活性炭かっせいたん

活性炭かっせいたん（かっせいたん、英語えいご: activated carbon）とは、吸着きゅうちゃく効率こうりつを高たかめるために化学かがく的てきまたは物理ぶつり的てきな処理しょり（活性かっせい化か、賦活ふかつ）を施ほどこした多孔たこう質しつの炭素たんそを主おもな成分せいぶんとする物質ぶっしつである。例たとえば、特定とくていの物質ぶっしつを選択せんたく的てきに分離ぶんり、除去じょきょ、精製せいせいするなどの目的もくてきで用もちいられる。

概要がいよう

活性炭かっせいたん（Activated carbon）

活性炭かっせいたんは、大だい部分ぶぶんの炭素たんその他ほか、酸素さんそ、水素すいそ、カルシウムなどからなる多孔たこう質しつの物質ぶっしつである。多孔たこう質しつであるために、体積たいせきの割わりに広ひろい表面積ひょうめんせきを持もつため、多おおくの物質ぶっしつを吸着きゅうちゃくする性質せいしつがある。

ただし、活性炭かっせいたんは、どんな物質ぶっしつでも吸着きゅうちゃくできるわけではない。例たとえば、活性炭かっせいたんの表面ひょうめんは非ひ極性きょくせいの性質せいしつを持もつため、水みずのような極性きょくせい分子ぶんしに対たいしては吸着きゅうちゃく力りょくが低ひくく、活性炭かっせいたんが持もつ細ぼそ孔あなよりも小ちいさな粒状りゅうじょうの有機物ゆうきぶつを選択せんたく的てきに吸着きゅうちゃくしやすい。他ほかにも、不快ふかいなにおいの代表だいひょう格かくであるアンモニアは、ガスの状態じょうたいであれば活性炭かっせいたんに吸着きゅうちゃくされやすいのに対たいして、アンモニウムイオンは非常ひじょうに吸着きゅうちゃくされにくいことにも、活性炭かっせいたんの表面ひょうめんが非ひ極性きょくせい的てきであることが関係かんけいしている。アンモニアも極性きょくせい分子ぶんしではあるものの、アンモニウムイオンは電子でんしが1個いっこ不足ふそくした状態じょうたいにまで完全かんぜんに帯電たいでんしているため、例たとえば、アンモニウムイオンが溶とけ込こんだ水みずを活性炭かっせいたんに通とおしても、水分すいぶん子こもアンモニウムイオンも活性炭かっせいたんにはほとんど吸着きゅうちゃくされずに通過つうかする。また、毒物どくぶつを誤あやま飲のました際さいなどに活性炭かっせいたんを経口けいこう投与とうよすることもあるものの、これは消化しょうか管内かんないで活性炭かっせいたんに吸着きゅうちゃくされた毒物どくぶつが、活性炭かっせいたんと共ともに大便だいべんとして排泄はいせつされることを狙ねらって行おこなう処置しょちであり、活性炭かっせいたんに吸着きゅうちゃくされやすい毒物どくぶつが消化しょうか管内かんないに残のこっていると考かんがえられる時ときに限かぎられる。

以上いじょうのようなことを総合そうごう的てきに判断はんだんした上うえで、活性炭かっせいたんは、脱臭だっしゅうや水質すいしつ浄化じょうか、有害ゆうがい物質ぶっしつの吸着きゅうちゃく除去じょきょなどに用もちいられる。

なお、活性炭かっせいたんに限かぎらず、濾材は一般いっぱんに表面積ひょうめんせきが広ひろいものほど吸着きゅうちゃく速度そくどが速はやいと言いえる。ただし、いくら表面積ひょうめんせきが広ひろくとも吸着きゅうちゃく物質ぶっしつの総量そうりょうは活性炭かっせいたんの嵩かさ（かさ）を超こえる事ことはない。吸着きゅうちゃく性能せいのうは、試薬しやくのメチレンブルーを吸着きゅうちゃくする能力のうりょくで測定そくていすることが多おおい。

