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腕時計 - Wikipedia

腕時計うでどけい

腕時計うでどけい懐中時計かいちゅうどけいなど携帯けいたいよう時計とけい

腕時計うでどけい(うでどけい)またはウォッチえい: watch)は、ベルトによって手首てくびくことで携帯けいたいできる時計とけいである。

シチズン プロマスター(はりしき腕時計うでどけい
デジタルしき腕時計うでどけいカシオ 普及ふきゅうひん
かわせいバンドの腕時計うでどけいタイメックス
ジラール・ペルゴがドイツ海軍かいぐん将校しょうこうよう製造せいぞうした史上しじょうはつ量産りょうさんがた腕時計うでどけい
布製ぬのせいバンドの腕時計うでどけいだいいち世界せかい大戦たいせん軍用ぐんよう保護ほごカバーき)
クロノグラフ((もともと機械きかいてき実現じつげんした)はり表示ひょうじによるストップウォッチ機能きのう搭載とうさい。シチズンせい
NATOベルトじゅんじたベルトを装着そうちゃくした腕時計うでどけいよこからたところ、金具かなぐじゅうのベルトが特徴とくちょう
分解ぶんかいした腕時計うでどけい

概説がいせつ 編集へんしゅう

ベルト(おび、バンド)に時計とけい本体ほんたい結合けつごう固定こていされ、これを手首てくびいた状態じょうたい携帯けいたいでき、かつ視認しにんできる小型こがた時計とけいである。

英語えいごでは懐中時計かいちゅうどけい (えい: pocketwatch) もふくんでウォッチ (えい: watch)、あるいはとく区別くべつする場合ばあいはリストウォッチ (えい: wristwatch) とう。日本語にほんごでは「時計とけい」で総称そうしょうされているが、英語えいごではこれら以外いがい置時計おきどけい掛時計かけどけいといったにつけない時計とけいはクロック (えい: clock) であり、日本にっぽんでも業界ぎょうかいではもっぱらこの英語えいごにおける分類ぶんるいじゅんじてあつかわれている[1]

19世紀せいき以降いこう携帯けいたいよう時計とけいとして一般いっぱんてきであった懐中時計かいちゅうどけいは、時刻じこくもうとするたびにわざわざポケットからす(場合ばあいによっては風防ふうぼうガラス保護ほごする金属きんぞくせいぶたける)操作そうさ必要ひつようだったが、手首てくびいておけば視認しにん動作どうさ一瞬いっしゅんであり、いつでも両手りょうてゆび全部ぜんぶ使つかえる。ただし、邪魔じゃまにならないためには時計とけい小型こがたする必要ひつようがあり、懐中時計かいちゅうどけいわって腕時計うでどけい普及ふきゅうしたのは20世紀せいきはいってからである。

当初とうしょ懐中時計かいちゅうどけい同様どうよう機械きかいしき時計とけいであったが、ベルトのために竜頭りゅうず操作そうさ困難こんなんになるので、竜頭りゅうず位置いち変更へんこうするために機械きかい配置はいちを90回転かいてんする必要ひつようがあった。懐中時計かいちゅうどけいでは秒針びょうしん(ダイヤル中央ちゅうおうにある時針じしん分針ふんしんとはべつ位置いちに、秒針びょうしんようとして小型こがたはり文字もじばんもうけられた)は竜頭りゅうず反対はんたいがわ位置いちするのが必要ひつようだったが、初期しょき腕時計うでどけいでは竜頭りゅうずをダイヤル3位置いち変更へんこうしたために、ダイヤル9位置いち秒針びょうしんつものがおおかった。クロノグラフなどで秒針びょうしんが9位置いちにあるのは、懐中時計かいちゅうどけい名残なごりである。機械きかいしき腕時計うでどけいは、懐中時計かいちゅうどけい生産せいさん先行せんこうしたスイス世界せかいてき市場いちば占有せんゆうし、1970年代ねんだいまでの主流しゅりゅうであった。

これにたいし、1960年代ねんだい腕時計うでどけいとして実用じつようされたクォーツしきこう精度せいどであり、日本にっぽんのメーカーによって短期間たんきかん安価あんか量産りょうさん可能かのうとなったことから、圧倒的あっとうてき普及ふきゅうすることになった。現在げんざいでも、大衆たいしゅうけの実用じつよう腕時計うでどけいクォーツしき一般いっぱんてきである。ただし、旧来きゅうらいぜんまい動力どうりょくうご機械きかいしき時計とけいは、製造せいぞうコストがたかく「希少きしょうせい」をかんじさせるので、現在げんざいではしゅとして高級こうきゅう価格かかくたい製品せいひんとしてもちいられている。なお、開発かいはつ途上とじょうこくなどでは電池でんち入手にゅうしゅ容易よういでないなどの理由りゆうからセイコー5などの機械きかいしき腕時計うでどけい使つかわれている。

最初さいしょたん時刻じこくしめ機能きのうしかなかったが、さまざまな機能きのう付加ふかさせるこころみがおこなわれた。たとえば、ストップウォッチ機能きのう付加ふかクロノグラフ)、月齢げつれいしお表示ひょうじするものなどである。防水ぼうすいせいたかめる努力どりょくおこなわれ、潜水せんすいよう腕時計うでどけいダイバーズウォッチ)も登場とうじょうした。

使つかひとにより、どのような意図いと腕時計うでどけいもちいるかはことなる。時刻じこく時間じかんるためにもちいるのが基本きほんではあるが、たとえば登山とざん・ダイバー・スポーツマンなどのためのモデルは、たんなる時刻じこく時間じかん表示ひょうじ機能きのうほか高度こうどたいこうせい耐久たいきゅうせい付加ふか機能きのういた実用じつようひんである。他人たにんてもらうための高価こうかファッション服飾ふくしょく)アイテム、一種いっしゅ装身具そうしんぐとしてもちいるひとおおい。

時代じだいすすむにつれ腕時計うでどけい大衆たいしゅう必需ひつじゅひん進行しんこうし、20世紀せいき末期まっきにはだれしも腕時計うでどけいをつけているような状況じょうきょうであったものの、2000年代ねんだい以降いこう時計とけい機能きのう内蔵ないぞうした携帯けいたい電話でんわスマートフォン普及ふきゅうしたことで、腕時計うでどけい着用ちゃくようしないひとえており、全般ぜんぱんとしての販売はんばいすう減少げんしょう傾向けいこうにある。

歴史れきし 編集へんしゅう

略式りゃくしき年表ねんぴょう 編集へんしゅう

  • 1790ねん - ジュネーブの時計とけいしょうジャケ・ドロー&ルショーのカタログに腕時計うでどけい記載きさいされる。どのようなものかは不明ふめい[2]
  • 19世紀せいき初頭しょとう - 小型こがた時計とけいけられた装身具そうしんぐなどが登場とうじょうしはじめる。
  • 1806ねん - 現存げんそんする最古さいこ腕時計うでどけいジョセフィーヌ時計とけい)が製作せいさくされる。完成かんせいねん不明ふめい[2]
  • 1810ねん - ナポリの王妃おうひアブラアム=ルイ・ブレゲうで装着そうちゃく可能かのう時計とけい注文ちゅうもん、2ねん完成かんせい
  • 1879ねん - ジラール・ペルゴぐん用品ようひんとして腕時計うでどけい製作せいさく
  • 1900ねん - オメガ世界せかいはつ一般いっぱん腕時計うでどけい発表はっぴょう[3]
  • 1902ねん - ベルヌーイほうによる人造じんぞうルビー製造せいぞう実用じつよう。それまで天然てんねん宝石ほうせき(でも品位ひんいひくくずせき)の加工かこうたよっていた懐中時計かいちゅうどけい腕時計うでどけい軸受じくうけざい品質ひんしつ安定あんていした人造じんぞう宝石ほうせき移行いこう、コスト低減ていげん品質ひんしつ向上こうじょう効果こうかる。
  • 1906ねん - カルティエの『サントス』1ごう完成かんせい1911ねん男性だんせいよう販売はんばいされ人気にんきとなる[4]
  • 1913ねん - 服部はっとり時計とけいてんげんセイコーホールディングス)が日本にっぽんはつじゅん国産こくさん腕時計うでどけい『ローレル』を発売はつばい[5]
  • 1926ねん - フォルティス世界せかいはつ自動じどう腕時計うでどけい発表はっぴょう。イギリスのオイスターしゃ防水ぼうすいしき「オイスターケース」がロレックス時計とけい搭載とうさいされ定番ていばんとなる。以後いご、より簡易かんい方式ほうしき防水ぼうすい時計とけい各国かっこくつくられるようになる。
  • 1934ねん - スイスで、テンプのしんてんしん)を受石ごとばねによる浮動ふどう支持しじとした腕時計うでどけい耐震たいしん機構きこう「インカブロック」(Incabloc)が実用じつよう落下らっかなどの衝撃しょうげきによる、時計とけいてんしん故障こしょうらすことに成功せいこう以降いこう類似るいじ浮動ふどうしき耐震たいしん機構きこうおおくの腕時計うでどけい導入どうにゅうされる。
  • 1957ねん - ハミルトン世界せかいはつ電気でんきしき腕時計うでどけい『ベンチュラ』を発表はっぴょう
  • 1960ねん - ブローバ音叉おんさしき腕時計うでどけい『アキュトロン』を発表はっぴょう
  • 1961ねん - ポレオットの『シュトゥルマンスキー』が宇宙うちゅう飛行ひこうユーリイ・ガガーリンによって、史上しじょうはつ宇宙うちゅう使用しようされた腕時計うでどけいとなる。
  • 1969ねん - オメガの『スピードマスター』がつき使用しようされ、世界せかいはじめて地球ちきゅうがい天体てんたい使用しようされた腕時計うでどけいとなる[3]
    • 12月[6] - 服部はっとり時計とけいてん世界せかいはつのクォーツしき腕時計うでどけい『アストロン』を発表はっぴょう
  • 1970ねん - ハミルトンが世界せかいはつのデジタル表示ひょうじ腕時計うでどけい『パルサー』を発表はっぴょう
  • 1990ねん - ユンハンス世界せかいはつ電波でんぱしき腕時計うでどけい『メガ1』を発表はっぴょう[7]
  • 2011ねん - シチズン世界せかいはつ衛星えいせい電波でんぱしき腕時計うでどけい『エコ・ドライブ サテライトウエーブ』を発表はっぴょう[8]
  • 2014ねん - カシオ世界せかいはつのハイブリッド時刻じこく取得しゅとくシステム(GPS受信じゅしん標準ひょうじゅん電波でんぱ受信じゅしん)を搭載とうさいした腕時計うでどけいG-SHOCK発表はっぴょう[9]
  • 2017ねん - カシオが世界せかいはつの3つの時刻じこく取得しゅとくシステム(Connectd エンジン 3-Way)を搭載とうさいした腕時計うでどけい『G-SHOCK』発表はっぴょう[10]

