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ネプツニウム - Wikipedia

ネプツニウム

原子げんし番号ばんごう93の元素げんそ

ネプツニウム (えい: neptunium [nɛpˈtjuːniəm]) は原子げんし番号ばんごう93の元素げんそ元素げんそ記号きごうNpアクチノイド元素げんそひとつ。またもっとかるちょうウラン元素げんそでもある。ぎん白色はくしょく金属きんぞくで、展性てんせい延性えんせいんでいる。常温じょうおんつねあつ(25℃、1atm)での安定あんてい結晶けっしょう構造こうぞうはすかたあきらけい。280 °C付近ふきんから正方まさかたあきらけいとなり、さらに580 °C付近ふきんよりからだこころ立方りっぽう構造こうぞう (BCC) が安定あんていとなる。比重ひじゅうは20.45、融点ゆうてんは640 °C沸点ふってんは3900 °C原子げんしは+3から+7(+5安定あんてい)。

ウラン ネプツニウム プルトニウム
Pm

Np

不明ふめい
外見がいけん
ぎん白色はくしょく
一般いっぱん特性とくせい
名称めいしょう, 記号きごう, 番号ばんごう ネプツニウム, Np, 93
分類ぶんるい アクチノイド
ぞく, 周期しゅうき, ブロック n/a, 7, f
原子げんしりょう [237]
電子でんし配置はいち [Rn] 7s2 6d1 5f4
電子でんしから 2, 8, 18, 32, 22, 9, 2(画像がぞう
物理ぶつり特性とくせい
そう 固体こたい
密度みつど室温しつおん付近ふきん 20.25 (20℃,αあるふぁ-Np)

19.86 (313℃,βべーた-Np) g/cm3

融点ゆうてん 910 K, 637 °C, 1179 °F
沸点ふってん 4273 K, 4000 °C, 7232 °F
融解ゆうかいねつ 3.20 kJ/mol
蒸発じょうはつねつ 336 kJ/mol
熱容量ねつようりょう (25 °C) 29.46 J/(mol·K)
蒸気じょうきあつ
圧力あつりょく (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度おんど (K) 2194 2437
原子げんし特性とくせい
酸化さんかすう 7, 6, 5, 4, 3(両性りょうせい酸化さんかぶつ
電気でんき陰性いんせい 1.36(ポーリングの
イオン化いおんかエネルギー 1st: 604.5 kJ/mol
原子げんし半径はんけい 155 pm
共有きょうゆう結合けつごう半径はんけい 190 ± 1 pm
その
磁性じせい つね磁性じせい[1]
電気でんき抵抗ていこうりつ (22 °C) 1.220 µΩおめが⋅m
ねつ伝導でんどうりつ (300 K) 6.3 W/(m⋅K)
CAS登録とうろく番号ばんごう 7439-99-8
おも同位どういたい
詳細しょうさいネプツニウムの同位どういたい参照さんしょう
同位どういたい NA 半減はんげん DM DE (MeV) DP
235Np syn 396.1 d αあるふぁ 5.192 231Pa
εいぷしろん 0.124 235U
236Np syn 1.54 × 105 y εいぷしろん 0.940 236U
βべーた- 0.940 236Pu
αあるふぁ 5.020 232Pa
237Np syn 2.144 × 106 y SF/αあるふぁ 4.959 233Pa
239Np trace 2.356 d βべーた- 0.218 239Pu

ネプツニウム239の半減はんげんは2.4にちウラン238天然てんねんにも存在そんざいするので、ネプツニウム239、プルトニウム239は天然てんねんにもごくわずかに存在そんざいする。にネプツニウム236(半減はんげん15.4まんねん)、ネプツニウム237(半減はんげん214まんねん)などがある。

ネプツニウム237はネプツニウム系列けいれつ(ネプツニウム237からタリウム205までの崩壊ほうかい過程かてい系列けいれつ)のしん核種かくしゅである。この系列けいれつ元素げんそ半減はんげん一番いちばんながいネプツニウム237でも半減はんげんが214まんねんしかないため、この系列けいれつは(ビスマスタリウムのぞき)天然てんねんにはきわめてまれにしか存在そんざいしないが、最終さいしゅう系列けいれつ核種かくしゅのビスマス、タリウムはごく普遍ふへんてき天然てんねん存在そんざいする。また、ウランこうなかからごく微量びりょうのネプツニウムが核種かくしゅ崩壊ほうかいさい副産物ふくさんぶつとしてしばしば発見はっけんされる。ネプツニウム237は、核兵器かくへいき爆発ばくはつによって生成せいせいする[2]

名称めいしょう

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海王星かいおうせいneptune語源ごげん[3]となり、ネプツニウムと名付なづけられた。

しくも、その元素げんそ記号きごうはかつてまぼろしわったニッポニウムとおなNp があてがわれた。なお21世紀せいき初頭しょとう現在げんざいでは、過去かこ提案ていあんされた名前なまえ混乱こんらん回避かいひ観点かんてんからしん元素げんそ名前なまえとしては使つかえなくなっている[4]

1934ねんエンリコ・フェルミらのグループは様々さまざま物質ぶっしつ中性子ちゅうせいしてる実験じっけんおこない、質量しつりょうすうが1つおおきな同位どういたいとなったのちにベータ崩壊ほうかいして原子げんし番号ばんごうの1つおおきな原子げんしになることを観察かんさつしている。そのなかウランからしょうじた核種かくしゅなかに、なまり以上いじょう核種かくしゅとしては同定どうていできないものが1つあったため、93ばん元素げんそ可能かのうせい示唆しさされた。これについてオットー・ハーンリーゼ・マイトナーらがくわしく調しらべたところおおくのベータ崩壊ほうかい見付みつかり、93ばん以降いこうも97ばん元素げんそまで合成ごうせいすすんでいた可能かのうせいしめされた。だが1938ねんすえごろになって、観察かんさつされたおおくのベータ崩壊ほうかいはウランの核分裂かくぶんれつしょうじたバリウムなどの放射ほうしゃせい同位どういたい由来ゆらいすることが判明はんめいした。しかしながらすくなくとも半減はんげん23ぶんのウラン同位どういたいのベータ崩壊ほうかいについては確認かくにんされたため、93ばん元素げんそ可能かのうせいのこされた。[5]

ネプツニウムはまた、ニッポニウム事例じれいつづいて日本人にっぽんじん発見はっけんかかわっていた元素げんそとしてもられる[4]1940ねん理化学研究所りかがくけんきゅうしょ理研りけん)ではぎゃくにウラン238から中性子ちゅうせいし1個いっこのぞいたウラン237の合成ごうせい実験じっけん独自どくじっている。そのベータ崩壊ほうかい確認かくにんできたことからネプツニウム237がしょうじたことになり、仁科にしな芳雄よしおは93ばん元素げんそ存在そんざい見出みいだした。しかし当時とうじ理研りけんではたんはなれまでかなかったため発見はっけんとはみとめられず、だい2のニッポニウム実現じつげんにはいたらなかった。

その直後ちょくご、1940ねんれになると、マクミランアベルソン(アーベルソン)がウラン238に中性子ちゅうせいしてて、ネプツニウム239をつくった[3]。こちらはたんはなれ実現じつげんしたため、人工じんこうてきつくられた最初さいしょちょうウラン元素げんそとしてみとめられた。

特徴とくちょう

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ネプツニウムは外観がいかんぎんのようで、ほかの元素げんそ活発かっぱつ化学かがく反応はんのうこす。 また、ネプツニウムは温度おんどによって結晶けっしょう構造こうぞうことなる。

αあるふぁネプツニウム
280 °C以下いか状態じょうたいのネプツニウムで、はすかたあきらけいである。
密度みつどは20250 kg/m3
βべーたネプツニウム
280 °C以上いじょう577 °C以下いか状態じょうたいのネプツニウムで、正方まさかたあきらけいである。
密度みつどは19360 kg/m3
γがんまネプツニウム
577 °C以上いじょう状態じょうたいのネプツニウムで、立方りっぽうあきらけいである。
密度みつどは18000 kg/m3

また、ネプツニウムはよっつの酸化さんか状態じょうたい存在そんざいする。

Np3+
あわ紫色むらさきいろをしており、Pm3+類似るいじしている。
Np4+
緑色みどりいろをしており、Pm4+類似るいじしている。

ネプツニウムはプルトニウム238製造せいぞうさいもちいられる。

また、ネプツニウムは、えないウラン238が中性子ちゅうせいしびて原子力げんしりょく発電はつでんとう使用しようされるプルトニウム239に「中性子ちゅうせいし捕獲ほかく核種かくしゅ変換へんかん」するなかあいだ生成せいせいぶつでもある。(高速こうそく増殖ぞうしょくのブランケットで劣化れっかウランをプルトニウムにえるのがこの反応はんのうである)