また、活性炭かっせいたんは、他たの耐たい熱型ねっけいの濾材と同おなじく、加熱かねつ・煮沸しゃふつによって吸着きゅうちゃく物質ぶっしつを放出ほうしゅつし再さい利用りようすることが出来できる。ただし、この処理しょりの際さいに、吸着きゅうちゃく物質ぶっしつが放出ほうしゅつされるため、換気かんきなど注意ちゅういが必要ひつようである。

種類しゅるい

活性炭かっせいたんは、材料ざいりょう、製法せいほう、用途ようとによって、多彩たさいな形状けいじょうに加工かこうすることができる。例たとえば、単純たんじゅんに破砕はさいしたブロック状じょう、さらに細こまかい粒状りゅうじょう、より細こまかい粉末ふんまつ状じょうと、サイズも様々さまざまである。また、繊維状せんいじょう、ハニカム構造こうぞう状じょう、円柱えんちゅう状じょうなど、成形せいけいを行おこなうこともある。

原材料げんざいりょう

活性炭かっせいたんの原材料げんざいりょうとしては、木き・竹たけ・椰子やし殻から・胡桃くるみ殻からなどの植物しょくぶつ性せいの原料げんりょうが広ひろく用もちいられている。特とくに、例たとえば椰子やし殻からや胡桃くるみ殻からなどは、廃棄はいき物ぶつが有効ゆうこう利用りようされている例れいであり、サトウキビから糖類とうるいを搾しぼり取とった搾しぼり滓かすであるバガスなどからも、活性炭かっせいたんを生産せいさんする試こころみが行おこなわれている。

この他ほかに、石炭せきたんや石油せきゆなどが原はら材ざいとして用もちいられることもある。また、特殊とくしゅなものでは獣しし骨こつや血液けつえきといった、動物どうぶつ性せいの原料げんりょうを用もちいるものもある。

活性かっせい化かの方法ほうほう

活性かっせい化か（賦活ふかつとも言いう）の方法ほうほうとしては、原材料げんざいりょうを800℃から950℃に加熱かねつし、水蒸気すいじょうきや空気くうきなどの気体きたい中ちゅうで炭化たんかさせる「高温こうおん炭化たんか法ほう」が一般いっぱん的てきで、これを物理ぶつり法ほうと言いう。

他たに塩化えんか亜鉛あえんなどの化学かがく薬品やくひんを使つかって処理しょりした上うえで加熱かねつすることで、多孔たこう質しつにする方法ほうほうもあり、これを化学かがく法ほうと言いう。

用途ようと

川かわの浄化じょうかのために活性炭かっせいたん入いりの袋ふくろが川底かわぞこに置おかれている。大栗おおぐり川がわの例れい。

医療いりょう・健康けんこう

• 過剰かじょう摂取せっしゅ時どきの解毒げどく剤ざい - 活性炭かっせいたんに吸着きゅうちゃくされやすい薬物やくぶつを過剰かじょうに摂取せっしゅした場合ばあい、消化しょうか管内かんないに未み吸収きゅうしゅうで残のこっている薬物やくぶつを活性炭かっせいたんに吸着きゅうちゃくさせ、そのまま大便だいべんとして排泄はいせつさせることを狙ねらって経口けいこう投与とうよされる。ただし強酸きょうさん、強つよアルカリ、メタノールやエタノールなどアルコール類るい、エチレングリコール、重金属じゅうきんぞくなどは吸着きゅうちゃくしにくく、また腸管ちょうかん閉塞へいそくや消化しょうか管かん穿孔せんこうでは禁忌きんきとなるため、担当たんとう医いの判断はんだんを要ようする。
• 慢性まんせい腎不全じんふぜん用よう薬やく（球形きゅうけい吸着きゅうちゃく炭ずみ） - 経口けいこう投与とうよすることで、消化しょうか管内かんないで尿毒症にょうどくしょうの原因げんいんとなる分子ぶんしを吸着きゅうちゃくして、そのまま大便だいべんとして排泄はいせつさせる。透析とうせき導入どうにゅうを遅おくらせるために用もちいる。
• その他た、サプリメント（健康けんこう補助ほじょ食品しょくひん）として俗ぞくに「腸ちょう内ない洗浄せんじょうによい」「老廃ろうはい物ぶつの排泄はいせつによい」などされ販売はんばいされているが、急性きゅうせい毒性どくせいに対たいする標準ひょうじゅん的てき治療ちりょう（過剰かじょう摂取せっしゅ等とう時じの解毒げどく剤ざい）としての利用りようを除のぞいては、その有効ゆうこう性せいについては信頼しんらいできる十分じゅうぶんな情報じょうほうが見当みあたらないことに加くわえ、主おもに慢性まんせい使用しようで消化しょうか器き障害しょうがいを中心ちゅうしんとした被害ひがい事例じれいが報告ほうこくされている。

