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和名 - Wikipedia

和名わみょう(わめい)は、生物せいぶつたね鉱物こうぶつ現象げんしょうなどにつけられた日本語にほんごでの名前なまえとくに、学名がくめい対応たいおうさせた標準ひょうじゅん和名わみょうのことをさす場合ばあいがある。

和名わみょう由来ゆらい

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和名わみょうは、学問がくもん規約きやくてき規定きていされたではなく、一般いっぱん使用しようされている習慣しゅうかんてき名称めいしょうである。生物せいぶつ場合ばあいひとつのたねおおくのことなるがあったり、複数ふくすうたねおなめいばれたり、地方ちほうによってことなっていたりする。

こうした日本語にほんごによる慣用かんようめいは、日常にちじょう用途ようとでは漢字かんじ表記ひょうきすることもおおいが、今日きょう生物せいぶつがくとく分類ぶんるいがくてき見地けんちった学術がくじゅつてき局面きょくめん使用しようするときはカタカナ表記ひょうきする。当初とうしょ戦前せんぜんにおいては和文わぶん論文ろんぶんなど日本語にほんご表記ひょうき学術がくじゅつてき文章ぶんしょう漢字かんじカタカナじりぶんくのが慣例かんれいであり、ぶんのカタカナと生物せいぶつめい視覚しかくてき識別しきべつしやすくするため、和名わみょうひらがな表記ひょうきした。本来ほんらいカタカナはかんやく仏典ぶってん漢籍かんせきくだしやすくするためにするふりがなおく仮名がなとして成立せいりつしたものであり、伝統でんとうてき学術がくじゅつてき文章ぶんしょう漢字かんじカタカナじりぶんいたのであるが、戦後せんご国語こくご改革かいかくともな学術がくじゅつてき文章ぶんしょうであっても漢字かんじひらがなじりぶんくようになった。そのため、旧来きゅうらい表記ひょうきほうをひっくりかえしてぶんのひらがなと視覚しかくてき識別しきべつしやすくするために、和名わみょうをカタカナ表記ひょうきするようになったという経緯けいいがある。

学問がくもんてきには、生物せいぶつ名前なまえ学名がくめいもちいるべきだが、ラテン文字もじ日常にちじょうもちいられ、ラテン語らてんご語彙ごいになじみがある欧米おうべい諸国しょこくとはことなり、日常にちじょうてきにはラテン文字もじやその語彙ごいもちいない日本にっぽんでは学名がくめい使用しようはかなりの努力どりょく必要ひつようであり、入門にゅうもんしゃ一般いっぱんきであるとはえない。そのため、学名がくめい同様どうよう使つかえるような日本語にほんご名前なまえがあったほう便利べんりである。そのような目的もくてき学界がっかいやその周辺しゅうへん慣習かんしゅうてきもちいられているものが標準ひょうじゅん和名わみょうである。

和名わみょう使つかわれかた

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たね学名がくめい一対一いちたいいちとなるように調整ちょうせいした和名わみょうを、標準ひょうじゅん和名わみょうぶ。標準ひょうじゅん和名わみょう日本にっぽん国内こくない範囲はんいでは、学名がくめいじゅんじてあつかわれている。ただし、標準ひょうじゅん和名わみょうについては、命名めいめい規約きやくとうどころか定義ていぎさえなく、それぞれの分野ぶんや図鑑ずかん学術がくじゅつ雑誌ざっしなどにおいて研究けんきゅうしゃたちあいだ慣習かんしゅうてき使用しようされてきたのが実情じつじょうである[1]。2000ねん日本にっぽん魚類ぎょるい学会がっかいは、学会がっかいレベルでははじめて標準ひょうじゅん和名わみょうを「名称めいしょう安定あんてい普及ふきゅう確保かくほするためのものであり、ぞくたね亜種あしゅ、といった分類ぶんるいがくてき単位たんいあたえられる固有こゆうかつ学術がくじゅつてき名称めいしょう」と定義ていぎした[1]。また、日本にっぽん藻類そうるい学会がっかいでも、ワーキンググループにより、和名わみょう提唱ていしょう使用しようかんするガイドラインが提案ていあんされている。このガイドラインでは、和名わみょう命名めいめい方法ほうほうとうについてなんらかの強制きょうせい制限せいげんあたえたり、あるいは和名わみょう標準ひょうじゅんすすめることなどは目標もくひょうとせず、和名わみょう野放図のほうず命名めいめい使用しようにより発生はっせいする混乱こんらんふせぐために注意ちゅういすべきてんしめすことを目指めざした[2]。2018ねん日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかいは、学会がっかい推奨すいしょうする標準ひょうじゅん和名わみょう目録もくろくとして公表こうひょうした[3]

