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水素 - Wikipedia

水素すいそ

原子げんし番号ばんごう1の元素げんそ

水素すいそ(すいそ、えい: hydrogen: hydrogeniumふつ: hydrogèneどく: Wasserstoff)は、原子げんし番号ばんごう1の元素げんそである。元素げんそ記号きごうH原子げんしりょうは1.00794[1]非金属ひきんぞく元素げんそのひとつである。

- 水素すいそ ヘリウム
-

H

Li
外見がいけん
無色むしょく気体きたい[1]

プラズマ状態じょうたい紫色むらさきいろかがや
一般いっぱん特性とくせい
名称めいしょう, 記号きごう, 番号ばんごう 水素すいそ, H, 1
分類ぶんるい 非金属ひきんぞく
ぞく, 周期しゅうき, ブロック 1, 1, s
原子げんしりょう 1.00794(7) 
電子でんし配置はいち 1s1
電子でんしから 1(画像がぞう
物理ぶつり特性とくせい
いろ 無色むしょく[1]
そう 気体きたい
密度みつど (0 °C, 101.325 kPa)
0.08988[1] g/L
融点ゆうてん 14.01[1] K, −259.14[1] °C
沸点ふってん 20.28[1] K, −252.87[1] °C
三重みえてん 13.8033 K (−259 °C), 7.042 kPa
臨界りんかいてん 32.97 K, 1.293 MPa
融解ゆうかいねつ (H2) 0.117 kJ/mol
蒸発じょうはつねつ (H2) 0.904 kJ/mol
熱容量ねつようりょう (25 °C) (H2) 28.836 J/(mol·K)
蒸気じょうきあつ
圧力あつりょく (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度おんど (K) 15 20
原子げんし特性とくせい
酸化さんかすう 1, −1
(両性りょうせい酸化さんかぶつ)
電気でんき陰性いんせい 2.20(ポーリングの
イオン化いおんかエネルギー 1st: 1312.0 kJ/mol
共有きょうゆう結合けつごう半径はんけい 31±5 pm
ファンデルワールス半径はんけい 120 pm
その
結晶けっしょう構造こうぞう 六方ろっぽうあきらけい
磁性じせい はん磁性じせい[3]
ねつ伝導でんどうりつ (300 K) 0.1805 W/(m⋅K)
おとつたわるはや (gas, 27 °C) 1310 m/s
CAS登録とうろく番号ばんごう 12385-13-6
1333-74-0 (H2)>[2]
おも同位どういたい
詳細しょうさい水素すいそ同位どういたい参照さんしょう
同位どういたい NA 半減はんげん DM DE (MeV) DP
1H 99.985%[1] 中性子ちゅうせいし0安定あんてい
2H 0.015%[1] 中性子ちゅうせいし1個いっこ安定あんてい
3H 微量びりょう 12.4 y[1] βべーた[1] 0.01861 3He

ただし、一般いっぱんてきに「水素すいそ」と場合ばあい元素げんそとしての水素すいそほかにも水素すいそ単体たんたいである水素すいそ分子ぶんし水素すいそガス)H21個いっこ陽子ようしふく原子核げんしかく1個いっこ電子でんしからなる水素すいそ原子げんし水素すいそ原子核げんしかく(ふつう1個いっこ陽子ようしプロトン)などに言及げんきゅうしている可能かのうせいがあるため、文脈ぶんみゃくもとづいて判断はんだんする必要ひつようがある。

名称めいしょう

編集へんしゅう
 
命名めいめいしゃのラヴォアジエ

1783ねんラヴォアジエが「  音声おんせい、イドロジェーヌ(hydrogène)」と命名めいめいした[1]ギリシアの 「δでるたωおめがρろー=『みず』」と 「γεννάν=『む』『つくす』」をわせたかたりで、みずむもの意味いみする[1]英語えいごでは「  音声おんせい、ハイドロジェン(hydrogen)」という。

日本語にほんごの「水素すいそ」は、オランダ  音声おんせい、ワーテルストフ(waterstof)」の意訳いやくである。宇田川うだがわよういた『しゃみつひらけむね』ではじめてもちいられた。ドイツの「  音声おんせい、ヴァッサーシュトフ(Wasserstoff)」もおな構成こうせい複合語ふくごうごである。朝鮮ちょうせんでもおなじく水素すいそハングル:수소   音声おんせい)としょうする。

中国ちゅうごくではその気体きたいとしてのかるさから「けい」のつくりもちいて「」(拼音: qīng   音声おんせい)というがあてられている。

詳細しょうさいは「元素げんそ中国語ちゅうごくご名称めいしょう」を参照さんしょう

1671ねんに、ロバート・ボイルてつまれ硝酸しょうさん反応はんのうさせてしょうじる気体きたい可燃かねんせいであることを記録きろくしている[1]1766ねんヘンリー・キャヴェンディッシュ水素すいそ気体きたいとして分離ぶんりし、発見はっけんした。

量子力学りょうしりきがくにおける役割やくわり

編集へんしゅう

陽子ようし1つと電子でんし1つからなるシンプルな構造こうぞうゆえ、原子げんし構造こうぞうろん発展はってんにおいて水素すいそ原子げんし中心ちゅうしんてき役割やくわりたしてきた。事実じじつ量子力学りょうしりきがく入門にゅうもんとして、水素すいそ原子げんし水素すいそさま分子ぶんしをまずあつか教科書きょうかしょがほとんどである。

水素すいそ宇宙うちゅうでもっとも豊富ほうふ存在そんざいする元素げんそであり、(ダークマターダークエネルギーのぞいた)宇宙うちゅう質量しつりょうの4ぶんの3を[4]総量そうりょうすうではぜん原子げんしの90 %以上いじょうとなる[5]。これらのほとんどはほしあいだガス銀河ぎんがあいだガス恒星こうせいあるいは木星もくせいがた惑星わくせい構成こうせいぶつとして存在そんざいしている。

水素すいそ原子げんし宇宙うちゅう誕生たんじょうしてからやく38まんねん[6]はじめて生成せいせいしたとされている。それまでは陽子ようし電子でんしがバラバラのプラズマ状態じょうたいひかり宇宙うちゅう空間くうかん直進ちょくしんできなかったが、電子でんし陽子ようし結合けつごうすることにより宇宙うちゅう空間くうかん散乱さんらんされずにすすめるようになった。これを「宇宙うちゅうがり」という。

水素すいそスペクトルテスト

宇宙うちゅうにおけるしゅ系列けいれつぼしのエネルギー放射ほうしゃのほとんどはプラズマとなった4水素すいそ原子核げんしかくヘリウムかく融合ゆうごうする反応はんのうによるもので、比較的ひかくてきかるほしでは陽子ようし-陽子ようし連鎖れんさ反応はんのうおもほしではCNOサイクルという過程かていてエネルギーを発生はっせいさせている。水素すいそ原子げんしはいずれのかく融合ゆうごう反応はんのうにおいてもこれをこすになである[7]太陽たいよう組成そせいめる水素すいそ割合わりあいやく73 %[ちゅう 1]である[8][9]

