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マグマ - Wikipedia

マグマ

天体てんたい構成こうせいする固体こたいのうち、内部ないぶ熔融ようゆうしたもの

マグマえい: magma)とは、地球ちきゅうをはじめとする天体てんたい構成こうせいする固体こたいが、その内部ないぶ溶融ようゆうしているものである。地球ちきゅうマントル地殻ちかくおもケイ酸けいさんしお鉱物こうぶつでできているため、その溶融ようゆうぶつであるマグマも一般いっぱんケイ酸けいさんしお主体しゅたい組成そせいつが、まれに「炭酸たんさんしお鉱物こうぶつ主体しゅたいとするマグマも存在そんざいする[1]岩漿がんしょう(がんしょう)ともいう[2]地球ちきゅう以外いがい天体てんたいにもマグマは存在そんざいすると推定すいていされているが、確認かくにんはいまだされていないため、ほんこうでは地球ちきゅうにおけるマグマについて記載きさいする。

キラウエア火山かざん溶岩ようがん
流体りゅうたいとして地表ちひょうたマグマを溶岩ようがんぶ。

概要がいよう

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昭和新山しょうわしんざんデイサイトしつ流動りゅうどうせいすくないマグマの噴火ふんかでできた。

マグマは、特殊とくしゅれい[3]のぞケイ酸けいさんしお鉱物こうぶつおも成分せいぶんである。マグマは一般いっぱんてき液体えきたい成分せいぶんだけでなく鉱物こうぶつ結晶けっしょうふくむ。マグマはその主成分しゅせいぶんであるケイ酸けいさん二酸化にさんかケイ素けいそ)の含有がんゆうりょう重量じゅうりょう%)によっておおきく4種類しゅるい分類ぶんるいされる。二酸化にさんかケイ素けいそもっとすくないものが玄武岩げんぶがんしつマグマ(45-52%)、つづいて安山岩あんざんがんしつマグマ(52-63%)、デイサイトしつマグマ(63-70%)、もっとおおいのがながれもんがんしつマグマ(70-77%)である[4]二酸化にさんかケイ素けいそすくないマグマほど温度おんどたかねばたびひく流動りゅうどうせいがある。玄武岩げんぶがんしつマグマは温度おんどが1000-1200℃でねばたびは100からすう100ポアズ[5]だが、ながれもんがんしつマグマの温度おんどは600-900℃でねばたびすうせんまんからすうおくポアズである[6]。マグマが冷却れいきゃく固化こかすると火成岩かせいがんになるが、固化こかするさいにはもともとマグマにすうふくまれていた揮発きはつせい成分せいぶんけてしまっている[4]地下ちか高温こうおんだかあつのまま存在そんざいしているものをマグマとび、火山かざん噴火ふんかとうでマグマが地表ちひょう流出りゅうしゅつすると溶岩ようがんばれるが、明確めいかく線引せんひきはいため呼称こしょう混在こんざいすることがある。しかし学術がくじゅつてきには区別くべつされるので注意ちゅうい必要ひつようである。

マグマが存在そんざいする場所ばしょ

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マグマが存在そんざいする、すなわち地表ちひょう火山かざん存在そんざいする場所ばしょかぎられている。マグマの存在そんざいする場所ばしょプレート活動かつどう由来ゆらいしてかくプレートの周辺しゅうへん発生はっせいするものと、プレート内部ないぶ発生はっせいするものがある。マグマの生産せいさんりょう一番いちばんおお場所ばしょあたらしくプレートがまれているプレート発散はっさん境界きょうかいとく中央ちゅうおう海嶺かいれいで、ここでは玄武岩げんぶがんしつマグマが生成せいせいしている。番目ばんめにマグマ生産せいさんりょうおおいのはプレート収束しゅうそく境界きょうかいとく海洋かいようプレートのしずたいで、玄武岩げんぶがんしつマグマからながれもんがんしつマグマまで多様たようなマグマが生成せいせいしている。日本にっぽん列島れっとうもこの領域りょういき相当そうとうする。プレート内部ないぶ発生はっせいするもののうち海洋かいようせいのタイプはハワイ代表だいひょうされ、おも玄武岩げんぶがんしつマグマを生成せいせいする。ここではマントルの深部しんぶから比較的ひかくてき高温こうおんゆうのぼりりゅう(マントルプリューム)が存在そんざいするホットスポットかんがえられている[7]大陸たいりくせいのものはアフリカのリフトバレーがあげられるが、ここでは一般いっぱんてきケイ酸けいさんしおのマグマだけではなく、炭酸たんさんしおのマグマカーボナタイトなど多様たようなマグマが生成せいせいされている。ダイヤモンド産出さんしゅつするキンバーライト大陸たいりくなか存在そんざいする[8]

