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水素化ナトリウム - Wikipedia

水素すいそナトリウム

ナトリウムの水素すいそ化物ばけもの

水素すいそナトリウム(すいそか—、sodium hydride)は化学かがくしき NaH であらわされるナトリウム水素すいそ化物ばけものである。有機ゆうき合成ごうせいにおいてつよ塩基えんきとしてもちいられる[4]純粋じゅんすいなものは白色はくしょくだが、市販しはんひん灰色はいいろである。

水素すいそナトリウム
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識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 7646-69-7
特性とくせい
化学かがくしき NaH
モル質量しつりょう 23.99 g/mol
外観がいかん 無色むしょく - 灰色はいいろ固体こたい
密度みつど 1.396 g/cm3, 固体こたい 1.36 g/cm3[1]
融点ゆうてん

632℃,106bar[2][3]

みずへの溶解ようかい みず反応はんのう
構造こうぞう
結晶けっしょう構造こうぞう 立方りっぽうあきら塩化えんかナトリウムがた
ねつ化学かがく
標準ひょうじゅん生成せいせいねつ ΔでるたfHo −56.275 kJ mol−1
標準ひょうじゅんモルエントロピー So 40.016 J mol−1K−1
標準ひょうじゅん定圧ていあつモル比熱ひねつ, Cpo 36.401 J mol−1K−1
危険きけんせい
安全あんぜんデータシート(外部がいぶリンク) External MSDS
EU分類ぶんるい つよ可燃かねんせい (F)
NFPA 704
3
3
2
Rフレーズ R15
Sフレーズ (S2), S7/8, S24/25, S43
関連かんれんする物質ぶっしつ
そのイオン 水素すいそリチウム;水素すいそカリウム
関連かんれん物質ぶっしつ 水素すいそホウ素ほうそナトリウム
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

構造こうぞう特徴とくちょう

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のアルカリ金属きんぞく水素すいそ化物ばけものおなじく固体こたいイオン結合けつごうせいつよく、結晶けっしょう構造こうぞう塩化えんかナトリウムがた構造こうぞうである。結晶けっしょう格子こうしちゅう  は6 かこまれたはち面体めんていがた構造こうぞうをとっている。NaH ちゅう  のイオン半径はんけいは146pm と見積みつもられている[5]。これは   のイオン半径はんけい 133pm にちかい。

おおくの試薬しやく会社かいしゃから、60% のオイルディスパージョン(鉱油こうゆ混合こんごうぶつ)のかたち販売はんばいされている。このようなディスパージョンは純粋じゅんすい固体こたいよりもあつかいが安全あんぜんである。ヘキサンなどで鉱油こうゆあらながしてから使用しようすることもある。

インバース水素すいそナトリウム

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インバース水素すいそナトリウムとばれる化合かごうぶつは、   によって構成こうせいされている。  アルカリドひとつで、この化合かごうぶつ通常つうじょうとはことなり水素すいそからナトリウムへと電子でんし移動いどうするため、非常ひじょうたかいエネルギーをたくわえている。インバース水素すいそナトリウムの誘導体ゆうどうたい生成せいせいにはアダマンザンもちいられ、アダマンザンは  可逆かぎゃくてきめることで  影響えいきょうさまたげている。理論りろんてきには、しのプロトンだいさんきゅうアミンとナトリウムアルカリドの錯体さくたいでさえも特定とくてい溶媒ようばいちゅうではじゅん安定あんていとなるだろうとかんがえられている。しかし、これらのイオンの反応はんのう障壁しょうへき非常ひじょうちいさく、また適切てきせつ溶媒ようばい見付みつけるのはおそらく困難こんなんである。

反応はんのうせい用途ようと

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可燃かねんせいたか腐食ふしょくせい化合かごうぶつで、いちじるしい弱酸じゃくさんである水素すいそ (H2) (pKa = 35) の共役きょうやく塩基えんきであるヒドリド (H) がつよ塩基えんきせいしめす。みずとの接触せっしょくによって加水かすい分解ぶんかいされ水素すいそ水酸化すいさんかナトリウム発生はっせいするが、ほとんどの場合ばあい爆発ばくはつてき反応はんのうこる。また、炭素たんそ存在そんざいでは一酸化いっさんか炭素たんそ二酸化炭素にさんかたんそガスが生成せいせいすることもある。一般いっぱんてき溶媒ようばいにはほとんどけないため、反応はんのう固体こたい表面ひょうめんのみでこる。通常つうじょうテトラヒドロフランジメチルホルムアミドなか使つかわれる。

しゅとして有機ゆうき合成ごうせいで、アルコールフェノールのOHもとピラゾールなどのNHもとチオールのSHもとといったブレンステッドさんからプロトンくのにもちいられる。マロンさんエステルなど 1,3-ジカルボニル化合かごうぶつのCHプロトンをくのにもよく利用りようされる。生成せいせいするナトリウムしおはアルキルなどに使つかわれる。ちぢみあいはん応用おうよう試薬しやくとしてもひろもちいられ、ディークマンちぢみあいシュトッベちぢみあいダルツェンちぢみあいクライゼンちぢみあいなどがれいとしてげられる。

ジメチルスルホキシドとともに加熱かねつすると、可溶性かようせい塩基えんき生成せいせいする[6]

 

この塩基えんき硫黄いおうイリド調製ちょうせいしてケトンエポキシド変換へんかんする反応はんのうコーリー・チャイコフスキー反応はんのう)にもちいられる。ウィッティヒ反応はんのうようのリンイリドの調製ちょうせい使つかわれることもある。

また、ジシランジスルフィドの Si−Si、S−S 結合けつごう還元かんげんする。場合ばあい水素すいそナトリウムが金属きんぞくナトリウムの還元かんげんりょく上回うわまわ反応はんのうせいしめすことはまれである。

製造せいぞう

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鉱油こうゆちゅう金属きんぞくナトリウムの微粉びふんまつかかにごさせたもの、または溶融ようゆうさせたナトリウムにたいし、水素すいそガスをつうじて[7]

 
250℃でねつ分解ぶんかいはじまり、425℃で解離かいりあつが1気圧きあつとなる。[1]

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ a b 矢坂やさか正大せいだい (1983). 水素すいそナトリウム”. 有機ゆうき合成ごうせい化学かがく 41 (2): 190. https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/41/2/41_2_190/_pdf/-char/ja. 
  2. ^ Klostermeier, W.; Franck, E. U. (1982-07). “Liquid Mixtures of Sodium and Sodium Hydride at High Pressures and Temperatures” (英語えいご). Berichte der Bunsengesellschaft für physikalische Chemie 86 (7): 606–612. doi:10.1002/bbpc.19820860706. ISSN 0005-9021. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bbpc.19820860706. 
  3. ^ Hydrogen equilibrium pressure as a function of temperature for NaMgH3,... | Download Scientific Diagram”. 2024ねん6がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis; Paquette, L. Ed.; John Wiley & Sons: New York, 2004. doi:10.1002/047084289
  5. ^ Wells, A. F. Structural Inorganic Chemistry; Clarendon Press: Oxford, 1984.
  6. ^ Corey, E. J.; Chaykovsky, M. "Methylsulfinylcarbanion." J. Am. Chem. Soc. 1962, 84, 866–867. doi:10.1021/ja00864a039
  7. ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. Inorganic Chemistry; Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.

関連かんれん項目こうもく

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