地球ちきゅう表面ひょうめんもと素数そすうでは酸素さんそ珪素けいそいで3番目ばんめおおいが[1]水素すいそ質量しつりょうちいさいため、質量しつりょうパーセントであらわクラークすうでは9番目ばんめとなる[よう出典しゅってん]地球ちきゅう表面ひょうめんもと素数そすうではほとんどは海水かいすい状態じょうたい存在そんざい[1]単体たんたい水素すいそ分子ぶんし状態じょうたいでは天然てんねんガスなかにわずかにふくまれる程度ていどである[よう出典しゅってん]海水かいすいにおける推定すいてい存在そんざいは1 Lあたりに108 g、地球ちきゅう地殻ちかくにおける推定すいてい存在そんざいは1 kgあたり1.4 gであり[10]乾燥かんそう大気たいきにおける構成こうせいは0.55ppmである[11]宇宙うちゅう空間くうかん散逸さんいつする地球ちきゅう大気たいきすくないが、それでも1びょうあたり水素すいそが3 kg、ヘリウムが50 gずつ放出ほうしゅつされている。これは大気たいきうす原子げんし分子ぶんし速度そくど減速げんそくされずに宇宙うちゅうジーンズエスケープ英語えいごばんや、イオン状態じょうたい荷電かでん粒子りゅうし地球ちきゅう磁場じば沿って脱出だっしゅつする現象げんしょうがある。なお、加熱かねつされた粒子りゅうしがまとまって流出りゅうしゅつするハイドロダイナミックエスケープ英語えいごばん太陽たいようふうスパッタリング現在げんざい地球ちきゅうではきていないが、地球ちきゅう誕生たんじょう直後ちょくごはこの作用さようによって水素すいそ大量たいりょう散逸さんいつしたとかんがえられる[12]

固有こゆう磁場じばたない金星かなぼしは、現在げんざいでもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングがつづき、地表ちひょうには比較的ひかくてきおもいためのこった酸素さんそ炭素たんそつく二酸化炭素にさんかたんそ大気たいきのほとんどをめ、みずがない非常ひじょう乾燥かんそうした状態じょうたいにある。火星かせいかる水素すいそ中心ちゅうしん散逸さんいつし、かろうじてこおりとなったみずごく部分ぶぶん土中どちゅうのこるにとどまる[12]

同位どういたい

編集へんしゅう
 
水素すいそ同位どういたい原子げんし左端ひだりはしからそれぞれ水素すいそ重水素じゅうすいそ三重みえ水素すいそちゅうあかまる陽子ようしくろまる中性子ちゅうせいしあおまる電子でんしあらわしている。

質量しつりょうすうが2(原子核げんしかく陽子ようし1つと中性子ちゅうせいし1つ)の重水素じゅうすいそ2H)、質量しつりょうすうが3(原子核げんしかく陽子ようし1つと中性子ちゅうせいし2つ)のさん重水素じゅうすいそ3H)とう区別くべつして、質量しつりょうすうが1(原子核げんしかく陽子ようし1つのみ)の普通ふつう水素すいそ1H)をけい水素すいそともぶ。

 
水素すいそのもっとも一般いっぱんてき同位どうい元素げんそであるプロチウムは、1つの陽子ようしおよび1つの電子でんし原子げんし安定あんていしている同位どうい元素げんそなかでは、唯一ゆいいつ中性子ちゅうせいしをまったくっていないのが特徴とくちょうである。

天然てんねん水素すいそには、水素すいそけい水素すいそ、プロチウム)1H重水素じゅうすいそ 2H (デュウテリウム、ジューテリウム[13]略号りゃくごうD)、さん重水素じゅうすいそ 3H (トリチウム、略号りゃくごうT)の3つの同位どういたいられている[1]。このうち、もっともかる1H は、1つの陽子ようしと1つの電子でんしのみによって構成こうせいされており、原子げんしなか中性子ちゅうせいしたない核種かくしゅの1つである。存在そんざい確認かくにんされているなかでほかに中性子ちゅうせいしたない核種かくしゅリチウム3のみである。それぞれの同位どういたい質量しつりょうが2ばい、3ばいとなり、性質せいしつちがいもおおきい。たとえばD2はH2よりも融点ゆうてん沸点ふってんたかくなり、溶融ようゆう潜熱せんねつばいちかくに、蒸気じょうきあつは10ぶんの1ちかくとなる[14]。2013ねん現在げんざい、よりおも同位どういたい水素すいそ4から水素すいそ7までが確認かくにんされている。もっともおも水素すいそ7原子核げんしかく陽子ようし1、中性子ちゅうせいし6よりなる)はヘリウム8けい水素すいそ衝突しょうとつさせることで合成ごうせいされている。質量しつりょうすうが4以上いじょうのものは寿命じゅみょうがきわめてみじかく、たとえば水素すいそ7では半減はんげん23 ys(= 2.3×10−23 s)ほどしかない[15]

 
水素すいそ原子げんしにおける電子でんし軌道きどうエネルギー固有こゆう関数かんすうである。

水素すいそ同位どういたいは、それぞれの特徴とくちょう有効ゆうこうかした使つかかたをされる。重水素じゅうすいそ原子核げんしかく反応はんのうでの用途ようとで、中性子ちゅうせいし減速げんそく使用しようされ、化学かがく生物せいぶつがくでは同位どういたい効果こうか研究けんきゅう医療いりょうでは診断しんだんやく追跡ついせき[13]使用しようされている。また、さん重水素じゅうすいそ原子げんしうち生成せいせいされ、水素すいそばくだん反応はんのう物質ぶっしつかく融合ゆうごう燃料ねんりょう放射ほうしゃせい利用りようしたバイオテクノロジー分野ぶんやでのトレーサー発光はっこう塗料とりょう励起れいきげんとして使用しようされている。

水素すいそ分子ぶんし

編集へんしゅう
 
水素すいそせんスペクトルれいバルマー系列けいれつばれる。

水素すいそ分子ぶんしは、常温じょうおんつねあつでは無色むしょく無臭むしゅう気体きたいとして存在そんざいする、分子ぶんししき H2あらわされる単体たんたいである。分子ぶんしりょう2.01588、融点ゆうてん −259.14 °C(つねあつ)、沸点ふってん −252.87 °C(つねあつ)、密度みつど 0.0899 g/L比重ひじゅう 0.0695(空気くうきを 1 として)、臨界りんかい圧力あつりょく 12.80 気圧きあつみずへの溶解ようかい 0.021 mL/mL(0 °C)。もっとかる気体きたいである。原子げんしあいだ距離きょり74 pm結合けつごうエネルギーはおよそ 435 kJ/mol[2]

水素すいそ分子ぶんし常温じょうおんでは安定あんていであり、フッ素ふっそ以外いがいとは化学かがく反応はんのうをまったくこさない。しかしなにかしらの外部がいぶ要因よういんがあればそのかぎりではなく、たとえばひかりがある状態じょうたいでは塩素えんそはげしい反応はんのうこす[14][2]。また、水素すいそ酸素さんそ混合こんごうしたものにをつけるときるはげしい爆発ばくはつ水素すいそばく)は、混合こんごう下限かげんは4.65 %、上限じょうげんは93.3 %であり、空気くうきとの混合こんごうでは4.1 – 74.2 %となり、これはアセチレンひろ爆発ばくはつ限界げんかい範囲はんい[2]

ガス密度みつどひく水素すいそはや速度そくど拡散かくさんする性質せいしつち、また燃焼ねんしょう伝播でんぱはやい。そのため、ガスれをこしやすい傾向けいこうにある[2]原子げんしみちちいささから、金属きんぞく材料ざいりょう侵入しんにゅう機械きかいてき特性とくせい低下ていかさせる(水素すいそもろ傾向けいこうつよい。これは高温こうおんだかあつ環境かんきょう顕著けんちょとなり、封入ふうにゅう容器ようき材質ざいしつには注意ちゅういはら必要ひつようがある。−250 °C以下いか液化えきかさせると体積たいせきは 800ぶんの1となり、さらにかるいため低温ていおん貯蔵ちょぞうせいにはすぐれる[16]

ガス惑星わくせい内部ないぶなど非常ひじょうたか圧力あつりょくでは性質せいしつわり、液状えきじょう金属きんぞくになるとかんがえられている。ぎゃく宇宙うちゅう空間くうかんなど非常ひじょう圧力あつりょくひく場合ばあい、H2+H3+単独たんどく水素すいそ原子げんしなどの状態じょうたい観測かんそくされている。H2分子ぶんし形状けいじょうくもほし形成けいせいなどに関係かんけいがあるとかんがえられており、とく新生しんせい惑星わくせい衛星えいせい観察かんさつにはそれを注視ちゅうしすることがおおい。