液えき相しょう処理しょり

• 上水じょうすい処理しょり - 粉末ふんまつ状じょう・粒状りゅうじょうの活性炭かっせいたんは有機物ゆうきぶつのほかにジェオスミンや2-MIBなどのカビ臭しゅう物質ぶっしつ、トリハロメタンやその前駆ぜんく物質ぶっしつを除去じょきょできる。また外表そとおもてに微生物びせいぶつを住すまわせた（生物せいぶつ膜まくを形成けいせいした）生物せいぶつ活性炭かっせいたんによる、より積極せっきょく的てきな有機物ゆうきぶつの分解ぶんかいも可能かのうであるが、粒状りゅうじょうおよび生物せいぶつ活性炭かっせいたんは専用せんようの処理しょり施設しせつが必要ひつようとなる。
• 河川かせん浄化じょうか - 主おもに、活性炭かっせいたんに微生物びせいぶつを住すまわせることによって微生物びせいぶつによる有機物ゆうきぶつの分解ぶんかいを狙ねらう。
• 浄水じょうすい器き - 活性炭かっせいたんによる吸着きゅうちゃくを狙ねらって、浄水じょうすい器き内ないに設置せっちされる場合ばあいがある。
• 試薬しやく・医薬品いやくひん製造せいぞう - 不純物ふじゅんぶつの吸着きゅうちゃく除去じょきょなどに用もちいる。

気き相しょう処理しょり

• 脱臭だっしゅう剤ざい - 臭気しゅうきのある分子ぶんしを吸着きゅうちゃくして気き相しょう中ちゅうから除去じょきょする。
• 空気くうき清浄せいじょう機き - 空気くうき中ちゅうからエアロゾルなどを吸着きゅうちゃく除去じょきょする。
• 紙巻かみまきたばこのフィルター
• ガスマスクの吸収きゅうしゅう缶かん - 空気くうき中ちゅうに含ふくまれる有毒ゆうどくガスを吸着きゅうちゃく除去じょきょする。ただし、全すべての有毒ゆうどくガスを除去じょきょできるわけではないため、用途ようとによって活性炭かっせいたんが使用しようされていない吸収きゅうしゅう缶かんも存在そんざいする。
• 使つかい捨すてカイロ

なお、外観がいかんや成分せいぶんは似にているものの、用途ようとが異ことなる点てんから、燃料ねんりょうとしての木炭もくたんと活性炭かっせいたんは別物べつものとして区別くべつされる。ただし、活性炭かっせいたんを廃棄はいきする際さいに、特とくに脱臭だっしゅう剤ざいとして用もちいた物ものであれば、燃料ねんりょうとして用もちいることも可能かのうではある。

生産せいさん

活性炭かっせいたんの平成へいせい28年度ねんど日本にっぽん国内こくない生産せいさん量りょうは 50,386トン、工業こうぎょう消費しょうひ量りょうは 2,393トンである。

関連かんれん項目こうもく

• 吸着きゅうちゃく
• 備長炭ずみ
• 木炭もくたん
• 浄水じょうすい場じょう

参考さんこう文献ぶんけん 

• 本田ほんだ義輝よしてる、中野なかの眞しん汎ひろし「寒天かんてん包つつみ埋うめ活性炭かっせいたんビーズの慢性まんせい腎不全じんふぜん治療ちりょう用よう経口けいこう吸着きゅうちゃく剤ざいとしての検討けんとうとクレメジンの評価ひょうか」『病院びょういん薬学やくがく』第だい20巻かん第だい4号ごう、日本にっぽん病院びょういん薬剤師やくざいし会かい、1994年ねん、NAID 110001801608。