マグマの成因せいいん

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マグマは周辺しゅうへん地殻ちかく存在そんざいする岩石がんせきより高温こうおんである。この高温こうおん地殻ちかくしたにあるマントルに由来ゆらいするが、マントルは高温こうおんではあるものの、たか圧力あつりょくがかかっている地下ちかでは固体こたいとして存在そんざいしている。

マントルを構成こうせいする岩石がんせき性質せいしつ

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地球ちきゅう内部ないぶ温度おんどふかくなるにしたがって上昇じょうしょうし、また圧力あつりょく上昇じょうしょうする。マントルを構成こうせいする岩石がんせき橄欖かんらんがん)が融解ゆうかいしはじめる(部分ぶぶん溶融ようゆうする)温度おんど圧力あつりょく影響えいきょうされ、圧力あつりょくたか場所ばしょでは融解ゆうかい開始かいし温度おんどたかくなる。地下ちかやく50kmよりふか場所ばしょ温度おんどは、橄欖かんらんがん地上ちじょうでの融解ゆうかい開始かいし温度おんど上回うわまわるが、たか圧力あつりょく原因げんいん溶融ようゆうせず固体こたいのままで存在そんざいしている。また橄欖かんらんがんちゅうみず混入こんにゅうすると、こうあつにおける融解ゆうかい開始かいし温度おんどいちじるしく低下ていかする[9]

マントルの部分ぶぶん溶融ようゆうによるマグマの生成せいせい

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中央ちゅうおう海嶺かいれい代表だいひょうされるプレート発散はっさん境界きょうかいは、海洋かいようプレートが外側そとがわひろがってゆく場所ばしょなので、それをめるために地下ちか深部しんぶから高温こうおんのマントルが上昇じょうしょうしてくる。マントルの上昇じょうしょう速度そくどはやいので橄欖かんらんがん地下ちか深部しんぶ高温こうおんたもったまま地上ちじょうちかくまで上昇じょうしょうし、そこで部分ぶぶん融解ゆうかいはじめて玄武岩げんぶがんしつマグマを生成せいせいする。マントルのゆうのぼりりゅう存在そんざいするホットスポットでも同様どうよう状況じょうきょう橄欖かんらんがん部分ぶぶん融解ゆうかい玄武岩げんぶがんしつマグマを生成せいせいする[10]日本にっぽん列島れっとう代表だいひょうされるプレートしずたいでは、海水かいすいふくんだ海洋かいようプレートが地下ちかななめにしずむ。地下ちか深部しんぶでプレートからしぼされたみずはそのうえにあるマントルの橄欖かんらんがん部分ぶぶん融解ゆうかい温度おんど低下ていかさせて、マグマを生成せいせいする。これら橄欖かんらんがん部分ぶぶん溶解ようかいした玄武岩げんぶがんしつマグマを本源ほんげんマグマぶ。

