ハツカネズミの成獣 せいじゅう は頭 あたま 胴 どう 長 ちょう が57 - 91mm、尾長 おなが が42 - 80mmである[1] 。また体重 たいじゅう は約 やく 10 - 25gである。体 からだ 色 しょく は変異 へんい に富 と み、白色 はくしょく 、灰色 はいいろ 、褐色 かっしょく や黒色 こくしょく となる。短 たん 毛 げ で腹 はら 側 がわ は淡 あわ い。耳 みみ と尾 お は非常 ひじょう に短 みじか い毛 け に覆 おお われる。後足 あとあし はアカネズミ属 ぞく (Apodemus )にくらべ短 みじか く、15 - 19mmほどである。走 はし るときの歩幅 ほはば は約 やく 4.5cmであり、また最大 さいだい 45cmまでジャンプすることができる。糞 くそ は黒色 こくしょく で長径 ちょうけい 4 - 6mm、短 たん 径 みち 1 - 3mmで[1] 、かび臭 くさ い。鳴 な き声 ごえ は甲高 かんだか い[2] [3] 。
若 わか いオスとメスは簡単 かんたん に識別 しきべつ できないが、メスはオスに比 くら べ肛門 こうもん と生殖 せいしょく 器 き の間 あいだ の長 なが さが比較的 ひかくてき 短 みじか い。メスは5対 つい の乳腺 にゅうせん と乳首 ちくび を持 も つが、オスでは発達 はったつ しない[4] 。性 せい 成熟 せいじゅく 時 じ の明瞭 めいりょう な違 ちが いは、オスは睾丸 こうがん が発達 はったつ することである。この睾丸 こうがん は体 からだ に比 くら べて大 おお きく、また体内 たいない に引 ひ っ込 こ めることができる。胸部 きょうぶ にあるエンドウ豆 まめ 大 だい の胸腺 きょうせん に加 くわ えて、待 ま ち針 ばり の頭 あたま 大 だい の第 だい 二 に の胸腺 きょうせん が首 くび の気管 きかん 付近 ふきん にある[5] 。
パンダマウス (ハツカネズミ)
草地 くさち 、田畑 たばた 、河原 かわはら 、土手 どて 、荒 あ れ地 ち 、砂丘 さきゅう などをはじめ、家屋 かおく や商業 しょうぎょう 施設 しせつ の周辺 しゅうへん などの様々 さまざま な環境 かんきょう に生息 せいそく している[1] 。雑食 ざっしょく 性 せい で種子 しゅし や穀物 こくもつ 類 るい 、雑草 ざっそう や花 はな を採 と 食 しょく するほか、小型 こがた の昆虫 こんちゅう 類 るい も捕食 ほしょく する[1] 。また、汚染 おせん された飼料 しりょう はもとより、ペットフードや家畜 かちく 飼料 しりょう などを消費 しょうひ する。さらに、しばしば農業 のうぎょう や家屋 かおく に被害 ひがい をもたらすと考 かんが えられている。ハツカネズミも他 た のネズミのように疾病 しっぺい を媒介 ばいかい するが、クマネズミ類 るい ほど危険 きけん ではない[6] 。
クマネズミ属 ぞく のドブネズミ ・クマネズミ の2種 しゅ と同様 どうよう 、「家 いえ ネズミ 」として人家 じんか や周辺 しゅうへん の環境 かんきょう に入 はい り込 こ むが、その害 がい はクマネズミ属 ぞく の家 いえ ネズミよりもずっと小 ちい さい。渇 かわ きに強 つよ く、コンテナなどの荷物 にもつ に潜 ひそ んで移動 いどう し、世界 せかい の広 ひろ い地域 ちいき に分布 ぶんぷ する。日本 にっぽん でも、史 ふみ 前 ぜん 移入 いにゅう 種 しゅ として、島嶼 とうしょ (とうしょ)部 ぶ を含 ふく むほぼ全 ぜん 地域 ちいき に生息 せいそく する。