鳥類ちょうるい[4][5]哺乳類ほにゅうるい[6][7]のように、ぜん世界せかいたね和名わみょう設定せっていされている分野ぶんやもある。しかし、おおくの生物せいぶつ分類ぶんるいぐんでは日本にっぽんにいないたね和名わみょう存在そんざいしない。また、日本にっぽん分布ぶんぷしていても専門せんもん以外いがい注目ちゅうもくされることのまれな分類ぶんるいぐんでは、和名わみょうあたえられていないたねがむしろ普通ふつうである。

和名わみょうをつける機会きかいとしては、図鑑ずかん目録もくろくつくるときに和名わみょうあたえる場合ばあいや、新種しんしゅ記載きさいをするときに、日本語にほんご記載きさいぶん和名わみょうえる場合ばあいなどがある。日本にっぽん分布ぶんぷするたね最初さいしょから和名わみょうをつけるかどうかは、分野ぶんやごとの慣行かんこうである。アマチュア裾野すそのひろ分野ぶんやでは、新種しんしゅ記載きさいとき和名わみょう最初さいしょからつけることがおおい。たとえば植物しょくぶつでは種子しゅし植物しょくぶつシダ植物しょくぶつコケ植物しょくぶつ動物どうぶつでは脊椎動物せきついどうぶつチョウその一般いっぱん昆虫こんちゅう採集さいしゅう対象たいしょうとなる分野ぶんや昆虫こんちゅう軟体動物なんたいどうぶつ一般いっぱんてきである。それ以外いがい生物せいぶつでは、とく必要ひつようがないかぎ和名わみょうはつけない慣例かんれいのものがおおい。例外れいがいてきなのは、変形へんけいきん蘚苔せんたいるいダニササラダニるいなどで、いずれもさほどひろ使つかわれてはいないが、国内産こくないさんのほぼすべてに和名わみょうがついている。

和名わみょう生物せいぶつ場合ばあい一般いっぱんけの文章ぶんしょうでは学名がくめい(この場合ばあいには誤用ごよう誤読ごどくおおい)あるいは英語えいごめいをカタカナきして和名わみょうえているものもある。ただし、学名がくめいかたにはさだまったものがない。欧米おうべい各国かっこくでは自分じぶんくにみやすいように傾向けいこうがあり、言語げんごあいだ勢力せいりょく関係かんけいから英語えいごしき発音はつおんはばをきかせていることから、これをカナ表記ひょうきうつれいもある。他方たほう、そのような下地したじがない以上いじょう日本にっぽんではラテン語らてんご本来ほんらいみを使つかうべしとのかんがえも根強ねづよくあり、それらがじるのでゆれがおおきい。

また、動物どうぶつ植物しょくぶつおおくでは和名わみょうはほぼたねとの対応たいおうできる名称めいしょうあたえられているが、たとえばカビ微小びしょう藻類そうるいクンショウモイカダモなど)の場合ばあい和名わみょうあたえられているものは、ほぼぞく単位たんいである。

かつては代表だいひょうてき生物せいぶつには和名わみょうをつける方向ほうこう努力どりょくがなされていた。たとえばだい世界せかい大戦たいせん以前いぜん図鑑ずかんれば、ゴリラたいしてオオショウジョウチンパンジークロショウジョウ熱帯魚ねったいぎょソードテールたいしてツルギメダカアメーバアメムシといったふうに、様々さまざま和名わみょうられる。これらは、現在げんざいでは使つかわれることがまずないれいである。同様どうようおおくが普及ふきゅうすることなく使つかわれなくなってしまった。

日本語にほんご名前なまえであっても標準ひょうじゅん和名わみょう通俗つうぞくめいとはちがうので、普通ふつう使つかわれる名前なまえちがっている場合ばあいがある。しかし標準ひょうじゅん和名わみょうのことを学名がくめいぶことは、間違まちがいである。