オルト水素すいそとパラ水素すいそ

編集へんしゅう

水素すいそ分子ぶんしは、それぞれの原子核げんしかくプロトン)のかくスピン配向はいこうにより、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類しゅるい異性いせいたい存在そんざいする[14]。オルト水素すいそは、たがいの原子核げんしかくのスピンのきが平行へいこうで、パラ水素すいそではスピンのきがはん平行へいこうである。この2つは、化学かがくてき性質せいしつちがいがないが、物理ぶつりてき性質せいしつ比熱ひねつねつ伝導でんどうりつなど)がかなりことなる。これは内部ないぶエネルギーにあるによるもので、パラ水素すいそがわひく[14]統計とうけいてきおもみがおおきいほうをオルトとぶ。

常温じょうおん以上いじょうでは、オルト水素すいそとパラ水素すいそ存在そんざいはおよそ3:1であるが、低温ていおんになるほどパラ水素すいそ存在そんざいし、絶対ぜったいれい付近ふきんではほぼ100パーセントパラ水素すいそとなる[14]。ただし、このオルト-パラ変換へんかんはスピン反転はんてんともなうために、触媒しょくばいもちいない場合ばあいきわめておそく、触媒しょくばいもちいずに水素すいそ液化えきかすると、液化えきかしたのちもオルト-パラ変換へんかんともな両者りょうしゃのエネルギー相当そうとうするねつ発生はっせいするため、液化えきか水素すいそ気化きかしてしまう。これを水素すいそのボイル・オフ問題もんだいという。[17]オルト‐パラ変換へんかんこす触媒しょくばいは、活性炭かっせいたんてつなどの金属きんぞく一部いちぶつね磁性じせい物質ぶっしつまたはイオンなどがある[14]

金属きんぞく水素すいそ

編集へんしゅう

水素すいそは、ガス惑星わくせい内部ないぶなど非常ひじょうたか圧力あつりょくでは性質せいしつわり、液状えきじょう金属きんぞくになるとかんがえられているが、1996ねんローレンス・リバモア国立こくりつ研究所けんきゅうじょのグループが、140 GPa(1 GPa = やく1まん気圧きあつ)、すうせん°Cという状態じょうたいで、100まんぶんの1びょう以下いかというたん寿命じゅみょうではあるが、液体えきたい金属きんぞく水素すいそ観測かんそくしたと報告ほうこくしている[18][19]木星もくせいがた惑星わくせい木星もくせい土星どせい)の深部しんぶ非常ひじょうたか圧力あつりょくになっており、液体えきたい金属きんぞく水素すいそ観測かんそくされた条件じょうけんている。木星もくせいがた惑星わくせい構成こうせいするもっとも主要しゅよう元素げんそのひとつである水素すいそは、この状況じょうきょうでは金属きんぞくしている可能かのうせいがあり、惑星わくせい磁場じばとのかかわりも指摘してきされている[20]。しかしながら、2017ねん現在げんざいすうひゃくGPaのオーダーで圧力あつりょくくわえる実験じっけんおこなわれているものの、固体こたい金属きんぞく水素すいそられたという十分じゅうぶん証拠しょうこしめされたことはない[21][22][ちゅう 2]

金属きんぞくそのものが達成たっせいされていないためにその真偽しんぎはいまだ不明ふめいであるが、Ashcroft (1968, p. 1748) は、金属きんぞくした水素すいそ室温しつおんちょう伝導でんどう達成たっせいするのではないかと予想よそうしている。この可能かのうせい傍証ぼうしょうとして、周期しゅうきひょう水素すいそのすぐリチウムは、30 GPa以上いじょうというちょう高圧こうあつちょう伝導でんどう状態じょうたいとなることがしめされている。リチウムのちょう伝導でんどうへの転移てんい温度おんど圧力あつりょく48 GPaで20 K程度ていどであるが、この数字すうじ単体たんたい元素げんそのものとしてはたか部類ぶるいはいり、いくつかの例外れいがいのぞけば一般いっぱんかる元素げんそほど転移てんい温度おんどたかくなるため、もっともかる元素げんそである水素すいそは、よりたか転移てんい温度おんど可能かのうせい十分じゅうぶんある。

また、励起れいき状態じょうたい水素すいそ金属きんぞくするときわめて強力きょうりょく爆薬ばくやくになるとの理論りろん計算けいさんおこなわれ、電子でんし励起れいき爆薬ばくやくとして研究けんきゅうされている。この理論りろんでは圧力あつりょくだけでは不十分ふじゅうぶんであり、水素すいそ励起れいき状態じょうたいにして圧力あつりょくをかければ金属きんぞくするとしている。

物理ぶつりてき性質せいしつ

編集へんしゅう
 
水素すいそようのボンベ(火災かさいちかづくと危険きけん
 
水素すいそはいった風船ふうせん爆発ばくはつした瞬間しゅんかん

元素げんそおよびガスじょう分子ぶんしなかでもっともかる[2]、また宇宙うちゅうでもっともかずおお[1]珪素けいそりょうを106としたさい比率ひりつは2.79×1010である。[24]地球ちきゅうじょうではみず有機ゆうき化合かごうぶつ構成こうせい要素ようそとして存在そんざいする。

水素すいそ分子ぶんし常温じょうおんつねあつでは無色むしょく無臭むしゅう気体きたいで、非常ひじょうかるく、非常ひじょう燃焼ねんしょう爆発ばくはつしやすいといった特徴とくちょうつ。そのため日本にっぽんでは、こうあつガス保安ほあんほう容器ようき保安ほあん規則きそくにより、赤色あかいろボンベ保管ほかんするようにめられている[2]従来じゅうらい水素すいそガスの爆発ばくはつ濃度のうどは4 % – 75 %であるとされてきたが[25]慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく環境かんきょう情報じょうほう学部がくぶ武藤むとうけいきょうは、10 %以下いかであれば爆発ばくはつしないことをあきらかとした[26]

化学かがくてき性質せいしつ

編集へんしゅう

水素すいそ化物ばけもの

編集へんしゅう
元素げんそ水素すいそ化物ばけもの
化学かがくしき IUPAC組織そしきめい[27] 慣用かんようめい
BH3 ボラン 水素すいそホウ素ほうそ
CH4 カルバン メタン
NH3 アザン アンモニア
H2O オキシダン みず
HF フッ水素すいそ
AlH3 アラン 水素すいそアルミニウム
SiH4 シラン 水素すいそケイ素けいそ
PH3 ホスファン ホスフィン
水素すいそリン
H2S スルファン 硫化りゅうか水素すいそ
HCl 塩化えんか水素すいそ
GaH3 ガラン 水素すいそガリウム
GeH4 ゲルマン 水素すいそゲルマニウム
AsH3 アルサン アルシン

水素すいそヒ素ひそ

H2Se セラン セレン水素すいそ
HBr におい水素すいそ
SnH4 スタナン 水素すいそスズ
SbH3 スチバン スチビン

水素すいそアンチモン

H2Te テラン テルル水素すいそ
HI ヨウ水素すいそ
PbH4 プルンバン 水素すいそなまり
BiH3 ビスムタン ビスムチン

水素すいそビスマス

水素すいそ電気でんき陰性いんせいが2.2とアルカリ金属きんぞくアルカリるい金属きんぞくよりもたかハロゲンよりもちいさいであり、酸化さんかざいとしても還元かんげんざいとしてもはたらく。このため非金属ひきんぞく元素げんそとも金属きんぞく元素げんそとも親和しんわしやすい。たとえば、水素すいそ酸素さんそ化合かごうするときには還元かんげんざいとしてはたらき、爆発ばくはつてき燃焼ねんしょうとともにみずH2Oをしょうじる。ナトリウムと水素すいそとの反応はんのうでは酸化さんかざいとしてはたらき、水素すいそナトリウムNaHをしょうじる。このような水素すいそとほかの元素げんそ化合かごうした物質ぶっしつ水素すいそ化物ばけものという[28]