マグマの分化ぶんか

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橄欖かんらんがんちゅう生成せいせいした玄武岩げんぶがんしつマグマは周囲しゅうい岩石がんせきより比重ひじゅうかるいので徐々じょじょ上昇じょうしょうしてゆく。火山かざんしたにはマグマが集積しゅうせきしたマグマだまがあって、マグマはそこで停滞ていたいする。この上昇じょうしょう停滞ていたいちゅうに、マグマの化学かがく組成そせいはさまざまに変化へんかする。このプロセスをマグマの分化ぶんかぶ。地下ちか深部しんぶから上昇じょうしょうしたマグマは周囲しゅういから徐々じょじょやされて温度おんどがってゆく。玄武岩げんぶがんしつマグマは多様たよう成分せいぶんふくんだ混合こんごうぶつなので、温度おんど低下ていかするにつれて特定とくてい成分せいぶん結晶けっしょう形成けいせいして固化こかする。固体こたいした結晶けっしょう一般いっぱんてき液体えきたい部分ぶぶんより比重ひじゅうたかいので、マグマだまりのそこ沈降ちんこうしてゆく。結晶けっしょうした成分せいぶんけたのち液体えきたい部分ぶぶんは、本源ほんげんマグマとはことなった化学かがく組成そせいとなる。 実際じっさいには、本源ほんげんマグマからまず有色ゆうしょく鉱物こうぶつ橄欖かんらんせき輝石きせき無色むしょくはす長石ちょうせきあきらし、つぎ有色ゆうしょくすみ閃石無色むしょくせい長石ちょうせき析出せきしゅつしてくる。これらの結晶けっしょう析出せきしゅつするにしたがってマグマちゅう二酸化にさんかケイ素けいそ比率ひりつ上昇じょうしょうしてゆく。

べつ分化ぶんかプロセスとして、高温こうおんのマグマだまりが周辺しゅうへん岩石がんせき溶融ようゆうさせて混合こんごうする場合ばあいかんがえられる。あつ地殻ちかくゆうする大陸たいりく日本にっぽん列島れっとうでは、玄武岩げんぶがんしつマグマが熱源ねつげんとなって二酸化にさんかケイ素けいそんだ地殻ちかく成分せいぶん融解ゆうかいさせ、混合こんごうして、多様たようなマグマを形成けいせいするとかんがえられる[11]

マグマちゅう揮発きはつせい物質ぶっしつ

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北海道ほっかいどうアトサヌプリ火山かざんガスの噴気ふんき水蒸気すいじょうきしろえる。噴気ふんきあな周辺しゅうへんにはガスにふくまれていた硫黄いおう堆積たいせきしている。

マグマちゅうには揮発きはつせい物質ぶっしつふくまれている。物質ぶっしつとしてはみず二酸化炭素にさんかたんそ主体しゅたいとし、その硫黄いおう塩素えんそなどの成分せいぶん溶解ようかいしている。これらの成分せいぶん一般いっぱんてきにマグマちゅう鉱物こうぶつ結晶けっしょうまれないため、マグマの分化ぶんかプロセスが進行しんこうしてもマグマの液体えきたい部分ぶぶんのこる。またマグマが冷却れいきゃく固化こかするときには揮発きはつせい成分せいぶん岩石がんせき火成岩かせいがん)にのこらず火山かざんガスなどのかたち放出ほうしゅつされる。揮発きはつせい物質ぶっしつ構成こうせいはマグマと同様どうよう多様たようであるが、プレートしずたいのマグマの揮発きはつせい成分せいぶんには、地域ちいきのものにくらべてみず塩素えんそおお傾向けいこうがある。これはこの地域ちいきのマグマの生成せいせい海水かいすい影響えいきょうしていることを反映はんえいしている[12]

過去かこ地球ちきゅうにおけるマグマ

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地球ちきゅう多数たすうほろ惑星わくせい惑星わくせいはい衝突しょうとつ集合しゅうごうしてできた46おくねんまえには、衝突しょうとつエネルギーによる高温こうおん地球ちきゅう表面ひょうめん岩石がんせき溶解ようかいしてマグマオーシャンを形成けいせいしていたとかんがえられる[13]つきができた原因げんいん原始げんし地球ちきゅう惑星わくせいとの衝突しょうとつにあるとするジャイアント・インパクトせつでは、衝突しょうとつ直後ちょくご地球ちきゅう全体ぜんたい高温こうおんとなって地球ちきゅう全体ぜんたいおおうマグマオーシャンが形成けいせいされたとされる。 地球ちきゅう誕生たんじょう温度おんどもっとたか現在げんざい徐々じょじょえているため、20おくねん以上いじょうまえには現在げんざいのどのマグマよりも高温こうおん(1600℃)でマグネシウムおおふくコマチアイトマグマが形成けいせいされた[14]

