生物 せいぶつ 学 がく とは、生命 せいめい 現象 げんしょう を研究 けんきゅう する分野 ぶんや である。
日本 にっぽん の『生化学 せいかがく 辞典 じてん 』によると、生物 せいぶつ 学 がく は生物 せいぶつ やその存在 そんざい 様式 ようしき を研究 けんきゅう 対象 たいしょう としている[ 2] 、となっており、
Aquarena Wetlands Project glossary of termsの定義 ていぎ では、生物 せいぶつ 学 がく の研究 けんきゅう 対象 たいしょう には構造 こうぞう ・機能 きのう ・成長 せいちょう ・発生 はっせい ・進化 しんか ・分布 ぶんぷ ・分類 ぶんるい を含 ふく む[ 3] としている。
扱 あつか う対象 たいしょう の大 おお きさは、一 いち 分子生物学 ぶんしせいぶつがく における「細胞 さいぼう 内 うち の一 いち 分子 ぶんし の挙動 きょどう 」から、生態 せいたい 学 がく における「生物 せいぶつ 圏 けん レベルの現象 げんしょう 」までのレベルにおいても、具体 ぐたい 的 てき な生物 せいぶつ 種 しゅ の数 かず の多 おお さにおいても、きわめて幅広 はばひろ い。
現代 げんだい の生物 せいぶつ 学 がく が成立 せいりつ したのは比較的 ひかくてき 最近 さいきん だが、関連 かんれん し含 ふく まれていた科学 かがく は古代 こだい から存在 そんざい した。自然 しぜん 哲学 てつがく はメソポタミア 、古代 こだい エジプト 、古代 こだい インド、古代 こだい 中国 ちゅうごく で研究 けんきゅう されていた。しかし、現在 げんざい に繋 つな がる生物 せいぶつ 学 がく や自然 しぜん 研究 けんきゅう の萌芽 ほうが は古代 こだい ギリシアに見 み られる[ 4] 。
一般 いっぱん に、諸 しょ 研究 けんきゅう に先駆 せんく しているという意味 いみ で、古代 こだい ギリシア のアリストテレス をもって生物 せいぶつ 学 がく 史 し の始 はじ めとする[ 5] [ 1] 。「アリストテレスは実証 じっしょう 的 てき 観察 かんさつ を創始 そうし した[ 6] 」「全 ぜん 時代 じだい を通 つう じて最 もっと も観察 かんさつ 力 ちから の鋭 するど い博物学 はくぶつがく 者 しゃ の一人 ひとり [ 7] 」などとされ、生物 せいぶつ の分類 ぶんるい を提示 ていじ するなどし、後世 こうせい に至 いた るまで多大 ただい なる影響 えいきょう を及 およ ぼしたのである。アリストテレスの動物 どうぶつ 学 がく 上 じょう の著作 ちょさく として残 のこ っているものとしてはHistoria animalium 『動物 どうぶつ 誌 し 』、De generatione animalium 『動物 どうぶつ 発生 はっせい 論 ろん 』、De partibus animalium 『動物 どうぶつ 部分 ぶぶん 論 ろん 』、De anima 『心 しん について 』(『霊魂 れいこん 論 ろん 』とも)がある。[ 8] 『動物 どうぶつ 誌 し 』では、500を越 こ える種 たね の動物 どうぶつ (約 やく 120種 しゅ の魚類 ぎょるい や約 やく 60種 しゅ の昆虫 こんちゅう を含 ふく む)を扱 あつか っており、随所 ずいしょ で優 すぐ れた観察 かんさつ 眼 め を発揮 はっき している[ 9] 。植物 しょくぶつ に関 かん する研究 けんきゅう も行 おこな い著作 ちょさく もあったとされるが、現在 げんざい では残 のこ っていないとされる。アリストテレスの生物 せいぶつ に関 かん する研究 けんきゅう の中 なか でも動物 どうぶつ に関 かん する研究 けんきゅう は秀 ひい でており、特 とく に動物 どうぶつ 学 がく の始原 しげん とされる。分類 ぶんるい 、生殖 せいしょく 、発生 はっせい 、その他 た の分野 ぶんや において先駆 せんく 的 てき な研究 けんきゅう を行 おこな い、その生命 せいめい 論 ろん や発生 はっせい 論 ろん は17世紀 せいき や18世紀 せいき の学者 がくしゃ にまで影響 えいきょう を与 あた えた。
ただし、アリストテレスの生物 せいぶつ 学 がく は、今日 きょう の視点 してん から見 み れば生気 せいき 論 ろん ・目的 もくてき 論 ろん 的 てき であり、その意味 いみ では哲学 てつがく 的 てき 、思弁 しべん 的 てき といえる[ 10] 。
古代 こだい ギリシアの哲学 てつがく 者 しゃ たち は有 ゆう 生物 せいぶつ と無生物 むせいぶつ を区別 くべつ する原理 げんり として「プシュケー 」という用語 ようご を用 もち いて説明 せつめい していたが、アリストテレスはこのプシュケーを、デュミナス (可能 かのう 態 たい )において生命 せいめい を持 も つ自然 しぜん 的 てき 物体 ぶったい の形相 ぎょうそう (エイドス)と定義 ていぎ し、プシュケーは「生命 せいめい の本質 ほんしつ をなしており、自己 じこ 目的 もくてき 機能 きのう であり起動 きどう 因 いん だ」と記述 きじゅつ した[ 11] 。
中世 ちゅうせい には、イスラム世界 せかい でジャーヒズ (781年 ねん -869年 ねん )やAbū Ḥanīfa Dīnawarī(828年 ねん -896年 ねん )らが植物 しょくぶつ 学 がく の著作 ちょさく を残 のこ した[ 12] 。
現代 げんだい 生物 せいぶつ 学 がく は、アントニ・ファン・レーウェンフック が発明 はつめい した顕微鏡 けんびきょう の普及 ふきゅう とともに発展 はってん した。科学 かがく 者 しゃ らによる精子 せいし ・細菌 さいきん ・滴 しずく 虫 むし 類 るい 、そして生命 せいめい が持 も つ驚 おどろ くべき奇妙 きみょう さと多様 たよう 性 せい が次々 つぎつぎ と明 あき らかにされた。ヤン・スワンメルダムの調査 ちょうさ は昆虫 こんちゅう 学 がく に対 たい する関心 かんしん を新 あら たにし、顕微鏡 けんびきょう を用 もち いた解剖 かいぼう や標本 ひょうほん 用 よう 染色 せんしょく の技術 ぎじゅつ を向上 こうじょう させた[ 13] 。