ウラン238+中性子ちゅうせいし → ウラン239 → βべーた崩壊ほうかい → ネプツニウム239 → ベータ崩壊ほうかい → プルトニウム239。
「ウラン238+中性子ちゅうせいし → ウラン239 → βべーた崩壊ほうかい → ネプツニウム239」の部分ぶぶん中性子ちゅうせいし捕獲ほかく反応はんのう

なお、アイソトープ電池でんち使用しようされるプルトニウム238はウラン238の (d,2n) 反応はんのうでネプツニウム238をつくることで生産せいさんされている。

核兵器かくへいき製造せいぞう

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ネプツニウムは核分裂かくぶんれつせいで、理論りろんじょうかく燃料ねんりょうとして使用しようすることができる。1992ねんには、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくエネルギえねるぎしょうがネプツニウム237が「かく起爆きばく装置そうちのために使用しようできる。」という機密きみつあつかいの事項じこう解禁かいきんした。なお、核兵器かくへいき製造せいぞうには利用りようされていない。

前述ぜんじゅつのように戦時せんじちゅう理研りけんがネプツニウムの発見はっけん自力じりきおこなっている。その技術ぎじゅつかく開発かいはつつながる懸念けねんみ、戦後せんご処理しょり一環いっかんとして理研りけん加速器かそくき破壊はかい処理しょりされた。以降いこう日本にっぽんニホニウム発見はっけんまで60ねんちかくにわたり元素げんそ発見はっけん最前線さいぜんせんからとおざかることになる。

天然てんねんでの存在そんざい

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ネプツニウムはウランこうなかからごく微量びりょうつかる。とくにネプツニウム237は、ウランこうちゅういてプルトニウム239生成せいせいさい副産物ふくさんぶつとしてしばしば発見はっけんされる。このため、プルトニウム239のしん核種かくしゅとしてネプツニウム239の存在そんざい確認かくにんされている。

同位どういたい

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ネプツニウムには安定あんてい同位どういたい存在そんざいせず、すべてが放射ほうしゃせい同位どういたいである。ネプツニウムには19の同位どういたい存在そんざいし、質量しつりょう範囲はんいはネプツニウム225からネプツニウム244までおよぶ。比較的ひかくてき安定あんていしている同位どういたいは214まんねん半減はんげんつネプツニウム237、15まん4000ねん半減はんげんつネプツニウム236、396にち半減はんげんつネプツニウム235が存在そんざいする。のこりの同位どういたいは4.5にち未満みまん半減はんげんっており、まただい多数たすうこれらの同位どういたいのほとんどが50ふん未満みまん半減はんげんっている。また、ネプツニウムには4つのかく異性いせいたい同位どういたい存在そんざいし、もっともなが半減はんげんつのは 236mNp で22.5あいだ半減はんげんっている。

ネプツニウムの化合かごうぶつ

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  • ネプツニル(V)イオン ( ) - あお緑色みどりいろをしている。
  • ネプツニル(VI)イオン ( ) - あわピンク色ぴんくいろをしている。
  • 酸化さんかネプツニウム(IV) ( ) - 緑色みどりいろ結晶けっしょうである。
  • はち酸化さんかさんネプツニウム ( )

このような化合かごうぶつなかやウランこうなかごく微量びりょうふくまれている。

出典しゅってん

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  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds Archived 2012ねん1がつ12にち, at the Wayback Machine., in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ "原子力げんしりょく資料しりょう情報じょうほうしつ."原発げんぱつきほん知識ちしき放射能ほうしゃのうミニ知識ちしき- ネプツニウム-237(237Np)"
  3. ^ a b 桜井さくらいひろし元素げんそ111のしん知識ちしき講談社こうだんしゃ、1998ねん、379 - 380ぺーじISBN 4-06-257192-7 
  4. ^ a b 元素げんそ発見はっけん歴史れきし/113ばん元素げんそ特設とくせつページ”. 理化学研究所りかがくけんきゅうしょ 仁科にしな加速器かそくき研究けんきゅうセンター. 2016ねん2がつ17にち閲覧えつらん
  5. ^ ちょうウラン元素げんそ発見はっけん”. 原子力げんしりょく百科ひゃっか事典じてん高度こうど情報じょうほう科学かがく技術ぎじゅつ研究けんきゅう機構きこう). 2016ねん2がつ22にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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