他方たほう標準ひょうじゅん和名わみょう一般いっぱんめい駆逐くちくするれいられている。日本にっぽんでは明治めいじ以降いこう全国ぜんこくおおやけ教育きょういく普及ふきゅうし、博物学はくぶつがく知識ちしき普及ふきゅうしたこともその一因いちいんであろう。たとえばクワガタムシふるくから子供こどもいおもちゃであり、おおくの地方ちほうめいがあったが、現在げんざいではコクワ(コクワガタ)、ヒラタ(ヒラタクワガタ)とう標準ひょうじゅん和名わみょう由来ゆらい名前なまえ全国ぜんこくてき優勢ゆうせいである。

和名わみょう変更へんこう

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生物せいぶつ分野ぶんやでの学術がくじゅつ論文ろんぶんにおける記述きじゅつ学名がくめいであるため混乱こんらんはないが、生物せいぶつ図鑑ずかんひとし一般いっぱん書籍しょせきでは和名わみょう使つかわれるため、ときどき混乱こんらんこる。学名がくめい場合ばあいさき発表はっぴょうされたたいする優先ゆうせんけんおな生物せいぶつ独立どくりつに2つのあたえられた場合ばあい処理しょりとうについて、厳格げんかくなルールがある。和名わみょうでは明確めいかくなルールは設定せっていされていないので、たとえば図鑑ずかん著者ちょしゃあらたな和名わみょう使つかった場合ばあいに、混乱こんらんしょうじる場合ばあいがある。

1988ねん文部省もんぶしょう当時とうじ)の方針ほうしんで、以上いじょう分類ぶんるいぐん和名わみょうになされてきた表記ひょうき代表だいひょうてき生物せいぶつめいえられるこころみがおこなわれた(れい食肉しょくにく→ネコ[8]。しかし、伝統でんとうてき名称めいしょうになじみがあること、名前なまえ意味いみたせていたものがうしなわれること(鱗翅りんしチョウ)、あまりになじみのある名前なまえ場合ばあい所属しょぞくするたねとのあいだ違和感いわかんしょうじること(ネコイヌふくまれる)など、批判ひはんするものもおお[9][10][11][12]

また、有力ゆうりょく研究けんきゅうしゃ学会がっかいなどの総意そういなどによって、など上位じょうい分類ぶんるいぐんすべてまとめて和名わみょう変更へんこうする場合ばあいがある。その場合ばあい、その分類ぶんるいぐん所属しょぞくするたねほとんど全部ぜんぶ名前なまえわることもある(れいしょうあしつな・ヤスデモドキつなエダヒゲムシつな、ドクグモコモリグモ)。最近さいきん差別さべつてき表現ひょうげんとみなされる言葉ことばふくまれる名前なまえなどがその対象たいしょうとなるれいもある(イザリウオ→カエルアンコウ[13]。ただし、言葉ことばてき運動うんどうきらい、旧来きゅうらい使つかひともいて、複数ふくすう和名わみょう併用へいようされているれいもある(れいメクラヘビ→ミミズヘビ)。

分類ぶんるいぐん統合とうごう分割ぶんかつによる分類ぶんるい変更へんこうにより、学名がくめい対応たいおうする和名わみょう変更へんこうされるれい多々たたある(れいトカゲぞくぞく細分さいぶんともなEumecesからPlestiodon変更へんこう[14][15]和名わみょう変更へんこう混乱こんらんむことから、できるだけ変更へんこうともなわないよう考慮こうりょすべきという指摘してきもある[16]