17世紀 せいき にロバート・フック が顕微鏡 けんびきょう を用 もち いた観察 かんさつ で細胞 さいぼう を発見 はっけん し、18世紀 せいき のカール・フォン・リンネ による生物 せいぶつ の分類 ぶんるい の発表 はっぴょう を経 へ て、チャールズ・ダーウィン の進化 しんか 論 ろん やグレゴール・ヨハン・メンデル のメンデルの法則 ほうそく などが認 みと められるに及 およ び、それまでの博物学 はくぶつがく の一 いち 領域 りょういき に過 す ぎなかった生物 せいぶつ についての知識 ちしき が、ひとつの学問 がくもん 分野 ぶんや を成 な りたせるに充分 じゅうぶん にまで蓄積 ちくせき された事 こと で成立 せいりつ した[ 2] 。19世紀 せいき 前半 ぜんはん には、細胞 さいぼう の中心 ちゅうしん 組織 そしき が重要 じゅうよう な役割 やくわり を持 も つという認識 にんしき が広 ひろ がった。1838年 ねん と1839年 ねん 、マティアス・ヤーコプ・シュライデン とテオドール・シュワン は、 (1)有機 ゆうき 体 たい の基本 きほん 単位 たんい は細胞 さいぼう であり、 (2)個別 こべつ の細胞 さいぼう がそれぞれ生 い きて、多 おお くの否定 ひてい 的 てき 意見 いけん があったが、(3)全 すべ ての細胞 さいぼう は分裂 ぶんれつ によって生 しょう じるという考 かんが えを促進 そくしん する役割 やくわり を果 は たした。1860年代 ねんだい には、ロベルト・レーマク とルドルフ・ルートヴィヒ・カール・フィルヒョウ の仕事 しごと によって細胞 さいぼう 説 せつ として知 し られる上記 じょうき 3説 せつ は多 おお くの支持 しじ を受 う けるようになった[ 14] 。
20世紀 せいき になると、生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 知識 ちしき は膨大 ぼうだい かつ複雑 ふくざつ になったため、これらを統一 とういつ 的 てき に理解 りかい しようとする試 こころ みが重視 じゅうし されるようになった。さらに、生物 せいぶつ を高度 こうど に組織 そしき 化 か された分子 ぶんし の集合 しゅうごう 体 たい と捉 とら え、環境 かんきょう の中 なか からどのように自己 じこ の秩序 ちつじょ と維持 いじ を満 み たすかという視点 してん から、分子 ぶんし 工学 こうがく 的 てき な理解 りかい を強 つよ める傾向 けいこう にある。そのため、従来 じゅうらい の記述 きじゅつ を主体 しゅたい とした学問 がくもん から、原理 げんり 的 てき そして実体 じったい 論 ろん 的 てき な学問 がくもん へと変貌 へんぼう しつつある[ 2] 。1990年 ねん には一般 いっぱん 的 てき なヒトゲノムを図像 ずぞう 化 か する計画 けいかく (ヒトゲノム計画 けいかく )が実行 じっこう に移 うつ され、2003年 ねん に完成 かんせい した[ 15] 。
英語 えいご の biology はギリシア語 ご の βίος (bios、生命 せいめい )に接尾 せつび 辞 じ -λογία (-logia、〜の学問 がくもん )である[ 16] 。これは、K.F.ブルダッハ (1800年 ねん )、ゴットフリート・ラインホルト・トレフィラヌス (1802年 ねん )、ジャン=バティスト・ラマルク (1802年 ねん )らによって、それぞれ独立 どくりつ に用 もち いられはじめ[ 5] [ 17] [ 18] 、広 ひろ まることになった(→#「生物 せいぶつ 学 がく 」と「生命 せいめい 科学 かがく 」 )。
人体 じんたい :現代 げんだい の生物 せいぶつ 学 がく において、ヒト は「万物 ばんぶつ の長 ちょう 」とはされないが、ヒト研究 けんきゅう は重要 じゅうよう な位置 いち を占 し める
現代 げんだい の生物 せいぶつ 学者 がくしゃ は、基本 きほん 的 てき に唯物 ゆいぶつ 論 ろん 或 ある いは機械 きかい 論 ろん の立場 たちば を取 と り、生物 せいぶつ は有機 ゆうき 化合 かごう 物 ぶつ などの物質 ぶっしつ から構成 こうせい された複雑 ふくざつ な機械 きかい であると見 み なす。一 ひと つ一 ひと つの要素 ようそ を解明 かいめい していく還元 かんげん 主義 しゅぎ が有効 ゆうこう である場面 ばめん は依然 いぜん 存在 そんざい するが、還元 かんげん 主義 しゅぎ だけで複雑 ふくざつ な生命 せいめい 現象 げんしょう を理解 りかい する試 こころ みには限界 げんかい があることが理解 りかい され始 はじ めたため、生物 せいぶつ を複雑 ふくざつ 系 けい として扱 あつか う考 かんが えかたも発展 はってん してきている。
生物 せいぶつ 学 がく では、一般 いっぱん 的 てき にヒトを特別 とくべつ な種 たね としては扱 あつか わない。しかし、我々 われわれ 自身 じしん がヒトであり、その研究 けんきゅう は医療 いりょう や産業 さんぎょう などと関連 かんれん しているため、生物 せいぶつ 学 がく の中 なか でヒト研究 けんきゅう は重要 じゅうよう であり関心 かんしん も高 たか い。生物 せいぶつ 学 がく 研究 けんきゅう の成果 せいか は医療 いりょう や農業 のうぎょう における基礎 きそ を提供 ていきょう し、応用 おうよう 面 めん で人類 じんるい に大 おお きな利益 りえき をもたらしている。生物 せいぶつ 学 がく に関連 かんれん する産業 さんぎょう はバイオ産業 さんぎょう と呼 よ ばれ、IT 産業 さんぎょう と並 なら び発展 はってん 性 せい のある大 おお きな市場 いちば を形成 けいせい し、経済 けいざい 的 まと にも重要 じゅうよう な位置 いち にあるとされる。生物 せいぶつ 学 がく の知見 ちけん や技術 ぎじゅつ は生命 せいめい の根幹 こんかん に大 おお きく関 かか わるようになり、倫理 りんり 的 てき ・社会 しゃかい 的 てき な影響 えいきょう も注目 ちゅうもく されている。