水素すいそ化物ばけもの結合けつごうには、イオン結合けつごうかた共有きょうゆう結合けつごうかたのほかに、パラジウム水素すいそ化物ばけものなどの侵入しんにゅうがた固溶体こようたい侵入しんにゅうがた化合かごうぶつ)とばれる3種類しゅるい形態けいたいがある[28]。イオン結合けつごうがた化合かごうぶつなかでは、水素すいそはHイオン(ヒドリドイオン)として存在そんざいする。共有きょうゆう結合けつごうがた電気でんき陰性いんせいたかPブロック元素げんそ電子でんし共有きょうゆうして化合かごうする[28]侵入しんにゅうがた固溶体こようたい一種いっしゅ合金ごうきんであり、水素すいそ原子げんし金属きんぞく原子げんし隙間すきまにはまりむように存在そんざいしている。このため、容易たやすかつ可逆かぎゃくてき水素すいそ吸収きゅうしゅう放出ほうしゅつすることができ、水素すいそ吸蔵合金ごうきん利用りようされる。高性能こうせいのう水素すいそ吸蔵合金ごうきんなかには、水素すいそ原子げんし密度みつど液体えきたい水素すいそのそれに匹敵ひってきしたり、上回うわまわるものもある。

一方いっぽう、より電気でんき陰性いんせいおおきい元素げんそとの化合かごうぶつでは水素すいそはH+イオンとなる。水中すいちゅう水素すいそイオンをしょうじる物質ぶっしつ狭義きょうぎさんである。水溶液すいようえきちゅうでは水素すいそイオンは、H+(ヒドロン)ではなく、水分すいぶん結合けつごうしてH3O+オキソニウムイオン) としてう。

水素すいそはまた、炭素たんそ結合けつごうすることで、さまざまな有機ゆうき化合かごうぶつ形成けいせいする。ほとんどすべての有機ゆうき化合かごうぶつ構成こうせい原子げんし水素すいそふくむ。

水素すいそふく有機ゆうき化合かごうぶつれい

おもな元素げんそ水素すいそ化物ばけもの化学かがくしき国際こくさい純正じゅんせい応用おうよう化学かがく連合れんごう(IUPAC)による組織そしきめい、および(存在そんざいするものは)慣用かんようめいひょう元素げんそ水素すいそ化物ばけもの」にしめす。

かく磁気じき共鳴きょうめいほうにおける利用りよう

編集へんしゅう

分子ぶんし構造こうぞう研究けんきゅう非常ひじょうによく利用りようされるかく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこうほう(NMR)において、1Hをもちいた方法ほうほう代表だいひょうてきである。1Hはすべての核種かくしゅなかもっとつよ特異とくい吸収きゅうしゅうしめすうえ、水素すいそはほとんどすべての有機ゆうき化合かごうぶつふくまれることもあり、NMRにおいてよく利用りようされる。周囲しゅうい原子げんし電子でんしから影響えいきょうける結果けっか吸収きゅうしゅうされる周波数しゅうはすう変化へんかする(化学かがくシフト)ため、原子げんし相対そうたい位置いち推測すいそくする有力ゆうりょく手掛てがかりとなる。

水素すいそイオンと水素すいそ化物ばけものイオン

編集へんしゅう

水素すいそイオンには、イオンである水素すいそイオン(hydron、ヒドロンまたはハイドロン)と、かげイオンの水素すいそ化物ばけものイオン(hydride、ヒドリドまたはハイドライド)とが存在そんざいする。1H+はプロトン(陽子ようし)そのものであるが、一般いっぱん水素すいそ同位どういたい混合こんごうぶつなので、水素すいそイオンにたいする呼称こしょうとしてはヒドロンが正確せいかくである(すなわちヒドロンは H+D+T+総称そうしょうである)。しかし、化学かがく領域りょういきにおいてたんに「プロトン」とさい水素すいそイオンをししているとかんがえてつかえはない。

水素すいそイオンの濃度のうど[H+]酸性さんせい定量ていりょうてきあらわ指標しひょうとしてもちいられ、mol/L(モルごとリットル)単位たんいあらわした水素すいそイオンの濃度のうど数値すうち対数たいすう負号ふごうをつけた水素すいそイオン指数しすう(pH)であらわす。水中すいちゅうの[H+]濃度のうどは1から10−14mol/L程度ていどひろ範囲はんいり、pHでは0 – 14 程度ていどとなる。常温じょうおん中性ちゅうせいみずにはやく10−7mol/Lの水素すいそイオンが存在そんざいし、pHはやく7となる[1]

ヒドロン・プロトンとヒドロニウムイオン

編集へんしゅう

H+であれ D+であれ、ヒドロンは電子でんしからたないむきしの原子核げんしかくであるため、化学かがくてきにはファンデルワールス半径はんけいたないせいてん電荷でんかのようにう。それゆえ通常つうじょう単独たんどく存在そんざいせず、溶媒ようばいなどほかの分子ぶんし電子でんしから結合けつごうしたヒドロニウムイオン(hydronium ion)として存在そんざいする。水素すいそイオン化いおんかエネルギーは1131 kJ/mol、遊離ゆうり状態じょうたい水素すいそイオンのみずエネルギーは1091 kJ/molと見積みつもられており[28]、これはたか電子でんし密度みつど起因きいんする、水分すいぶんとのたか親和力しんわりょくしめすものである。

 

極性きょくせい溶媒ようばいちゅうでは、みずアルコールエーテルなどの酸素さんそ原子げんし電子でんしから結合けつごうしている場合ばあいおおいため、ヒドロニウムイオンとわりにオキソニウムイオン(oxonium ion)とばれることもおおい。あるいはちょう強酸きょうさんなど極限きょくげん状態じょうたいにおいては単独たんどく挙動きょどうするプロトン観測かんそくされている。

また、アレニウスの定義ていぎではヒドロンはさん本体ほんたいである。さんとしてのプロトンの性質せいしつ記事きじオキソニウム、あるいは記事きじさん塩基えんきくわしい。

ヒドリド
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 12184-88-2[31]
PubChem 166653
ChemSpider 145831  
E番号ばんごう E949 (その)
国連こくれん/北米ほくべい番号ばんごう 1409
ChEBI
Gmelin参照さんしょう 14911
特性とくせい
化学かがくしき H
モル質量しつりょう 1.00794
ねつ化学かがく
標準ひょうじゅんモルエントロピー So 108.96 J K−1 mol−1
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

ヒドリド別名べつめい水素すいそ化物ばけものイオン、ヒドリドイオン[32][33][34]えい: hydrideえい: hydrogen anion化学かがく記号きごうHとも表記ひょうきされる)は、アルカリ金属きんぞく、アルカリるい金属きんぞくあるいはだい13ぞく、14ぞく元素げんそ共有きょうゆう結合けつごうせいつよい)などの、電気でんきてき陽性ようせい元素げんそ水素すいそ化物ばけもの電離でんりするとき生成せいせいする水素すいそかげイオン(アニオン)。ヒドリドはKからが閉殻した電子でんし配置はいちヘリウムとう電子でんしてきであるために、一定いっていおおきさをったイオンとしててんでヒドロン(水素すいそカチオン)とはことなる。実際じっさい、ヒドリドはフッ素ふっそアニオンよりもイオン半径はんけいおおきいようにう。