腕時計うでどけい誕生たんじょう 編集へんしゅう

腕時計うでどけい最古さいこ記録きろくはジュネーブの時計とけいしょうジャケ・ドロー&ルショー1790ねんのカタログに記載きさいされたものとわれている[2]。また、現存げんそんする最古さいこ腕時計うでどけいはパリの宝石商ほうせきしょう1806ねん製作せいさくした、時計とけいんだエメラルドのブレスレットとされている。1810ねんには時計とけい細工ざいくのブレゲがナポリの王妃おうひカロリーヌ・ミュラ)のために、金髪きんぱつかねんだベルトでうで装着そうちゃくできるミニッツリピータとバイメタル温度おんどけいそなえたたまごがた時計とけい製作せいさくして2ねん完成かんせいさせた(現在げんざい行方ゆくえ不明ふめい)。このように宝飾ほうしょくひんとして製作せいさくされたれい以前いぜんからあったがほとんどがいちてんぶつであり、普及ふきゅうしたものはなかった。

腕時計うでどけい製品せいひんされた契機けいきは、ぐんからの需要じゅようである。懐中時計かいちゅうどけい片手かたて砲撃ほうげきのタイミングを計測けいそくしていた砲兵ほうへい手首てくび懐中時計かいちゅうどけいをくくりつけて使用しようする工夫くふうからはじまったとされている。ドイツぐんがこのアイデアの製品せいひん時計とけいメーカーに打診だしんしている。1879ねんドイツ皇帝こうていヴィルヘルム1せいドイツ海軍かいぐんようとしてジラール・ペルゴ腕時計うでどけいを2,000製作せいさくさせたという記録きろくのこっている[11]。この時計とけい網目あみめじょう金属きんぞくせいカバーをそなえていた。

その草創そうそう使用しようれいとしては1899ねんボーア戦争せんそうでイギリスぐん将兵しょうへい懐中時計かいちゅうどけい手首てくびかわベルトで装着そうちゃくしたれいがある。当時とうじホレイショ・キッチナーり「キッチナー・ベルト」とばれた。

初期しょき腕時計うでどけい 編集へんしゅう

オメガ世界せかい先駆さきがけて1900ねん腕時計うでどけい商品しょうひんし、1902ねんには広告こうこくっている。しかし当時とうじ女性じょせいよう懐中時計かいちゅうどけい竜頭りゅうず位置いちよこえてかわベルトに固定こていしただけのものでデザインの無骨ぶこつさから、一般いっぱん普及ふきゅうすることはなかった。その腕時計うでどけい専用せんようのケースとムーブメント開発かいはつおこなわれるようになったが、依然いぜんとして男性だんせいよう懐中時計かいちゅうどけい主流しゅりゅうで、腕時計うでどけい正式せいしき存在そんざいとはなされなかった。

特定とくていブランドの腕時計うでどけいとして最初さいしょ人気にんき製品せいひんとなったのは1911ねんにフランスのカルティエ発売はつばいした角形かくがたケースの紳士しんし時計とけい「サントス」である。「サントス」の原型げんけいは、ルイ・カルティエが友人ゆうじん飛行ひこう富豪ふごうアルベルト・サントス・デュモン依頼いらいされ、飛行船ひこうせん操縦そうじゅうちゅう使用しようてきした腕時計うでどけい製作せいさくしたものであった。後年こうねんその洗練せんれんされたデザインがパリの社交しゃこうかい話題わだいとなり、市販しはんされるにいたった。「サントス」はスポーツ・ウォッチの古典こてんとなり、21世紀せいきはいった現在げんざいでもカルティエの代表だいひょうてき製品せいひんひとつとして市販しはんされている。

だいいち世界せかい大戦たいせん腕時計うでどけい普及ふきゅううなが契機けいきとなった。ハミルトンブライトリング軍用ぐんよう腕時計うでどけい大量たいりょう生産せいさんするようになり[12]男性だんせい携帯けいたいする時計とけい懐中時計かいちゅうどけいから腕時計うでどけいへと完全かんぜん移行いこうした。戦後せんごにはおおくの懐中時計かいちゅうどけいメーカーが腕時計うでどけい分野ぶんや転身てんしんした。

だい世界せかい大戦たいせん以前いぜんからの主要しゅよう腕時計うでどけい生産せいさんこくとしては、懐中時計かいちゅうどけい時代じだいから大量たいりょう生産せいさん技術ぎじゅつ部品ぶひん互換ごかんシステムが発展はってんしていたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのほか、ふるくから時計とけい産業さんぎょう発達はったつしたスイスイギリスドイツなどがあげられるが、のちにイギリスのメーカーは旧弊きゅうへい生産せいさん体制たいせい時流じりゅういつかず市場いちばから脱落だつらくし、ドイツのメーカーは廉価れんかたい製品せいひん主体しゅたいとするようになった。アメリカのメーカーも1960年代ねんだい以降いこう高級こうきゅうひんメーカーが衰亡すいぼうしてブランドめいのみのりをおこな事態じたいとなり、正確せいかく意味いみ存続そんぞくするメーカーは大衆たいしゅうけブランドのタイメックスのみとなった。

スイスでは時計とけい産業さんぎょう膨大ぼうだい中小ちゅうしょう零細れいさい企業きぎょうぐんによる分業ぶんぎょうせいもとづいて形成けいせいされており、廉価れんかひんから高級こうきゅうひんまでひろ価格かかくたい製品せいひん供給きょうきゅうすることができた。業界ぎょうかい全体ぜんたい連携れんけいすすみ、1920年代ねんだい以降いこう産業さんぎょう防衛ぼうえい目的もくてきのカルテル構築こうちく本格ほんかく、1934ねんにはスイス連邦れんぽう政府せいふ政令せいれいによる時計とけい産業さんぎょう保護ほご(ムーブメント部分ぶぶんのみの輸出ゆしゅつ起因きいんする国内こくない時計とけい産業さんぎょう空洞くうどう防止ぼうしや、他国たこく時計とけい産業さんぎょう伸長しんちょうふせ目的もくてき時計とけい製造せいぞう機械きかい輸出ゆしゅつ管理かんりなど)にした。スイス時計とけい産業さんぎょう独特どくとく構造こうぞうは1960年代ねんだいまでスイス時計とけい国際こくさい競争きょうそうりょく維持いじし、最盛さいせいには自社じしゃでムーブメントを製造せいぞうできる一貫いっかん生産せいさんメーカー(マニュファクチュール)のほか、多数たすうのムーブメント専業せんぎょうメーカーにささえられた有名ゆうめい無名むめい膨大ぼうだい時計とけいブランド(エタブリスール)をようした一方いっぽう業界ぎょうかい全体ぜんたい近代きんだいではおくれを結果けっかとなった。

なお、スイスメーカーのムーブメントを部品ぶひんとして輸入ゆにゅうして、ケース製作せいさく最終さいしゅうてのみ輸入ゆにゅうこくおこなノックダウン生産せいさん手法しゅほう一種いっしゅ「シャブロナージュ」(chablonnage)は、関税かんぜい抑制よくせい目的もくてき懐中時計かいちゅうどけい時代じだいの19世紀せいきまつからられ、腕時計うでどけい主流しゅりゅう時代じだいになってもさかんにおこなわれた。20世紀せいきはいってからはアメリカの大手おおて時計とけいメーカーの一部いちぶが、スイスに自社じしゃ現地げんち工場こうじょういてムーブメント生産せいさんおこない、人件じんけん抑制よくせい当時とうじ大量たいりょう生産せいさん技術ぎじゅつをもってしてもアメリカ本国ほんごく人件じんけんはすでにたかくついていた)しつつスイス時計とけい業界ぎょうかい・スイス政府せいふ利益りえき逸出いっしゅつ政策せいさく回避かいひするうごきもしょうじた。

 
ジャガー・ルクルトせい自動じどうまき腕時計うでどけい内部ないぶ

自動じどうまき腕時計うでどけい 編集へんしゅう

 
セイコー・プレスマチックのムーブメント。上部じょうぶ回転かいてんしきローターがえる

自動じどうまき腕時計うでどけいAutomatic watch)とは、時計とけい内部ないぶ半円はんえんがたおもり(ローター)がまれており、装着そうちゃくしゃうでることによりおもり回転かいてん動力どうりょくぜんまいげるものである。おもり仕込しこんだ自動じどうまき機構きこう自体じたい懐中時計かいちゅうどけいようとしてスイスのアブラアン=ルイ・ペルレ英語えいごばんにより1770ねんごろに発案はつあんされていたが、ポケットにおさまった安定あんてい状態じょうたいはこばれる懐中時計かいちゅうどけいよりも、手首てくびられて慣性かんせいはたらきやすい腕時計うでどけいによりなじむ技術ぎじゅつであった。それにたいしてブレゲはによる自動じどうき「ペルペチュエル」を開発かいはつしたが、構造こうぞう複雑ふくざつだったため一般いっぱんには普及ふきゅうせず、19世紀せいき懐中時計かいちゅうどけいのほとんどはかぎきおよび、パテック・フィリップ創始そうししゃ一人ひとりであるアドリアン・フィリップ英語えいごばん1842ねん発明はつめいした竜頭りゅうずによるきであった。

最初さいしょ実用じつようてき自動じどうまき腕時計うでどけいとなったのはイギリスのジョン・ハーウッド英語えいごばん開発かいはつしたはん回転かいてんローターしき(ローターの片方向かたほうこう回転かいてんのみでぜんまいをげる)で、1926ねんにスイスのフォルティスから発売はつばいされた。つづいてより効率こうりつすぐれるぜん回転かいてんしきローター自動じどうまき(ローターの回転かいてん方向ほうこうわず歯車はぐるま機構きこうわせで一定いってい方向ほうこう回転かいてんりょくし、ぜんまいをげられる)がスイスのロレックスで1931ねん開発かいはつされ、同社どうしゃは「パーペチュアル」の市販しはん、オイスターケースとばれる防水ぼうすい機構きこうとともにロレックスのひろめた。

初期しょきのロレックス自動じどうまき代表だいひょうされる手法しゅほう弱点じゃくてんは、ローターの存在そんざいするぶんまきしきムーブメントにして厚手あつででかさばってしまうことで、主要しゅよう時計とけいメーカーは自動じどうまきムーブメントの改良かいりょう過程かていで、薄型うすがた簡略かんりゃく効率こうりつ動力どうりょくかた試行しこう錯誤さくごした。片方向かたほうこう回転かいてんしきや、オメガの一部いちぶ機種きしゅのようにローターの回転かいてんはば制限せいげんした過渡かとてきなモデルなどもられたが、1950年代ねんだい以降いこう大幅おおはば薄型うすがたされた両方向りょうほうこうぜん回転かいてんしきローターの自動じどうまき本命ほんめいとなって普及ふきゅう現在げんざい自動じどうまき腕時計うでどけいではぜん回転かいてんローターしき一般いっぱんしている。また、ローターの形状けいじょうもペルレの時代じだい半円はんえんじょうから、外周がいしゅうきむなどの重金属じゅうきんぞく使用しようしたりちゅうきした形状けいじょうにするなどして回転かいてん効率こうりつ向上こうじょうさせている。