ドイツの植物 しょくぶつ 学者 がくしゃ オットー・ヴィルヘルム・トーメ によるシダ植物 しょくぶつ の記載 きさい (1885年 ねん )
生物 せいぶつ 学 がく では、他 た の自然 しぜん 科学 かがく 分野 ぶんや と同様 どうよう に、記載 きさい ・実験 じっけん ・理論 りろん といった科学 かがく 的 てき 方法 ほうほう によって研究 けんきゅう が行 おこな われる(ここでの「理論 りろん 」は方法 ほうほう 論 ろん としての理論 りろん を指 さ す)。これらは独立 どくりつ したものではなく、それぞれが関連 かんれん し合 あ って一連 いちれん の研究 けんきゅう を形作 かたちづく る。
記載 きさい とは、詳細 しょうさい な観察 かんさつ に基 もと づいて基礎 きそ となる事象 じしょう を明 あき らかにすることであり、研究 けんきゅう において最 もっと も始 はじ めに行 おこな われる。生物 せいぶつ 種 しゅ を同定 どうてい するための形態 けいたい 学 がく 的 てき 観察 かんさつ をはじめとして、実験 じっけん 操作 そうさ を加 くわ えない状態 じょうたい での発生 はっせい 現象 げんしょう や細胞 さいぼう 構造 こうぞう の観察 かんさつ 、生理 せいり 条件下 じょうけんか での生理 せいり 活性 かっせい 物質 ぶっしつ の測定 そくてい 、ひいてはゲノムの解読 かいどく も記載 きさい と言 い える。
また、個々 ここ の事例 じれい の記載 きさい を基礎 きそ とし、それらを比較 ひかく することからより一般 いっぱん 的 てき な知見 ちけん を得 え ることは、特 とく に生物 せいぶつ 学 がく では重視 じゅうし されてきた。これは一 ひと つにはその構造 こうぞう や現象 げんしょう が複雑 ふくざつ で,研究 けんきゅう 史 し の初期 しょき において実験 じっけん 系 けい を作 つく りにくかったこと、他方 たほう で生物 せいぶつ が多様 たよう であり、その背後 はいご に進化 しんか があることからそれを比較 ひかく によってあぶり出 だ すことに大 おお きな意味 いみ があったからである。たとえば比較 ひかく 解剖 かいぼう 学 がく や比較 ひかく 発生 はっせい 学 がく はそれぞれの分野 ぶんや の発展 はってん の中 なか では大 おお きな意味 いみ を持 も ち、それらは直接 ちょくせつ に進化 しんか 論 ろん の発展 はってん に結 むす びついた。
実験 じっけん は人為 じんい 的 てき に操作 そうさ を加 くわ えることにより通常 つうじょう と異 こと なる条件 じょうけん を作 つく り出 だ し、その後 ご の変化 へんか を観察 かんさつ ・観測 かんそく することで、生物 せいぶつ に備 そな わっている機構 きこう を解明 かいめい しようとする実証 じっしょう 主義 しゅぎ 的 てき な試 こころ みである。突然変異 とつぜんへんい の誘発 ゆうはつ や、遺伝子 いでんし 導入 どうにゅう 、移植 いしょく 実験 じっけん などさまざまな手法 しゅほう を使 つか う。現代 げんだい 生物 せいぶつ 学 がく は実験 じっけん 生物 せいぶつ 学 がく の性質 せいしつ が強 つよ くなっている。実験 じっけん 操作 そうさ は科学 かがく 的 てき 方法 ほうほう に基 もと づき、対照 たいしょう 実験 じっけん や再現 さいげん 性 せい の確認 かくにん などにより、実験 じっけん 者 しゃ の主観 しゅかん が除 のぞ かれる必要 ひつよう がある。
三 さん 葉虫 はむし の化石 かせき : 化石 かせき は生物 せいぶつ 進化 しんか を探 さぐ る手 て がかりである
一方 いっぽう 、進化 しんか や生物 せいぶつ 圏 けん レベルの生態 せいたい 学 がく 研究 けんきゅう のように実験 じっけん による証明 しょうめい が困難 こんなん である場合 ばあい は、様々 さまざま な観測 かんそく データや古 こ 生物 せいぶつ の化石 かせき などを用 もち い、比較 ひかく や構造 こうぞう 化 か など理論 りろん による説明 せつめい を試 こころ みる。またバイオインフォマティクス のように膨大 ぼうだい なデータを統合 とうごう して理解 りかい しようとする場合 ばあい も、理論 りろん によるアプローチに重点 じゅうてん が置 お かれる。実験 じっけん を行 おこな う前 まえ に仮説 かせつ を立 た て結果 けっか を予想 よそう したり、実験 じっけん 結果 けっか を解釈 かいしゃく して抽象 ちゅうしょう 化 か や普遍 ふへん 化 か させて法則 ほうそく や規則 きそく 性 せい を見 み いだしたりすることも理論 りろん の一部 いちぶ である。このような理論 りろん 面 めん に重点 じゅうてん を置 お いた分野 ぶんや を理論 りろん 生物 せいぶつ 学 がく 、数理 すうり モデル を用 もち いる分野 ぶんや を数理 すうり 生物 せいぶつ 学 がく とよぶ。これらの分野 ぶんや は高度 こうど に抽象 ちゅうしょう 化 か するため、対象 たいしょう の生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 階層 かいそう には捕 とら われない性質 せいしつ がある。
新 あら たな方法 ほうほう 論 ろん として、蓄積 ちくせき したデータに基 もと づいてコンピュータ 上 うえ に仮想 かそう システムを構築 こうちく することで構造 こうぞう を理解 りかい したり、そのパラメータを変化 へんか させるシミュレーション により実験 じっけん の代 か わりとするシステム生物 せいぶつ 学 がく も登場 とうじょう している。
共生 きょうせい 関係 かんけい にあるクマノミ とイソギンチャク : 生物 せいぶつ と環境 かんきょう が作 つく り出 だ す生態 せいたい 系 けい は複雑 ふくざつ である