成熟 せいじゅく するまで2,3か月 げつ 。繁殖 はんしょく 期 き は野生 やせい では春 はる と秋 あき であるが、生息 せいそく 環境 かんきょう によっては一年中 いちねんじゅう 繁殖 はんしょく することができる[1] 。夜行 やこう 性 せい で、単独 たんどく または家族 かぞく で生活 せいかつ する。人家 じんか では家具 かぐ の隙間 すきま などに巣 す を作 つく る。河原 かわら や畑 はたけ では、他 た の動物 どうぶつ の掘 ほ った巣 す 穴 あな などを利用 りよう して生活 せいかつ する。一方 いっぽう で、実験 じっけん 用 よう にも多用 たよう される面 めん も持 も つ。飼育 しいく されている個体 こたい では、寿命 じゅみょう が約 やく 1年 ねん ~2年 ねん ほど。野生 やせい では4か月 げつ ほどが寿命 じゅみょう と言 い われている。
捕食 ほしょく 者 しゃ は、ネコ 、イタチ 、フクロウ 、ノスリ 、カラス 、モズ 、アオダイショウ 、ニホンマムシ など。
3亜種 あしゅ が確認 かくにん されているが、独立 どくりつ 種 しゅ として扱 あつか われることもある[7] [8] 。
ジャパニーズ・ファンシー・マウス Mus musclus molssinus
Mus musculus castaneus (アジア南部 なんぶ および南東 なんとう 部 ぶ )
Mus musculus domesticus (ヨーロッパ西部 せいぶ 、アジア南西 なんせい 部 ぶ 、アメリカ、アフリカ、オセアニア)
Mus musculus musculus (ヨーロッパ東部 とうぶ およびアジア北部 ほくぶ )
さらに次 つぎ の2亜種 あしゅ が近年 きんねん になり確認 かくにん されている[8] 。
Mus musculus bactrianus (アジア中央 ちゅうおう 部 ぶ )
Mus musculus gentilulus (アラビア半島 はんとう およびマダガスカル)[9]
他 ほか にも様々 さまざま な名称 めいしょう がハツカネズミに与 あた えられているが、他 た の亜種 あしゅ のシノニム として扱 あつか われている。日本 にっぽん のハツカネズミ("M. m. molosinus ")などのように、いくつかの個体 こたい 群 ぐん では異 こと なった亜種 あしゅ の雑種 ざっしゅ となっている[8] [10] 。
妊娠 にんしん 期間 きかん が20日 はつか 程度 ていど であることから「はつかねずみ」の名 な が付 つ いたとされる[11] 。一説 いっせつ によると、噛 か まれても痛 いた くない「甘口 あまくち (あまくち)」のネズミというところから「甘口 あまくち 鼠 ねずみ (あまくちねずみ)」と呼 よ ばれたものが、写 うつ し違 ちが いから後 のち に「廿 にじゅう 日 び 鼠 ねずみ (はつかねずみ)」となったともいう。
ハツカネズミは、ドブネズミやクマネズミのようなクマネズミ属 ぞく Rattus の家 いえ ネズミよりずっと小 ちい さい。多 おお くのヨーロッパ 言語 げんご では、英語 えいご の 'mouse' (複数 ふくすう 形 がた 'mice')と 'rat' のように、ハツカネズミなどの小型 こがた ネズミ類 るい と、クマネズミ属 ぞく の大型 おおがた ネズミ類 るい を、別 べつ の名称 めいしょう で呼 よ び分 わ け、日本語 にほんご の「ネズミ 」のように、両者 りょうしゃ を併 あわ せて指 さ す呼称 こしょう がない。口語 こうご な総称 そうしょう としては'rodent'があるが、これは齧 かじ 歯 は 目 め 全般 ぜんぱん を指 さ し、しばしリス なども含 ふく む。
日本語 にほんご の「ハツカネズミ」は、通常 つうじょう 、英語 えいご の「mouse」(あるいは、各国 かっこく 語 ご のそれに該当 がいとう する語 かたり )の訳語 やくご に当 あ てられている。その場合 ばあい 、この語 かたり は種 たね としてのハツカネズミ Mus musculus だけではなく、小型 こがた ネズミ類 るい 一般 いっぱん を指 さ す語 かたり として使 つか われ得 え る。
なお、人家 じんか を住処 すみか とする「家 いえ ネズミ」のうち、小型 こがた ネズミ類 るい は、日本 にっぽん では狭義 きょうぎ のハツカネズミのみである。