自動じどうまき腕時計うでどけいおおくは竜頭りゅうずもちいてぜんまいをきすることもできるが、構造こうぞう簡素かんそする目的もくてき自動じどうまき専用せんようとしたものもある。自動じどうまき装着そうちゃくされているあいだぜんまいのちから適度てきど程度ていどたくわえられ、しきくらべて精度せいどたかくなる傾向けいこうがある。けていない場合ばあいにはワインディングマシーンにセットしておくことでぜんまいをげておけるため、機械きかいしき腕時計うでどけい収集しゅうしゅうがそのたね装置そうちもちいるれいられる。

日本にっぽん腕時計うでどけい 編集へんしゅう

日本にっぽんでは1913ねん服部はっとり時計とけいてん国産こくさんはつ腕時計うでどけい「ローレル」を発売はつばいしているが、その7せきムーブメントは懐中時計かいちゅうどけいとの共用きょうようひんであった。サイズの制約せいやくきびしい腕時計うでどけい技術ぎじゅつでスイスやアメリカの製品せいひん比肩ひけんすることは容易よういでなく、日本にっぽんせい腕時計うでどけいへの評価ひょうかとう日本にっぽんでもだい世界せかい大戦たいせんまでけっしてたかくなかった。1957ねん時点じてんでも日本にっぽん腕時計うでどけい市場いちばではスイス製品せいひんおおいにはばかせ、スイス時計とけい年間ねんかんやく200まん程度ていど流入りゅうにゅうしていたが、そのうち正規せいきルートで輸入ゆにゅうされたのは30まん程度ていどであとのだい部分ぶぶん密輸入みつゆにゅうだったという[13]上級じょうきゅう価格かかくたいではオメガロンジン廉価れんかひんではエニカ、ジュベニア、シーマといったスイスけい銘柄めいがら人気にんきたかかった。

それでも1950年代ねんだい以降いこう日本にっぽん腕時計うでどけい技術ぎじゅつ着実ちゃくじつ進歩しんぽして国内こくない廉価れんかたい市場いちばでは輸入ゆにゅうひんあつするようになり、1960年代ねんだい以降いこうカメラなら主要しゅよう輸出ゆしゅつ商品しょうひんとなった。きロービートしき標準ひょうじゅんであった当時とうじ上位じょうい2ブランドからおくされたセイコー「マーベル」(1956ねん発売はつばい)、シチズン「ホーマー」(1960ねん発売はつばい)は、ともにスイスせい腕時計うでどけい参考さんこうにしつつも、こう精度せいど自動じどう生産せいさん両立りょうりつさせるための構造こうぞう合理ごうり・パーツ大型おおがたなどがこころみられ、両社りょうしゃ技術ぎじゅつてきなターニングポイントとなった製品せいひんである。1955ねんには国産こくさんはつ自動じどうまき腕時計うでどけい「セイコーオートマチック」が発売はつばいされ、そのも「グランドセイコー」(1960ねん)、「シチズン クロノメーター」(1962ねん)など、スイスせい匹敵ひってきする精度せいど国産こくさん時計とけい登場とうじょうした。耐震たいしん機能きのう防水ぼうすい機能きのう装備そうび自動じどうきやカレンダー機構きこう導入どうにゅう急速きゅうそく進行しんこうした。1964ねんには東京とうきょうオリンピック公式こうしき計時けいじ機器ききとしてセイコー採用さいようされた。セイコーは電子でんし計時けいじ採用さいようし、これを契機けいき日本にっぽんせい腕時計うでどけい世界せかいてきみとめられるようになる。

日本にっぽん主要しゅよう腕時計うでどけいメーカーは、電卓でんたく分野ぶんやからエレクトロニクス全般ぜんぱん成長せいちょうした総合そうごうメーカーであるカシオ計算機かしおけいさんきのぞくと、すべて懐中時計かいちゅうどけい柱時計はしらどけい分野ぶんやから参入さんにゅうした企業きぎょうである。セイコーとシチズン時計しちずんとけい、カシオの3しゃ主要しゅよう大手おおてメーカーである。機械きかいしき腕時計うでどけい時代じだい国産こくさんだい3であったオリエント吉田よしだ時計とけいてん東洋とうよう時計とけい前身ぜんしん)は業績ぎょうせき不振ふしんから現在げんざいセイコーエプソン傘下さんかにて存続そんぞくする。リコーエレメックス柱時計はしらどけいメーカーに起源きげんをもつきゅう高野たかの精密せいみつ工業こうぎょう後身こうしんで、1957ねんから「タカノ」ブランドで腕時計うでどけい生産せいさんしたが、中京ちゅうきょうけん本拠ほんきょがあったため1959ねん伊勢湾いせわん台風たいふうだい被害ひがいけて業績ぎょうせき悪化あっか、1962ねんリコー買収ばいしゅうされ、のち腕時計うでどけいブランドもリコーに変更へんこうしたが、2021ねんごろ腕時計うでどけい事業じぎょうから撤退てったいした。よって、国内こくないでの中小ちゅうしょう規模きぼ企業きぎょうセイコーシチズン時計しちずんとけいカシオ大手おおて3しゃのぞく)は、オリエント時計おりえんととけい(セイコーエプソン)とミナセ(昭和しょうわせいこう)をはじめ、大塚おおつかローテック東京とうきょう時計とけい精密せいみつカルレイモンケンテックスマスターワークスタケオキクチシャルルホーゲルGSXシーレーンノットおもにあげられる。

精度せいど向上こうじょう電気でんき動力どうりょく 編集へんしゅう

機械きかいしき腕時計うでどけいにはわりとなるテンプがまれており、その振動しんどうすうたかければたかいほど時計とけい精度せいどがる傾向けいこうがある。なみきゅう腕時計うでどけいのテンプは振動しんどうすうが4 - 6かい/びょうロービートだが、こう精度せいどがた腕時計うでどけいでは8 - 10かい/びょう振動しんどうとなっておりハイビートともばれる。現代げんだい機械きかいしき時計とけいのうちスイスせい高級こうきゅうひんにはハイビートがおおく、また日本にっぽんせいでも上級じょうきゅうひんはハイビートがおおい。ただしハイビート仕様しようとすると部材ぶざい疲労ひろう摩耗まもうはやまり、耐久たいきゅうせいでは不利ふりである。

電池でんちエネルギーで作動さどうする腕時計うでどけいはアメリカのハミルトン開発かいはつし、1957ねん発売はつばいした「ベンチュラ」が最初さいしょである[14]。これはちょう小型こがたモーターで駆動くどうする方式ほうしきで、調しらべそく最終さいしゅう段階だんかいには機械きかいしき同様どうようにテンプを使つかっていた。ボタンじょう小型こがた電池でんち使つか手法しゅほうは、以後いご電池でんちしき腕時計うでどけい踏襲とうしゅうされている。

 
ブローバアキュトロン(1963ねん製造せいぞうひん)。電子でんし部品ぶひんとともに中央ちゅうおう音叉おんさえる
映像えいぞう外部がいぶリンク
  音叉おんさしき時計とけい秒針びょうしんうごき。OMEGAせい。Cal.9162搭載とうさい
YouTube:nagoyataro1が2021ねん7がつ31にちにアップ

1959ねんにはやはりアメリカのブローバ音叉おんさしき腕時計うでどけい「アキュトロン」を開発かいはつした[14]ちょう小型こがた音叉おんさ2時計とけい装備そうびして、電池でんち動力どうりょく振動しんどうあたえ、音叉おんさ特性とくせいによって一定いっていサイクルの振動しんどうる。この振動しんどう直接ちょくせつ動力どうりょくに、一方向いちほうこうのみへ駆動くどうりょくつたえるラッチをかいして分針ふんしん時針じしん駆動くどうするものである。振動しんどうサイクルは毎秒まいびょう360かいとクォーツ腕時計うでどけい登場とうじょうまえでは最高さいこう水準すいじゅん精度せいどであったが、ブローバが技術ぎじゅつ公開こうかいやムーブメント供給きょうきゅう積極せっきょくてきでなかったこともあり1976ねんには生産せいさん終了しゅうりょうしている。

クォーツ腕時計うでどけい 編集へんしゅう

クォーツ時計とけい自体じたいは1920年代ねんだい発明はつめいされていたが、当時とうじ能動のうどう素子そし真空しんくうかん使用しようしていたため、タンスなみおおきなしき時計とけいとなり、しかも高価こうかなことから、天文台てんもんだいなどの研究けんきゅう機関きかん放送ほうそうきょくにおける、きわめて精度せいどたか計時けいじ手段しゅだんようする需要じゅようでわずかに利用りようされただけだった。クォーツ時計とけい携帯けいたい可能かのうなサイズとなって一般いっぱんひろ使つかわれるようになるには、集積しゅうせき回路かいろ安価あんか利用りようできるようになる1960年代ねんだいたなければならなかった。

ブローバのアキュトロンに危機ききかんいたセイコーは「とおざからず水晶すいしょう時計とけい時代じだいる」と確信かくしんし、1959ねんクォーツ腕時計うでどけい開発かいはつをスタートした[14]

1967ねん世界せかいはつクォーツ腕時計うでどけいのプロトタイプが登場とうじょうした。スイスのCentre Electronique Horloger (CEH) によるBeta 1[15]、および日本にっぽんのセイコーによるアストロンのプロトタイプである。

1969ねん[16]12月[6]25にちにセイコーは世界せかいはつ市販しはんクォーツ腕時計うでどけいアストロン」を発売はつばいした[17]当時とうじ定価ていかは45まんえん当時とうじ42まんえんだった大衆たいしゅうしゃトヨタ・カローラよりも高価こうかであった[16][6]振動しんどうすうたかさは圧倒的あっとうてきで、機械きかいしきはおろかブローバの音叉おんさしき「アキュトロン」をもはるかにしのぐにち±0.2びょう以内いない[6]つき±3びょう以内いない[16]というこう精度せいど実現じつげんした。ぎん電池でんちで1ねん以上いじょう駆動くどうする[6]

ウォッチにかぎらずクロックなど、あらゆるクォーツ時計とけい共通きょうつうのことであるが、水晶すいしょう発振子はっしんし周波数しゅうはすうには、単純たんじゅんな2ふんしゅう繰返くりかえしで1びょうられるなどあつかいやすい32,768 Hz(=215 Hz)がもっぱら使つかわれている。

クォーツショック 編集へんしゅう

クォーツ腕時計うでどけいは、機械きかいしきやそれ以前いぜん各種かくしゅ電池でんちしきくら圧倒的あっとうてき誤差ごさすくないこと、セイコーが特許とっきょ公開こうかい英語えいごばんおこなったため各社かくしゃ製造せいぞう参入さんにゅう急速きゅうそくコスト削減さくげん英語えいごばんすすんだことから、1970年代ねんだい市場いちば席巻せっけんした。なおスイスがわからてスイス国内こくない時計とけい生産せいさんはセイコーにおけるクォーツ時計とけい量産りょうさんにより瀕死ひんし状態じょうたいまでめられたため、これを「クォーツショック」とんでいる。

