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イリジウム - Wikipedia

イリジウム

原子げんし番号ばんごう77の元素げんそ

イリジウム英語えいご: iridium [ɨˈrɪdiəm])は、原子げんし番号ばんごう77の元素げんそで、元素げんそ記号きごうIrである。遷移せんい元素げんそかつ白金はっきんぞく元素げんそ分類ぶんるいされる元素げんその1つで、単体たんたいでは白金はっきん(プラチナ)に金属きんぞく光沢こうたくゆうする。

オスミウム イリジウム 白金はっきん
Rh

Ir

Mt
外見がいけん
ぎん白色はくしょく
一般いっぱん特性とくせい
名称めいしょう, 記号きごう, 番号ばんごう イリジウム, Ir, 77
分類ぶんるい 遷移せんい金属きんぞく
ぞく, 周期しゅうき, ブロック 9, 6, d
原子げんしりょう 192.217
電子でんし配置はいち [Xe] 4f14 5d7 6s2
電子でんしから 2, 8, 18, 32, 15, 2(画像がぞう
物理ぶつり特性とくせい
そう 固体こたい
密度みつど室温しつおん付近ふきん 22.562 g/cm3
融点ゆうてんでの液体えきたい密度みつど 19 g/cm3
融点ゆうてん 2739 K, 2466 °C, 4471 °F
沸点ふってん 4701 K, 4428 °C, 8002 °F
融解ゆうかいねつ 41.12 kJ/mol
蒸発じょうはつねつ 563 kJ/mol
熱容量ねつようりょう (25 °C) 25.10 J/(mol·K)
蒸気じょうきあつ
圧力あつりょく (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度おんど (K) 2713 2957 3252 3614 4069 4659
原子げんし特性とくせい
酸化さんかすう 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0, -1, -3
電気でんき陰性いんせい 2.20(ポーリングの
イオン化いおんかエネルギー だい1: 880 kJ/mol
だい2: 1600 kJ/mol
原子げんし半径はんけい 136 pm
共有きょうゆう結合けつごう半径はんけい 141±6 pm
その
結晶けっしょう構造こうぞう めんこころ立方りっぽう格子こうし構造こうぞう
磁性じせい つね磁性じせい[1]
電気でんき抵抗ていこうりつ (20 °C) 47.1 nΩおめが⋅m
ねつ伝導でんどうりつ (300 K) 147 W/(m⋅K)
ねつ膨張ぼうちょうりつ 6.4 μみゅーm/(m⋅K)
おとつたわるはや
微細びさいロッド)
(20 °C) 4825 m/s
ヤングりつ 528 GPa
剛性ごうせいりつ 210 GPa
体積たいせき弾性だんせいりつ 320 GPa
ポアソン 0.26
モース硬度こうど 6.5
ビッカース硬度こうど 1760 MPa
ブリネル硬度こうど 1670 MPa
CAS登録とうろく番号ばんごう 7439-88-5
おも同位どういたい
詳細しょうさいイリジウムの同位どういたい参照さんしょう
同位どういたい NA 半減はんげん DM DE (MeV) DP
188Ir syn 1.73 d εいぷしろん 1.64 188Os
189Ir syn 13.2 d εいぷしろん 0.532 189Os
190Ir syn 11.8 d εいぷしろん 2.000 190Os
191Ir 37.3% 中性子ちゅうせいし114安定あんてい
192Ir syn 73.827 d βべーた- 1.460 192Pt
εいぷしろん 1.046 192Os
192m2Ir syn 241 y IT 0.161 192Ir
193Ir 62.7% 中性子ちゅうせいし116安定あんてい
193mIr syn 10.5 d IT 0.080 193Ir
194Ir syn 19.3 h βべーた- 2.247 194Pt
194m2Ir syn 171 d IT ? 194Ir

名称めいしょう

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「イリジウム」というは、その塩類えんるいが、にじのように様々さまざま色調しきちょうしめことから、ギリシャ神話しんわにじ女神めがみイリスにちなんで名付なづけられた[2]

所在しょざい

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地球ちきゅう地殻ちかく

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イリジウムは白金はっきん精錬せいれんられる副産物ふくさんぶつとして採取さいしゅされている[3]。このためプラチナの生産せいさんりょうに、イリジウムの生産せいさんりょう依存いぞんする。ただ、地球ちきゅう地殻ちかくなかでの濃度のうど0.001 ppmppb)にぎず[4][注釈ちゅうしゃく 1]、イリジウムの1年間ねんかん採掘さいくつりょうは、4トン程度ていどすくない。このため、レアメタル希少きしょう金属きんぞく)としてあつかわれている。