20世紀 せいき 半 なか ばの分子生物学 ぶんしせいぶつがく の台頭 たいとう 以降 いこう 、その周辺 しゅうへん 分野 ぶんや では、一 ひと つの遺伝子 いでんし ・タンパク質 たんぱくしつ の機能 きのう に注目 ちゅうもく する還元 かんげん 主義 しゅぎ 的 てき なアプローチが主体 しゅたい だった。この手法 しゅほう は強力 きょうりょく で、さまざまな生命 せいめい 現象 げんしょう を解 と き明 あ かしてきた。しかし、分子 ぶんし レベルで明 あき らかにしたことを組 く み合 あ わせるだけでは、脳 のう の活動 かつどう や行動 こうどう など複雑 ふくざつ な現象 げんしょう は理解 りかい しがたく、還元 かんげん 主義 しゅぎ のみでは限界 げんかい があることもわかってきた。このことへの反省 はんせい もあり、物理 ぶつり 学 がく 的 てき 還元 かんげん 主義 しゅぎ への傾倒 けいとう から抜 ぬ け出 だ し、21世紀 せいき に入 はい ってからは生物 せいぶつ を複雑 ふくざつ な系 けい としてそのままあつかうオーミクス やシステム生物 せいぶつ 学 がく 等 ひとし のアプローチも盛 さか んになっている。一方 いっぽう 、生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい をあつかう伝統 でんとう 的 てき な生物 せいぶつ 学 がく や生態 せいたい 学 がく では、生物 せいぶつ の作 つく りだす系 けい が複雑 ふくざつ であることは自明 じめい だったため、複雑 ふくざつ 系 けい のような全体 ぜんたい 論 ろん は目新 めあたら しいものではない。生物 せいぶつ 学 がく の両輪 りょうりん である、生物 せいぶつ の多様 たよう 性 せい と普遍 ふへん 性 せい に関 かん する知見 ちけん は、ゲノム 解析 かいせき によって結 むす びつけられつつある。
生物 せいぶつ 学 がく のパラダイム を大 おお きく変 か えたものには細胞 さいぼう の発見 はっけん 、進化 しんか の提唱 ていしょう 、遺伝子 いでんし の示唆 しさ 、DNA の構造 こうぞう 決定 けってい 、セントラルドグマ の否定 ひてい 、ゲノムプロジェクト の実現 じつげん などがある。細胞 さいぼう の発見 はっけん やゲノムプロジェクトは主 おも に技術 ぎじゅつ の進歩 しんぽ によってもたらされ、進化 しんか や遺伝子 いでんし の発見 はっけん は個人 こじん の深 ふか い洞察 どうさつ によるところが大 おお きい。
ボツリヌス菌 きん : 顕微鏡 けんびきょう は、微生物 びせいぶつ や細胞 さいぼう を見 み る「目 め 」となった
17世紀 せいき に発明 はつめい された顕微鏡 けんびきょう による細胞 さいぼう の発見 はっけん は、微生物 びせいぶつ の発見 はっけん をはじめとして、動物 どうぶつ と植物 しょくぶつ がいずれも同 おな じ構造 こうぞう 単位 たんい から成 な っていることを認識 にんしき させ、動物 どうぶつ 学 がく と植物 しょくぶつ 学 がく の上位 じょうい 分野 ぶんや として生物 せいぶつ 学 がく を誕生 たんじょう させることになった。また自然 しぜん 発生 はっせい 説 せつ の否定 ひてい によって、いかなる細胞 さいぼう も既存 きそん の細胞 さいぼう から生 しょう じることが示 しめ され、生命 せいめい の起源 きげん という現在 げんざい も未 み 解明 かいめい の大 おお きな問題 もんだい の提示 ていじ につながっている。
進化 しんか はチャールズ・ダーウィン をはじめとする数 すう 人 にん の博物学 はくぶつがく 者 しゃ によって19世紀 せいき に提唱 ていしょう された概念 がいねん である。それまでは経験 けいけん 的 てき にも宗教 しゅうきょう 的 まと にも、生物 せいぶつ 種 しゅ は固定 こてい したものとされていたが、現在 げんざい では、同 おな じ種 しゅ の中 なか でも形質 けいしつ に多様 たよう 性 せい があり、生物 せいぶつ の形質 けいしつ は変化 へんか するものとされ、種 たね の区別 くべつ が困難 こんなん なものもあるという指摘 してき がされている。単純 たんじゅん な生物 せいぶつ から多様 たよう 化 か することで現在 げんざい のような多様 たよう な生物 せいぶつ が存在 そんざい すると考 かんが えることが可能 かのう になり、生命 せいめい の起源 きげん を研究 けんきゅう 可能 かのう なテーマとすることができるようになった。進化 しんか 論 ろん は社会 しゃかい や思想 しそう にも大 おお きな影響 えいきょう を与 あた え、近代 きんだい で最 もっと も大 おお きなパラダイムシフトの1つであった。
複製 ふくせい されるDNA: 二 に 重 じゅう らせんがほどけて複製 ふくせい されることは、遺伝 いでん の最 もっと も根源 こんげん にある物理 ぶつり 的 てき 現象 げんしょう である
遺伝 いでん 自体 じたい は古 ふる くから経験 けいけん 的 てき に知 し られていた現象 げんしょう である。しかし、19世紀 せいき 後半 こうはん 、メンデル は交雑 こうざつ 実験 じっけん から遺伝 いでん の法則 ほうそく を発見 はっけん し、世代 せだい を経 へ た後 のち にも分離 ぶんり 可能 かのう な因子 いんし 、すなわち遺伝子 いでんし が存在 そんざい することを証明 しょうめい した。さらに染色 せんしょく 体 たい が発見 はっけん され、20世紀 せいき 前半 ぜんはん の遺伝 いでん 学 がく ・細胞 さいぼう 学 がく による研究 けんきゅう から、染色 せんしょく 体 たい が遺伝子 いでんし の担体であることが確証 かくしょう づけられた。この過程 かてい において古典 こてん 的 てき な遺伝 いでん 学 がく が発展 はってん し、その後 ご の分子生物学 ぶんしせいぶつがく の誕生 たんじょう にもつながった。