デジタル腕時計うでどけい 編集へんしゅう

数字すうじ点滅てんめつ表示ひょうじしきの、いわゆるデジタルしき腕時計うでどけいとして、最初さいしょ市販しはんされたのは1970ねん、アメリカのハミルトンの「パルサー」であった。しかしパルサーは赤色あかいろ発光はっこうダイオード (LED) を表示ひょうじ使用しようしており故障こしょうおおく、また時刻じこくわせは専用せんよう磁石じしゃく裏面りめんちかづけておこなうなどの特殊とくしゅ構造こうぞうのため実用じつようせい問題もんだいがあり、同種どうしゅのフォロワーともどもすうねんのうちに市場いちばからえた。

実用じつようてきなデジタル腕時計うでどけい実現じつげんはその液晶えきしょう表示ひょうじ (LCD) の導入どうにゅう以後いごで、1972ねん-73ねんにかけ、グリュエン、セイコーなどからLCD腕時計うでどけい出現しゅつげんした(当初とうしょからクォーツしきであった)。当初とうしょ物珍ものめずらしさもありきわめて高価こうか製品せいひんだった。しかし、ボタンスイッチの電気でんき接点せってん以外いがい可動かどう部品ぶひん皆無かいむ構造こうぞう大量たいりょう生産せいさんてきするため、短期間たんきかんのうちにてい価格かかく促進そくしんされはりしきより廉価れんか設定せってい商品しょうひんとして普及ふきゅうした。

子供こどもようやノベルティなどの目的もくてき製造せいぞうされる時計とけいはピンレバーしきだつすすむ安物やすもの主流しゅりゅうであったが、液晶えきしょうしきデジタル腕時計うでどけいはそのたねのローエンド市場いちば一新いっしんし、あらためて開拓かいたくする製品せいひん位置付いちづけられた。

そのアラーム機能きのう、ストップウォッチ機能きのうなど、腕時計うでどけい高機能こうきのうてい価格かかく同時どうじすすみ、かつて高級こうきゅうひんであった腕時計うでどけい身近みぢかなコモディティーとなった。それ以前いぜんのような定期ていきてき分解ぶんかい掃除そうじ不要ふようとなり、機械きかいしき時計とけいあつか技術ぎじゅつしゃ時計とけい)をようする日本にっぽん全国ぜんこくで3まんけん時計とけいてん廃業はいぎょうえんたされたという。

機械きかいしき復権ふっけん、クォーツのコモディティ日本にっぽんメーカーの凋落ちょうらく 編集へんしゅう

1980年代ねんだいはいると、精度せいどではクォーツにおとるものの熟練工じゅくれんこうによってつくげられる機械きかいしき腕時計うでどけいさがさい評価ひょうかされはじめ、スイスせい高級こうきゅう機械きかいしき腕時計うでどけい徐々じょじょ人気にんきもどしてきた。

クォーツ時計とけい登場とうじょう以降いこう欧州おうしゅうでは独自どくじのムーブメント製造せいぞうおこな機械きかいしき時計とけいのメーカーやムーブメント製造せいぞうおこな専門せんもんメーカーの再編さいへん淘汰とうたすすみ、部品ぶひん製作せいさく加工かこう自動じどう設備せつび導入どうにゅうされ、世界せかいてき規模きぼでムーブメントの共有きょうゆうすすんだ。その結果けっか、スイスのエタがヨーロッパの機械きかいしき腕時計うでどけい業界ぎょうかいへのムーブメント供給きょうきゅうおおきなシェアをめるようになった[18]。このため、高級こうきゅうブランドは大衆たいしゅうブランドと同型どうけいのムーブメントを共用きょうようしつつ、ケーシング(精度せいど仕上しあげ耐久たいきゅうせい、デザインなどを決定けっていする最終さいしゅう組立くみたて)による差別さべつ技術ぎじゅつとコストを集中しゅうちゅうできる状況じょうきょうとなった。

時計とけい製造せいぞう専門せんもんとしない無名むめいのアッセンブリーメーカーがアジアせい廉価れんかなクォーツムーブメントをやはり廉価れんかなケースにおさめてじつうれ1000えん - 3000えん程度ていど格安かくやす価格かかくでさまざまなブランドをつけて流通りゅうつうさせる事例じれいが、1980年代ねんだい以降いこう世界せかいてき一般いっぱんした。このたね廉価れんか時計とけい中国ちゅうごく香港ほんこんなどでてられるものがおおく、また在来ざいらい時計とけいしょう卸売おろしうりルートでなく雑貨ざっか卸売おろしうりのルートで市場いちば流通りゅうつうした。

そのたね廉価れんか時計とけいは、当初とうしょこそケースまわりの防水ぼうすいせいなどのひく製造せいぞう品質ひんしつのために、在来ざいらい時計とけいてんからは電池でんち交換こうかんことわられることもあったが、精度せいど自体じたいはクォーツ方式ほうしきのため必要ひつよう水準すいじゅんたっしていた。1990年代ねんだいまでにはケースの設計せっけい組立くみたて技術ぎじゅつ向上こうじょう防水ぼうすいめんなどでも十分じゅうぶん実用じつようせいそなえるようになり、世界せかいてき量販りょうはん価格かかくたい席巻せっけんした。

手軽てがるかつ高機能こうきのうなクォーツ時計とけいと、復興ふっこうはじめたスイスせい機械きかいしき腕時計うでどけい代表だいひょうされる高級こうきゅう工芸こうげいひん嗜好しこうひん機械きかいしき時計とけいという位置いちづけでけがなされ、廉価れんかなクォーツしき時計とけい市場いちばにあふれたことで日本にっぽんせいのクォーツしき腕時計うでどけい業績ぎょうせき急激きゅうげき悪化あっかした。完全かんぜんコモディティした方式ほうしきはりしき液晶えきしょうデジタル表示ひょうじ腕時計うでどけいわる、あらたな付加ふか価値かち模索もさくするうごきがはじまったが、機械きかいしきでは、日本にっぽんメーカーはみずからがしたクォーツ技術ぎじゅつにより、1970年代ねんだい以降いこう世界せかいてきみとめられていた機械きかいしき時計とけい技術ぎじゅつ職人しょくにんをほとんどうしなっていた。

こうして、ちょう高級こうきゅうブランドでは欧州おうしゅうにかなわず、コモディティ製品せいひんでは価格かかく競争きょうそうりょくいという現代げんだい日本にっぽん製品せいひん典型てんけいてき構図こうず埋没まいぼつすることとなった[19]

あらたな腕時計うでどけい模索もさく 編集へんしゅう

電波でんぱ腕時計うでどけい 編集へんしゅう

1990ねんユンハンス世界せかいはつ電波でんぱしき腕時計うでどけい『メガ1』を発売はつばいした[7]。1993ねん、シチズンは世界せかいはつきょく受信じゅしんがた電波でんぱ時計とけい発売はつばいした。電波でんぱしき腕時計うでどけいは、2000年代ねんだいはいってからきをばしている。

電波でんぱ時計とけいは、標準ひょうじゅん電波でんぱ受信じゅしんすることにより時刻じこく自動的じどうてき補正ほせいする。基本きほんてきにはクォーツ方式ほうしきとききざむが、1にちすうかい原子げんし時計とけい管理かんりされた標準ひょうじゅん電波でんぱ送信そうしんきょくからり、自動的じどうてきただしい時刻じこく修正しゅうせいするため、電波でんぱ受信じゅしんできる環境かんきょうにあれば誤差ごさ蓄積ちくせきせずいつまでもただしいとききざむことができる。

当初とうしょ電池でんち寿命じゅみょうみじかとう問題もんだいがあったがしょう電源でんげん機能きのう発達はったつするとともに、最近さいきんはダイヤルめん太陽たいよう電池でんち装備そうびして電池でんち充電じゅうでんすることで電池でんち交換こうかん不要ふようとした電波でんぱソーラーばれるものが普及ふきゅうしている。

衛星えいせい電波でんぱ腕時計うでどけい 編集へんしゅう

 
「GPSハイブリッド電波でんぱソーラー」腕時計うでどけい(カシオ)

2011ねん、シチズンが世界せかいはつ人工じんこう衛星えいせいGPS衛星えいせい)を使つかった衛星えいせい電波でんぱしき腕時計うでどけい『エコ・ドライブ サテライトウエーブ』を数量すうりょう限定げんてい発売はつばいした[8]。また、2012ねんにはセイコーがGPS衛星えいせい使つかった衛星えいせい電波でんぱしき腕時計うでどけい『アストロン』を発売はつばいした[20]

2014ねん7がつにはカシオから、衛星えいせい電波でんぱまたは地上ちじょう標準ひょうじゅん電波でんぱどちらかを受信じゅしんして時刻じこく修正しゅうせいする世界せかいはつ[21]機能きのう『GPSハイブリッド電波でんぱソーラー』を搭載とうさいしたG-SHOCK発売はつばい[22]され、10月にはフルメタルボディーのOCEANUSにも搭載とうさいされた[23]

通常つうじょう電波でんぱ時計とけいちがい、送信そうしんきょく経由けいゆして時刻じこく修正しゅうせいすることが不要ふようとなり、屋外おくがい位置いち情報じょうほう受信じゅしんできる環境かんきょうにあれば現在地げんざいち時刻じこく取得しゅとくすることが可能かのうとなる。

スマートウォッチ 編集へんしゅう

 
スマートウォッチ

2001ねん、シチズンと日本にっぽんIBMが共同きょうどう開発かいはつした試作しさく「WatchPad 1.5」がBluetooth搭載とうさいでは世界せかいはつ2006ねん、Bluetooth通信つうしん可能かのうとした腕時計うでどけいとして世界せかいはつ「i:VIRT(アイバート)」を発売はつばいした[24]

2010年代ねんだいになるとスマートフォンとBluetoothでリンクできる腕時計うでどけいスマートウォッチ腕時計うでどけいがたデバイス)が普及ふきゅうした。自動じどう時間じかん修正しゅうせい時報じほう・ワールドタイム・ストップウォッチ・携帯けいたい電話でんわ検索けんさくなどの連携れんけい機能きのうがスマートフォンのアプリで動作どうさする。

時計とけい携帯けいたい電話でんわ普及ふきゅう腕時計うでどけい利用りようしゃ減少げんしょう 編集へんしゅう

時計とけいきの携帯けいたい電話でんわスマートフォン普及ふきゅうにより、手首てくび腕時計うでどけいるのでなく、懐中時計かいちゅうどけいのように、携帯けいたい電話でんわして時間じかん確認かくにんするという、20世紀せいき初頭しょとう時代じだい逆行ぎゃっこうするような現象げんしょう一般いっぱんしつつある。日本にっぽんでは、「腕時計うでどけいけているときでも、ほとんど携帯けいたい電話でんわ時刻じこく確認かくにんしている」というひとがほぼ半数はんすうめるという調査ちょうさ結果けっかもある[25]