出典しゅってん

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  1. ^ a b 瀬能せのうひろし標準ひょうじゅん和名わみょうとは? 差別さべつてきふく魚類ぎょるい標準ひょうじゅん和名わみょう改名かいめいをめぐって」(PDF)『自然しぜん科学かがくのとびら』だい13かんだい2ごう神奈川かながわ県立けんりつ生命せいめいほし地球ちきゅう博物館はくぶつかん、2007ねん6がつ15にち、10-11ぺーじ2019ねん6がつ12にち閲覧えつらん 
  2. ^ 日本にっぽん藻類そうるい学会がっかい 藻類そうるい和名わみょうワーキンググループ「藻類そうるいにおける和名わみょう提唱ていしょう使用しようかんするガイドラインあんについて」(PDF)『藻類そうるいだい66かんだい2ごう日本にっぽん藻類そうるい学会がっかい、2018ねん7がつ10日とおか、130-133ぺーじ2019ねん6がつ12にち閲覧えつらん 
  3. ^ 川田かわたしん一郎いちろう岩佐いわさ真宏まさひろ福井大ふくいだい新宅しんたくいさむふとし天野あまの雅男まさおした稲葉いなばさやか・たるはじめ姉崎あねざき智子さとこよこはた泰志やすし世界せかい哺乳類ほにゅうるい標準ひょうじゅん和名わみょう目録もくろく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい58かん 別冊べっさつ日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2018ねん、1-53ぺーじ
  4. ^ 山階やましなよし麿まろ世界せかい鳥類ちょうるい和名わみょう辞典じてん大学だいがく書林しょりん、1986ねん
  5. ^ 山崎やまざき剛史たけし亀谷かめたにたつろう太田おおた紀子のりこフクロウあたらしいたね和名わみょう」『山階やましな鳥類ちょうるいがく雑誌ざっしだい49かん 1ごう山階やましな鳥類ちょうるい研究所けんきゅうじょ、2017ねん、31-40ぺーじ
  6. ^ 今泉いまいずみよしのり 監修かんしゅう世界せかい哺乳類ほにゅうるい和名わみょう辞典じてん平凡社へいぼんしゃ、1988ねん
  7. ^ 日本にっぽんモンキーセンター霊長れいちょうるい和名わみょう編纂へんさんワーキンググループ「日本にっぽんモンキーセンター 霊長れいちょうるい和名わみょうリスト 2018ねん11がつばん」(2018ねん12月16にち公開こうかい)2022ねん12月17にち閲覧えつらん
  8. ^ 文部省もんぶしょう日本にっぽん動物どうぶつ学会がっかい へん動物どうぶつ分類ぶんるいめい」『学術がくじゅつ用語ようごしゅう 動物どうぶつがくへんぞうていばん)』丸善まるぜん、1988ねん、1060-1100ぺーじ
  9. ^ 青木あおき淳一じゅんいち動物どうぶつ分類ぶんるいめい表記ひょうきかんする論議ろんぎ食肉しょくにくか, ネコ」『動物どうぶつ分類ぶんるい学会がっかいだい51かん日本にっぽん動物どうぶつ分類ぶんるい学会がっかい、1994ねん、69-72ぺーじ
  10. ^ すみほんせい哺乳類ほにゅうるい日本語にほんご分類ぶんるいぐんめいとく目名めな取扱とりあつかいについて―文部省もんぶしょうの“目安めやす”にどう対応たいおうするか」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい40かん 1ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2000ねん、83-99ぺーじ
  11. ^ 青木あおき淳一じゅんいち動物どうぶつ目名めな表記ひょうきかんする論議ろんぎ―カナ表記ひょうきか,漢字かんじ表記ひょうき」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい43かん 1ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2003ねん、67-68ぺーじ
  12. ^ 日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい しゅめい標本ひょうほん検討けんとう委員いいんかい 目名めな問題もんだい検討けんとう作業さぎょう部会ぶかい哺乳類ほにゅうるい高次こうじ分類ぶんるいぐんおよび分類ぶんるい階級かいきゅう日本語にほんご名称めいしょう提案ていあんについて」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい43かん 2ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2003ねん、127-134ぺーじ
  13. ^ 松浦まつうら啓一けいいち (2007ねん2がつ1にち). “差別さべつてきふく標準ひょうじゅん和名わみょう改名かいめいとおねが”. 日本にっぽん魚類ぎょるい学会がっかい. 2019ねん6がつ12にち閲覧えつらん
  14. ^ 疋田ひきたつとむ本邦ほんぽう爬虫両棲類りょうせいるい和名わみょうこう」『爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかいほう』2002かん 2ごう日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい、2002ねん、99-111ぺーじ
  15. ^ 疋田ひきたつとむトカゲぞく学名がくめい変更へんこうEumecesからPlestiodonへ〜」『爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかいほう』2006かん 2ごう日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい、2006ねん、139-145ぺーじ
  16. ^ せんせき正一しょういち和名わみょう日本にっぽんのことば」『爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかいほう』2002かん 2ごう日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい、2002ねん、93-97ぺーじ

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