1953年 ねん 、ジェームズ・ワトソン 、フランシス・クリック らが、X線 せん 回折 かいせつ の結果 けっか から、立体 りったい 模型 もけい を用 もち いた推論 すいろん により遺伝 いでん 物質 ぶっしつ DNA の二 に 重 じゅう らせん構造 こうぞう を明 あき らかにした。DNA構造 こうぞう の解明 かいめい は、分子生物学 ぶんしせいぶつがく の構造 こうぞう 学派 がくは にとって最大 さいだい の成功 せいこう である。相補 そうほ 的 てき な2本 ほん の分子 ぶんし 鎖 くさり が逆 ぎゃく 向 む きにらせん状 じょう 構造 こうぞう をとっているというモデルは、染色 せんしょく 体 たい 分配 ぶんぱい による遺伝 いでん のメカニズムを見事 みごと に説明 せつめい しており、その後 ご の分子生物学 ぶんしせいぶつがく を爆発 ばくはつ 的 てき に発展 はってん させた。
DNAからRNAへの転写 てんしゃ 、RNAからタンパク質 たんぱくしつ への翻訳 ほんやく 、遺伝 いでん 暗号 あんごう などの解明 かいめい により、セントラルドグマ と呼 よ ばれる「DNA →RNA →タンパク質 たんぱくしつ 」といった一方向 いちほうこう の情報 じょうほう 伝達 でんたつ がまるで教義 きょうぎ のように思 おも われた時期 じき もあったが、これを裏切 うらぎ るかのように逆 ぎゃく 転写 てんしゃ 酵素 こうそ やリボザイム といった発見 はっけん も20世紀 せいき 後半 こうはん に相次 あいつ いだ。
ゲノム という概念 がいねん は、ある生物 せいぶつ 種 しゅ における遺伝 いでん 情報 じょうほう の総和 そうわ として提唱 ていしょう された。ゲノム genome という語 かたり は遺伝子 いでんし gene と、総体 そうたい を表 あらわ す接尾 せつび 語 ご -ome の合成 ごうせい 語 ご である。技術 ぎじゅつ 発展 はってん によりゲノムプロジェクト が可能 かのう になり、ゲノム研究 けんきゅう は、生物 せいぶつ 学 がく における還元 かんげん 論 ろん と全体 ぜんたい 論 ろん 、普遍 ふへん 性 せい と多様 たよう 性 せい を結 むす びつける役割 やくわり をもつようになった。生物 せいぶつ 種 しゅ 間 あいだ でのゲノムの比較 ひかく により普遍 ふへん 性 せい と多様 たよう 性 せい 理解 りかい への糸口 いとぐち を与 あた え、還元 かんげん 的 てき な研究 けんきゅう に因子 いんし の有限 ゆうげん 性 せい を与 あた えることで、個々 ここ の研究 けんきゅう を全体 ぜんたい 論 ろん の中 なか で語 かた ることを可能 かのう にした。他 ほか にも様々 さまざま な総体 そうたい に対 たい する研究 けんきゅう が始 はじ まっている。
Vernon L.が1995年 ねん に主張 しゅちょう したところところによると、([いつ? ] の生物 せいぶつ 学 がく においては)特 とく に重要 じゅうよう な題材 だいざい は、以下 いか に挙 あ げる5つの原則 げんそく で、それらは「基本 きほん 公理 こうり とも言 い える」と言 い う:[ 19] 。
生命 せいめい の基本 きほん 単位 たんい は細胞 さいぼう である
新 あたら しい種 たね と遺伝 いでん 的 てき 特徴 とくちょう は進化 しんか によってもたらされる
遺伝子 いでんし は形質 けいしつ 遺伝 いでん の基礎 きそ である
生物 せいぶつ は体内 たいない 環境 かんきょう を調整 ちょうせい し、一定 いってい の状態 じょうたい を安定 あんてい して維持 いじ する
生 い きている生物 せいぶつ はエネルギー を消費 しょうひ し変換 へんかん する
生物 せいぶつ 学 がく が自然 しぜん 史学 しがく の一部 いちぶ だった時代 じだい には、記載 きさい 生物 せいぶつ 学 がく が主体 しゅたい だった。現代 げんだい 生物 せいぶつ 学 がく は、実験 じっけん が主体 しゅたい になっている。さらに将来 しょうらい は、ゲノムやプロテオーム研究 けんきゅう などで蓄積 ちくせき された膨大 ぼうだい なデータをコンピュータ で処理 しょり し、そこから生命 せいめい の原理 げんり に迫 せま る生物 せいぶつ 情報 じょうほう 学 がく が主体 しゅたい になるかもしれない。急激 きゅうげき なコンピュータの高速 こうそく 化 か と並行 へいこう して、実験 じっけん や観察 かんさつ 技術 ぎじゅつ 、新 あら たな分析 ぶんせき 手法 しゅほう の発見 はっけん など技術 ぎじゅつ 発展 はってん も進 すす むだろう。
純粋 じゅんすい 生物 せいぶつ 学 がく に残 のこ された大 おお きなテーマには生命 せいめい の起源 きげん 、ヒトの精神 せいしん あるいは心理 しんり 過程 かてい 、地球 ちきゅう 外 がい 生命 せいめい 体 たい などがある。すでに起 お きてしまった生命 せいめい の起源 きげん や進化 しんか は、実験 じっけん で再現 さいげん できない。ただし、生物 せいぶつ 物理 ぶつり 学 がく 的 てき ・生化学 せいかがく 的 てき に生命 せいめい (細胞 さいぼう )の誕生 たんじょう を再現 さいげん する試 こころ みはある。
心理 しんり 学 がく はヒトやほかの動物 どうぶつ の行動 こうどう や心理 しんり 過程 かてい を研究 けんきゅう しているが、生物 せいぶつ 学 がく と心理 しんり 学 がく とは、従来 じゅうらい よりおもに神経 しんけい メカニズムという観点 かんてん から関係 かんけい をもってきた。しかし、とくにヒトの高次 こうじ 心理 しんり 過程 かてい は、いまだ現在 げんざい の生物 せいぶつ 学 がく の知見 ちけん を超 こ える部分 ぶぶん が大 おお きい。今後 こんご 、そういった高次 こうじ 心理 しんり 過程 かてい も、心理 しんり 学 がく における行動 こうどう ・認知 にんち レベルの研究 けんきゅう に加 くわ えて、生物 せいぶつ 学 がく における分子 ぶんし レベルの、細胞 さいぼう レベルの、皮質 ひしつ のグローバルなレベルでの研究 けんきゅう を進 すす めることにより、両 りょう 分野 ぶんや のあいだで統合 とうごう 的 てき に説明 せつめい できるようになるかもしれない。