試験しけん会場かいじょうへの禁止きんし 編集へんしゅう

Apple Watchなどのウェアラブルコンピュータスマートウォッチ)の登場とうじょうによりイギリスロンドン大学だいがくではあらゆる腕時計うでどけいについて、携帯けいたい電話でんわ同様どうよう会場かいじょうまないよう通達つうたつし、かわって試験しけんちゅう時間じかん確認かくにんのための置時計おきどけい購入こうにゅうする予算よさんんだ。日本にっぽんでも、日本にっぽん英語えいご検定けんてい協会きょうかい実施じっししたIELTSのテストで、腕時計うでどけい全面ぜんめんてき禁止きんしのほか、受付うけつけにメガネの確認かくにんおこなうという、スマートウォッチはもちろんスマートグラスにも対応たいおうしたルール改定かいていおこなった[26]

かくメーカーの動向どうこう 編集へんしゅう

以下いか各社かくしゃ動向どうこうなどをしるす。

セイコー 編集へんしゅう

復権ふっけんをかけ、高級こうきゅう機械きかいしき腕時計うでどけいとして1960年代ねんだい名声めいせいはくした「グランドセイコー」などを復活ふっかつさせるなど、機械きかいしき腕時計うでどけい再度さいどりょくれた。機械きかいしきばかりではなく、ビスカススイープ、キネティック、スプリングドライブなどしん方式ほうしき研究けんきゅうすすめ、実用じつようしている。2000年代ねんだいはいってからはクレドールブランドのちょうこう価格かかくたい製品せいひん「スプリングドライブ ソヌリ」などや「セイコー・スペクトラム」のようなしんコンセプトのモデルもつくっている。

ビスカススイープはクォーツ腕時計うでどけいで、ダンパとばねによる音叉おんさ時計とけいのようなスイープ運針うんしん実現じつげんした方式ほうしき[27]であったが、採用さいようしたムーブメントは1988ねんの5S21と90ねんの5S42にとどまった。

キネティック (AGS) は1988ねんにセイコーが発売はつばいした、世界せかいはつ自動じどう発電はつでんクォーツ腕時計うでどけい「セイコー オートクオーツ」のムーブメントに使用しようされた方式ほうしきである[28]発売はつばい機構きこうめいをAGS (Automatic Generating System) としていたが1997ねんにキネティックに変更へんこうされた。 キネティックは自動じどう時計とけい同様どうように、うでりによって発生はっせいしたローターの回転かいてん歯車はぐるまやく100ばいぞうはやし、発電はつでんした電力でんりょくキャパシタたくわえる電池でんち交換こうかん不要ふようのクォーツ腕時計うでどけいである。装着そうちゃくしていないときにはしょう電力でんりょくのためはりうごきが自動的じどうてき停止ていしし、ふたた装着そうちゃくされ振動しんどうあたえられるとそれを感知かんちして自動的じどうてき現在げんざい時刻じこく復帰ふっきする「キネティックオートリレー」、うるうどしにおいてもただしい日付ひづけしめす「キネティックパーペチュアル」、充電じゅうでんにも対応たいおうし、パワーリザーブ表示ひょうじ機能きのうつ「キネティック・ダイレクトドライブ」もある。

1999ねんにセイコーがリリースしたスプリングドライブ[29]は、機械きかいしきムーブメントながらテンプやアンクルをたず、わりに水晶すいしょう振動しんどう使用しようした電子でんしてき調しらべそく機構きこうみ、動力どうりょくげん発電はつでんげん自動じどうきでげたぜんまいを使用しようしながらクォーツ時計とけい同等どうとうこう精度せいど実現じつげんしたものである[30]。このため機械きかいしき調ちょうそく機構きこう使用しようされるテンプや、クォーツ時計とけい使用しようされる電池でんち不要ふようである。セイコーはスプリングドライブを機械きかいしきとクオーツしきたいするだいさん駆動くどう機構きこう」と位置いちづけている[31]

世界せかいてきには、機械きかいしき時計とけいセイコー5電池でんち入手にゅうしゅ困難こんなんてい開発かいはつ諸国しょこく中心ちゅうしんにクオーツ時代じだいのこり、その一部いちぶ国内こくないぎゃく輸入ゆにゅうされ、また、一部いちぶ国内こくないさい生産せいさんされている。セイコー5は安価あんかながら実用じつようじょう十分じゅうぶん精度せいど、カレンダー、防水ぼうすい自動じどう機能きのうをもっており、機械きかいしき時計とけい入門にゅうもんとして一定いってい需要じゅよう維持いじしている。

カシオ計算機かしおけいさんき 編集へんしゅう

腕時計うでどけいゆかとせばたやすくこわれる」という常識じょうしきはんし、2〜3かいからとしてもこわれないというたい衝撃しょうげき性能せいのうそなえたタフな腕時計うでどけいG-SHOCK(Gショック)を1983ねんから発売はつばいした。Gショックはその頑丈がんじょうさをわれ、過酷かこく環境かんきょう戦場せんじょう愛用あいようされるようになった。最初さいしょはデジタルウォッチのみの展開てんかいであったが、1989ねんには「デジアナ」ウォッチもラインナップにくわえた。日本にっぽんでは発売はつばい早々そうそうヒットとはいかなかったが、1990年代ねんだいには映画えいが登場とうじょうさせたり、 「限定げんてい商品しょうひん」を投入とうにゅうする販売はんばい促進そくしんさくなどによってだい躍進やくしんいたった。

2010年代ねんだいになると廉価れんかたい腕時計うでどけいとしてのコストパフォーマンスのたかさが人気にんきとなり、「チープカシオ」としてふたたびブームをこした[32] [33] [34]

シチズン 編集へんしゅう

シチズンの「エコ・ドライブ」はひかり発電はつでんによって駆動くどうする。またそと気温きおん装着そうちゃくしゃ体温たいおん利用りようゼーベック効果こうかによって発電はつでんした電気でんきエネルギーを動力どうりょくげんにする「エコ・ドライブ サーモ」の腕時計うでどけいもあった(現在げんざい、エコ・ドライブ サーモを適用てきようした腕時計うでどけい販売はんばいしていない)。

スウォッチ 編集へんしゅう

安価あんかなクォーツ時計とけいあざやかな色彩しきさい有名ゆうめいアーティストによるデザイン差別さべつ少数しょうすう限定げんてい販売はんばいによるコレクションアイテムとして、ユーザーの支持しじあつめた。ニコラス・ネグロポンテによるインターネットタイム提唱ていしょうしたが普及ふきゅうにはいたっていない。

2010ねんごろにおいて、かべ時計とけいでは秒針びょうしんおとけるなどの目的もくてきでスウィープ運針うんしんのものもおおいが、クォーツ腕時計うでどけいはほとんどがびょうきざみの運針うんしんであったが、シチズンの傘下さんかブローバから、毎秒まいびょう16かい駆動くどうのクォーツ腕時計うでどけい発売はつばいされた。シチズンとブローバは以前いぜん音叉おんさしき腕時計うでどけい提携ていけいしており、ブローバからの技術ぎじゅつ導入どうにゅうでシチズンが国産こくさんした経緯けいいがある。

機械きかいしき腕時計うでどけいでもだつすすむしん機構きこう導入どうにゅうされた。スイスのユリスナルダン2001ねん発表はっぴょうした「フリーク」はあたらしいだつすすむ導入どうにゅうにより、潤滑油じゅんかつゆ不要ふようとしている。オメガはジョージ・ダニエルズ発明はつめいした「コーアクシャルだつすすむ導入どうにゅうによりアンクルつめとガンギ摩擦まさつ低減ていげん成功せいこうしている。さらに近年きんねんでは独自どくじだつすすむ開発かいはつしたり、ガンギしゃやアンクル、ヒゲゼンマイにシリコンあらたな特殊とくしゅ合金ごうきんなどの先端せんたん素材そざい採用さいようしてオイルフリーや精度せいど向上こうじょう目指めざうごきもある。

2013ねん5がつのBaselworld(バーゼル・フェア)において、スウォッチ発表はっぴょうしたSistem51[35]高価こうか機械きかいしき自動じどう腕時計うでどけいどう程度ていど性能せいのうちながら、完全かんぜん機械きかいされた製造せいぞう工程こうていと「51」の由来ゆらいである部品ぶひんすう低減ていげんなどの最新さいしんさい設計せっけいにより[36]、クォーツしき同様どうようのファッショナブルなスタイリングとどう程度ていど価格かかくたい機械きかいしき腕時計うでどけい提供ていきょうした。

防水ぼうすい腕時計うでどけい 編集へんしゅう

ムーブメントを水分すいぶんから保護ほごする仕様しようのケースを装備そうびした腕時計うでどけい防水ぼうすい腕時計うでどけいぶ。現在げんざいでは一般いっぱん市販しはんされている腕時計うでどけいおおくが、なんらかの防水ぼうすい仕様しようそなえている。規格きかくについては一般いっぱんようたい水時計みずどけい規格きかくとして、ISO 2281/JIS B 7021 にしるされている。ふる防水ぼうすい時計とけいでは "Waterploof" ないしはそれにるいする表記ひょうきがされている事例じれいられるが[37]今日きょう防水ぼうすい時計とけいはいずれも "Water Resistant" またはそれをりゃくした "Water Resist" などが表記ひょうきもちいられる。 

腕時計うでどけい防水ぼうすい機能きのうは、「気圧きあつ」もしくは「水深すいしん (m/ft)」であらわされる。基本きほんてきには、小雨こさめたれたり日常にちじょう水仕事みずしごとみずがかかっても大丈夫だいじょうぶというレベルの「日常にちじょう生活せいかつ防水ぼうすい」(3 - 5気圧きあつ防水ぼうすい)、水泳すいえい潜水せんすいなどで着用ちゃくようする10 - 20気圧きあつ防水ぼうすい、そして本格ほんかくてきダイビング使用しようされる潜水せんすいよう腕時計うでどけいすうひゃくメートルから極端きょくたんなものではいちまんメートル防水ぼうすいも)までさまざまなレベルがある。

ただし「3気圧きあつ防水ぼうすい」とっても、「水深すいしん30メートルまで大丈夫だいじょうぶ」というわけではない。この気圧きあつは、静止せいしした状態じょうたいでこの水圧すいあつえられるという意味いみであり、衝撃しょうげき圧力あつりょくくわわった場合ばあい防水ぼうすい機能きのう保証ほしょうされない。水深すいしんあらわされる場合ばあいには実際じっさい表記ひょうきどおりくぐることも可能かのう性能せいのうつが、経時きょうじてき防水ぼうすい機能きのう劣化れっかのため、パッキング交換こうかんとうのメンテナンスをおこたると性能せいのう充分じゅうぶん発揮はっきできずに浸水しんすいする場合ばあいがある。