マグマオーシャン

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惑星わくせい表層ひょうそう珪酸けいさんしお部分ぶぶんけた状態じょうたいになり、マグマのうみ形成けいせいされた状態じょうたいマグマオーシャンという。地球ちきゅうでは、その形成けいせい最終さいしゅう段階だんかいジャイアント・インパクト経験けいけんしたさいに、マグマオーシャンが形成けいせいされたとのせつがある[15]

おも活動かつどういき

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 「マントル・地殻ちかく地球ちきゅう科学かがく」p187
  2. ^ 坪井つぼいまこと太郎たろう岩石がんせきがくI』(岩波いわなみ全書ぜんしょ
  3. ^ アフリカのオルドイニョ・レンガイ炭酸たんさんしおマグマの火山かざん
  4. ^ a b 地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん」p85
  5. ^ 常温じょうおんでのみずあめ程度ていど
  6. ^ 火山かざん入門にゅうもん 日本にっぽん誕生たんじょうから破局はきょく噴火ふんかまで」島村しまむら英紀ひでのり NHK出版しゅっぱん新書しんしょ461 2015ねん p96
  7. ^ 海洋かいようではなくアメリカ大陸あめりかたいりく存在そんざいするイエローストーンもホットスポットとかんがえられている。「地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん」p87
  8. ^ このふし内容ないようは「マントル・地殻ちかく地球ちきゅう科学かがく」p189-196 から
  9. ^ 地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん」p91 の溶融ようゆう曲線きょくせんより
  10. ^ 地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん」p92
  11. ^ このふし内容ないようは「地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん」p93-95 から
  12. ^ このふし内容ないようは「マントル・地殻ちかく地球ちきゅう科学かがく」p271-275 から
  13. ^ 最新さいしん地球ちきゅうくわかるほん」p104
  14. ^ 新装しんそうばん 地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく13 地球ちきゅう進化しんかろんたいら朝彦あさひこら 株式会社かぶしきがいしゃ岩波書店いわなみしょてん 2011ねん
  15. ^ 川添かわぞえ貴章たかあき, 大谷おおや栄治えいじ熔融ようゆう金属きんぞくてつとMg-ペロヴスカイト、マグネシオヴスタイトあいだのFe、Ni、Co分配ぶんぱいとマグマオーシャンのふか」『日本にっぽん岩石がんせき鉱物こうぶつ鉱床こうしょう学会がっかい 学術がくじゅつ講演こうえんかい 講演こうえん要旨ようししゅう』2004ねん 日本にっぽん岩石がんせき鉱物こうぶつ鉱床こうしょう学会がっかい 学術がくじゅつ講演こうえんかいG6:岩石がんせき鉱物こうぶつ鉱床こうしょうがく一般いっぱん日本にっぽん鉱物こうぶつ学会がっかい、2004ねん、62-62ぺーじdoi:10.14824/jampeg.2004.0.62.0NAID 130006960881 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 地球ちきゅう惑星わくせい科学かがく入門にゅうもん だい2はん在田ありた一則かずのり竹下たけしたとおる身延みのぶしょう士郎しろう渡辺わたなべしげるじゅう 北海道大学ほっかいどうだいがく出版しゅっぱんかい 2015ねん
  • 地球ちきゅう科学かがく講座こうざ3 マントル・地殻ちかく地球ちきゅう科学かがく野津のつ憲治けんじ清水しみずひろし 培風館ばいふうかん 2003ねん
  • 最新さいしん地球ちきゅうくわかるほん」 川上かわかみしんいち東条とうじょう文治ぶんじ 株式会社かぶしきがいしゃ秀和しゅうわシステム 2006ねん

関連かんれん項目こうもく

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