地球 ちきゅう 以外 いがい に生命 せいめい は存在 そんざい するかという問題 もんだい は、まだ生物 せいぶつ 学 がく のテーマではないと、現在 げんざい の多 おお くの生物 せいぶつ 学者 がくしゃ は考 かんが えている。しかし、火星 かせい やその他 た の惑星 わくせい 、衛星 えいせい の探索 たんさく が進 すす み、生命 せいめい やその痕跡 こんせき が発見 はっけん されれば、重要 じゅうよう なテーマの一 ひと つとなり、現在 げんざい の生物 せいぶつ 学 がく に大 おお きな改変 かいへん が迫 せま られる可能 かのう 性 せい がある[ 2] 。
また、医学 いがく や農学 のうがく 、薬学 やくがく や化学 かがく 工学 こうがく などへの重要 じゅうよう 性 せい は増 ま し、応用 おうよう は今後 こんご もますます増加 ぞうか していく[ 2] 。
生物 せいぶつ 学 がく の諸 しょ 分野 ぶんや は、各論 かくろん ・方法 ほうほう 論 ろん ・理論 りろん の視点 してん から分類 ぶんるい できる。各論 かくろん は研究 けんきゅう 対象 たいしょう によって、方法 ほうほう 論 ろん は手法 しゅほう によって、理論 りろん は普遍 ふへん 化 か された学説 がくせつ によって分野 ぶんや 名 めい がつけられる。ただしいずれの分野 ぶんや も、程度 ていど の差 さ はあれ3つすべての性質 せいしつ をあわせもっているため、分類 ぶんるい は便宜 べんぎ 的 てき なものになる。例 たと えば、細胞 さいぼう 生物 せいぶつ 学 がく 、微生物 びせいぶつ 学 がく 、生物 せいぶつ 物理 ぶつり 学 がく 、生化学 せいかがく 。
生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 階層 かいそう 性 せい と分野 ぶんや の範囲 はんい : 分野 ぶんや は代表 だいひょう 的 てき なものを示 しめ した。
生物 せいぶつ 学 がく を大 おお きくふたつに分 わ ける場合 ばあい 、個体 こたい の内部 ないぶ の生命 せいめい 現象 げんしょう を解析 かいせき する方向 ほうこう (=広義 こうぎ の生理学 せいりがく )と、個体 こたい 間 あいだ ・種 たね 間 あいだ ・個体 こたい と環境 かんきょう など関係 かんけい を個体 こたい の外 そと に求 もと めてゆく方向 ほうこう (=広義 こうぎ の生態 せいたい 学 がく )がある[ 20] 。
また、生物 せいぶつ 学 がく の各論 かくろん には、生物 せいぶつ の系統 けいとう 分類 ぶんるい と生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 階層 かいそう 性 せい という大 おお きな2つの軸 じく があるとされる。前者 ぜんしゃ によって分類 ぶんるい する場合 ばあい 、代表 だいひょう 的 てき な分野 ぶんや は、動物 どうぶつ 学 がく 、植物 しょくぶつ 学 がく 、微生物 びせいぶつ 学 がく の3つである[ 2] 。それぞれは系統 けいとう 分類 ぶんるい にしたがってさらに細分 さいぶん 化 か できる。動物 どうぶつ 学 がく の下位 かい には原生動物 げんせいどうぶつ 学 がく 、昆虫 こんちゅう 学 がく や魚類 ぎょるい 学 がく 、脊椎動物 せきついどうぶつ 学 がく などがある。同様 どうよう に、植物 しょくぶつ 学 がく の下 した には顕花植物 けんかしょくぶつ 学 がく や樹木 きき 学 まなぶ など、微生物 びせいぶつ 学 がく の下 した にはウイルス学 がく や細菌 さいきん 学 がく などがある[ 2] 。これらの分野 ぶんや では、生物 せいぶつ の特異 とくい 性 せい ・多様 たよう 性 せい を重視 じゅうし する流 なが れがある。
一方 いっぽう 、対象 たいしょう の大 おお きさ、つまり生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 階層 かいそう 性 せい (すなわち現象 げんしょう [ 2] )を軸 じく にすると、代表 だいひょう 的 てき な分野 ぶんや は、分子生物学 ぶんしせいぶつがく ・生化学 せいかがく 、細胞 さいぼう 生物 せいぶつ 学 がく 、発生 はっせい 生物 せいぶつ 学 がく 、動物 どうぶつ 行動 こうどう 学 がく 、生態 せいたい 学 がく などがある(図 ず )。生態 せいたい 学 がく は生物 せいぶつ 群 ぐん の大 おお きさによって個体 こたい 群 ぐん 生態 せいたい 学 がく 、群集 ぐんしゅう 生態 せいたい 学 がく などに分 わ けられる他 ほか 、対象 たいしょう とする場所 ばしょ を重視 じゅうし する場合 ばあい は森林 しんりん 生態 せいたい 学 がく や海洋 かいよう 生態 せいたい 学 がく 、極地 きょくち 生態 せいたい 学 がく などの名称 めいしょう も用 もち いられる。生物 せいぶつ 学 がく 的 てき 階層 かいそう 性 せい は生物 せいぶつ の分類 ぶんるい に対 たい して横断 おうだん 的 てき であり、生物 せいぶつ の普遍 ふへん 性 せい が注目 ちゅうもく される。この軸 じく では個体 こたい レベルを境 さかい として大 おお きく2つに分 わ けることができる。この視点 してん から諸 しょ 分野 ぶんや を見 み ると、個体 こたい レベル以下 いか を扱 あつか う分野 ぶんや は分子生物学 ぶんしせいぶつがく の影響 えいきょう が強 つよ く還元 かんげん 主義 しゅぎ 的 てき な傾向 けいこう があり、個体 こたい レベル以上 いじょう を扱 あつか う分野 ぶんや は全体 ぜんたい 論 ろん 的 てき な傾向 けいこう がある。動物 どうぶつ 発生 はっせい 学 がく や植物 しょくぶつ 細胞 さいぼう 学 がく などの分野 ぶんや は、この2つの軸 じく を考 かんが えるとその領域 りょういき が把握 はあく しやすい。
方法 ほうほう 論 ろん は各論 かくろん 分野 ぶんや に必要 ひつよう に応 おう じて導入 どうにゅう され、実際 じっさい の研究 けんきゅう を発展 はってん させるために必須 ひっす なものである。理論 りろん は抽象 ちゅうしょう 化 か により総合 そうごう 的 てき ・普遍 ふへん 的 てき な視点 してん を各論 かくろん に提供 ていきょう する。
