タンタル (独 どく : Tantal [ˈtantal] 、英 えい : tantalum [ˈtæntələm] )は、原子 げんし 番号 ばんごう 73の第 だい 6周期 しゅうき に属 ぞく する第 だい 5族 ぞく 元素 げんそ である。元素 げんそ 記号 きごう は Ta 。タンタルの単体 たんたい は比較的 ひかくてき 密度 みつど が高 たか くて硬 かた く、銀 ぎん 白色 はくしょく を呈 てい し、光沢 こうたく があって腐食 ふしょく 耐 たい 性 せい の高 たか い遷移 せんい 金属 きんぞく である。レアメタル の1つに数 かぞ えられており合金 ごうきん の微量 びりょう 成分 せいぶん などとして広 ひろ く用 もち いられる他 ほか 、比較的 ひかくてき 化学 かがく 的 てき に安定 あんてい で融点 ゆうてん も高 たか く、耐火 たいか 金属 きんぞく としても知 し られる。化学 かがく 的 てき に不 ふ 活性 かっせい な特性 とくせい から、実験 じっけん 用 よう 設備 せつび の材料 ざいりょう や白金 はっきん の代替 だいたい 品 ひん として有用 ゆうよう である。今日 きょう におけるタンタルの主 おも な用途 ようと は、携帯 けいたい 電話 でんわ 、DVDプレーヤー 、ゲーム機 き 、パーソナルコンピュータ といった電子 でんし 機器 きき に用 もち いられるタンタル電解 でんかい コンデンサ である。タンタルは、タンタル石 せき 、コルンブ石 せき あるいはコルタン (タンタル石 せき とコルンブ石 せき の混合 こんごう 物 ぶつ であるとされ独立 どくりつ した鉱物 こうぶつ とみなされていない)といった鉱物 こうぶつ に含 ふく まれ、化学 かがく 的 てき に類似 るいじ するニオブ と共 とも に産出 さんしゅつ する[6] 。
外見 がいけん
銀灰色 ぎんかいしょく
一般 いっぱん 特性 とくせい
名称 めいしょう , 記号 きごう , 番号 ばんごう
タンタル, Ta, 73
分類 ぶんるい
遷移 せんい 金属 きんぞく
族 ぞく , 周期 しゅうき , ブロック
5 , 6 , d
原子 げんし 量 りょう
180.94788
電子 でんし 配置 はいち
[Xe ] 4f14 5d3 6s2
電子 でんし 殻 から
2, 8, 18, 32, 11, 2(画像 がぞう )
物理 ぶつり 特性 とくせい
相 そう
固体 こたい
密度 みつど (室温 しつおん 付近 ふきん )
16.654(293 K、固体 こたい )[1] g/cm3
融点 ゆうてん での液体 えきたい 密度 みつど
15.000(融点 ゆうてん 、液体 えきたい )[1] g/cm3
融点 ゆうてん
3258[2] K , 2985[2] °C
沸点 ふってん
5783[2] K , 5510[2] °C
融解 ゆうかい 熱 ねつ
36.57 kJ/mol
蒸発 じょうはつ 熱 ねつ
732.8 kJ/mol
熱容量 ねつようりょう
(25 °C ) 25.36 J/(mol·K)
蒸気 じょうき 圧 あつ
圧力 あつりょく (Pa)
1
10
100
1 k
10 k
100 k
温度 おんど (K)
3297
3597
3957
4395
4939
5634
原子 げんし 特性 とくせい
酸化 さんか 数 すう
5 , 4, 3, 2, -1(弱 じゃく 酸性 さんせい 酸化 さんか 物 ぶつ )
電気 でんき 陰性 いんせい 度 ど
1.5(ポーリングの値 ね )
イオン化 いおんか エネルギー
第 だい 1: 761[3] kJ/mol
第 だい 2: 1500 kJ/mol
原子 げんし 半径 はんけい
146 pm
共有 きょうゆう 結合 けつごう 半径 はんけい
170±8 pm
その他 た
結晶 けっしょう 構造 こうぞう
α あるふぁ -Ta: 体 からだ 心 こころ 立方 りっぽう 構造 こうぞう β べーた -Ta: 正方 まさかた 晶 あきら 系 けい [4]
磁性 じせい
常 つね 磁性 じせい [5]
電気 でんき 抵抗 ていこう 率 りつ
(20 °C ) 131 nΩ おめが ⋅m
熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ
(300 K) 57.5 W/(m⋅K)
熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ
(25 °C ) 6.3 μ みゅー m/(m⋅K)
音 おと の伝 つた わる速 はや さ (微細 びさい ロッド)
(20 °C ) 3400 m/s
ヤング率 りつ
186 GPa
剛性 ごうせい 率 りつ
69 GPa
体積 たいせき 弾性 だんせい 率 りつ
200 GPa
ポアソン比 ひ
0.34
モース硬度 こうど
6.5
ビッカース硬度 こうど
873 MPa
ブリネル硬度 こうど
800 MPa
CAS登録 とうろく 番号 ばんごう
7440-25-7
主 おも な同位 どうい 体 たい
詳細 しょうさい はタンタルの同位 どうい 体 たい を参照 さんしょう
タンタルという名前 なまえ は、ギリシア神話 しんわ でニオベー の父 ちち とされているタンタロス から取 と られている。神話 しんわ においては、タンタロスは死後 しご 、あごまで届 とど くほどの深 ふか さの水 みず の中 なか に立 た たされ、頭上 ずじょう には果物 くだもの が豊 ゆた かに実 みの っているが、どちらも永遠 えいえん に彼 かれ には手 て に入 はい らずじらされるという罰 ばっ を受 う ける(水 みず を飲 の もうとすると、届 とど かないくらい水位 すいい が下 さ がり、果物 くだもの に手 て を伸 の ばそうとすると、枝 えだ が手 て の届 とど く範囲 はんい から遠 とお ざかる、英語 えいご でtantalize という単語 たんご はじらして苦 くる しめるという意味 いみ がある)。アンデシュ・エーケベリ は、「私 わたし がタンタルと呼 よ ぶこの金属 きんぞく 、酸 さん に浸 ひた しても何 なに かを吸収 きゅうしゅう したり飽和 ほうわ したりする能力 のうりょく がほとんどないということを部分 ぶぶん 的 てき に暗示 あんじ する名前 なまえ である」と書 か いている[7] 。
タンタルは銀灰色 ぎんかいしょく で[20] 、密度 みつど や延性 えんせい が高 たか く、非常 ひじょう に硬 かた いが加工 かこう はしやすい。熱 ねつ や電気 でんき の伝導 でんどう 度 ど が高 たか く、酸 さん による腐食 ふしょく にも強 つよ い。金属 きんぞく を侵 おか す能力 のうりょく の高 たか い王水 おうすい であっても、摂氏 せっし 150度 ど 以下 いか ではタンタルはまったく溶 と けない。フッ化 か 水素 すいそ 酸 さん やフッ化物 ばけもの と三 さん 酸化 さんか 硫黄 いおう を含 ふく む酸性 さんせい 溶液 ようえき 、水酸化 すいさんか カリウム には溶 と ける。タンタルの融点 ゆうてん は摂氏 せっし 3,017度 ど (沸点 ふってん は摂氏 せっし 5,458度 ど )と高 たか く、これを上回 うわまわ る元素 げんそ はタングステン 、レニウム 、オスミウム 、炭素 たんそ だけである。
タンタルにはα あるふぁ とβ べーた の2種類 しゅるい の結晶 けっしょう 構造 こうぞう が存在 そんざい する。α あるふぁ -Taは比較的 ひかくてき やわらかく、展延 てんえん 性 せい がある。体 からだ 心 こころ 立方 りっぽう 格子 こうし 構造 こうぞう を持 も ち(空間 くうかん 群 ぐん はlm3m、格子 こうし 定数 ていすう はa=0.33058nm)、ヌープ硬度 こうど は200 - 400 HN、電気 でんき 抵抗 ていこう は15 - 60 µΩ おめが ・cmである。β べーた -Taは硬 かた いがもろく、結晶 けっしょう 構造 こうぞう は正方 まさかた 晶 あきら 系 けい を持 も ち(空間 くうかん 群 ぐん はP42/mnm、格子 こうし 定数 ていすう はa=1.0194nm,c=0.5313nm)、ヌープ硬度 こうど は1000 - 1300 HN、電気 でんき 抵抗 ていこう は比較的 ひかくてき 高 たか く170 - 210 µΩ おめが ・cmである。β べーた 構造 こうぞう は準 じゅん 安定 あんてい で、摂氏 せっし 750 - 775度 ど に加熱 かねつ することでα あるふぁ 構造 こうぞう に転移 てんい する。大量 たいりょう のタンタルはほぼすべてα あるふぁ 構造 こうぞう であり、通常 つうじょう β べーた 構造 こうぞう は、溶融 ようゆう 塩 しお 共 きょう 晶 あきら からマグネトロン スパッタリング 、化学 かがく 気 き 相 しょう 成長 せいちょう あるいは電気 でんき 化学 かがく 析出 せきしゅつ で得 え られる薄膜 うすまく として存在 そんざい する[21] 。
タンタルの単体 たんたい は、超 ちょう 伝導 でんどう の研究 けんきゅう が始 はじ まって間 あいだ もない1930年 ねん 頃 ごろ までには、臨界 りんかい 温度 おんど 4.5 K で超 ちょう 伝導 でんどう となることが発見 はっけん されている[22] 。一方 いっぽう 、タンタル酸 さん カリウム 単 たん 結晶 けっしょう の表面 ひょうめん 付近 ふきん が0.005 K未満 みまん で超 ちょう 伝導 でんどう になる現象 げんしょう も2011年 ねん に発見 はっけん されている[23] 。
天然 てんねん のタンタルは、180m Ta (0.012 %) と181 Ta (99.988 %)という2つの同位 どうい 体 たい で構成 こうせい されている。181 Taは安定 あんてい 同位 どうい 体 たい である。180m Taは核 かく 異性 いせい 体 たい で、基底 きてい 状態 じょうたい の180 Taへの核 かく 異性 いせい 体 たい 転移 てんい 、180 W へのベータ崩壊 ほうかい 、電子 でんし 捕獲 ほかく によって180 Hf への崩壊 ほうかい の3種類 しゅるい の崩壊 ほうかい をすると予測 よそく されている。しかし、この核 かく 異性 いせい 体 たい の放射 ほうしゃ 性 せい 崩壊 ほうかい は1度 ど も観測 かんそく されたことがなく、最低 さいてい でも半減 はんげん 期 き 2.0 × 1016 年 とし (2京 きょう 年 みのる )を持 も つと、半減 はんげん 期 き の下限 かげん 値 ち を示 しめ されているに過 す ぎない[24] 。基底 きてい 状態 じょうたい である180 Taは、わずか8時 じ 間 あいだ の半減 はんげん 期 き である。放射 ほうしゃ 性 せい 壊変によって生 しょう じる、あるいは宇宙 うちゅう 線 せん 生成 せいせい による短 たん 寿命 じゅみょう の核種 かくしゅ を除 のぞ けば、180m Taは自然 しぜん 界 かい に存在 そんざい する唯一 ゆいいつ の核 かく 異性 いせい 体 たい である。これもまた放射 ほうしゃ 性 せい 壊変によって生 しょう じる、あるいは宇宙 うちゅう 線 せん 生成 せいせい による短 たん 寿命 じゅみょう の核種 かくしゅ を除 のぞ けば、180m Taはタンタルの元素 げんそ 存在 そんざい 比 ひ および天然 てんねん 同位 どうい 体 たい 構成 こうせい 比 ひ を考慮 こうりょ すれば、宇宙 うちゅう でもっとも希少 きしょう な同位 どうい 体 たい である[25] 。
タンタルは、核兵器 かくへいき に「加塩 かしお 」(放射 ほうしゃ 性 せい 物質 ぶっしつ の放出 ほうしゅつ 量 りょう を増強 ぞうきょう する)する材料 ざいりょう として理論 りろん 的 てき に検討 けんとう されてきた(コバルト の方 ほう が加塩 かしお 材料 ざいりょう として良 よ く知 し られている)。仮説 かせつ 上 じょう 、核兵器 かくへいき が爆発 ばくはつ するときに出 で る強力 きょうりょく な高 こう エネルギー中性子 ちゅうせいし 線 せん が外 そと 殻 から の181 Taに放射線 ほうしゃせん を浴 あ びせる。これによってタンタルを半減 はんげん 期 き 114.4日 にち の放射 ほうしゃ 性 せい 同位 どうい 体 たい である182 Taに変化 へんか させ、これが112万 まん 電子 でんし ボルト のエネルギーを持 も つガンマ線 がんません を出 だ し、核 かく 爆発 ばくはつ で生 しょう じた放射 ほうしゃ 性 せい 降下 こうか 物 ぶつ の放射能 ほうしゃのう を数 すう か月 げつ にわたって大幅 おおはば に強化 きょうか することになる。こうした加塩 かしお された核兵器 かくへいき は、少 すく なくとも公的 こうてき に知 し られている限 かぎ りでは実際 じっさい に作 つく られたことも試験 しけん されたこともなく、実際 じっさい に兵器 へいき として使用 しよう されたことは1度 ど もない[26] 。
タンタルは、陽子 ようし 線 せん を当 あ てて8 Li 、80 Rb 、and 160 Yb といった様々 さまざま な短 たん 寿命 じゅみょう 放射 ほうしゃ 性 せい 同位 どうい 体 たい を作 つく るためのターゲット材 ざい として用 もち いられる[27] 。
タンタルは酸化 さんか 数 すう +2, +3, +4, +5の化合 かごう 物 ぶつ を形成 けいせい する。これらの中 なか では酸化 さんか 数 すう +5が最 もっと も安定 あんてい である[28] 。なお、+5価 か のイオン半径 はんけい は、73 pmである[29] 。タンタルの化合 かごう 物 ぶつ としては酸化 さんか 物 ぶつ が安定 あんてい で、タンタルの鉱物 こうぶつ はすべて酸化 さんか 鉱物 こうぶつ である。酸化 さんか 数 すう が3より小 ちい さい無機 むき 化合 かごう 物 ぶつ は、タンタル原子 げんし 間 あいだ の化学 かがく 結合 けつごう を特徴 とくちょう とする[30] 。炭素 たんそ 原子 げんし がタンタル原子 げんし と化学 かがく 結合 けつごう している有機 ゆうき タンタル化合 かごう 物 ぶつ では、+1, 0, −1などのさらに低 ひく い酸化 さんか 数 すう も取 と る。
タンタルとニオブの化学 かがく 的 てき 特性 とくせい はよく似 に ている。同 おな じ第 だい 5族 ぞく 元素 げんそ のバナジウム と似 に ているところもあるが、バナジウムでよくみられる酸化 さんか 数 すう +2, +3の化合 かごう 物 ぶつ はタンタルとニオブでは少 すく ない[31] 。
ヘキサタンタル酸 さん イオン [Ta6 O19 ]8−
五 ご 酸化 さんか タンタル (Ta2 O5 ) は、実用 じつよう 上 じょう の観点 かんてん からはもっとも重要 じゅうよう な化合 かごう 物 ぶつ である。4価 か の酸化 さんか 物 ぶつ (TaO2 ) は不定 ふてい 比 ひ 化合 かごう 物 ぶつ で、ルチル 構造 こうぞう を取 と る。3価 か の酸化 さんか 物 ぶつ (Ta2 O3 ) は知 し られていない[32] 。
タンタル酸 さん 塩 しお と呼 よ ばれる化合 かごう 物 ぶつ は、実際 じっさい には複 ふく 酸化 さんか 物 ぶつ であることがほとんどで、孤立 こりつ したタンタル酸 さん イオンを含 ふく む化合 かごう 物 ぶつ はまれである[33] 。前者 ぜんしゃ の例 れい として、イルメナイト 類似 るいじ 構造 こうぞう を取 と るタンタル酸 さん リチウム (LiTaO3 ) や、ペロブスカイト構造 こうぞう を取 と るタンタル酸 さん カリウム (KTaO3 ) が挙 あ げられる。これらの結晶 けっしょう ではタンタル原子 げんし が6個 こ の酸素 さんそ 原子 げんし に囲 かこ まれており、孤立 こりつ した [TaO3 ]− イオンは存在 そんざい しない。タンタル酸 さん イットリウム (YTaO4 ) は後者 こうしゃ の例 れい で、灰 はい 重石 おもし に似 に た構造 こうぞう を持 も つ結晶 けっしょう には、孤立 こりつ した四 よん 面体 めんてい 状 じょう のタンタル(V)酸 さん イオン [TaO4 ]3− が含 ふく まれる[34] 。
五 ご 酸化 さんか タンタルと水酸化 すいさんか アルカリを溶融 ようゆう し、生成 せいせい 物 ぶつ を水 みず で処理 しょり すると、水溶 すいよう 性 せい のイソポリ酸 さん 塩 しお が得 え られる[30] 。カリウムイオン (K+ ) とヘキサタンタル酸 さん イオン [Ta6 O19 ]8− からなる K8 [Ta6 O19 ]⋅16H2 O がよく知 し られている。[Ta6 O19 ]8− は、6個 こ のTaO6 八 はち 面体 めんてい が稜 りょう 共有 きょうゆう でつながった構造 こうぞう をしており、タングステン のイソポリ酸 さん イオン [W6 O19 ]2− と同 おな じ形 がた である。25個 こ の原子 げんし からなる大 おお きなイオンであるが、水溶液 すいようえき 中 ちゅう でもこのままの形 かたち で存在 そんざい する[31] 。
ホウ化 か タンタル (TaB2 )
他 た の耐火 たいか 金属 きんぞく と同様 どうよう に、発見 はっけん されているタンタル化合 かごう 物 ぶつ の中 なか でもっとも硬 かた いのは、ホウ化物 ばけもの や炭化物 たんかぶつ である。炭化 たんか タンタル (TaC) は、同様 どうよう の用途 ようと で用 もち いられている炭化 たんか タングステン と同様 どうよう 、硬 かた いセラミックス で、切削 せっさく 工具 こうぐ に使 つか われる。窒化タンタル は、マイクロエレクトロニクスの分野 ぶんや において薄膜 うすまく 絶縁 ぜつえん 体 たい として用 もち いられる[35] 。
もっとも研究 けんきゅう されているタンタルのカルコゲン化物 ばけもの は硫化 りゅうか タンタル(IV) (TaS2 ) であり、他 た の遷移 せんい 金属 きんぞく ジカルコゲナイド に見 み られるように、層状 そうじょう 半導体 はんどうたい である。タンタルとテルル の合金 ごうきん は準 じゅん 結晶 けっしょう を形成 けいせい する[36] 。
タンタルのハロゲン化物 ばけもの の酸化 さんか 数 すう は+5、+4、+3を取 と る。フッ化 か タンタル(V) (TaF5 ) は融点 ゆうてん が摂氏 せっし 97.0度 ど の白 しろ い固体 こたい である。気 き 相 しょう の孤立 こりつ TaF5 分子 ぶんし は三方両錐形分子構造 を取 と るが、固体 こたい 中 ちゅう ではTaF6 八 はち 面体 めんてい が頂点 ちょうてん 共有 きょうゆう した四 よん 量 りょう 体 たい として存在 そんざい する。ヘプタフルオロタンタル(V)酸 さん イオン [TaF7 ]2− は、タンタルをニオブから分離 ぶんり する際 さい に用 もち いられる[37] 。塩化 えんか タンタル(V) 、臭 におい 化 か タンタル(V) 、ヨウ化 か タンタル(V) (TaCl5 , TaBr5 , TaI5 ) は、固体 こたい 中 ちゅう ではTaX6 八 はち 面体 めんてい が稜 りょう 共有 きょうゆう した二 に 量 りょう 体 からだ として存在 そんざい し、水 みず にあうと加水 かすい 分解 ぶんかい してハロゲン化 か 酸化 さんか 物 ぶつ となる[38] 。塩化 えんか タンタル(V)は、有機 ゆうき タンタル化合 かごう 物 ぶつ の合成 ごうせい において出発 しゅっぱつ 物質 ぶっしつ として用 もち いられる[39] 。
フッ化 か タンタル(IV) (TaF4 ) は知 し られていない。他 た のハロゲン化 か タンタル(IV) (TaX4 ) も不安定 ふあんてい で、空気 くうき 中 ちゅう で容易 ようい に酸化 さんか されてハロゲン化 か 酸化 さんか 物 ぶつ を与 あた える。また加熱 かねつ により酸化 さんか 数 すう +5のハロゲン化物 ばけもの (TaX5 ) と酸化 さんか 数 すう +3のハロゲン化物 ばけもの (TaX3 ) に不 ふ 均 ひとし 化 か する[30] 。
見 み かけの酸化 さんか 数 すう が+2.5または+2.33となる塩化 えんか 物 ぶつ 、臭化物 しゅうかぶつ 、ヨウ化物 ばけもの が知 し られている。これらのハロゲン化物 ばけもの では、6個 こ のタンタル原子 げんし が正 せい 八 はち 面体 めんてい 状 じょう に並 なら んだ、[Ta6 X12 ]3+ または[Ta6 X12 ]2+ が構成 こうせい 単位 たんい として認 みと められる。この構成 こうせい 単位 たんい に含 ふく まれるハロゲン原子 げんし はタンタル原子 げんし がつくる八 はち 面体 めんてい の外側 そとがわ に位置 いち しており、化合 かごう 物 ぶつ 内 ない の金属 きんぞく 原子 げんし の間 あいだ に化学 かがく 結合 けつごう が存在 そんざい していること示 しめ している[30] [32] 。
ペンタメチルタンタル (Ta(CH3 )5 )
有機 ゆうき タンタル化合 かごう 物 ぶつ としては、ペンタメチルタンタル (英語 えいご 版 ばん ) 、塩化 えんか アルキルタンタル、水素 すいそ 化 か アルキルタンタル、およびカルベン錯体 さくたい やシクロペンタジエニル錯体 さくたい などがある[40] [41] 。金属 きんぞく カルボニル は、ヘキサカルボニルタンタル(−I)酸 さん イオン [Ta(CO)6 ]− や関連 かんれん するイソシアニド について、多様 たよう な塩 しお や置換 ちかん 誘導体 ゆうどうたい が知 し られている。
タンタルの宇宙 うちゅう における存在 そんざい 度 ど は重量 じゅうりょう 比 ひ では0.08 ppb 程度 ていど [42] 、原子 げんし 数 すう では全 ぜん 原子 げんし 数 すう の8×10-9 パーセント程度 ていど とされ、原子 げんし 数 すう では安定 あんてい 元素 げんそ として宇宙 うちゅう でもっとも希少 きしょう である[43] 。宇宙 うちゅう において鉄 てつ より重 おも い元素 げんそ のほとんどは、超新星 ちょうしんせい 爆発 ばくはつ や恒星 こうせい 内部 ないぶ での中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく 反応 はんのう によって生成 せいせい される[44] 。中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく による元素 げんそ 生成 せいせい では、鉄 てつ が中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく により質量 しつりょう 数 すう が大 おお きな鉄 てつ の同位 どうい 体 たい になり、ベータ崩壊 ほうかい によって原子 げんし 番号 ばんごう の1つ大 おお きな元素 げんそ となる反応 はんのう を繰 く り返 かえ して、各種 かくしゅ の同位 どうい 体 たい が生成 せいせい されるが、中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく やベータ崩壊 ほうかい の起 お きやすさによって、どの同位 どうい 体 たい が多 おお くなるかが決定 けってい され、この結果 けっか タンタルは希少 きしょう なものとなっている[45] 。