防水ぼうすい強度きょうどひょう
使用しようれい 飽和ほうわ潜水せんすいよう
300m防水ぼうすい
空気くうき潜水せんすいよう
200m防水ぼうすい
日常にちじょう生活せいかつ強化きょうか
20気圧きあつ防水ぼうすい
日常にちじょう生活せいかつ強化きょうか
10気圧きあつ防水ぼうすい
日常にちじょう生活せいかつ強化きょうか
5気圧きあつ防水ぼうすい
日常にちじょう生活せいかつ
防水ぼうすい
防水ぼうすい
JIS B 7023 / JIS B 7021 による規定きてい 2しゅ潜水せんすい時計とけい 1しゅ潜水せんすい時計とけい 2しゅ防水ぼうすい時計とけい 2しゅ防水ぼうすい時計とけい 2しゅ防水ぼうすい時計とけい 1しゅ防水ぼうすい時計とけい
あめ手洗てあらいのさいみずしぶきにえうる程度ていど使用しよう
水仕事みずしごと炊事すいじ洗濯せんたく)にえうる程度ていど使用しよう
ヨット・ボートなどのマリンスポーツ、りなど船上せんじょう作業さぎょう。プールなどでのかる水中すいちゅう使用しよう
競泳きょうえいもぐシュノーケリングなどのあさ水中すいちゅうでの使用しよう
スキューバダイビングなど空気くうき潜水せんすいでの使用しよう
飽和ほうわ潜水せんすいでの使用しよう

ねじしき竜頭りゅうず 編集へんしゅう

このたね時計とけいだい1世界せかい大戦たいせん前後ぜんこう出現しゅつげんしており、初期しょきにはガラスののぞきまど竜頭りゅうず操作そうさようのねじぶたそなえたべつからだケースに腕時計うでどけいれてベルトで装着そうちゃくするものがあった。防水ぼうすいせい確保かくほできるものの操作そうさせいわる体裁ていさいわるかった。

早期そうき近代きんだいてき防水ぼうすい構造こうぞう採用さいようした代表だいひょうれいは1926ねんロレックスである。オイスターしゃ開発かいはつしたけずしによる一体いったい構造こうぞうの「オイスターケース」にパッキングを装備そうびしたねじ竜頭りゅうずそなえてコンパクトでスマートな防水ぼうすい時計とけい実現じつげんした。1928ねんにはロレックスを装着そうちゃくした女性じょせいメルセデス・グライツドーバー海峡かいきょう横断おうだん遠泳えんえい成功せいこう、ロレックスの防水ぼうすいせいひろ喧伝けんでんした。

Oリング防水ぼうすい 編集へんしゅう

ねじしき竜頭りゅうず原理げんり自体じたい理想りそう方法ほうほうだが、ぜんまいげや時間じかんわせで頻繁ひんぱん竜頭りゅうず使つかうと、摩耗まもうして気密きみつせいがる弱点じゃくてんがある[38]。それにわる簡易かんい手段しゅだんとしてうらぶた竜頭りゅうず部分ぶぶんのパッキンにOリング使つか防水ぼうすいせい確保かくほする手法しゅほうひろまった。Oリングの劣化れっか気密きみつせいがった場合ばあいはOリングの交換こうかん復旧ふっきゅうできる。ケース材質ざいしつもさびにくいステンレスせいとし、うらぶた扁平へんぺいなねじしきとして密閉みっぺいせいたかめる手法しゅほう一般いっぱんした。

Oリング方式ほうしきだい世界せかい大戦たいせんちゅうには連合れんごうこくがわ通常つうじょうがた軍用ぐんよう時計とけいひろ使つかわれ、戦後せんご大衆たいしゅう時計とけいにまで普及ふきゅうした。しかし初期しょきのOリングしき防水ぼうすい時計とけい現代げんだいう「日常にちじょう生活せいかつ防水ぼうすい」レベルの防水ぼうすい性能せいのうがほとんどであったため、日本にっぽんでも1960年代ねんだい前期ぜんきに、ユーザーが防水ぼうすいせい過信かしんして着用ちゃくようしたまま入浴にゅうよく水泳すいえいおこな時計とけい故障こしょうさせるトラブルが続出ぞくしゅつしたことがある。

一部いちぶのメーカーは耐久たいきゅうせい要求ようきゅうされる時計とけいについて、一種いっしゅ多重たじゅうケース構造こうぞうちか手法しゅほうとOリングの併用へいよう気密きみつせいをさらにたかめる方法ほうほうった。「オメガ・シーマスター」シリーズの高性能こうせいのうばんはその代表だいひょうれいである[39]

クォーツ時計とけいでは廉価れんか電池でんち交換こうかん店舗てんぽおお存在そんざいするが、このさい防水ぼうすいOリングの交換こうかんみ、さい組立くみたてが時計とけいメーカーの指定していどおりにおこなわれるかは一部いちぶのメーカーの指定してい業者ぎょうしゃ以外いがいでは保証ほしょうい。したがって、電池でんち交換こうかんさいに「電池でんち交換こうかん防水ぼうすい機能きのう保証ほしょうできない」とする時計とけいてんもある。

メーカー指定してい時計とけい専門せんもんてん、もしくはメーカーに送付そうふして電池でんち交換こうかんおこな場合ばあいはOリング交換こうかん防水ぼうすい検査けんさ実施じっしされるのが普通ふつうである。

ダイバーズウォッチ 編集へんしゅう

夜光やこう塗料とりょう塗布とふした文字もじばん装備そうびしてくら水中すいちゅうでも視認しにんでき、ねじしき竜頭りゅうずやOリングなどで防水ぼうすい機能きのう確保かくほすることで、水深すいしん100m以上いじょう水圧すいあつえられる「ダイバーズウォッチ」は、1930年代ねんだい軍用ぐんようけに出現しゅつげんした。潜水せんすい時間じかん水面すいめん帰還きかん空気圧くうきあつ管理かんりする安全あんぜんじょう理由りゆうからも、夜光やこう防水ぼうすい時計とけい必須ひっすだったのである。オフィチーネ・パネライのダイバーよう大型おおがた腕時計うでどけいはその初期しょきれいであり、軍用ぐんようがた防水ぼうすい腕時計うでどけい類例るいれい生産せいさんされるようになった。

しかし本格ほんかくてき普及ふきゅうだい世界せかい大戦たいせんとなった。1943ねんジャック=イヴ・クストー考案こうあんしたアクアラング装置そうち戦後せんごひろまり、スキューバダイビングが容易よういになったことは普及ふきゅう契機けいきになったとられる。

高度こうど防水ぼうすい性能せいのうたせ、水中すいちゅうでの視認しにんせいすぐれた夜光やこうしきとき分針ふんしんと、おおぶりな夜光やこう塗料とりょうドットを等間隔とうかんかく配置はいちした文字もじばん潜水せんすい時間じかん管理かんり利用りようできる回転かいてんしきベゼルを装備そうびした民生みんせい市販しはん腕時計うでどけい最初さいしょは、1953ねんブランパン発表はっぴょうした「フィフティファゾムズ」(Fifty Fathoms) で、このモデルはクストーがルイ・マル製作せいさくした海洋かいよう記録きろく映画えいが沈黙ちんもく世界せかい』(1956ねん撮影さつえいでももちいられた。そのおおくのダイバーズ・ウォッチは、おおかれすくなかれフィフティファゾムズのデザインの影響えいきょうけた回転かいてんベゼルきの類似るいじデザインが多数たすうとなっている。

宝飾ほうしょく腕時計うでどけい 編集へんしゅう

美術びじゅつ工芸こうげいひんとしての腕時計うでどけいもある。材料ざいりょうきむぎんなどの貴金属ききんぞくをふんだんにもちい、ルビーダイヤモンドといった宝石ほうせきりばめた華美かび装飾そうしょくひんとしての腕時計うでどけいである。極端きょくたんなものでは、風防ふうぼうすうカラットの大粒おおつぶダイヤモンドをもちいるなど、すうおくえん腕時計うでどけいまで存在そんざいする。メーカーで製造せいぞうされるものもあるが既存きそん時計とけい加工かこうしてつく場合ばあいもあり、アフターダイヤなどとばれて区別くべつされることもある。

こうした時計とけいは、クオーツしきではなく機械きかいしきであることがおおい。

視覚しかく障害しょうがいしゃよう時計とけい 編集へんしゅう

視覚しかく障害しょうがいしゃ時間じかん確認かくにんできるように、ゆび直接ちょくせつはり文字もじばんれるようにした腕時計うでどけい文字もじばんには突起とっきもうけられており、時間じかん確認かくにんするときには、文字もじばんおおっているカバー部分ぶぶんひらいてゆびれるようになっている。無論むろん通常つうじょう腕時計うでどけいとしても使用しよう可能かのうである。手法しゅほう自体じたい先行せんこうして出現しゅつげんしていた視覚しかく障害しょうがいしゃよう懐中時計かいちゅうどけいからの踏襲とうしゅうである。

またこのような腕時計うでどけいとはべつに、音声おんせい時刻じこくらせるデジタルしき視覚しかく障害しょうがいしゃよう時計とけい存在そんざいする。

防水ぼうすい機能きのうほどこされていないことがおおい。

なお日本にっぽんにおいて視覚しかく障害しょうがいしゃよう腕時計うでどけいおよび懐中時計かいちゅうどけいは、はり文字もじばんへの触覚しょっかく時間じかん形式けいしきのものについて、消費しょうひ税法ぜいほう施行しこうれいで「身体しんたい障害しょうがいしゃよう物品ぶっぴん」として消費しょうひぜい課税かぜい対象たいしょうがいとなっている。また消費しょうひぜい導入どうにゅう以前いぜんおおくの腕時計うでどけい懐中時計かいちゅうどけい課税かぜいされていた物品ぶっぴんぜいも、視覚しかく障害しょうがいしゃよう時計とけい課税かぜい対象たいしょうがいであった。いずれも福祉ふくしてき用途ようと配慮はいりょした措置そちである。

複雑ふくざつ腕時計うでどけい 編集へんしゅう

時刻じこく表示ひょうじくわえてさまざまな機能きのうゆうする機械きかいしきはりしき腕時計うでどけいのことを「複雑ふくざつ腕時計うでどけい」あるいはたんに「複雑ふくざつ時計とけい」とぶ。機械きかいしき腕時計うでどけいのトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久えいきゅうカレンダーは評価ひょうかたかく、非常ひじょう高価こうかである。一方いっぽう永久えいきゅうでないカレンダー機能きのう、サン&ムーン表示ひょうじおよび電子でんしおん時刻じこくおん(リピーター、ソヌリ、アラーム)機能きのうはこれにふくめないことがおおい。単純たんじゅんなカレンダーや電子でんしアラームをのぞいては、実用じつようよりも趣味しゅみせいつよいものである。また、複雑ふくざつ腕時計うでどけい機能きのう複雑ふくざつになるほど文字もじばん(ケース)のあつさが傾向けいこうがある。

