなる化学かがく物質ぶっしつ
  • あい変態へんたい - 金属きんぞくなど圧力あつりょく温度おんどにより結晶けっしょう構造こうぞう変化へんかした化学かがく物質ぶっしつ

構成こうせいする原子げんし核種かくしゅことなるものを「同位どういたい」とぶ。同位どういたい化学かがくてき性質せいしつ同一どういつ物性ぶっせいもほとんど同一どういつであるため同位どういたい化学かがく物質ぶっしつちがいとしては通常つうじょう区別くべつしない。放射線ほうしゃせんかんする物性ぶっせいなど特定とくてい用途ようともちいる場合ばあいはどの同位どういたいであるかを区別くべつする。

物質ぶっしつ通常つうじょう巨視的きょしてきには電荷でんかびていない。化学かがく変化へんかにより永続えいぞくてき電荷でんかをもつ原子げんし分子ぶんしを「イオン」とぶ。イオンはせいまけとでイオンたい形成けいせいし、かけじょう電荷でんかびていない状態じょうたい安定あんていしている(高温こうおんにおいて原子核げんしかく分子ぶんしとの結合けつごう乖離かいりした状態じょうたいが「プラズマ」)

物質ぶっしつ基本きほん法則ほうそく

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物質ぶっしつ誕生たんじょう

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物質ぶっしつは、ビッグバンによりはじまったエネルギー形態けいたい分化ぶんかえだの1つをしている。

ビッグバン仮説かせつによれば、ビッグバンによりはじまったエネルギーは、やがて素粒子そりゅうしし、素粒子そりゅうし結合けつごうして原子げんしとなる。宇宙うちゅう初期しょきには水素すいそヘリウムといったもっとかる元素げんそつくられたとかんがえられている。これらのけい元素げんそからなるくも重力じゅうりょく影響えいきょうにより原始げんしぼしつうじて恒星こうせいとなる。よりおもてつ珪素けいそ我々われわれからだ構成こうせいする炭素たんそ窒素ちっそなどの元素げんそ恒星こうせい内部ないぶでのかく融合ゆうごう反応はんのう生成せいせいし、超新星ちょうしんせい爆発ばくはつにより恒星こうせいあいだ空間くうかんにばらまかれた。また、てつよりおも元素げんそ超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ生成せいせいしたとかんがえられている。

物質ぶっしつ消滅しょうめつ

編集へんしゅう

ディラック方程式ほうていしきによれば、物質ぶっしつ構成こうせいするあらゆるスピンかく運動うんどうりょう1/2 の粒子りゅうしたいをなす、はん粒子りゅうし存在そんざいする。電子でんしはん粒子りゅうし陽電子ようでんし陽子ようしはん粒子りゅうしはん陽子ようし中性子ちゅうせいしはん粒子りゅうしはん中性子ちゅうせいしぶ。はん粒子りゅうしは、粒子りゅうしとは符号ふごうぎゃく電荷でんかをもつ。こうしたはん粒子りゅうし構成こうせいされた原子げんしのことをはん物質ぶっしつとよぶ。物質ぶっしつはん物質ぶっしつ衝突しょうとつするとたい消滅しょうめつこし、両者りょうしゃえて、光子こうし中間子ちゅうかんしなどべつ粒子りゅうし変化へんかして放出ほうしゅつされる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Richard Moyer, Lucy Daniel et al. McGRAW-HILL Science Macmillan/McGraw-Hill Edition, 2002, ISBN 0-02-280036-0
  2. ^ ブルーバックス あたらしい高校こうこう化学かがく教科書きょうかしょ現代げんだいじんのための高校こうこう理科りか―, 佐伯さえき健夫たけお, 2006, 株式会社かぶしきがいしゃ講談社こうだんしゃ, ISBN 4062575086
  3. ^ a b c d 大辞泉だいじせん
  4. ^ a b c d e 西洋せいよう思想しそうだい事典じてん vol.4、平凡社へいぼんしゃ 1990 ハロルド・ジョンソン Harold J. Johnson『物質ぶっしつ概念がいねん変遷へんせん』 pp.88
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 西洋せいよう思想しそうだい事典じてん vol.4、平凡社へいぼんしゃ 1990 ハロルド・ジョンソン Harold J. Johnson『物質ぶっしつ概念がいねん変遷へんせん』 pp.88-92
  6. ^ Lee R, Summerlin, Christie L. Borgford, and Julie B. Ealy "Chemical Demonstration", A Sourcebook for Teachers Volume 2, Second Edition, American Chemical Society, 1988
  7. ^ Sarquis and Sarquis, "Modern Chemistry", Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company, 2017
  8. ^ 岩波書店いわなみしょてん広辞苑こうじえん
  9. ^ 竹内たけうち 敬人よしと改訂かいてい 化学かがく基礎きそ東京書籍とうきょうしょせき. 平成へいせい30ねん. ISBN 978-4-48716547-6

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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