最 もっと も古 ふる くからある方法 ほうほう 論 ろん の一 ひと つは、生物 せいぶつ の分類 ぶんるい を扱 あつか う分類 ぶんるい 学 がく である。分類 ぶんるい は生物 せいぶつ 学 がく の基礎 きそ であり、進化 しんか 研究 けんきゅう の手 て がかりにもなる。伝統 でんとう 的 てき には形態 けいたい に注目 ちゅうもく して分類 ぶんるい されていたが、近年 きんねん では分子生物学 ぶんしせいぶつがく の手法 しゅほう を取 と り入 い れた分子 ぶんし 系統 けいとう 分類 ぶんるい がさかんである。生化学 せいかがく は化学 かがく 的 てき 手法 しゅほう 、分子生物学 ぶんしせいぶつがく は DNA 操作 そうさ を使 つか う方法 ほうほう 論 ろん でもある。分子 ぶんし 遺伝 いでん 学 がく や逆 ぎゃく 遺伝 いでん 学 がく から発展 はってん したゲノムプロジェクト やバイオインフォマティクス は、新 あら たな方法 ほうほう 論 ろん として脚光 きゃっこう を浴 あ びている。
生物 せいぶつ 学 がく の理論 りろん としては、遺伝 いでん 学 がく や進化 しんか 学 がく が代表 だいひょう 的 てき である。遺伝 いでん 学 がく は、遺伝子 いでんし の機能 きのう を間接 かんせつ 的 てき に観察 かんさつ するという方法 ほうほう 論 ろん でもある。遺伝 いでん や進化 しんか の理論 りろん は、具体 ぐたい 的 てき なレベルでは未 いま だ議論 ぎろん があるが、総論 そうろん としては生物 せいぶつ 学 がく に必要 ひつよう 不可欠 ふかけつ な基盤 きばん となっている。
生物 せいぶつ 学 がく の分類 ぶんるい として、記載 きさい 生物 せいぶつ 学 がく ・比較 ひかく 生物 せいぶつ 学 がく ・実験 じっけん 生物 せいぶつ 学 がく といった類型 るいけい 化 か もある。記載 きさい ・比較 ひかく ・実験 じっけん は上記 じょうき のように生物 せいぶつ 学 がく の基本 きほん 的 てき な手法 しゅほう なので、このような区分 くぶん は成立 せいりつ しないことが多 おお いが、むしろ歴史 れきし 的 てき な展開 てんかい の中 なか での各 かく 部分 ぶぶん に対 たい してこの名 な が使 つか われることがある。それも個々 ここ の分野 ぶんや 名 めい にこの名 な を被 かぶ せる例 れい が多 おお い。
記載 きさい 生物 せいぶつ 学 がく は、生物 せいぶつ の形 かたち や構造 こうぞう を把握 はあく し、図 ず や文 ぶん で記載 きさい することを行 おこな うのを主 おも 目的 もくてき とする。比較 ひかく 生物 せいぶつ 学 がく はそれによって知 し られるようになったものを他 た の生物 せいぶつ のそれと比較 ひかく することから何 なに かをえようとする。実験 じっけん 生物 せいぶつ 学 がく は記載 きさい や比較 ひかく では得 え られない知識 ちしき を、生物 せいぶつ を操作 そうさ することで得 え ようとする。従 したが って、生物 せいぶつ 学 がく はこの順番 じゅんばん で発展 はってん する。ただし記載 きさい はあまりにも最低限 さいていげん 基本 きほん 的 てき な操作 そうさ なので、これを冠 かん する例 れい はない。記載 きさい をしなければそれは科学 かがく 以前 いぜん である。
たとえば近世 きんせい から近代 きんだい の生物 せいぶつ 学 がく 発展 はってん の初期 しょき 、比較 ひかく 解剖 かいぼう 学 がく は極 きわ めて重要 じゅうよう な分野 ぶんや として独立 どくりつ していた。これは発生 はっせい 学 がく に結 むす びついて比較 ひかく 発生 はっせい 学 がく の流 なが れをつくり、両者 りょうしゃ 融合 ゆうごう して比較 ひかく 形態 けいたい 学 がく と呼 よ ばれた。しかしこの分野 ぶんや は内部 ないぶ 造反 ぞうはん 的 てき に実験 じっけん 的 てき 手法 しゅほう に頼 たよ る実験 じっけん 発生 はっせい 学 がく を生 う み出 だ す。
20世紀 せいき に入 はい るまで、各 かく 分野 ぶんや はそれぞれ独自 どくじ の手法 しゅほう や観点 かんてん で異 こと なる対象 たいしょう を研究 けんきゅう し、内容 ないよう の重複 じゅうふく はわずかだった。しかし、20世紀 せいき 後半 こうはん の分子生物学 ぶんしせいぶつがく の爆発 ばくはつ 的 てき な発展 はってん や顕微鏡 けんびきょう などの技術 ぎじゅつ 発展 はってん により、研究 けんきゅう 分野 ぶんや はさらに細分 さいぶん 化 か されつつも、それらの境界 きょうかい はあいまいになり、分野 ぶんや の名称 めいしょう は便宜 べんぎ 的 てき ・主観 しゅかん 的 てき なものになってきている。例 たと えば、イモリの足 あし の再生 さいせい を研究 けんきゅう し「再生 さいせい 生物 せいぶつ 学 がく 」という名称 めいしょう を使 つか ったとしても、再生 さいせい にかかわる遺伝子 いでんし は遺伝 いでん 学 がく や分子生物学 ぶんしせいぶつがく 、その遺伝子 いでんし が作 つく る化学 かがく 物質 ぶっしつ の性質 せいしつ は生化学 せいかがく 、再生 さいせい する細胞 さいぼう の挙動 きょどう は細胞 さいぼう 生物 せいぶつ 学 がく 、組織 そしき が正確 せいかく に再生 さいせい する仕組 しく みは発生 はっせい 生物 せいぶつ 学 がく 、などさまざまな分野 ぶんや が関連 かんれん する。このような経緯 けいい から、「〜学 がく 」という古典 こてん 的 てき な名称 めいしょう を、「〜生物 せいぶつ 学 がく 」や「〜科学 かがく 」に変 か えることも多 おお い。
生物 せいぶつ 学 がく の応用 おうよう と社会 しゃかい 的 てき 責任 せきにん
編集 へんしゅう