なお地殻ちかくちゅうでも偏在へんざいられ、イリジウムの産出さんしゅつりょうの95パーセントをみなみアフリカ共和きょうわこくめており、みなみアフリカ共和きょうわこくのブッシュフェルトの埋蔵まいぞうりょうは、現在げんざいられているなか最大さいだいである。このほかには、ロシアのノリリスクや、カナダのサドバリーでも採掘さいくつされており、わずかながらアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでも発見はっけんされている。

その場所ばしょ

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このように地球ちきゅう地殻ちかくちゅうでは希少きしょうだが、地球ちきゅう内部ないぶマントルには、地殻ちかくよりもはるかにこう濃度のうどでイリジウムがふくまれている。また隕石いんせきにも、よりこう濃度のうどでイリジウムがふくまれており、その濃度のうど0.5 ppm以上いじょうであるとされている。

特殊とくしゅ地層ちそうちゅうふくまれるイリジウム

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恐竜きょうりゅう絶滅ぜつめつかんする議論ぎろんで、はく亜紀あきふるだい三紀みき境界きょうかい地層ちそうちゅう大量たいりょうのイリジウムをふくんだ地層ちそうであるK-Pg境界きょうかいそうが、しばしば登場とうじょうしてきた。イリジウムは、地表ちひょうでは非常ひじょうすくない金属きんぞくであるため、これは隕石いんせきまたは地球ちきゅう深部しんぶ由来ゆらいもの判断はんだんされ、これをユカタン半島はんとうへの隕石いんせき衝突しょうとつしめ証拠しょうこであると言及げんきゅうされたり、デカン高原こうげん形成けいせいした破局はきょくてき噴火ふんか発生はっせいした証拠しょうこであると言及げんきゅうされたりしてきた。

性質せいしつ

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物理ぶつりてき性質せいしつ

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常温じょうおんつねあつ安定あんていなイリジウムの結晶けっしょう構造こうぞうは、めんこころ立方りっぽう構造こうぞう (FCC)である。常温じょうおんつねあつにおかれたイリジウムは、展延てんえんせいとぼしく、非常ひじょうかたいため、加工かこうむずかしい。

つねあつにおけるイリジウムの融点ゆうてんは 2466 ℃、沸点ふってんは4428 ℃である。このように融点ゆうてんたかいため、そのままでは加工かこう成形せいけいおこなこと困難こんなんであり、一般いっぱんてきには粉末ふんまつにしたイリジウム合金ごうきんしょうゆいして使用しようする場合ばあいおおい。

イリジウム単体たんたい密度みつど22.562 g/cm3[5]であり、比重ひじゅうぜん元素げんそちゅうで2番目ばんめおおきい[注釈ちゅうしゃく 2]。かつてはイリジウム22.65 g/cm3、オスミウム22.61 g/cm3とされ、イリジウムがぜん元素げんそちゅう最大さいだい比重ひじゅうとされてきたものの、計算けいさん原子げんしすう間違まちがっていたため修正しゅうせいされた[6]

化学かがくてき性質せいしつ

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イリジウムの単体たんたいは、一般いっぱんてきさんアルカリとは反応はんのうせず、常温じょうおんでは王水おうすいともほとんど反応はんのうしない。せいぜい、粉末ふんまつにすればわずかに王水おうすいける程度ていどである。常温じょうおんでは酸素さんそとも反応はんのうかたく、貴金属ききんぞくとしてあつかわれる。このように反応はんのうせいひくいため、Ir-10Al合金ごうきんすることすぐれたたい酸化さんか性能せいのうあたえられる[7]

しかしながら、高温こうおんフッ素ふっそ塩素えんそ酸素さんそ反応はんのうする。また、高温こうおん酸化さんか雰囲気ふんいきちゅうでは揮発きはつせい酸化さんかぶつ生成せいせいする[8]。なお、イリジウムは、-1, 0, +2, +3, +4, +6原子げんしる。参考さんこうまでに、酸素さんそ化合かごうしたイリジウムで安定あんていなのは、+4二酸化にさんかイリジウムである。

鉱物こうぶつ

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イリジウムを含有がんゆうした鉱石こうせき鉱物こうぶつには、つぎのようなものられる。

2020ねん現在げんざい白金はっきんとの比較ひかくで、おおむね2ばいから2.5ばいほどと、非常ひじょう高価こうかである。また、加工かこうむずかしいため、用途ようとかぎられてきた。

工業こうぎょうよう

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イリジウム単体たんたいや、イリジウムの合金ごうきんは、その硬度こうど融点ゆうてんたかさからたい熱性ねっせいたい摩耗まもうせいもとめられる用途ようと使用しようされる場合ばあいおお[7]