ヒドリドはきわめてよわさんでもある水素すいそ分子ぶんしpKa=35)の共役きょうやく塩基えんきであるので、つよ塩基えんきとしてう。

ヒドリドは塩基えんきとして作用さようする場合ばあい還元かんげんざいとして作用さようする場合ばあいがある。これをヒドリド還元かんげんというが、それは金属きんぞく還元かんげんける化合かごうぶつとのわせにより変化へんかする。ヒドリドの標準ひょうじゅん酸化さんか還元かんげん電位でんいは−2.25Vと見積みつもられている。

 

ヒドリドの発生はっせいげんとしては、代表だいひょうてきなものとしてNaBH4やLiAlH4(通称つうしょうLAH)がある。これらの化合かごうぶつのBH4やAlH4からはHだつはなれする。この反応はんのう有機ゆうき合成ごうせいとき非常ひじょう便利べんりであり、たとえば、炭素たんそあいだじゅう結合けつごうたいしてはんマルコフニコフ付加ふかほどこしたいとき有効ゆうこうである。

周期しゅうきひょうじょう位置いち

編集へんしゅう

一般いっぱんてき周期しゅうきひょうでは水素すいそはアルカリ金属きんぞくうえ配置はいちされるが、2006ねん周期しゅうきひょうにおける水素すいそ位置いち変更へんこうすべきではないか[ちゅう 3]とする論文ろんぶん国際こくさい純正じゅんせい応用おうよう化学かがく連合れんごう(IUPAC)に提出ていしゅつされ、公式こうしき雑誌ざっし掲載けいさいされた[35][ようページ番号ばんごう]

水素すいそ分子ぶんし生産せいさん

編集へんしゅう

工業こうぎょうてきには、炭化たんか水素すいそ水蒸気すいじょうきあらためしつ部分ぶぶん酸化さんかふく生成せいせいぶつとして大量たいりょう生産せいさんされる(炭化たんか水素すいそガス分解ぶんかいほう)。硫黄いおう酸化さんかぶつのぞいたパラフィンるいエチレンプロピレンなどを440 °Cの環境かんきょうニッケル触媒しょくばいとしながら水蒸気すいじょうき反応はんのうさせ、ガスを[2]

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ふくされる一酸化いっさんか炭素たんそ水蒸気すいじょうき反応はんのうして二酸化炭素にさんかたんそ水素すいそガスとなる。のちにガーボトールほうにて二酸化炭素にさんかたんそ除去じょきょし、水素すいそガスがられる[2]ガスの精製せいせいには、圧縮あっしゅくしたうえで苛性かせいソーダ洗浄せんじょうおこない、ねつ交換こうかんにておもいガスるい液化えきか除去じょきょする方法ほうほう液化えきか窒素ちっそ洗浄せんじょうほう)もある[2]

また、ソーダ工業こうぎょう製塩せいえんぎょうにおいて海水かいすい電気でんき分解ぶんかい英語えいごばんふく生品なましなとして発生はっせいする水素すいそ利用りようされることもある。現在げんざいのところ、水素すいそガスはメタン主成分しゅせいぶんとする天然てんねんガスみずから、触媒しょくばいもちいた水蒸気すいじょうきあらためしつによって生産せいさんする方法ほうほう主流しゅりゅうである。日本にっぽん国内こくないにおける2019ねん水素すいそ生産せいさんりょう627668×103 m3工業こうぎょう消費しょうひりょう400802×103 m3である[36]

水素すいそ分子ぶんし水素すいそガス)をしょうじる化学かがく反応はんのう多岐たきにわたる。古典こてんてきには実験じっけんしつにおいて小規模しょうきぼ生成せいせいする場合ばあい亜鉛あえんアルミニウムなど水素すいそよりもイオン化いおんか傾向けいこうおおきい金属きんぞくまれ硫酸りゅうさんくわえて発生はっせいさせる方法ほうほうられている(キップの装置そうち)。あるいは水酸化すいさんかナトリウム硫酸りゅうさんなどを添加てんかして電導でんどうせいしたみずや、しょく塩水えんすい電気でんき分解ぶんかいして陰極いんきょくから発生はっせいさせることもできる。

実験じっけんしつレベルにおいては工業こうぎょうてき生産せいさんされたガスボンベりの水素すいそガスを利用りようする。実験じっけんさいぼうばく環境かんきょうにておこなわれる。

製造せいぞう方法ほうほうべつ色分いろわ

編集へんしゅう

カーボンニュートラル実現じつげんけ、水素すいそ製造せいぞう方法ほうほうべつ色分いろわけするかんがかたひろまっている[37]

グレー水素すいそ化石かせき燃料ねんりょうおも天然てんねんガス)を水蒸気すいじょうきあらためしつ反応はんのうさせ生産せいさんする水素すいそ水蒸気すいじょうきあらためしつ反応はんのう副産物ふくさんぶつとしておおくの二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつされる[38][39][37]

ブルー水素すいそ水蒸気すいじょうきあらためしつ反応はんのう問題もんだいてんである水素すいそ製造せいぞう排出はいしゅつされる副産物ふくさんぶつ二酸化炭素にさんかたんそ回収かいしゅうして処理しょり(地下ちか地層ちそう貯蔵ちょぞうないしは炭素たんそさい利用りよう:CCUS、など)し、大気たいきちゅう放出ほうしゅつしないことで、二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつ実質じっしつゼロにして生産せいさんされる水素すいそ[38][39][37]。しかし、回収かいしゅう貯蔵ちょぞうのためにはだい規模きぼ施設しせつ必要ひつようであり、オンサイトがた水素すいそステーションごと設置せっちするとなると費用ひようがかかりぎてしまう問題もんだいがある[37]

グリーン水素すいそ二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつのない再生さいせい可能かのうエネルギーを使つかい、みず電気でんき分解ぶんかいして生産せいさんする水素すいそ[38][39][37]

ターコイズ水素すいそ:メタンのねつ分解ぶんかいによって生成せいせいされる水素すいそ炭素たんそ気体きたいではなく固体こたいとして生産せいさんされるため、二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつされない。再生さいせい可能かのうエネルギーの利用りようと、生成せいせいされた炭素たんそ永久えいきゅうふうめることが条件じょうけんとなる[38][39][37]

イエロー水素すいそ原子力げんしりょく発電はつでん電力でんりょくもちいて、みず電気でんき分解ぶんかいして生産せいさんされる水素すいそ[39][37]

ブラウン水素すいそ石炭せきたんから生産せいさんされる水素すいそ製造せいぞうおおくの二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつされる。グレー水素すいそ分類ぶんるいされることもある[39]

ホワイト水素すいそ水素すいそ以外いがい製品せいひん生産せいさん副産物ふくさんぶつとして生成せいせいされた水素すいそ生産せいさん限定げんていてき[39][37]

 
スペースシャトルメインエンジン。1げるには150まんリットルの液体えきたい水素すいそ使つかわれる[40]

代表だいひょうてき用途ようと

編集へんしゅう

[41] Pininfarina H2 Speedなどのスポーツカーにも使用しようされる。

上記じょうきべたように、水素すいそガスの生産せいさん原料げんりょう化石かせき燃料ねんりょう依存いぞんしており、水蒸気すいじょうきあらためしつにより発生はっせいする一酸化いっさんか炭素たんそなどのうち化成かせいひん利用りようされない過剰かじょうぶん燃料ねんりょうとして利用りようされる炭化たんか水素すいそ二酸化炭素にさんかたんそとして環境かんきょうちゅう放出ほうしゅつされる。水素すいそ原料げんりょう化石かせき燃料ねんりょうであるかぎりにおいては、水素すいそ化石かせき燃料ねんりょう代替だいたいとして利用りようしてもそのまま化石かせき燃料ねんりょう消費しょうひりょう削減さくげんされたり二酸化炭素にさんかたんそ発生はっせいおさえられたりすることにはならない。