生物 せいぶつ 学 がく の知見 ちけん と技術 ぎじゅつ を応用 おうよう に用 もち いる分野 ぶんや は、バイオテクノロジー または生物 せいぶつ 工学 こうがく と呼 よ ばれる。遺伝子 いでんし 操作 そうさ に重点 じゅうてん が置 お かれる場合 ばあい は遺伝子 いでんし 工学 こうがく 、発生 はっせい 過程 かてい に重点 じゅうてん が置 お かれる場合 ばあい は発生 はっせい 工学 こうがく ともいう。生物 せいぶつ 学 がく の成果 せいか を実業 じつぎょう に活用 かつよう する産業 さんぎょう はバイオ産業 さんぎょう と呼 よ ばれ、ITとならんで勢 いきお いのある市場 いちば であり、ベンチャー 企業 きぎょう が次々 つぎつぎ と誕生 たんじょう している。アメリカ では大学 だいがく の研究 けんきゅう 者 しゃ が起業 きぎょう することも多 おお い。遺伝子 いでんし 治療 ちりょう 、幹 みき 細胞 さいぼう を用 もち いた再生 さいせい 医学 いがく 、一 いち 塩基 えんき 多 た 型 がた (SNPs) を用 もち いたオーダメイド医療 いりょう やゲノム創 そう 薬 やく などが注目 ちゅうもく されている。農業 のうぎょう や畜産 ちくさん 関連 かんれん でもバイオテクノロジーが生 い かされており、これらを支 ささ える基礎 きそ 研究 けんきゅう は重要 じゅうよう である。政府 せいふ や企業 きぎょう は多大 ただい な資金 しきん を提供 ていきょう し、その発展 はってん を促 うなが している。
応用 おうよう 分野 ぶんや に輝 かがや かしい貢献 こうけん をすると同時 どうじ に、現代 げんだい 生物 せいぶつ 学 がく はさまざまな倫理 りんり 的 てき 問題 もんだい を抱 かか えている。それらはゲノム 情報 じょうほう 、遺伝子 いでんし 操作 そうさ 、クローン 技術 ぎじゅつ など、生命 せいめい の根幹 こんかん に関 かか わる技術 ぎじゅつ や情報 じょうほう によりもたらされた。これらは、臨床 りんしょう 医療 いりょう においては恩恵 おんけい をもたらす一方 いっぽう で、差別 さべつ や生命 せいめい の軽視 けいし など深刻 しんこく な社会 しゃかい 問題 もんだい を引 ひ き起 お こしつつある。このような課題 かだい は生命 せいめい 倫理 りんり 学 がく によって扱 あつか われる。また、遺伝子 いでんし 操作 そうさ によって作 つく られた遺伝子 いでんし 組 く み換 か え作物 さくもつ (GM作物 さくもつ )の環境 かんきょう への影響 えいきょう (遺伝子 いでんし 汚染 おせん )という問題 もんだい 提起 ていき がなされており、議論 ぎろん が行 おこな われている。近代 きんだい から現代 げんだい にかけて、人間 にんげん の活動 かつどう によって環境 かんきょう 破壊 はかい が起 お こり、生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい が急速 きゅうそく に失 うしな われている。生物 せいぶつ 学 がく は観測 かんそく を行 おこな い、科学 かがく 的 てき 裏付 うらづ けのあるデータに基 もと づいた提唱 ていしょう をしたり、生態 せいたい 系 けい や生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい について正 ただ しい情報 じょうほう を発信 はっしん するなどの取 と り組 く みも必要 ひつよう である。
現代 げんだい 生物 せいぶつ 学 がく およびそれに携 たずさ わる人々 ひとびと は、純粋 じゅんすい な科学 かがく 的 てき 研究 けんきゅう 成果 せいか のみならず、このような倫理 りんり 的 てき 側面 そくめん に対 たい しても熟考 じゅっこう し議論 ぎろん を深 ふか め、社会 しゃかい 的 てき 責任 せきにん を果 は たすことが求 もと められている。
Biology という語 かたり は、「生命 せいめい 」を意味 いみ するギリシャ語 ご の βίος (bios) と「言葉 ことば ・論 ろん 」を意味 いみ する λόγος (logos) から造 つく られた。K. F. ブルダッハ(1800年 ねん )、G. R. トレヴィラヌス (1802年 ねん )、ジャン=バティスト・ラマルク (1802年 ねん )らによって独立 どくりつ に用 もち いられた。生物 せいぶつ 学 がく が様々 さまざま な生物 せいぶつ を分類 ぶんるい 記載 きさい する博物学 はくぶつがく から発展 はってん したことからもわかるように、生物 せいぶつ 学 がく には生物 せいぶつ の多様 たよう 性 せい を理解 りかい しようとする伝統 でんとう がある。
一方 いっぽう 、生命 せいめい 科学 かがく (Life science ) や生物 せいぶつ 科学 かがく (Bioscience , Biological science ) という語 かたり は、分子生物学 ぶんしせいぶつがく が誕生 たんじょう してから新 あたら しく作 つく られたものである[要 よう 出典 しゅってん ] 。全 すべ ての生物 せいぶつ に共通 きょうつう する「言葉 ことば 」であるDNA を分子生物学 ぶんしせいぶつがく が提供 ていきょう したことで、分野 ぶんや ごとに断片 だんぺん 化 か していた生物 せいぶつ 学 がく が統合 とうごう されつつある。そこで新 あら たに生命 せいめい 科学 かがく という言葉 ことば が用 もち いられるようになった。 ただし、生物 せいぶつ 学 がく も生命 せいめい 科学 かがく も広義 こうぎ に解釈 かいしゃく すると範囲 はんい は広 ひろ く重 かさ なり、実際 じっさい の生物 せいぶつ 研究 けんきゅう をどちらかにわけることは難 むずか しいことがある。また「生物 せいぶつ 学 がく 」の意味 いみ も時代 じだい とともに変化 へんか しており、しばしば「生物 せいぶつ 科学 かがく 」や「生命 せいめい 科学 かがく 」と同 おな じ意味 いみ に使 つか われる。
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『生物 せいぶつ 学 がく 』 - コトバンク
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