高温こうおんたい酸化さんかせい
  • 人工じんこうサファイアたん結晶けっしょう製造せいぞうするための工業こうぎょうようるつぼは、非常ひじょうたかたい熱性ねっせいもとめられるため、イリジウムはるつぼの材料ざいりょうとして使用しようされ[9]、イリジウムの用途ようととしてもっと一般いっぱんてきである。
  • 高温こうおんさらされても酸化さんか被膜ひまく生成せいせいされがたいため、飛行機ひこうき自動車じどうしゃエンジンの点火てんかプラグ電極でんきょく材料ざいりょうとして使用しようされる[3]
  • ロジウム(Rh)との合金ごうきんは、IrRhねつでんたい温度おんどけいとして 2100 ℃までの計測けいそく可能かのうである[10][11]
たい摩耗まもうせい
  • 耐食性たいしょくせいたい摩耗まもうせいすぐれているため、高級こうきゅう万年筆まんねんひつのペンさき材料ざいりょうとして、オスミウムなどととももちいられる場合ばあいもある。
原器げんき材料ざいりょう
放射線ほうしゃせんげん

宝飾ほうしょくよう

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白金はっきん硬化こうかのために、白金はっきんとの合金ごうきん材料ざいりょうとしてイリジウムが使用しようされる場合ばあいおお[12]指輪ゆびわやネックレスなどのおおくの宝飾ほうしょくひんもちいられている。

また、近年きんねんではイリジウム単体たんたいを、結婚けっこん指輪ゆびわなどの材料ざいりょうとしてもちいる場合ばあいもある[13]

同位どういたい

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イリジウムの安定あんてい同位どういたいは、191Ir193Irの2核種かくしゅのみで、天然てんねん存在そんざいするイリジウムの同位どういたいは、この2しゅである。

1804ねんにオスミウムとともスミソン・テナント (S. Tennant) が、イリジウムも発見はっけんした[2]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 地球ちきゅう地殻ちかくちゅうでは、オスミウムとロジウムにぎ、イリジウムは3番目ばんめてい濃度のうど元素げんそである。
  2. ^ 密度みつど最大さいだい元素げんそオスミウム(Os)で、その密度みつどは、22.587 g/cm3である。

出典しゅってん

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  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ a b 桜井さくらいひろし元素げんそ111のしん知識ちしき講談社こうだんしゃ、1997ねん10がつ20日はつか、314ぺーじISBN 4-06-257192-7 
  3. ^ a b 御手洗みたらい 容子ようこ白金はっきんぞく金属きんぞく構造こうぞう材料ざいりょうへの応用おうよう』 まてりあ Vol.54 (2015) No.7 pp.339-342, doi:10.2320/materia.54.339
  4. ^ The Element Iridium”. It's Elemental. Jefferson Lab. 2016ねん10がつ1にち閲覧えつらん
  5. ^ J. W. Arblaster: Densities of Osmium and Iridium, in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S. 14–16; Volltext.
  6. ^ グレイ(2010)
  7. ^ a b 御手洗みたらい容子ようこ村上むらかみ秀之ひでゆきIr もと合金ごうきん高温こうおんたい酸化さんかせい』 まてりあ Vol.52 (2013) No.9 p.440-444, doi:10.2320/materia.52.440
  8. ^ J. H. Carpenter: J. Less-common Met., 152(1989), 35-45., doi:10.1016/0022-5088(89)90069-6
  9. ^ イリジウムルツボ 株式会社かぶしきがいしゃ フルヤ金属きんぞく
  10. ^ 従来じゅうらいやく20ばい耐久たいきゅうせいちょう高温こうおんようねつでん (PDF)
  11. ^ 小倉おぐら秀樹ひでき ほか、「1950℃付近ふきんにおけるイリジウム-ロジウムねつでんたい評価ひょうか技術ぎじゅつ」 センシングフォーラム資料しりょう 31, 234-238, 2014-09-25, NAID 40020353679
  12. ^ 貴金属ききんぞくについて”. 日本にっぽんジュエリー協会きょうかい. 2017ねん5がつ1にち閲覧えつらん
  13. ^ Luxury Iridium Jewelry”. American Elements. 2017ねん5がつ1にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • セオドア・グレイ へん武井たけい摩利まり やく世界せかい一番いちばんうつくしい元素げんそ図鑑ずかん若林わかばやしぶんだか(監修かんしゅう)、つくもとしゃ、2010ねん10がつ22にち、176-177ぺーじISBN 978-4-422-42004-2 

関連かんれん項目こうもく

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