  • 浮揚ふようガス - 1 Lの水素すいそめた風船ふうせんは1.2 g質量しつりょう浮揚ふようさせる[1]。この性質せいしつから気球ききゅう飛行船ひこうせんなどにもちいられていたが、ヒンデンブルクごう爆発ばくはつ事故じこきて以来いらい危険きけんせいすくないヘリウム代用だいようされるようになった。なお、この事故じこ直接的ちょくせつてき原因げんいん外皮がいひ塗料とりょうへの引火いんかとされている。
  • 冷却れいきゃくざい - 液体えきたい水素すいそちょう伝導でんどう現象げんしょうふく低温ていおんがく調査ちょうさ使用しようされる。また、一部いちぶ発電はつでんしょでは、水素すいそガスを冷却れいきゃく媒体ばいたいとしてもちいている発電はつでんもある。これは空気くうきよりもねつ伝導でんどうりつが7ばいたか[1]ふうそんすくないためである。水素すいそガスがれないようにするため、水素すいそガス圧力あつりょくよりもたか圧力あつりょくあぶらなが遮蔽しゃへいしなければならないという作業さぎょう発生はっせいする。
  • 洗浄せんじょう - 工業こうぎょう分野ぶんやでは、半導体はんどうたい洗浄せんじょうRCA洗浄せんじょう主流しゅりゅうで、アンモニア塩酸えんさんフッ化物ばけものもちいられるが、その代替だいたいとして水素すいそみずかしんだ水溶液すいようえき排水はいすい処理しょりめん環境かんきょう負荷ふかひく[44]半導体はんどうたい基板きばん表面ひょうめん微粒子びりゅうし除去じょきょ洗浄せんじょうもちいられる[45]
  • 溶接ようせつ - 水素すいそ分子ぶんしをいったん2つの水素すいそ原子げんし解離かいりさせ、それをさい結合けつごうさせると多量たりょうねつ発生はっせいする。これを利用りようした金属きんぞく溶接ようせつほうがある[14]
  • その - テクニカルダイビング軍隊ぐんたいなどでだい深度しんど潜水せんすい使用しようこころみられたが、同時どうじ酸素さんそもちいられるために爆発ばくはつ可能かのうせい使用しようちゅうにつきまとうなど、危険きけんであるため使用しようされていない。
  • 標準ひょうじゅん水素すいそ電極でんきょく標準ひょうじゅん電極でんきょく電位でんい基準きじゅんとしてもちいられている。

エネルギー利用りよう

編集へんしゅう

水素すいそ燃焼ねんしょうするとみず水蒸気すいじょうき)となり、温室おんしつ効果こうかガスとされる二酸化炭素にさんかたんそ大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ排出はいしゅつしない。現状げんじょうでは、化石かせき燃料ねんりょう使つかって製造せいぞうしているものの、将来しょうらいてきには、みず電気でんき分解ぶんかいバイオマスごみなどを利用りようすることにより、化石かせき燃料ねんりょうによらないで製造せいぞうできる可能かのうせいがある。このため、将来しょうらいせいたかエネルギーの輸送ゆそうおよび貯蔵ちょぞう手段しゅだんとして期待きたいされる[16]

水素すいそはさまざまな利用りようほうかんがえられている。燃焼ねんしょう直接ちょくせつ使つか方法ほうほうとしては水素すいそ自動車じどうしゃげられるほか、火力かりょく発電はつでん燃料ねんりょう水素すいそぜて二酸化炭素にさんかたんそなどをらす技術ぎじゅつ研究けんきゅうされている[46]

水素すいそわば「電池でんち」として利用りようすることもかんがえられている。なまり蓄電池ちくでんちリチウム電池でんちNAS電池でんちなど、比較的ひかくてきおおきな容量ようりょう充電じゅうでん可能かのう電池でんちがいろいろと開発かいはつされてきたものの、それでも電気でんきエネルギーはめておくのが比較的ひかくてき困難こんなんなエネルギーとしてられている。そこで、必要ひつよう以上いじょう電力でんりょくられるときにみず電気でんき分解ぶんかいして生産せいさんした水素すいそ貯蔵ちょぞうし、電力でんりょく必要ひつようとなったとき貯蔵ちょぞうしておいた水素すいそ使つかって発電はつでんおこなうのである。必要ひつよう以上いじょう電力でんりょくられるときにみずをポンプでげてみず位置いちエネルギーとして電気でんきエネルギーをめる揚水ようすい発電はつでんはすでに実用じつようされているが、それと同様どうよう電力でんりょく需要じゅようのピーク対応たいおうする手法しゅほうのひとつとして水素すいそ利用りようできる。

ほかにも太陽光たいようこう発電はつでん風力ふうりょく発電はつでんといった発電はつでんほうのように、発電はつでんりょう比較的ひかくてき自然しぜん条件じょうけん左右さゆうされやすいものの、十分じゅうぶん発電はつでんりょうられるときにみず電気でんき分解ぶんかいおこなって水素すいそ貯蔵ちょぞうするという方法ほうほうで、これらの発電はつでんりょう不安定ふあんていさを解消かいしょうする方法ほうほうかんがえられている。

また、水素すいそ電力でんりょく輸送ゆそう手段しゅだんとして利用りようすることもかんがえられている。長距離ちょうきょり送電そうでんおこなうと送電そうでんせん抵抗ていこうなどの関係かんけい送電そうでんによるエネルギーの損失そんしつ送電そうでんロス)がおおくなる。しょう水力すいりょく発電はつでん火力かりょく発電はつでん比較的ひかくてき低温ていおん熱源ねつげん利用りようした発電はつでんほうなどのように、電力でんりょく需要じゅようおお都市としちかくに発電はつでんしょ立地りっちできる場合ばあい送電そうでんロスの問題もんだいもあまりない。しかし、必要ひつようおうじて変圧へんあつおこなうなど送電そうでんロスをすくなくする工夫くふうおこなわれているものの、2011ねん時点じてんでは送電そうでんロスなしに長距離ちょうきょり送電そうでんする手法しゅほう実用じつようされていない。このためいわゆる自然しぜんエネルギーを利用りようした発電はつでんほうかぎらず、あらゆるエネルギーを利用りようした発電はつでんほうにおいて電力でんりょく供給きょうきゅう需要じゅようとがはなれている場合ばあいには、どうしても送電そうでんロスの問題もんだいけられない。ここで水素すいそとして輸送ゆそうすれば、水素すいそがさなければ輸送ゆそうちゅう水素すいそのロスは発生はっせいしない。ただし水素すいそ輸送ゆそうする手段しゅだんによって消費しょうひされるエネルギー(たとえば自動車じどうしゃ輸送ゆそうすれば燃料ねんりょう消費しょうひされる)もあるため、どうしてもエネルギーのロスは発生はっせいしてしまうという問題もんだいのこる。また、水素すいそから電気でんきもどさいにもエネルギーロスが発生はっせいする。ただし、このロスは、ねつとして利用りようできる。

最近さいきんではマグネシウムみず反応はんのうさせて水素すいそつく方法ほうほう開発かいはつされている。マグネシウムとみず反応はんのうして発生はっせいする水素すいそのほか、反応はんのうねつもエネルギーげんとして利用りようできる。最大さいだい課題かだい使用しようのマグネシウムの還元かんげん処理しょりで、太陽光たいようこうなどから変換へんかんしたレーザー照射しょうしゃによる高温こうおんにより還元かんげんする方法ほうほうかんがえられている。ほかに燃料ねんりょう電池でんち燃料ねんりょうとしての水素すいそ利用りようはよくられているが、コンバインドサイクル発電はつでんなどに利用りようすることもかんがえられている。

燃料ねんりょう電池でんち

編集へんしゅう
 
燃料ねんりょう電池でんちしゃトヨタ・MIRAI

空気くうきちゅう酸素さんそ反応はんのうさせてみず生成せいせいしながら発電はつでんする水素すいそ酸素さんそがた燃料ねんりょう電池でんち19世紀せいきなかごろには実験じっけんてき成功せいこうしたが、生活せいかつ家電かでんなどの分野ぶんやへは応用おうようされず、20世紀せいき宇宙うちゅう開発かいはつつうじて技術ぎじゅつ検討けんとうすすんだ。燃料ねんりょう電池でんち現時点げんじてん技術ぎじゅつにおいては発電はつでん効率こうりつが35 – 60 %たかく、発熱はつねつエネルギーを回収かいしゅうすることができれば80 %までたかめることができる。環境かんきょう負荷ふかひくいという利点りてんがある。燃料ねんりょうにはメタノールもちいる機械きかいもあるが、水素すいそガスを利用りようするものでは自動車じどうしゃへの積載せきさい念頭ねんとういた固体こたい高分子こうぶんしがた燃料ねんりょう電池でんち(PEFC)が有力ゆうりょくされており、電解でんかいしつ分離ぶんりまく電極でんきょく劣化れっか抑制よくせいなど技術ぎじゅつ開発かいはつすすめられている[16]。また宇宙船うちゅうせんでは燃料ねんりょう電池でんちからられる電力でんりょくのほかに、同時どうじ生成せいせいされるみず利用りようおこなわれることがある。

貯蔵ちょぞう技術ぎじゅつ

編集へんしゅう

水素すいそをエネルギー利用りようするじょうでの課題かだいのひとつには、ガスじょう水素すいそ貯蔵ちょぞうするさい問題もんだいがある。すんでじゅつのように空気くうきとの混合こんごう4.1 – 74.2 %というひろ爆発ばくはつ限界げんかい範囲はんいつために、漏出ろうしゅつしないようにする技術ぎじゅつ必要ひつようとなる。水素すいそ原子げんし半径はんけいちいさいために容器ようき透過とうかしたり、劣化れっかさせたりするため、ほかの元素げんそ燃料ねんりょう貯蔵ちょぞうするのとは勝手かってちがってくる。2002ねん2がつ発足ほっそくした「燃料ねんりょう電池でんちプロジェクト・チーム」の報告ほうこくでは、自動車じどうしゃ積載せきさいしガソリン相当そうとうの 500 km以上いじょう走行そうこう可能かのう水素すいそ貯蔵ちょぞう目標もくひょうえた。これに相当そうとうする水素すいそガスは5 kgであり、常温じょうおんつねあつでは61000リットル相当そうとうする[16]

従来じゅうらい貯蔵ちょぞう手法しゅほうでは、こうあつ液体えきたいの2つがある。水素すいそ金属きんぞくもろこすため、とくこうあつガスを密閉みっぺいするにはアルミニウム – マグネシウム – シリコン合金ごうきんをファイバー強化きょうかしたものが開発かいはつされているが、日本にっぽんこうあつガス保安ほあんほうさだめる上限じょうげんの350気圧きあつでは実用じつようてき自動車じどうしゃ積載せきさい可能かのうなガスりょうは3.5 kgにとどまり、5 kgを実現じつげんするためには安全あんぜん700気圧きあつ相当そうとう密封みっぷうできる容器ようき検討けんとうされている。液体えきたい同様どうよう問題もんだい解決かいけつする必要ひつようがあり、オーステナイトけいステンレスこうやアルミニウム合金ごうきん・チタン合金ごうきんなどを素材そざい検討けんとうすすむ。しかし、こうあつ液体えきたいには密封みっぷうするさいにも加圧かあつ冷却れいきゃくなどでエネルギーを消費しょうひしてしまうてん課題かだいとしてのこ[16]

水素すいそ貯蔵ちょぞうする物質ぶっしつには金属きんぞくるいである水素すいそ吸蔵合金ごうきんと、無機むき有機ゆうき物質ぶっしつ提案ていあんされており、いずれも水素すいそ化物ばけものつく効率こうりつてき水素すいそつかまえることができる。水素すいそ吸蔵合金ごうきんは、ファンデルワールスりょく分子ぶんしあいだりょく一種いっしゅ)で表面ひょうめん吸着きゅうちゃく物理ぶつり吸着きゅうちゃく)させた水素すいそ分子ぶんし原子げんし解離かいり解離かいり吸着きゅうちゃく化学かがく吸着きゅうちゃく)し、水素すいそ化合かごうぶつ反応はんのう生成せいせいしながら合金ごうきん格子こうしうち水素すいそ原子げんし拡散かくさんさせる。すには加熱かねつまたは合金ごうきん周囲しゅうい水素すいそガスりょうらすことで水素すいそ化物ばけもの分解ぶんかいしガスが放出ほうしゅつされる。必要ひつよう温度おんど通常つうじょう50 °Cであり、たかくとも250 °C程度ていど圧力あつりょくつねあつから100気圧きあつ程度ていどまでであり、水素すいそガスの体積たいせきを1000ぶんの1におさめることができる。課題かだい合金ごうきん水素すいそ重量じゅうりょうにあり、現状げんじょうでは5 kg水素すいそを吸蔵するための合金ごうきん重量じゅうりょうは170 – 500 kg程度ていど必要ひつようになる[16]。このほか、イオン結合けつごうおもとする錯体さくたい水素すいそ化物ばけものや、アンモニアボランなども水素すいそ吸蔵性能せいのう物質ぶっしつとして研究けんきゅうされている[16]

水素すいそ循環じゅんかん社会しゃかい

編集へんしゅう

自然しぜんエネルギーからの電気でんき太陽光たいようこう発電はつでん人工じんこう光合成こうごうせい)によってみず電気でんき分解ぶんかいから水素すいそ生成せいせいしてエネルギー媒体ばいたいとして貯蔵ちょぞうし、燃料ねんりょう電池でんち使つかって発電はつでん電気でんきすというエネルギーの循環じゅんかん構想こうそうがある[47]

一見いっけん理想りそうてき無駄むだのないサイクルにおもえるが、電気でんき分解ぶんかいから燃料ねんりょう電池でんちによる発電はつでんまでの工程こうていではニッケル水素すいそ電池でんちリチウムイオン充電じゅうでん比較ひかくして効率こうりつ大幅おおはばひくい。高分子こうぶんし固体こたい電解でんかいしつ利用りようした電気でんき分解ぶんかい工程こうていでは分解ぶんかい両極りょうきょくでガスが発生はっせいするが、これが連続れんぞくした反応はんのう阻害そがいする一因いちいんとなる。また、燃料ねんりょう電池でんちでの発電はつでん工程こうていでも同様どうよう燃料ねんりょう電池でんちガス拡散かくさん電極でんきょく特性とくせいじょう電流でんりゅう密度みつどげるためにはスタックをかさねなければならず、電流でんりゅうを2ばいにしようとすれば電極でんきょく面積めんせきも2ばいにしなければならず、単位たんい容積ようせきごとの効率こうりつひくい。貯蔵ちょぞうにも専用せんようこうあつタンクや水素すいそ吸蔵合金ごうきん使用しようしなければならないため、単位たんい体積たいせきごと、あるいは単位たんい重量じゅうりょうごとのエネルギー密度みつどげる要因よういんになり、利点りてん相殺そうさいしてしまっている。

生体せいたい研究けんきゅう

編集へんしゅう

水素すいそかんする研究けんきゅうについて概説がいせつする。1671ねんにはロバート・ボイルによって水素すいそガスが生成せいせいされ、水素すいそはガスであると認識にんしきされ、生理せいりてき活性かっせいなガスだとかんがえられ、注目ちゅうもくされなかった[48]初期しょきには、水素すいそ分子ぶんし生物せいぶつがくてき効果こうか小規模しょうきぼ研究けんきゅうされてきた[49]。1975ねんに、Doleらは水素すいそガスが動物どうぶつ皮膚ひふ腫瘍しゅよう退すさちぢみするという研究けんきゅう結果けっかを『サイエンス』にて報告ほうこくしたが[50][51]注目ちゅうもくはされなかった[51][48]肝臓かんぞう慢性まんせい炎症えんしょうマウスでのこうあつ水素すいそこう炎症えんしょう作用さようは、2001ねん報告ほうこくされた[49]。こうした研究けんきゅうかずかぎられている[49]

水素すいそガスをふく吸気きゅうきとして、たとえば飽和ほうわ潜水せんすいようのガスとして水素すいそ50 %、ヘリウム49 %、酸素さんそ1 %よう混合こんごうもちいられており、この場合ばあい水素すいそ起因きいんする毒性どくせい安全あんぜんせい問題もんだいられていない[52]

ボストン小児しょうに病院びょういん、ハーバード大学だいがく医学部いがくぶ研究けんきゅうでも、水素すいそガスの吸入きゅうにゅうによる細胞さいぼう障害しょうがい組織そしき障害しょうがいのような有害ゆうがい事象じしょうはないことが報告ほうこくされており[53]名古屋大学なごやだいがく医学部いがくぶ産婦人科さんふじんか香川大学かがわだいがく医学部いがくぶ産婦人科さんふじんか研究けんきゅうにおいても、水素すいそ摂取せっしゅによる毒性どくせいや催奇せいはないことが報告ほうこくされている[54][55]

ただし、水素すいそ爆発ばくはつせいゆうする気体きたいであり、爆発ばくはつ濃度のうどにおいては静電気せいでんきのような微弱びじゃくなエネルギーで爆発ばくはつする危険きけんせいがある。したがって、水素すいそガス吸入きゅうにゅう療法りょうほうにおいては、爆発ばくはつ限界げんかい濃度のうど以下いか(10 %以下いか)の水素すいそガスを発生はっせいさせる水素すいそガス吸入きゅうにゅうもちいることが重要じゅうようであると、市販しはん水素すいそガス吸入きゅうにゅう安全あんぜんせいについて警鐘けいしょうらす論文ろんぶんが2019ねん発表はっぴょうされている[56][26][57]実際じっさい消費しょうひしゃちょう事故じこ情報じょうほうデータシステムで水素すいそガス吸入きゅうにゅう爆発ばくはつ事例じれい複数ふくすう報告ほうこくされている[58]

日本にっぽんにおける水素すいそ医療いりょう利用りよう研究けんきゅうかんする最初さいしょ報告ほうこくは、2003ねんのヒドロキシルラジカルによる水素すいそ分子ぶんし水素すいそ反応はんのうによって、種々しゅじゅ酸化さんかストレスに起因きいんする疾病しっぺい予防よぼうまたは改善かいぜんする報告ほうこくさかのぼ[59]。さらに2005ねんには、ラットの酸化さんかざい誘発ゆうはつモデルにたいする水素すいそすいこう酸化さんか効果こうか報告ほうこくされた[60]

日本医科大学にほんいかだいがくでの2007ねん実験じっけん[61]けて、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがくでは2012ねんからしん停止ていしのラットでの治療ちりょうモデルを確立かくりつしてきた[62]。2015ねん10がつには、慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく先導せんどう研究けんきゅうセンターない水素すいそガス治療ちりょう開発かいはつセンターが開設かいせつされた[62]

心肺しんぱい停止ていしどき水素すいそガスの吸入きゅうにゅう先進せんしん医療いりょうBに認定にんていされ、研究けんきゅうすすめられている[63]従来じゅうらい研究けんきゅうでは動物どうぶつ対象たいしょうとしてこころ停止ていしさいのう心臓しんぞう臓器ぞうき障害しょうがい抑制よくせい調査ちょうさされていたが、2016ねん9がつには、はつのヒトを対象たいしょうとした研究けんきゅう公表こうひょうされ、5にんちゅう4にんが90にちには普通ふつう生活せいかつもどった[64]。これは慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく中心ちゅうしんとして2がつ開始かいしされた臨床りんしょう研究けんきゅうであり、しん停止ていし影響えいきょうによってたきりとなる、言葉ことばがうまくはなせなくなるといった後遺症こういしょうのこことおおく、これを抑制よくせいするための医療いりょう現場げんばへの導入どうにゅう目標もくひょうとされている[65]

αあるふぁグルコシダーゼ阻害そがいざいである糖尿とうにょうびょう治療ちりょうやくアカルボース服用ふくようすると炭水化物たんすいかぶつ吸収きゅうしゅう抑制よくせいされ、大腸だいちょうちょうない細菌さいきんにより水素すいそなどが発生はっせいする。アカルボースの服用ふくようしん血管けっかん事故じこ抑制よくせいする可能かのうせいがあり、この原因げんいんとしてこう血糖けっとう抑制よくせいくわえて、呼気こきちゅう水素すいそガスの増加ぞうかみとめられ、この増加ぞうかした水素すいそこう酸化さんか作用さようこころ血管けっかん事故じこ抑制よくせいするメカニズムが想定そうていされている[66]

水素すいそ水素すいそみず溶存ようぞんした水素すいそすい研究けんきゅうは、2007ねんから2015ねん6がつまでで321の水素すいそ論文ろんぶんがあり、臨床りんしょう試験しけん年々ねんねん増加ぞうかしてきた[49]

上述じょうじゅつのように水素すいそ従来じゅうらい医薬品いやくひんとはことなり、病気びょうき根源こんげんである酸化さんかストレスを抑制よくせい広範囲こうはんい疾病しっぺいたいする改善かいぜん効果こうかゆうすることから、病気びょうきたいする「ワイドスペクトラム分子ぶんし」とばれる可能かのうせいがある[67]

2019ねん12月10にち現在げんざい水素すいそ医療いりょう利用りよう関係かんけいする学術がくじゅつ論文ろんぶんは600ほうえる[68][69]

宇宙うちゅうにおける水素すいそ反応はんのう

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宇宙うちゅう空間くうかんは、わたしたちが日頃ひごろらしをいとな環境かんきょうとはおおきくことなるため、まったことなる現象げんしょうこる。水素すいそ場合ばあい例外れいがいではない。たとえば惑星わくせい大気たいき上層じょうそう部分ぶぶんでは、水素すいそこうエネルギー電子でんし衝突しょうとつすることによって、さん水素すいそイオンが生成せいせいする。

 

 

このさん水素すいそイオンは、宇宙うちゅう空間くうかんのような低圧ていあつ条件じょうけんでは安定あんていして存在そんざいできる。このイオンは惑星わくせい大気たいき分析ぶんせきもちいられる。このイオンの濃度のうど調しらべることで、その惑星わくせい上層じょうそう大気たいきについての情報じょうほうることができる。

水素すいそ粒子りゅうし

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水素すいそ原子げんし非常ひじょう簡単かんたん構造こうぞうをしているため、水素すいそ陽子ようしまたは電子でんしべつ粒子りゅうしえた粒子りゅうし特定とくてい多数たすう存在そんざいする。なお、水素すいそたような化学かがく反応はんのうこす粒子りゅうしもある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ いでヘリウムがやく25 %[8][9]
  2. ^ Dias & Silvera (2017) は495 GPaの圧力あつりょくにおいて固体こたい推定すいていされる金属きんぞく水素すいそられたと発表はっぴょうしたが、この実験じっけん結果けっかについてはおおくの科学かがくしゃ疑問ぎもんしている[22][23]
  3. ^ ハロゲンちか性質せいしつつため、1周期しゅうき系列けいれつ17ぞく位置いち変更へんこうすべきというもの。

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参考さんこう文献ぶんけん

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書籍しょせき
論文ろんぶん
雑誌ざっし
行政ぎょうせい資料しりょう

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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