タンタルには、180 Ta (0.012 %) と181 Ta (99.988 %) の2種類 しゅるい の天然 てんねん 同位 どうい 体 たい が存在 そんざい し、このうち180 Taは全 ぜん 核種 かくしゅ の中 なか でもっとも少 すく ない。従来 じゅうらい の超新星 ちょうしんせい 爆発 ばくはつ や中性子 ちゅうせいし 捕獲 ほかく による機構 きこう では、この180 Taの少 すく なさを説明 せつめい できずにいたが、超新星 ちょうしんせい 爆発 ばくはつ の際 さい に放出 ほうしゅつ されるニュートリノ が180 Hf や181 Taと弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう を起 お こして180 Taを生成 せいせい するモデルが新 あら たに提案 ていあん された。180 Taは基底 きてい 状態 じょうたい で半減 はんげん 期 き 8.15時 じ 間 あいだ のものと、半減 はんげん 期 き 1015 年 とし 以上 いじょう の準 じゅん 安定 あんてい な核 かく 異性 いせい 体 たい があり、弱 よわ い相互 そうご 作用 さよう によって生成 せいせい される180 Taの基底 きてい 状態 じょうたい と核 かく 異性 いせい 体 たい のうち、基底 きてい 状態 じょうたい のものはすべて放射 ほうしゃ 性 せい 壊変により消滅 しょうめつ するため、半減 はんげん 期 き の長 なが い核 かく 異性 いせい 体 たい のみが残 のこ り、基底 きてい 状態 じょうたい と核 かく 異性 いせい 体 たい の生成 せいせい 比率 ひりつ の理論 りろん 計算 けいさん 値 ち から求 もと めた核 かく 異性 いせい 体 たい の推定 すいてい 量 りょう が実在 じつざい 量 りょう と一致 いっち することから、180 Taの生成 せいせい 起源 きげん が説明 せつめい され、またその希少 きしょう さの理由 りゆう も説明 せつめい されることになった[44] 。
タンタルは、地球 ちきゅう の地殻 ちかく に重量 じゅうりょう 比 ひ で1 ppm [46] から2 ppm[47] 程度 ていど 含 ふく まれていると推計 すいけい されている。
タンタルを含 ふく む鉱物 こうぶつ はたくさんあるが、工業 こうぎょう 的 てき に原材料 げんざいりょう として利用 りよう されているのはそのごく一部 いちぶ だけである。タンタル石 せき (鉄 てつ タンタル石 せき 、マンガンタンタル石 せき 、マグネシウムタンタル石 せき などで構成 こうせい される)、マイクロ石 せき 、ウォッジナイト (英語 えいご 版 ばん ) 、ユークセン石 せき (英語 えいご 版 ばん ) (より正確 せいかく にはイットリウムユークセン石 せき )、ポリクレース石 せき (英語 えいご 版 ばん ) (より正確 せいかく にはイットリウムポリクレース石 せき )といった鉱物 こうぶつ がある[6] 。タンタル抽出 ちゅうしゅつ の観点 かんてん では、タンタル石 せき (Fe , Mn )Ta2 O 6 がもっとも重要 じゅうよう である。タンタル石 せき とコルンブ石 せき (Fe , Mn ) (Ta, Nb )2 O 6 と同 おな じ鉱石 こうせき 構造 こうぞう をしている。ニオブよりタンタルが多 おお いものをタンタル石 せき と呼 よ び、タンタルよりニオブが多 おお いものをコルンブ石 せき (あるいはニオブ石 せき )と呼 よ ぶ。タンタル石 せき やそのほかタンタル含有 がんゆう 鉱物 こうぶつ は密度 みつど が高 たか いため、選鉱 せんこう には重力 じゅうりょく 選鉱 せんこう (英語 えいご 版 ばん ) が最良 さいりょう の手段 しゅだん である。他 た にサマルスキー石 せき やフェルグソン石 せき といった鉱物 こうぶつ がタンタルを含 ふく むことがある。
こうした鉱石 こうせき 類 るい の鉱床 こうしょう は、古 ふる い時代 じだい に起 お きた、大陸 たいりく 地殻 ちかく 内部 ないぶ の物質 ぶっしつ が溶融 ようゆう してマグマ が生 しょう じ、結晶 けっしょう 分化 ぶんか 作用 さよう によって濃 こ 集 しゅう したことによるものや、化学 かがく 的 てき 風化 ふうか 作用 さよう によって難 なん 溶性 ようせい の鉱物 こうぶつ のみが残 のこ って形成 けいせい される風化 ふうか 残留 ざんりゅう 鉱床 こうしょう によるものなどで形成 けいせい されている。その生成 せいせい の由来 ゆらい から、古 ふる い地殻 ちかく にのみ存在 そんざい する鉱床 こうしょう であるとされている[48] 。
また、スズ の原料 げんりょう 鉱石 こうせき である錫 すず 石 せき の微量 びりょう 成分 せいぶん としてもタンタルが含 ふく まれることがある。錫 すず 石 せき の鉱床 こうしょう も、花崗岩 かこうがん 質 しつ マグマや熱 ねつ 水 すい 鉱 こう 液 えき に由来 ゆらい し、風化 ふうか ・流出 りゅうしゅつ して地表 ちひょう 水 すい や海水 かいすい により重力 じゅうりょく 選別 せんべつ を受 う けて形成 けいせい される[48] 。
オーストラリア・ピルバラ 産 さん のタンタル石 せき
2012年 ねん までのタンタル生産 せいさん 量 りょう の変化 へんか [49]
タンタルの生産 せいさん は、スズの精錬 せいれん に際 さい して出 で てくる鉱滓 こうさい (スラグ)に含 ふく まれるものから抽出 ちゅうしゅつ するものと、タンタル鉱石 こうせき を採掘 さいくつ して生産 せいさん するものがある[50] 。タンタルの精錬 せいれん は、冶金 やきん 工業 こうぎょう においても要求 ようきゅう の厳 きび しい分野 ぶんや である。精錬 せいれん 上 じょう の主 おも な問題 もんだい は、タンタルの鉱石 こうせき にはかなりの量 りょう のニオブ が含 ふく まれており、その化学 かがく 的 てき 性質 せいしつ がタンタルとほとんど同 おな じという点 てん にある。この問題 もんだい を解決 かいけつ するために多 おお くの方式 ほうしき が開発 かいはつ されてきた。現代 げんだい では、この分離 ぶんり は湿式 しっしき 精錬 せいれん によって実施 じっし されている[51] 。
スズスラグを起点 きてん としてタンタルを抽出 ちゅうしゅつ する場合 ばあい 、電気 でんき 炉 ろ 中 ちゅう でスラグをコークス と反応 はんのう させて炭化物 たんかぶつ とし、これを精製 せいせい してアルカリ処理 しょり してタンタル分 ぶん を濃縮 のうしゅく して精 せい 鉱 こう を得 え る。これ以降 いこう は、タンタル鉱石 こうせき を起点 きてん としてタンタルを抽出 ちゅうしゅつ する場合 ばあい と同 おな じである[50] 。
タンタル鉱石 こうせき を起点 きてん とする場合 ばあい 、鉱石 こうせき は砕 くだ かれて、重力 じゅうりょく 選鉱 せんこう により選別 せんべつ される。一般 いっぱん 的 てき にこの処理 しょり は、鉱山 こうざん の近 ちか くで実施 じっし される。
フッ化 か 水素 すいそ 酸 さん と硫酸 りゅうさん または塩酸 えんさん を使 つか って、鉱石 こうせき の浸出 しんしゅつ (英語 えいご 版 ばん ) を行 おこな うところから抽出 ちゅうしゅつ が始 はじ まる。これにより鉱石 こうせき に含 ふく まれる多 おお くの非金属 ひきんぞく 不純物 ふじゅんぶつ からタンタルとニオブを分離 ぶんり することができる。タンタルは様々 さまざま な形態 けいたい で鉱石 こうせき に含 ふく まれるが、こうした条件下 じょうけんか ではほとんどのタンタルの5価 か の酸化 さんか 物 ぶつ は同 おな じようにふるまうので、五 ご 酸化 さんか 物 ぶつ を代表 だいひょう として取 と り扱 あつか うことができる。この抽出 ちゅうしゅつ を簡単 かんたん な式 しき で示 しめ せば以下 いか の通 とお りとなる。
Ta
2
O
5
+
14
HF
⟶
2
H
2
[
TaF
7
]
+
5
H
2
O
{\displaystyle {\ce {Ta2O5 + 14 HF -> 2H2[TaF7] + 5H2O}}}
これとほぼ同 おな じ反応 はんのう がニオブ側 がわ の成分 せいぶん にも起 お きるが、この抽出 ちゅうしゅつ 条件 じょうけん においては六 ろく フッ化物 ばけもの が主 おも に得 え られる。
Nb
2
O
5
+
12
HF
⟶
2
H
[
NbF
6
]
+
5
H
2
O
{\displaystyle {\ce {Nb2O5 + 12HF -> 2H[NbF6] + 5H2O}}}
この式 しき は単純 たんじゅん 化 か されたものである。硫酸 りゅうさん および塩酸 えんさん を使 つか った際 さい に、それぞれ硫酸 りゅうさん 水素 すいそ イオン (HSO4 − ) および塩化 えんか 物 ぶつ イオンがニオブ(V)イオンとタンタル(V)イオンの配 はい 位 い 子 こ として競合 きょうごう すると推測 すいそく されている[51] 。タンタルのフッ化物 ばけもの とニオブのフッ化物 ばけもの の錯体 さくたい が、水溶液 すいようえき からシクロヘキサノン 、オクタノール 、メチルイソブチルケトン といった有機 ゆうき 溶媒 ようばい に液 えき 液 えき 抽出 ちゅうしゅつ によって抽出 ちゅうしゅつ される。この単純 たんじゅん な操作 そうさ によって、鉄 てつ 、マンガン 、チタン 、ジルコニウム といったほとんどの金属 きんぞく 含有 がんゆう 不純物 ふじゅんぶつ が水溶液 すいようえき にフッ化物 ばけもの やそのほかの錯体 さくたい として残 のこ り、取 と り除 のぞ くことができる。
タンタルをニオブから分離 ぶんり する操作 そうさ は、混合 こんごう された酸 さん のイオン強度 きょうど を下 さ げていくことによって、ニオブが水溶液 すいようえき に溶 と け出 だ すことで行 おこな われる。この条件 じょうけん では、オキシフッ化物 ばけもの H2 [NbOF5 ] が形成 けいせい されると見 み られている。ニオブの除去 じょきょ 後 ご 、精製 せいせい された H2 [TaF7 ] の溶液 ようえき はアンモニア 水溶液 すいようえき によって中和 ちゅうわ され、酸化 さんか タンタルの水 みず 和物 あえもの が固体 こたい として得 え られ、これを煆焼 して五 ご 酸化 さんか タンタル (Ta2 O5 ) を得 え る[52] 。
あるいは、ニオブ除去 じょきょ 後 ご のH2 [TaF7 ] の溶液 ようえき を加水 かすい 分解 ぶんかい する代 か わりに、フッ化 か カリウム で処理 しょり してヘプタフルオロタンタル(V)酸 さん カリウム (英語 えいご 版 ばん ) (フッ化 か タンタル酸 さん カリウム)を得 え ることもできる。H2 [TaF7 ] と異 こと なりカリウム塩 しお は容易 ようい に結晶 けっしょう 化 か し、固体 こたい として取 と り扱 あつか うことができる。
H
2
[
TaF
7
]
+
2
KF
⟶
K
2
[
TaF
7
]
+
2
HF
{\displaystyle {\ce {H2[TaF7] + 2KF -> K2[TaF7] + 2HF}}}
マリニャック法 ほう と呼 よ ばれる古 ふる い手段 しゅだん では、H2 [TaF7 ] と H2 [NbOF5 ] の混合 こんごう 物 ぶつ を K2 [TaF7 ] と K2 [NbOF5 ] の混合 こんごう 物 ぶつ に変化 へんか させ、これを水 みず への溶解 ようかい 度 ど の差 さ を利用 りよう する分別 ふんべつ 晶 あきら 析法 により分離 ぶんり していた。
精錬 せいれん によって得 え られたフッ化 か タンタル酸 さん カリウムあるいは五 ご 酸化 さんか タンタルは、その後 ご フッ化 か タンタル酸 さん カリウムのナトリウム 還元 かんげん あるいは五 ご 酸化 さんか タンタルの溶融 ようゆう 塩 しお 電解 でんかい 、炭素 たんそ 還元 かんげん 、フッ化物 ばけもの ・塩化 えんか 物 ぶつ ・酸化 さんか 物 ぶつ などの水素 すいそ 還元 かんげん といった方法 ほうほう で金属 きんぞく タンタルにする[53] 。工業 こうぎょう 的 てき に用 もち いられる方法 ほうほう は、ナトリウム還元 かんげん 法 ほう または溶融 ようゆう 塩 しお 電解 でんかい である[50] 。
フッ化 か タンタル酸 さん カリウムのナトリウム還元 かんげん は、反応 はんのう るつぼに原料 げんりょう のフッ化 か タンタル酸 さん カリウムを積 つ み重 かさ ね、アルゴン などの不 ふ 活性 かっせい ガスで満 み たし、ヒーターで加熱 かねつ しながら金属 きんぞく ナトリウムを導入 どうにゅう する。ナトリウムの沸点 ふってん である摂氏 せっし 883度 ど に達 たっ するとナトリウムが蒸発 じょうはつ してフッ化 か タンタル酸 さん カリウムの表面 ひょうめん に達 たっ し、これによって還元 かんげん 反応 はんのう が進行 しんこう する[53] 。還元 かんげん 後 ご 、温水 おんすい やメタノールで洗浄 せんじょう することでタンタルの粗 そ 金属 きんぞく が得 え られる[50] 。
K
2
[
TaF
7
]
+
5
Na
⟶
Ta
+
5
NaF
+
2
KF
{\displaystyle {\ce {K2[TaF7] + 5Na -> Ta + 5NaF + 2KF}}}
溶融 ようゆう 塩 しお 電解 でんかい 法 ほう は、ホール・エルー法 ほう を改良 かいりょう したものを用 もち いる。タンタル溶融 ようゆう 塩 しお 電解 でんかい では、入力 にゅうりょく として酸化 さんか 物 ぶつ 、出力 しゅつりょく として金属 きんぞく の、どちらも液体 えきたい を利用 りよう するのではなく、粉末 ふんまつ 状 じょう の酸化 さんか 物 ぶつ を用 もち いて実行 じっこう される。この手法 しゅほう の最初 さいしょ の発見 はっけん は1997年 ねん のことで、ケンブリッジ大学 けんぶりっじだいがく の研究 けんきゅう 者 しゃ がある種 しゅ の酸化 さんか 物 ぶつ の小 ちい さなサンプルを溶融 ようゆう 塩 しお に浸 ひた し、電流 でんりゅう によりこの酸化 さんか 物 ぶつ を還元 かんげん したことによる。陰極 いんきょく には金属 きんぞく 酸化 さんか 物 ぶつ の粉末 ふんまつ を使 つか っていた。陽極 ようきょく は炭素 たんそ 製 せい であった。摂氏 せっし 約 やく 1,000度 ど の溶融 ようゆう 塩 しお が電解 でんかい 質 しつ として用 もち いられた。この方法 ほうほう の最初 さいしょ の精錬 せいれん 装置 そうち は、全 ぜん 世界 せかい の年間 ねんかん 需要 じゅよう の3 - 4パーセント程度 ていど を供給 きょうきゅう できる能力 のうりょく を持 も っている[54] 。
こうした方法 ほうほう で得 え られるタンタルは、真空 しんくう 熱処理 ねつしょり によって脱 だつ 水素 すいそ を行 おこな ったり、電子 でんし ビーム溶解 ようかい によってインゴット化 か したりする。タンタルをさらに高 こう 純度 じゅんど 化 か するためには、電子 でんし ビーム帯域 たいいき 溶解 ようかい 法 ほう を用 もち いる[50] 。
タンタルの溶接 ようせつ は、大気 たいき 中 ちゅう の気体 きたい による汚染 おせん を防 ふせ ぐためにアルゴン やヘリウム などの不 ふ 活性 かっせい 気体 きたい の中 なか で行 おこな わなければならない。タンタルははんだ付 つ け不能 ふのう である。タンタルを切削 せっさく 加工 かこう するのは難 むずか しく、特 とく に焼 やき なまし をしたタンタルについては難 むずか しい。焼 や きなましをした状態 じょうたい では、タンタルは非常 ひじょう に展延 てんえん 性 せい が高 たか く、簡単 かんたん に金属 きんぞく 板 ばん に加工 かこう することができる[55] 。
2015年 ねん 時点 じてん のタンタル生産 せいさん 国 こく 、ルワンダが首位 しゅい
2006年 ねん 時点 じてん のタンタル生産 せいさん 国 こく 、オーストラリアが首位 しゅい
21世紀 せいき 初頭 しょとう の時点 じてん では、オーストラリア およびブラジル が主 おも なタンタル生産 せいさん 国 こく であったが、それ以降 いこう はタンタル生産 せいさん の大 おお きな地理 ちり 的 てき 変化 へんか が進 すす んでいる。2007年 ねん から2014年 ねん にかけて、鉱山 こうざん からのタンタル生産 せいさん はコンゴ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく 、ルワンダ やその他 た アフリカ諸国 しょこく へと大 だい 規模 きぼ に移 うつ っている[56] 。2017年 ねん のタンタル生産 せいさん 国 こく 上位 じょうい は、1位 い がルワンダで390トン、2位 い がコンゴ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく で370トン、3位 い がナイジェリア で190トン、4位 い がブラジルで100トン、5位 い が中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく で95トンの順 じゅん となっている[57] 。将来 しょうらい 的 てき なタンタル供給 きょうきゅう 源 げん は、推計 すいけい されている埋蔵 まいぞう 量 りょう 順 じゅん に、サウジアラビア 、エジプト 、グリーンランド 、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく 、モザンビーク 、カナダ 、オーストラリア 、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 、フィンランド 、ブラジル である[58] [59] 。
長 なが らくタンタルの最大 さいだい 生産 せいさん 国 こく であったオーストラリア では、最大 さいだい 生産 せいさん 者 しゃ のタリソン・ミネラルズ (英語 えいご 版 ばん ) が西 にし オーストラリア州 しゅう の南西 なんせい 部 ぶ のグリーンブッシュおよびピルバラ 地区 ちく のウドギナという2か所 しょ で鉱山 こうざん を操業 そうぎょう している。世界 せかい 的 てき な金融 きんゆう 危機 きき のために、ウドギナ鉱山 こうざん は2008年 ねん 末 まつ に操業 そうぎょう を中止 ちゅうし していたが、2011年 ねん 1月 がつ に再開 さいかい された[60] 。再開 さいかい から1年 ねん 経 た たないうちに、タリソン・ミネラルズは「タンタル需要 じゅよう の軟化 なんか 」とその他 た の原因 げんいん を理由 りゆう として、2012年 ねん 2月 がつ 末 まつ にタンタル採掘 さいくつ を中断 ちゅうだん することを発表 はっぴょう した[61] 。ウドギナではタンタルの鉱物 こうぶつ を採掘 さいくつ し、グリーンブッシュにおいてさらに精製 せいせい が行 おこな われてから顧客 こきゃく に売却 ばいきゃく されている[62] 。ニオブの大 だい 規模 きぼ 生産 せいさん 国 こく はブラジル やカナダ であるが、そうした場所 ばしょ で生産 せいさん される鉱物 こうぶつ からも少 すく ないがタンタルが得 え られる。他 た に、中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく 、エチオピア 、モザンビーク といった場所 ばしょ の鉱山 こうざん がタンタルの比率 ひりつ の高 たか い鉱物 こうぶつ を産出 さんしゅつ し、世界 せかい のタンタル生産 せいさん 量 りょう の上位 じょうい を占 し めている。また、タイ やマレーシア のスズ 生産 せいさん の副産物 ふくさんぶつ としてもタンタルが得 え られる。砂 すな 鉱床 こうしょう (英語 えいご 版 ばん ) からの鉱石 こうせき を重力 じゅうりょく 選鉱 せんこう する際 さい に、錫 すず 石 せき (SnO2 ) だけではなく、少 すく ない比率 ひりつ ではあるがタンタル石 せき も含 ふく まれてくる。この結果 けっか 、スズ溶鉱炉 ようこうろ から出 で てくる鉱滓 こうさい には、経済 けいざい 的 てき に有用 ゆうよう な量 りょう のタンタルが含 ふく まれている[15] [63] 。
タンタルの年間 ねんかん 生産 せいさん 量 りょう は、1997年 ねん から2001年 ねん にかけては純 じゅん タンタル換算 かんさん で1,478トンから2,257トン程度 ていど であった[48] 。現状 げんじょう の生産 せいさん 量 りょう で考 かんが えれば、タンタルの残存 ざんそん 埋蔵 まいぞう 量 りょう は50年 ねん 以下 いか であると見積 みつ もられており、リサイクルの必要 ひつよう 性 せい が高 たか まっていることを示 しめ している[64] 。
タンタルはコモディティ として市場 いちば で取引 とりひき される商品 しょうひん ではなく、また金属 きんぞく 単体 たんたい での取引 とりひき も基本 きほん 的 てき に行 おこな われていない。鉱石 こうせき の形態 けいたい で、売 う り手 て と買 か い手 て の直接 ちょくせつ 交渉 こうしょう により値段 ねだん が決定 けってい されている[65] 。タンタルの価格 かかく は、30パーセントTa2 O5 の鉱石 こうせき ベースにして、1ポンド (約 やく 454グラム)あたりの価格 かかく が雑誌 ざっし 等 とう で掲載 けいさい されている。1980年代 ねんだい から1990年代 ねんだい にかけて長 なが らく20 - 30ドル程度 ていど で推移 すいい していたが、2000年 ねん 以降 いこう はIT需要 じゅよう の拡大 かくだい により高騰 こうとう と、IT不 ふ 況 きょう による停滞 ていたい がたびたびあり、2007年 ねん 末 まつ 時点 じてん では35ドル程度 ていど となっている[50] 。その後 ご は高騰 こうとう し、2011年 ねん から2012年 ねん にかけては1ポンド当 あ たりに換算 かんさん して120ドルを超 こ える高値 たかね で取引 とりひき されていた[65] 。
タンタルは紛争 ふんそう 鉱物 こうぶつ の1種 しゅ であるとされる。コルンブ石 せき とタンタル石 せき の産業 さんぎょう 上 じょう の名称 めいしょう であるコルタン からはニオブとタンタルが抽出 ちゅうしゅつ されるが[66] 、中部 ちゅうぶ アフリカ でも採掘 さいくつ される鉱石 こうせき であり、コンゴ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく (かつてのザイール)における第 だい 二 に 次 じ コンゴ戦争 せんそう とタンタルが関 かか わってくる理由 りゆう となっている。2003年 ねん 10月 がつ 23日 にち の国連 こくれん 報告 ほうこく によれば[67] 、密輸 みつゆ も含 ふく めたコルタンの輸出 ゆしゅつ が、第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 以来 いらい 最悪 さいあく の死者 ししゃ 数 すう 記録 きろく となる、1998年 ねん 以降 いこう だけで約 やく 540万 まん 人 にん が死 し んだコンゴにおける戦争 せんそう を助長 じょちょう しているとされる[68] 。コンゴ盆地 ぼんち の武力 ぶりょく 紛争 ふんそう 地帯 ちたい においてコルタンのような資源 しげん を収奪 しゅうだつ することに伴 ともな う、責任 せきにん ある企業 きぎょう 行動 こうどう 、人権 じんけん 、野生 やせい 生物 せいぶつ の危機 きき といった倫理 りんり 上 じょう の問題 もんだい が問 と われるようになっている[69] [70] [71] [72] 。しかし、コルタンの採掘 さいくつ はコンゴの地域 ちいき 経済 けいざい にとっては重要 じゅうよう であるが、世界 せかい のタンタル供給 きょうきゅう に占 し める割合 わりあい は通常 つうじょう は小 ちい さい。アメリカ地質調査所 ちしつちょうさしょ の年鑑 ねんかん は、この地域 ちいき のタンタル生産 せいさん 量 りょう は、2002年 ねん から2006年 ねん にかけての世界 せかい のタンタル生産 せいさん 量 りょう の1パーセント未満 みまん で、2000年 ねん と2008年 ねん に10パーセントに達 たっ したのが最高 さいこう であるとしている[63] 。
「ソリューションズ・フォー・ホープ・タンタルプロジェクト」の目的 もくてき は、「コンゴ民主 みんしゅ 共和 きょうわ 国 こく から紛争 ふんそう と関係 かんけい しないタンタルを供給 きょうきゅう する」ことであるとされている[73] 。
各種 かくしゅ のタンタル電解 でんかい コンデンサ、左 ひだり がリード型 がた 、右 みぎ がチップ型 がた 。大 おお きさの比較 ひかく としてマッチ棒 ぼう を示 しめ した。
タンタルの主 おも な用途 ようと は、電子 でんし 機器 きき の製造 せいぞう であり、主 おも にコンデンサ (キャパシタ)や高 こう 出力 しゅつりょく 抵抗 ていこう 器 き などに金属 きんぞく 粉末 ふんまつ の形態 けいたい で用 もち いられる。タンタル電解 でんかい コンデンサ (英語 えいご 版 ばん ) は、タンタルが表面 ひょうめん に保護 ほご 酸化 さんか 被膜 ひまく を形成 けいせい する性質 せいしつ を利用 りよう し、タンタルの粉末 ふんまつ をペレット状 じょう の形態 けいたい に焼 や き固 かた めたものを一方 いっぽう の極 きょく 板 ばん とし、酸化 さんか 物 ぶつ (Ta2 O5 ) を誘電 ゆうでん 体 たい とし、電解 でんかい 液 えき または伝導 でんどう 性 せい のある固体 こたい をもう一方 いっぽう の極 きょく 板 ばん としたものである。誘電 ゆうでん 体 たい の層 そう が非常 ひじょう に薄 うす くなる(同様 どうよう のアルミニウム電解 でんかい コンデンサなどに比 くら べてもかなり薄 うす い)ことから、小 しょう 容積 ようせき でも大 おお きな静 しずか 電 でん 容量 ようりょう を実現 じつげん できる。大 おお きさと重量 じゅうりょう の利点 りてん から、携帯 けいたい 電話 でんわ 、パーソナルコンピュータ 、自動車 じどうしゃ エレクトロニクス(英語 えいご 版 ばん ) 、カメラ といった用途 ようと に適 てき する[74] 。
また、表面 ひょうめん 弾性 だんせい 波 は フィルター (SAWフィルター)の材料 ざいりょう としても用 もち いられる。これは特定 とくてい の信号 しんごう 波 は のみを選択 せんたく 的 てき に通 とお すフィルターであり、携帯 けいたい 電話 でんわ などにおいて決 き められた送受信 そうじゅしん 周波数 しゅうはすう 以外 いがい の周波数 しゅうはすう 成分 せいぶん をカットするために用 もち いられる。電気 でんき 信号 しんごう を圧 あつ 電 でん 効果 こうか を利用 りよう して一旦 いったん 機械 きかい 的 てき な振動 しんどう に変換 へんかん し、固体 こたい 表面 ひょうめん を伝搬 でんぱん する弾性 だんせい 表面 ひょうめん 波 は とした上 うえ で、その圧 あつ 電 でん 結晶 けっしょう 基盤 きばん の上 うえ に形成 けいせい されたパターンの構造 こうぞう により選択 せんたく 的 てき に周波数 しゅうはすう フィルターを適用 てきよう し、再 ふたた び電気 でんき 信号 しんごう に変換 へんかん する仕組 しく みとなっている。このための圧 あつ 電 でん 単 たん 結晶 けっしょう としてタンタル酸 さん リチウム (LiTaO3 ) またはニオブ酸 さん リチウム (LiNbO3 ) が用 もち いられている[75] 。
スパッタリング によって薄膜 うすまく を形成 けいせい する際 さい に、ターゲット材 ざい (薄膜 うすまく 材料 ざいりょう )としてタンタル(五 ご 酸化 さんか タンタル)を用 もち いることがある[76] 。これによって高 こう 誘電 ゆうでん 率 りつ ・高 こう 絶縁 ぜつえん 耐 たい 圧 あつ の薄膜 うすまく 形成 けいせい が行 おこな われる[77] 。
かつて白熱 はくねつ 電球 でんきゅう のフィラメント の製造 せいぞう にタンタルが利用 りよう されていたことがある。フィラメントは当初 とうしょ 炭素 たんそ (カーボン)のものが使用 しよう されていたが、その性能 せいのう を向上 こうじょう させるために様々 さまざま な金属 きんぞく フィラメントの開発 かいはつ が行 おこな われ、1902年 ねん にドイツ のジーメンス・ウント・ハルスケ の技術 ぎじゅつ 者 しゃ ヴェルナー・フォン・ボルトン (ドイツ語 ご 版 ばん ) がタンタルを利用 りよう したフィラメントを開発 かいはつ した。この電球 でんきゅう は効率 こうりつ が良 よ く明 あか るく白 しろ い光 ひかり を出 だ すことから好評 こうひょう であった。アメリカのゼネラル・エレクトリック はライセンス生産 せいさん の権利 けんり を買 か って1910年 ねん まで生産 せいさん しており、ジーメンス自体 じたい は1913年 ねん まで生産 せいさん していたが、1904年 ねん に発明 はつめい され1906年 ねん に商品 しょうひん 化 か されたタングステン フィラメントを利用 りよう した電球 でんきゅう がより効率 こうりつ が高 たか く寿命 じゅみょう が長 なが かったことから、タンタル電球 でんきゅう は時代遅 じだいおく れとなった[78] [79] [80] 。
タンタルは無線 むせん 送信 そうしん 機 き の極 ごく 超 ちょう 短波 たんぱ 真空 しんくう 管 かん の製造 せいぞう に広 ひろ く用 もち いられている。タンタルは、窒化物 ぶつ や酸化 さんか 物 ぶつ を形成 けいせい して窒素 ちっそ や酸素 さんそ を捕獲 ほかく できるので、グリッドやプレートといった真空 しんくう 管内 かんない 部 ぶ の部品 ぶひん に使 つか って、真空 しんくう 管内 かんない に必要 ひつよう な高 たか い真空 しんくう 度 ど を維持 いじ するためのゲッター (英語 えいご 版 ばん ) としても利用 りよう できる[37] [81] 。
タンタルは、高 たか い融点 ゆうてん や強度 きょうど 、展延 てんえん 性 せい などを持 も つ様々 さまざま な種類 しゅるい の合金 ごうきん を製造 せいぞう するために用 もち いられる。他 た の金属 きんぞく と合金 ごうきん とすることで、金属 きんぞく 加工 かこう 用 よう の超 ちょう 硬 かた 工具 こうぐ を製作 せいさく したり、ジェットエンジン部品 ぶひん 、化学 かがく 処理 しょり 装置 そうち 、原子 げんし 炉 ろ 、ミサイル部品 ぶひん 、熱 ねつ 交換 こうかん 器 き 、タンクや容器 ようき 向 む けの超 ちょう 合金 ごうきん の生産 せいさん といった目的 もくてき で用 もち いられる[82] [74] [83] 。展延 てんえん 性 せい が高 たか いことから、細 ほそ いワイヤやフィラメントをタンタルから作 つく って、アルミニウムのような金属 きんぞく の蒸着 じょうちゃく 処理 しょり に用 もち いられる。
タンタルはほとんどの酸 さん に対 たい して不 ふ 活性 かっせい であるため、化学 かがく 反応 はんのう を行 おこな う容器 ようき や腐食 ふしょく 性 せい 流体 りゅうたい の配管 はいかん などに有用 ゆうよう な金属 きんぞく である。塩酸 えんさん を蒸気 じょうき で熱 ねっ するための熱 ねつ 交換 こうかん 材 ざい はタンタルで作 つく られる[81] 。化学 かがく 工業 こうぎょう においてグラスライニングの反応 はんのう 容器 ようき 等 とう を用 もち いるが、その内面 ないめん が損傷 そんしょう した場合 ばあい の補修 ほしゅう 方法 ほうほう の一 ひと つとしてタンタルを使用 しよう する場合 ばあい がある。[84]
ただし、フッ化 か 水素 すいそ 酸 さん 、熱 ねつ 硫酸 りゅうさん 、熱 ねつ アルカリ 水溶液 すいようえき などはタンタルを腐食 ふしょく する。
融点 ゆうてん が高 たか く酸化 さんか 耐 たい 性 せい があることから、真空 しんくう 炉 ろ (英語 えいご 版 ばん ) の部品 ぶひん の生産 せいさん にタンタルが使 つか われる。また白金 はっきん 坩堝 るつぼ の代 だい 用品 ようひん としてタンタル坩堝 るつぼ が使用 しよう されることがある。タンタルは不 ふ 活性 かっせい であることから、サーモウェル (英語 えいご 版 ばん ) 、バルブ本体 ほんたい 、タンタル製 せい 締結 ていけつ 部品 ぶひん などの腐食 ふしょく 耐 たい 性 せい のある様々 さまざま な部品 ぶひん の製造 せいぞう に用 もち いられる。
カザフスタン銀行 ぎんこう 発行 はっこう のバイメタル貨 。外周 がいしゅう のリング部分 ぶぶん が銀 ぎん で、中央 ちゅうおう がタンタルである。
密度 みつど の高 たか さから、成型 せいけい 炸薬 さくやく や自己 じこ 鍛造 たんぞう 弾 だん の内張 うちば りがタンタルで作 つく られる[85] 。タンタルはその高 たか い密度 みつど と融点 ゆうてん から、成形 せいけい 炸薬 さくやく 弾 だん の装甲 そうこう 貫徹 かんてつ 能力 のうりょく を大 おお いに増進 ぞうしん する[86] [87] 。
またときには、その耐食性 たいしょくせい と重厚 じゅうこう な高級 こうきゅう 感 かん からオーデマ・ピゲ 、ウブロ 、モンブラン 、オメガ 、オフィチーネ・パネライ といった高級 こうきゅう 腕時計 うでどけい 、高級 こうきゅう 宝飾 ほうしょく 品 ひん の製造 せいぞう にも用 もち いられる。
タンタルは体液 たいえき に耐 た え、生体 せいたい に対 たい して不 ふ 活性 かっせい で刺激 しげき 性 せい が少 すく ないため、外科 げか 用 よう 医療 いりょう 用具 ようぐ や人体 じんたい 埋 う め込 こ み材 ざい (インプラント材 ざい )などの製作 せいさく に広 ひろ く用 もち いられる。たとえば、タンタルは硬 かた 組織 そしき に直接 ちょくせつ 接着 せっちゃく する能力 のうりょく が高 たか いことから、多孔 たこう 性 せい のタンタルコーティングが整形 せいけい 外科 げか 用 よう の埋 う め込 こ み物 ぶつ の製作 せいさく に用 もち いられる[88] [89] 。タンタルは剛性 ごうせい が高 たか いことから、応力 おうりょく 遮蔽 しゃへい (英語 えいご 版 ばん ) を避 さ けるために、多孔 たこう 質 しつ 発泡 はっぽう 体 たい や低 ひく い剛性 ごうせい の骨格 こっかく の形態 けいたい で人工 じんこう 股関節 こかんせつ 置換 ちかん 術 じゅつ に用 もち いられる[90] 。タンタルは非鉄 ひてつ ・非 ひ 磁性 じせい の金属 きんぞく であるので、こうしたインプラント材 ざい を埋 う め込 こ まれた患者 かんじゃ も核 かく 磁気 じき 共鳴 きょうめい 画像 がぞう 法 ほう (MRI) の検査 けんさ を受 う けられるとされている[91] 。
またタンタル酸化 さんか 物 ぶつ は、カメラのレンズ用 よう に特別 とくべつ に高 たか い屈折 くっせつ 率 りつ のガラスを作 つく るために用 もち いられる[92] 。
タンタルは地球 ちきゅう 科学 かがく からの関心 かんしん に比 くら べて、環境 かんきょう 分野 ぶんや ではほとんど関心 かんしん を持 も たれていない。上部 じょうぶ 地殻 ちかく でのタンタル濃度 のうど や地殻 ちかく あるいは鉱物 こうぶつ におけるニオブ/タンタル比率 ひりつ の計測 けいそく は地球 ちきゅう 化学 かがく 的 てき な道具 どうぐ として有用 ゆうよう であるため、値 ね が計測 けいそく されている[93] 。2008年 ねん 時点 じてん で最新 さいしん の上部 じょうぶ 地殻 ちかく でのタンタル濃度 のうど は0.92 ppmで、ニオブ/タンタル比 ひ は12.7である[94] 。
環境 かんきょう 中 ちゅう の様々 さまざま な場所 ばしょ におけるタンタルの濃度 のうど に関 かん する情報 じょうほう はあまりなく、特 とく に自然 しぜん の海水 かいすい や淡水 たんすい に溶 と けているタンタルの濃度 のうど に関 かん する信頼 しんらい 性 せい のあるデータが得 え られたことはない[95] 。海水 かいすい 中 ちゅう に溶 と けているタンタルの濃度 のうど に関 かん する値 ね がいくつか発表 はっぴょう されているが、それらには矛盾 むじゅん がある。淡水 たんすい 中 ちゅう の値 ね に関 かん しても海水 かいすい の測定 そくてい 値 ち に比 くら べいくらかましであるにすぎないが、しかし自然 しぜん の水中 すいちゅう における溶解 ようかい 濃度 のうど は現在 げんざい の分析 ぶんせき 能力 のうりょく の限界 げんかい 未満 みまん であることから、おそらく1リットル当 あ たり1ナノグラムを下回 したまわ っていると考 かんが えられている[96] 。分析 ぶんせき には予備 よび 濃縮 のうしゅく 法 ほう を用 もち いる必要 ひつよう があるが、今 いま のところは一貫 いっかん 性 せい のある結果 けっか とならない。そしていずれにせよ、タンタルは自然 しぜん 界 かい の水 みず の中 なか では溶 と けているというよりはほぼ微粒子 びりゅうし の状態 じょうたい で存在 そんざい しているものと思 おも われる[95] 。
土壌 どじょう 、河床 かしょう 堆積 たいせき 物 ぶつ 、大気 たいき エーロゾルなどに含 ふく まれる濃度 のうど の値 ね はより容易 ようい に入手 にゅうしゅ できる[95] 。土壌 どじょう 中 ちゅう の濃度 のうど はほぼ1 ppmであり、地殻 ちかく 中 ちゅう のタンタル濃度 のうど である。これは砕岩質 しつ に由来 ゆらい することを示唆 しさ している。大気 たいき エーロゾルに含 ふく まれる値 ね はさまざまであり、また限 かぎ られている。タンタルの濃縮 のうしゅく が観測 かんそく される場合 ばあい は、雲 くも の中 なか のエーロゾルの水 みず により溶 と ける物質 ぶっしつ が失 うしな われたことによるものであろう[97] 。
人間 にんげん がタンタルを利用 りよう していることに伴 ともな う汚染 おせん が発見 はっけん されたことはない[98] 。生物 せいぶつ 地球 ちきゅう 化学 かがく 的 てき にはタンタルは非常 ひじょう に変化 へんか の少 すく ないものだと思 おも われるが、その循環 じゅんかん や反応 はんのう 性 せい についてはいまだ完全 かんぜん に理解 りかい されているとは言 い えない。
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