アルビノのハツカネズミ
日本 にっぽん では、特 とく に実験 じっけん 用 よう に改良 かいりょう ・繁殖 はんしょく した飼養 しよう 変種 へんしゅ (実験 じっけん 動物 どうぶつ )を指 さ して「マウス 」と呼 よ ぶ。実験 じっけん 用 よう にはモデル生物 せいぶつ として用 もち いられる。マウスはあくまでハツカネズミの飼養 しよう 変種 へんしゅ (Mus musculus domesticus )なので、種 たね として記載 きさい されるときは「ハツカネズミ」 Mus musculus ということになる。ゲノムプロジェクト によって全 ぜん ゲノム配列 はいれつ が解読 かいどく されている。ラット とともに、ヒト の進化 しんか や病理 びょうり を解明 かいめい する有力 ゆうりょく な手 て がかりである。
実験 じっけん 用 よう マウスは、野生 やせい のハツカネズミに比 くら べてかなり大型 おおがた である。アルビノ のものが一般 いっぱん 的 てき だが、さまざまな毛色 けいろ の系統 けいとう が存在 そんざい し、体毛 たいもう のない系統 けいとう のものは「ヌードマウス 」と呼 よ ばれる。ヌードマウスは胸腺 きょうせん が欠如 けつじょ しているため、細胞 さいぼう 性 せい 免疫 めんえき が機能 きのう しない。そのため拒絶 きょぜつ 反応 はんのう が起 お こらないので、移植 いしょく 実験 じっけん に多用 たよう されている。
マウスの系統 けいとう 化 か は非常 ひじょう に進 すす んでおり、代表 だいひょう 的 てき なクローズドコロニーとしてICR、ddYが、代表 だいひょう 的 てき な近 きん 交系としてA(アルビノ )、AKR(アルビノ )、BALB/c (アルビノ )、C3H(野生 やせい 色 しょく )、C57BL/6 (黒色 こくしょく )、DBA/2(淡 あわ チョコレート色 しょく )などが知 し られている。各 かく 系統 けいとう は近親 きんしん 交配 こうはい を何 なん 代 だい にも渡 わた って繰 く り返 かえ したことで確立 かくりつ されたもので、各 かく 系統 けいとう 内 ない における個体 こたい 間 あいだ の遺伝 いでん 的 てき な差異 さい はほぼ存在 そんざい しない。生理 せいり 的 てき ・薬理 やくり 的 てき な反応 はんのう のデータを大量 たいりょう に取 と る上 じょう で個体 こたい 間 あいだ の遺伝 いでん 的 てき な差異 さい をほぼ無視 むし できるマウスの存在 そんざい は、医学 いがく ・生理学 せいりがく 等 とう の発展 はってん に大 おお きく寄与 きよ している。
マウスは、愛玩 あいがん 動物 どうぶつ として飼育 しいく されることもある。日本 にっぽん でも、江戸 えど 時代 じだい から白黒 しろくろ まだらのハツカネズミが飼 か われていた。ニシキネズミとも呼 よ ばれる。この変種 へんしゅ は一時期 いちじき 日本 にっぽん 国内 こくない では姿 すがた を消 け してしまったが、ヨーロッパでは「ジャパニーズ」と呼 よ ばれる小型 こがた のまだらマウスがペットとして飼 か われており、DNA 調査 ちょうさ の結果 けっか 、これが日本 にっぽん から渡 わた ったハツカネズミの子孫 しそん であることがわかった。現在 げんざい は「パンダマウス」の呼称 こしょう で日本 にっぽん でも再 ふたた び飼 か われるようになっている。
^ a b c d e 阿部 あべ 永 ひさし 監修 かんしゅう 、日本 にっぽん の哺乳類 ほにゅうるい 、東海大学 とうかいだいがく 出版 しゅっぱん 会 かい 、2002年 ねん 第 だい 1版 はん 第 だい 4刷 さつ 、ISBN 9784486012900
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