クロノグラフ
時刻じこく表示ひょうじする機能きのうくわストップウオッチ機能きのうんだ時計とけいのことをいう。
ムーンフェイズ
 
セイコー5自動じどうまきのムーンフェイズ
つきあらわ機構きこう太陰暦たいいんれき名残なごりであるが、間接かんせつてきうみきをあらわし、漁業ぎょぎょう海運かいうん貿易ぼうえきおよび天体てんたい観測かんそくうらないじゅつなどの分野ぶんや月齢げつれい重要じゅうよう指標しひょうとされる。
オーソドックスなデザインは文字もじばんけられた半円はんえんまどない円盤えんばんえがかれたつきかくれすることでけが表現ひょうげんされる。円盤えんばんには2つのつきえがかれ59にちで1回転かいてんする。このアイデアは18世紀せいき天才てんさい時計とけいアブラアム=ルイ・ブレゲ発明はつめいである。つきけの1周期しゅうき平均へいきん29.530589にちであるため965にちやく1にち誤差ごさしょうじるが、とく精巧せいこうなものではより誤差ごさすくなくしたものがある。このデザイン以外いがいには、デイトカレンダーにたシャッター表示ひょうじしき複数ふくすうつきえがかれた盤面ばんめんじょう月齢げつれいはりまたはつきばんしめすポインター表示ひょうじしきかねくろけられたボールが回転かいてんするものなどがまれに存在そんざいする。
24あいだけいのバリエーションとして、ムーンフェイズおなじような外観がいかん円盤えんばんには太陽たいよう三日月みかづきえがかれたものがあるが、これは24あいだで1かいころが昼夜ちゅうや区別くべつをする「サン&ムーン」機能きのうばれている。
プラネタリウム
ムーンフェイズ以外いがいで、天体てんたい運行うんこう追尾ついびする腕時計うでどけいをプラネタリウムあるいは天文てんもん腕時計うでどけいぶ。占星術せんせいじゅつ道具どうぐであるアストロラーベ自動じどう表示ひょうじをするもの、惑星わくせい位置いち表示ひょうじするもの、月食げっしょく日食にっしょく予告よこくするもの、つき位置いち表示ひょうじするもの、星座せいざ自動じどう表示ひょうじするものなどが存在そんざいする。機械きかいしき有名ゆうめいなメーカーはユリスナルダン、クォーツしきがけるメーカーとして、シチズンアストロデアげられる。
 
トゥールビヨン
トゥールビヨン
アブラアム=ルイ・ブレゲ発明はつめいした技術ぎじゅつで、だつすすむかる重力じゅうりょくによる誤差ごさ補正ほせいするため、だつすすむ回転かいてんさせて重力じゅうりょく影響えいきょう分散ぶんさんする機構きこうである。本来ほんらい時計とけい本体ほんたい固定こていされている部品ぶひん回転かいてんさせるために非常ひじょう複雑ふくざつ機構きこう高度こうど技術ぎじゅつ要求ようきゅうされ、だつすすむ回転かいてんじくが2じくのものも開発かいはつされている。最近さいきんでは中国ちゅうごくせいのムーブメントが量産りょうさんされていて価格かかく低下ていかしている。
リピーター
時計とけい側面そくめんのレバーをくと、かね音色ねいろ回数かいすう現在げんざい時刻じこくらせてくれる機構きこう機械きかいしき腕時計うでどけいでこれを実現じつげんするためには非常ひじょう高度こうど技術ぎじゅつ必要ひつようとされる。ぶん単位たんいまで時刻じこくおしえてくれるミニッツリピーターのほか、5ふん単位たんいまでをおしえてくれるファイブミニッツリピーター、15ふん単位たんいまでをおしえてくれるクォーターリピーターも存在そんざいする。
ソヌリ
毎時まいじゼロふんになるとその時刻じこくかずだけかねらして時報じほうする機構きこう。さらに15ふん単位たんい時報じほうするものをグラン・ソヌリとぶ。時報じほう同時どうじ文字もじばんなどにはいされたカラクリ人形にんぎょうなどのギミックが作動さどうするオートマタとわされることもある。
カレンダー
(デイト)および曜日ようびしめすもの(デイデイト)が一般いっぱんてきで、にち曜日ようびがつしめすものはトリプルカレンダーとばれる。数字すうじによる表示ひょうじ方法ほうほう盤面ばんめんじょうはり(ポインター)で表示ひょうじする方法ほうほうがある。大型おおがた日付ひづけはり(デイトポインター)が時分じぶんはりともにセンターに配置はいちされたものは識別しきべつのためはりさき三日月みかづきかたをしている。
つきにち曜日ようび暦年れきねん表示ひょうじでき、4ねんに1閏年うるうどしでも、2がつ末日まつじつから3がつ1にちにかけての手動しゅどうによる日付ひづけ補正ほせい必要ひつようがないカレンダー機構きこう永久えいきゅうカレンダー(パーペチュアル)とぶ。なお、閏年うるうどしの2がつまつのみに日付ひづけ補正ほせい必要ひつようなセミ永久えいきゅうカレンダー、毎年まいとしの2がつまつのみに日付ひづけ補正ほせい必要ひつよう年次ねんじカレンダーも存在そんざいする。

デジタルによる付加ふか機能きのう 編集へんしゅう

機械きかいしき時計とけい比較ひかくして、デジタル時計とけいには時間じかん計測けいそく(ストップウォッチ)、カレンダ、アラームといった機能きのう電卓でんたくやゲームといった計時けいじとは関係かんけいのない機能きのう付加ふかがはるかに容易よういであり、初期しょきころからそういった付加ふか機能きのうきの製品せいひんがあった。さらに、各種かくしゅセンサーるいけることによって、従来じゅうらい時計とけいとはことなる機能きのう気温きおん気圧きあつ測定そくてい電子でんしコンパスなど)といった、いわゆる「デジタルガジェット」てき機能きのうくわえられた。 デジタル時計とけい機能きのう複雑ふくざつになるほど文字もじばん(ケース)のあつさが傾向けいこうがある。

性差せいさ着用ちゃくよう方法ほうほう 編集へんしゅう

腕時計うでどけいきうで反対はんたいがわうで着用ちゃくようすることがおおい。また日本にっぽん女性じょせい場合ばあい盤面ばんめんうで内側うちがわけて着用ちゃくようするれい比較的ひかくてきおおいが(世界せかいてきるとごく小数しょうすう)、男性だんせいにおいてはまれである。女性じょせいよう腕時計うでどけい男性だんせいよう腕時計うでどけいくらべて小型こがた設計せっけいされているが、なかには必要ひつよう以上いじょう小型こがたされているれいもある。男性だんせいようサイズと女性じょせいようサイズのなかあいだてきなサイズの腕時計うでどけいはボーイズサイズとばれる。

なお腕時計うでどけい成立せいりつ経緯けいいから腕時計うでどけい登場とうじょう当初とうしょ懐中時計かいちゅうどけいくらべて略式りゃくしきとみなされ、礼装れいそう着用ちゃくようしない習慣しゅうかんがあったが、現在げんざいではそのような習慣しゅうかん消滅しょうめつした。

ブレスレットとベルト 編集へんしゅう

女性じょせいのアクセサリーとして、ブレスレット時計とけいのケースをけたものがあった。また実用じつようてき道具どうぐとして腕時計うでどけい強度きょうど装着そうちゃくかん要求ようきゅうされ、かわベルトにワイヤーをとおしてワイヤーのりょうはしをケース本体ほんたい溶接ようせつするスタイルがまれた。しかしベルトの損傷そんしょうなどにはずしが不便ふべんであることから、ばねぼうをベルトの接合せつごうとおしておき、このばねぼうをラグにはめむスタイルが確立かくりつし、現代げんだいまでつづくことになる。これと併行へいこうしてコマをつないで装着そうちゃくかん強度きょうど両立りょうりつさせたブレスレットも登場とうじょう発展はってんしていた。NATOストラップのようにとおしきのベルトをばねぼう直接ちょくせつとおすベルトも普及ふきゅうしている。

ブレスレット 編集へんしゅう

ブレスレットの素材そざい安価あんかでメンテナンスが容易よういなステンレスが現在げんざい主流しゅりゅうである。そのかね真鍮しんちゅう鍍金めっきしたもの、チタニウムやセラミックなどが使用しようされている。まれにかいほね、アクリル樹脂じゅしなどのブレスレットも存在そんざいする。ブレスレットの形状けいじょうにはつぎのようなタイプと、特徴とくちょうがある。ブレスレットはピンを調整ちょうせいすることでうでまわりを調整ちょうせいすることができる。

ソリッドブロック
1個いっこ金属きんぞくかたまりからけずりだされるブロックタイプのコマを、おたがいにピンやネジでめる。比較的ひかくてき高価こうかであるが、耐久たいきゅうせいたかい。
ロールブロック
1つの金属きんぞくばんに、もう1つの金属きんぞくばんけて、ブロックじょう仕上しあげる。ソリッドブロックにくらべると安価あんか加工かこうたくみで、一見いっけんしてソリッドブロックのようにえるものもある。
メッシュ
キメのこまかい帯状おびじょうのパーツをからわせてつくられる。加工かこうむずかしくすたれていたが、装着そうちゃくかんすぐれクラシカルなことから近年きんねん人気にんき復活ふっかつしてきている。
アジロ
「コ」じょうのコマをわせるようにかさねて連結れんけつする。んだつくりであるが、近年きんねんはあまりられなくなった。
S
Sがたのプレートをいたばねをかいして連結れんけつし、伸縮しんしゅくする構造こうぞうとなっている。サイズ調整ちょうせい面倒めんどうすくなくてむ。最近さいきんではスウォッチが採用さいようしている。

現在げんざい主流しゅりゅうは、ケースとどう素材そざいのソリッドブロックか、ロールブロックである。よこたんれんから10すうれんまで、ブロック=コマをピンやネジでつなめる。コマすうおおいほど、可動かどう部分ぶぶんおおいためにやわらかで装着そうちゃくかんく、豪華ごうか外観がいかんになるが、コストや手入ていれのしやすさ、強度きょうどなどの理由りゆうで、3れんから7れん主流しゅりゅうである。人間にんげん工学こうがく駆使くしした独自どくじ形状けいじょうにより、装着そうちゃくかん向上こうじょうさせるなどの工夫くふうほどこすメーカーもある。

ベルト 編集へんしゅう

「バンド」「おび」ともいう。高級こうきゅう時計とけい場合ばあい、ベルトは伝統でんとうてき爬虫類はちゅうるい、ほ乳類にゅうるい動物どうぶつ天然てんねん皮革ひかくもちいられる。たい水性すいせい豪華ごうかさで爬虫類はちゅうるい皮革ひかく高級こうきゅうとされるが、装着そうちゃくかん安価あんかというてんでは、ほ乳類にゅうるい皮革ひかくまさる。高級こうきゅうかんたせるためにわにがわのような紋様もんようかたししたり、カーフやラバーなどの裏打うらうちをすることがおおい。いずれにしても表面ひょうめん素材そざい部位ぶい使用しようし、裏面りめんやわらかな素材そざい部位ぶいもちいてわせるのが一般いっぱんてきである。

装着そうちゃくかんくするためなめしかた工夫くふうするメーカーもある。また、わせのいとのカラーがデザインのエッセンスとなる場合ばあいもある。近年きんねんでは人造じんぞう皮革ひかく採用さいようされるれいおおい。正装せいそうでは金属きんぞくより皮革ひかくベルトのほういている。

欧米おうべい比較ひかくすると、日本にっぽんではかわベルトよりもメタルブレスレットがこのまれる傾向けいこうにある。これは、日本にっぽんでは夏場なつばあつ気候きこうにより、おおあせをかくため、かわベルトがいたみやすいことが、おおきな理由りゆうだとかんがえられる。

ダイバーズなどのスポーツモデルでは耐久たいきゅうせい重視じゅうしして単一たんいつ成型せいけいのラバーやポリウレタンがもちいられることがおおいが、経年けいねん変化へんか劣化れっかしやすい。近年きんねんでは、高級こうきゅう時計とけいでもダイバーズウォッチではラバーやシリコーンせいのベルトを採用さいようするメーカーがおおい。

天然てんねん素材そざい 編集へんしゅう

その素材そざい 編集へんしゅう

バックル 編集へんしゅう

用語ようごとしては「尾錠びじょう」「クラスプ」ともぶ、ベルトやブレスのがね一般いっぱんてきには、つぎのタイプがおおい。

あなしき
かわベルトやゴムベルトで多用たようされ、ピンをベルトにいたしょうあなとおして固定こていする。ピンが幅広はばひろ場合ばあいには「タン」(した)とぶこともある。
みっしき
上板かみいたちゅういた下板しもいたの3まいのプレートを蝶番ちょうつがいつなぐ。下板しもいたちゅういたかぶせ、そのうえにさらに上板あげいたつつむようにかぶせて、金具かなぐ固定こていする。
観音開かんのんびらしき両開りょうびらしき
1まいのプレートのりょうはしに、ジョイントのプレートをつなぎ、さらにそこへ上板あげいたをつないだバックル。2まい上板あげいたを、下部かぶの1まいプレートの両側りょうがわからセンターへかぶせるようにしてめる。
スライドしき
片方かたがたのストッパーばんこすとスライド可能かのうとなってなが調節ちょうせつができる簡易かんいバックル。なが調節ちょうせつさいにコマをはず必要ひつようがなく専用せんよう工具こうぐ必要ひつようない。クォーツ時計とけいとも普及ふきゅうした。
中折なかおしきふたしき
蝶番ちょうつがいでつないだ2まいのプレートを開閉かいへいして、相手あいてがわ尾錠びじょうくわえて装着そうちゃくする。

その 編集へんしゅう

NATOストラップ(NATOベルト,G10ストラップ,G10ベルト)
どおしきのベルトをばねぼう直接ちょくせつとおすベルト。ベルトがしだれないよう金具かなぐ付属ふぞくしているのが特徴とくちょうふくうえから装着そうちゃくできるようにベルトがながつくられており、あまった場合ばあいじゅうかえすことでサイズの調整ちょうせい可能かのう。このタイプのベルトをNATO使用しようしており、その原型げんけいだい世界せかい大戦たいせんちゅうのイギリス軍用ぐんよう時計とけいベルトである。1973ねんにNATOの装備そうびひん規格きかく「G1098」として採用さいようされ、2013ねん一部いちぶ規格きかく改定かいていおこなわれた。2013ねん以降いこう制式せいしきひんはナイロン素材そざいのみ(それ以前いぜん皮革ひかくもあり)だが、市場いちば流通りゅうつうしているコピー製品せいひん素材そざいはナイロン、綿めん皮革ひかくなど様々さまざまながさもみじかつくられている事例じれいおおい。
レザーブレスウォッチ
皮革ひかくのブレスレットにかわのベルトをわせた、装飾そうしょくねたベルト。

なお、金具かなぐにリリースようのボタンをもうけたり、さらに小型こがたさえばんもうけて、不意ふい脱落だつらくこりにくいようにするものもある。またバックルない収納しゅうのうされたいたしてブレスのながさをばすことが可能かのうな、エクステンション方式ほうしきもある。バックルだけを保管ほかんしておきべつのブレスレットやベルトにもちいる方法ほうほうがある。サイズが商品しょうひんによりことなるのでバックルのサイズをおぼえておく必要ひつようがある。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ たとえば、「シチズン」ブランドのクロック事業じぎょうになっているのは「リズム」だ、といったように。
  2. ^ a b c 中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ時計とけい社会しゃかい
  3. ^ a b Marco Richon『OMEGA SAGA』Chap.7
  4. ^ WATCH WIKI "SANTOS" [1]
  5. ^ 沿革えんかく|セイコーホールディングス株式会社かぶしきがいしゃ
  6. ^ a b c d e 時計とけい年表ねんぴょう』p.180。
  7. ^ a b WATCH WIKI "MEGA1" [2]
  8. ^ a b 世界せかいはつ人工じんこう衛星えいせいから時刻じこく情報じょうほう受信じゅしんするひかり発電はつでん時計とけい「エコ・ドライブ サテライト ウエーブ」”. シチズンホールディングス (2011ねん6がつ15にち). 2013ねん6がつ23にち閲覧えつらん
  9. ^ 世界せかいはつの「GPS+電波でんぱ受信じゅしん」、ハイブリッドG-SHOCK発表はっぴょう――カシオ”. ITmedia (2014ねん6がつ25にち). 2020ねん4がつ17にち閲覧えつらん
  10. ^ カシオ、世界せかいはつの3つの時刻じこく取得しゅとくシステムを搭載とうさいした「G-SHOCK」”. PC Watch (2017ねん3がつ1にち). 2020ねん4がつ17にち閲覧えつらん
  11. ^ 軍用ぐんよう時計とけい物語ものがたり
  12. ^ だいいち世界せかい大戦たいせんによる腕時計うでどけい軍隊ぐんたいでの普及ふきゅう”. セイコーミュージアム. 2019ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
  13. ^ 長尾ながお善夫よしお木村きむら好孝よしたか戦後せんご国産こくさん腕時計うでどけい』(1994ねん トンボ出版しゅっぱん)p28での長尾ちょうび記述きじゅつによる。
  14. ^ a b c 世界せかい特選とくせんひん 時計とけいだい図鑑ずかん』p.133。
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  16. ^ a b c 世界せかい特選とくせんひん 時計とけいだい図鑑ずかん』p.134。
  17. ^ セイコー クオーツアストロン 35SQ(エプソン マイルストンプロダクツ)
  18. ^ 一方いっぽうマニュファクチュールばれる、一部いちぶ特殊とくしゅなパーツをのぞきムーブメントの開発かいはつ製造せいぞうからたてて、仕上しあげまでを一貫いっかんしておこなえるメーカーも存在そんざいつづけている。
  19. ^ 成功せいこう体験たいけんから、産業さんぎょう全体ぜんたいせない(10ページ) | 日経にっけいクロステック(xTECH)
  20. ^ 世界せかいはつぜん世界せかい39のタイムゾーンに対応たいおう。ソーラーGPSウオッチ<セイコー アストロン>衛星えいせいシグナルをキャッチし、地球ちきゅうじょうどこでも現在げんざい時刻じこくをすばやく取得しゅとく”. セイコーウオッチ (2012ねん3がつ5にち). 2013ねん6がつ23にち閲覧えつらん
  21. ^ ソニー×カシオ! 世界せかいはつ「GPSハイブリッド電波でんぱ時計とけい」のキーデバイスにせまる!|マイナビニュース(2014ねん3がつ26にちづけ マイナビ
  22. ^ ハイブリッドの“G-SHOCK”を発売はつばい - 2014ねん - ニュースリリース(2014ねん6がつ25にちづけ カシオ計算機かしおけいさんき
  23. ^ ASCII.jp:カシオ計算機かしおけいさんき世界せかいはつフルメタルGPS電波でんぱやBluetooth腕時計うでどけい(2014ねん9がつ3にちづけ ASCII.jp編集へんしゅう
  24. ^ 老舗しにせシチズン「アップルとたたかわない」時計とけい戦略せんりゃく世界せかいはつのBluetooth腕時計うでどけいはシチズンせい”. 東洋とうよう経済けいざいONLINE (2018ねん11月11にち). 2020ねん4がつ17にち閲覧えつらん
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  26. ^ Apple Watchが世界せかいえた?試験しけん会場かいじょうへの腕時計うでどけい禁止きんし世界せかいひろまる”. INTERNET Watch (2015ねん3がつ23にち). 2017ねん8がつ24にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん8がつ18にち閲覧えつらん
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  28. ^ SEIKO TECHNOLOGY
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  31. ^ SEIKOのニュース - セイコーウオッチ株式会社かぶしきがいしゃ
  32. ^ コスパ最高さいこうのシンプルウォッチ「チープカシオ(チプカシ)」おすすめ4せんすじランキング【2022ねん1がつ】 - Fav-Log by ITmedia
  33. ^ チープカシオが世界中せかいじゅうだいブレイク!オススメランキングBEST5|腕時計うでどけい本舗ほんぽ公式こうしき
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  35. ^ https://news.mynavi.jp/article/20130517-a090/
  36. ^ http://www.swatchgroup.com/en/services/archiv/2013/swatch_sistem51
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  38. ^ ロレックスがいちはやく1930年代ねんだい初頭しょとうこう効率こうりつぜん回転かいてんしき自動じどう機構きこう実用じつようした動機どうきには、竜頭りゅうず摩耗まもう回避かいひして防水ぼうすい性能せいのう長期ちょうき維持いじする意図いとがあった。このため防水ぼうすいがた自動じどうきロレックスは、「バブルバック」と通称つうしょうされる厚手あつで構造こうぞうになっていた。
  39. ^ オメガの「シーマスター」シリーズは1948ねんから市販しはんされているが、当初とうしょ単純たんじゅんに「防水ぼうすいモデル」を意味いみするネームであり、1960年代ねんだい以前いぜんは「日常にちじょう生活せいかつ防水ぼうすい」レベルの初歩しょほてき防水ぼうすいモデルもふくまれていた。したがって、すべてのシーマスターが多重たじゅうケース構造こうぞうもちいているわけではない。

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

  • 笠木かさぎめぐみ並木なみき浩一こういち 共著きょうちょ腕時計うでどけい雑学ざつがくノート』、ダイヤモンド社だいやもんどしゃ
  • 「こんな時代じだいだからあえてメカ回帰かいき」『D&M 日経にっけいメカニカル』2002ねん7がつごう日経にっけいBPしゃ、75 - 101ぺーじ
  • 二宮にのみや健二けんじちょ世界せかい各国かっこく要覧ようらん最新さいしん統計とうけい』、二宮にのみや書店しょてん
  • 今井いまい今朝けさはるちょ軍用ぐんよう時計とけい物語ものがたり光文社こうぶんしゃ文庫ぶんこ
  • 別冊べっさつ家庭かていほう世界せかい特選とくせんひん 時計とけいだい図鑑ずかん世界文化社せかいぶんかしゃ
  • 時計とけい年表ねんぴょう河合かわい企画きかくしつ

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう