純粋 じゅんすい な固体 こたい を絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から絶対温度 ぜったいおんど T まで加熱 かねつ する場合 ばあい を考 かんが える。相 あい 転移 てんい がこの温度 おんど 範囲 はんい で起 おこ らなければ、温度 おんど T 、圧力 あつりょく P における物質 ぶっしつ のモルエントロピーS m (T , P ) は温度 おんど T ' < T 、圧力 あつりょく P におけるこの固体 こたい の定圧 ていあつ モル熱容量 ねつようりょう C P ,m (solid; T ', P ) と以下 いか の関係 かんけい がある[1] 。
S
m
(
T
,
P
)
=
S
m
(
0
,
P
)
+
∫
0
T
C
P
,
m
(
solid
;
T
′
,
P
)
T
′
d
T
′
{\displaystyle S_{\text{m}}(T,P)=S_{\text{m}}(0,P)+\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P)}{T'}}dT'}
熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 三 さん 法則 ほうそく により、絶対 ぜったい 零 れい 度 ど における完全 かんぜん 結晶 けっしょう のエントロピーは、任意 にんい の圧力 あつりょく P において S (0, P ) = 0 である。従 したが って、絶対 ぜったい 零 れい 度 ど において完全 かんぜん 結晶 けっしょう となり、かつ絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T までの間 あいだ に相 あい 転移 てんい がない固体 こたい の温度 おんど T における標準 ひょうじゅん モルエントロピーは以下 いか の式 しき で求 もと められる。
S
m
∘
(
solid
;
T
)
=
∫
0
T
C
P
,
m
(
solid
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'}
絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T までの間 あいだ に相 あい 転移 てんい が存在 そんざい する場合 ばあい は、相 あい 転移 てんい エントロピー変化 へんか
Δ でるた
trs
S
m
=
Δ でるた
trs
H
m
T
trs
{\displaystyle \Delta _{\text{trs}}S_{\text{m}}={\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}}{T_{\text{trs}}}}}
を加算 かさん しなければならない。
S
m
∘
(
solid
;
T
)
=
∫
0
T
C
P
,
m
(
solid
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
+
Δ でるた
trs
H
m
(
T
trs
,
P
∘
)
T
trs
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'+{\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}(T_{\text{trs}},P^{\circ })}{T_{\text{trs}}}}}
一般 いっぱん には、絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T までの間 あいだ に複 ふく 数 すう 回 かい の相 あい 転移 てんい が起 お こりうるので、一般 いっぱん 式 しき は
S
m
∘
(
solid
;
T
)
=
∫
0
T
C
P
,
m
(
solid
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
+
∑
i
T
trs
,
i
<
T
Δ でるた
trs
H
m
(
T
trs
,
i
,
P
∘
)
T
trs
,
i
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'+\sum _{i}^{T_{{\text{trs}},i}<T}{\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}(T_{{\text{trs}},i},P^{\circ })}{T_{{\text{trs}},i}}}}
となる。ただし T tr,i は、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく P ° のもとで絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T まで準 じゅん 静的 せいてき に固体 こたい を加熱 かねつ した時 とき に相 あい 転移 てんい が起 お こる i 番 ばん 目 め の温度 おんど であり、
Δ でるた
trs
H
(
T
trs
,
i
,
P
∘
)
{\displaystyle \Delta _{\text{trs}}H(T_{{\text{trs}},i},P^{\circ })}
は、i 番 ばん 目 め の相 あい 転移 てんい のモルエンタルピー 変化 へんか である。絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T に至 いた るまで相 あい 転移 てんい が存在 そんざい しない場合 ばあい は、上 うえ 式 しき の第 だい 二 に 項 こう の寄与 きよ はゼロである。複数 ふくすう の相 あい 転移 てんい が存在 そんざい する場合 ばあい は、それぞれの相 あい 転移 てんい について相 あい 転移 てんい エントロピー変化 へんか
Δ でるた
trs
S
m
=
Δ でるた
trs
H
m
T
trs
{\displaystyle \Delta _{\text{trs}}S_{\text{m}}={\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}}{T_{\text{trs}}}}}
を加算 かさん しなければならない。
絶対 ぜったい 零 れい 度 ど まで冷却 れいきゃく すると完全 かんぜん 結晶 けっしょう となる温度 おんど T の液体 えきたい の場合 ばあい は、融点 ゆうてん T fus における融解 ゆうかい エントロピー変化 へんか
Δ でるた
fus
S
m
=
Δ でるた
fus
H
m
T
fus
{\displaystyle \Delta _{\text{fus}}S_{\text{m}}={\frac {\Delta _{\text{fus}}H_{\text{m}}}{T_{\text{fus}}}}}
を加算 かさん しなければならない。
S
m
∘
(
liquid
;
T
)
=
S
m
∘
(
solid
;
T
fus
)
+
Δ でるた
fus
H
m
(
T
fus
,
P
∘
)
T
fus
+
∫
T
fus
T
C
P
,
m
(
liquid
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T)=S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T_{\text{fus}})+{\frac {\Delta _{\text{fus}}H_{\text{m}}(T_{\text{fus}},P^{\circ })}{T_{\text{fus}}}}+\int _{T_{\text{fus}}}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{liquid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'}
以上 いじょう のことから純 じゅん 物質 ぶっしつ の固体 こたい と液体 えきたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (T ) は、絶対 ぜったい 零 れい 度 ど から温度 おんど T に至 いた るまでの定圧 ていあつ モル熱容量 ねつようりょう C P ,m と、温度 おんど T より低 ひく い温度 おんど にあるすべての相 あい 転移 てんい 点 てん と潜熱 せんねつ から算出 さんしゅつ できることが分 わ かる。
絶対 ぜったい 零 れい 度 ど まで冷却 れいきゃく すると完全 かんぜん 結晶 けっしょう となる温度 おんど T の気体 きたい の場合 ばあい は、まず沸点 ふってん T boil における蒸発 じょうはつ エントロピー変化 へんか
Δ でるた
vap
S
m
=
Δ でるた
vap
H
m
T
boil
{\displaystyle \Delta _{\text{vap}}S_{\text{m}}={\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}}{T_{\text{boil}}}}}
を加算 かさん しなければならない。
S
m
(
gas
;
T
,
P
∘
)
=
S
m
∘
(
liquid
;
T
boil
)
+
Δ でるた
vap
H
m
(
T
boil
,
P
∘
)
T
boil
+
∫
T
boil
T
C
P
,
m
(
gas
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
{\displaystyle S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P^{\circ })=S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T_{\text{boil}})+{\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}(T_{\text{boil}},P^{\circ })}{T_{\text{boil}}}}+\int _{T_{\text{boil}}}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{gas}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'}
気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピーを求 もと めるには、さらに気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい をしなければならない。なぜなら、気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピーは、0 < P < P ° の圧力 あつりょく 範囲 はんい で、理想 りそう 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき に従 したが う仮想 かそう 的 てき な気体 きたい のモルエントロピーとして定義 ていぎ されているからである。マクスウェルの関係 かんけい 式 しき より任意 にんい の気体 きたい について
S
m
(
gas
;
T
,
P
∘
)
=
S
m
(
gas
;
T
,
P
)
−
∫
P
P
∘
(
∂
V
m
∂
T
)
P
′
d
P
′
{\displaystyle S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P^{\circ })=S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P)-\int _{P}^{P^{\circ }}\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P'}dP'}
が成 な り立 た つ。とくに 0 < P < P ° の圧力 あつりょく 範囲 はんい で理想 りそう 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき
P
V
m
=
R
T
{\displaystyle PV_{\text{m}}=RT}
に従 したが う仮想 かそう 的 てき な気体 きたい については、
(
∂
V
m
∂
T
)
P
=
R
P
{\displaystyle \left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P}={\frac {R}{P}}}
なので
S
m
∘
(
gas
;
T
)
=
S
m
(
ideal gas
;
T
,
P
∘
)
=
S
m
(
ideal gas
;
T
,
P
)
−
∫
P
P
∘
R
P
′
d
P
′
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)=S_{\text{m}}({\text{ideal gas}};T,P^{\circ })=S_{\text{m}}({\text{ideal gas}};T,P)-\int _{P}^{P^{\circ }}{\frac {R}{P'}}dP'}
となる。よって、気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) と標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく の気体 きたい のモルエントロピー S m (gas; T , P °) の関係 かんけい は
S
m
∘
(
gas
;
T
)
=
S
m
(
gas
;
T
,
P
∘
)
+
{
S
m
(
ideal gas
;
T
,
P
)
−
S
m
(
gas
;
T
,
P
)
}
+
∫
P
P
∘
{
(
∂
V
m
∂
T
)
P
′
−
R
P
′
}
d
P
′
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)=S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P^{\circ })+\left\{S_{\text{m}}({\text{ideal gas}};T,P)-S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P)\right\}+\int _{P}^{P^{\circ }}\left\{\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P'}-{\frac {R}{P'}}\right\}dP'}
と表 あらわ される。ここで低圧 ていあつ の極限 きょくげん P → 0 において
lim
P
→
0
{
S
m
(
ideal gas
;
T
,
P
)
−
S
m
(
gas
;
T
,
P
)
}
=
0
{\displaystyle \lim _{P\to 0}\left\{S_{\text{m}}({\text{ideal gas}};T,P)-S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P)\right\}=0}
と仮定 かてい するなら、気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい を補正 ほせい する項 こう は
∫
0
P
∘
{
(
∂
V
m
∂
T
)
P
′
−
R
P
′
}
d
P
′
{\displaystyle \int _{0}^{P^{\circ }}\left\{\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P'}-{\frac {R}{P'}}\right\}dP'}
となり、気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) と液体 えきたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (liquid; T ) の関係 かんけい は
S
m
∘
(
gas
;
T
)
=
S
m
∘
(
liquid
;
T
boil
)
+
Δ でるた
vap
H
m
(
T
boil
,
P
∘
)
T
boil
+
∫
T
boil
T
C
P
,
m
(
gas
;
T
′
,
P
∘
)
T
′
d
T
′
+
∫
0
P
∘
{
(
∂
V
m
∂
T
)
P
−
R
P
}
d
P
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)=S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T_{\text{boil}})+{\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}(T_{\text{boil}},P^{\circ })}{T_{\text{boil}}}}+\int _{T_{\text{boil}}}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{gas}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'+\int _{0}^{P^{\circ }}\left\{\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P}-{\frac {R}{P}}\right\}dP}
となる。
以上 いじょう のことから純 じゅん 物質 ぶっしつ の気体 きたい の標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく におけるモルエントロピー S m (T , P °) は、沸点 ふってん T boil または昇華 しょうか 点 てん T sub における液体 えきたい または固体 こたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (liquid; T boil ) または S °m (solid; T sub ) と、蒸発 じょうはつ 熱 ねつ または昇華 しょうか 熱 ねつ と、沸点 ふってん または昇華 しょうか 点 てん から温度 おんど T に至 いた るまでの定圧 ていあつ モル熱容量 ねつようりょう C P ,m から算出 さんしゅつ できることが分 わ かる。標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく におけるモルエントロピー S m (T , P °) に気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい をすることで、気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (T ) が求 もと まる。
気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい の見積 みつも り
編集 へんしゅう
フッ化 か 水素 すいそ のような気 き 相 しょう 中 ちゅう で二 に 量 りょう 体 たい ないし多量 たりょう 体 たい を形成 けいせい する分子 ぶんし を例外 れいがい として除 のぞ けば、常温 じょうおん 常 つね 圧 あつ では実在 じつざい 気体 きたい の理想 りそう 気体 きたい からのずれは小 ちい さい。そこで実在 じつざい 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき をビリアル展開 てんかい すると、気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい を補正 ほせい する項 こう を近似 きんじ 的 てき に求 もと めることができる。すなわち、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく より低 ひく い圧力 あつりょく において実在 じつざい 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき を
V
m
(
T
,
P
)
=
R
T
P
+
B
V
(
T
)
{\displaystyle V_{\text{m}}(T,P)={\frac {RT}{P}}+B_{V}(T)}
と近似 きんじ すると、気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい を補正 ほせい する項 こう は
∫
0
P
∘
{
(
∂
V
m
∂
T
)
P
−
R
P
}
d
P
=
∫
0
P
∘
d
B
V
d
T
d
P
=
P
∘
d
B
V
d
T
{\displaystyle \int _{0}^{P^{\circ }}\left\{\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P}-{\frac {R}{P}}\right\}dP=\int _{0}^{P^{\circ }}{\frac {dB_{V}}{dT}}dP=P^{\circ }{\frac {dB_{V}}{dT}}}
となり、第 だい 二 に ビリアル係数 けいすう BV (T ) で表 あらわ すことができる。第 だい 二 に ビリアル係数 けいすう は、ファンデルワールス定数 ていすう a , b を用 もち いると BV (T ) = b − a /RT と表 あらわ されるので、a 〜 500 × 10−3 Pa m6 mol−2 であれば気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい を補正 ほせい する項 こう は、298 K では
P
∘
d
B
V
d
T
=
P
∘
a
R
T
2
∼
0.07
J
K
−
1
m
o
l
−
1
{\displaystyle P^{\circ }{\frac {dB_{V}}{dT}}={\frac {P^{\circ }a}{RT^{2}}}\sim 0.07\,{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}
程度 ていど の大 おお きさである。低温 ていおん では、この補正 ほせい 項 こう は温度 おんど の二 に 乗 じょう に反比例 はんぴれい して大 おお きくなる。例 たと えば、ジオーク らは窒素 ちっそ の沸点 ふってん 77 K における補正 ほせい 項 こう を、ベルテローの状態 じょうたい 方程式 ほうていしき と臨界 りんかい 温度 おんど と臨界 りんかい 圧力 あつりょく を使 つか って、0.92 J K−1 mol−1 と見積 みつ もっている[2] 。
標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく 、温度 おんど T において液体 えきたい である物質 ぶっしつ の場合 ばあい は、温度 おんど T の蒸気 じょうき の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) を上述 じょうじゅつ の方法 ほうほう で求 もと めることはできない。この場合 ばあい は、温度 おんど T で液 えき 相 しょう と平衡 へいこう にある蒸気 じょうき のモルエントロピー S m (gas; T , P vap ) から S °m (gas; T ) を求 もと める。ただし P vap は温度 おんど T における平衡 へいこう 蒸気 じょうき 圧 あつ である。蒸気 じょうき のモルエントロピー S m (gas; T , P vap ) は蒸気 じょうき と平衡 へいこう にある液体 えきたい のモルエントロピー S m (liq; T , P vap ) に、温度 おんど T 、圧力 あつりょく P vap における蒸発 じょうはつ エントロピ—変化 へんか を加算 かさん すると求 もと められる。
S
m
(
gas
;
T
,
P
vap
)
=
S
m
(
liquid
;
T
,
P
vap
)
+
Δ でるた
vap
H
m
(
T
,
P
vap
)
T
{\displaystyle S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P_{\text{vap}})=S_{\text{m}}({\text{liquid}};T,P_{\text{vap}})+{\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}(T,P_{\text{vap}})}{T}}}
蒸気 じょうき と平衡 へいこう にある液体 えきたい のモルエントロピー S m (liquid; T , P vap ) は、液体 えきたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (liquid; T ) と
S
m
(
liquid
;
T
,
P
vap
)
=
S
m
∘
(
liquid
;
T
)
+
∫
P
vap
P
∘
V
m
(
liquid
;
T
,
P
)
α あるふぁ
(
liquid
;
T
,
P
)
d
P
{\displaystyle S_{\text{m}}({\text{liquid}};T,P_{\text{vap}})=S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T)+\int _{P_{\text{vap}}}^{P^{\circ }}V_{\text{m}}({\text{liquid}};T,P)\alpha ({\text{liquid}};T,P)dP}
の関係 かんけい にある。ただし α あるふぁ (liquid; T , P ) は温度 おんど T 、圧力 あつりょく P における液体 えきたい の熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ である。蒸気 じょうき の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) と平衡 へいこう 蒸気 じょうき 圧 あつ の蒸気 じょうき のモルエントロピー S m (gas; T , P vap ) の関係 かんけい は、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく の気体 きたい のモルエントロピー S m (gas; T , P °) から気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) を求 もと めた時 とき と同 おな じように考 かんが えると
S
m
∘
(
gas
;
T
)
=
S
m
(
gas
;
T
,
P
vap
)
+
∫
0
P
vap
{
(
∂
V
m
∂
T
)
P
−
R
P
}
d
P
+
R
ln
P
vap
P
∘
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)=S_{\text{m}}({\text{gas}};T,P_{\text{vap}})+\int _{0}^{P_{\text{vap}}}\left\{\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{P}-{\frac {R}{P}}\right\}dP+R\ln {\frac {P_{\text{vap}}}{P^{\circ }}}}
となる。これらの3式 しき をまとめると蒸気 じょうき の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) は
S
m
∘
(
gas
;
T
)
≃
S
m
∘
(
liquid
;
T
)
+
Δ でるた
vap
H
m
(
T
,
P
vap
)
T
+
V
m
(
liquid
;
T
,
P
∘
)
α あるふぁ
(
liquid
;
T
,
P
∘
)
(
P
∘
−
P
vap
)
+
P
vap
d
B
V
d
T
+
R
ln
P
vap
P
∘
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)\simeq S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T)+{\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}(T,P_{\text{vap}})}{T}}+V_{\text{m}}({\text{liquid}};T,P^{\circ })\alpha ({\text{liquid}};T,P^{\circ })\left(P^{\circ }-P_{\text{vap}}\right)+P_{\text{vap}}{\frac {dB_{V}}{dT}}+R\ln {\frac {P_{\text{vap}}}{P^{\circ }}}}
となる。ただし、液体 えきたい のモル体積 たいせき と熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ の圧力 あつりょく 依存 いぞん 性 せい を無視 むし した。また気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい は、先 さき と同様 どうよう に、ビリアル展開 てんかい を第 だい 二 に 項 こう で打 う ち切 き っている。液体 えきたい のモル体積 たいせき と熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ をそれぞれ V m (liquid) 〜 100 cm3 mol−1 , α あるふぁ (liquid) 〜 10−3 K−1 とすれば
V
m
(
liquid
;
T
,
P
∘
)
α あるふぁ
(
liquid
;
T
,
P
∘
)
(
P
∘
−
P
vap
)
∼
10
−
4
m
3
m
o
l
−
1
⋅
10
−
3
K
−
1
⋅
10
5
P
a
=
0.01
J
K
−
1
m
o
l
−
1
{\displaystyle V_{\text{m}}({\text{liquid}};T,P^{\circ })\alpha ({\text{liquid}};T,P^{\circ })\left(P^{\circ }-P_{\text{vap}}\right)\sim 10^{-4}\,{\rm {{m^{3}mol^{-1}}\cdot 10^{-3}\,{\rm {{K^{-1}}\cdot 10^{5}\,{\rm {{Pa}=0.01\,{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}}}}}}}
であり、また P vap 〜 P °/10 であれば、気体 きたい の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい は 0.01 J K−1 mol−1 以下 いか となり、これら二 ふた つの項 こう の標準 ひょうじゅん モルエントロピーへの寄与 きよ は小 ちい さい。よってこれら二 ふた つの項 こう を無視 むし する近似 きんじ で、蒸気 じょうき の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (gas; T ) は
S
m
∘
(
gas
;
T
)
≃
S
m
∘
(
liquid
;
T
)
+
Δ でるた
vap
H
m
(
T
,
P
vap
)
T
+
R
ln
P
vap
P
∘
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}};T)\simeq S_{\text{m}}^{\circ }({\text{liquid}};T)+{\frac {\Delta _{\text{vap}}H_{\text{m}}(T,P_{\text{vap}})}{T}}+R\ln {\frac {P_{\text{vap}}}{P^{\circ }}}}
と算出 さんしゅつ される。
例 たと えば、298.15 K の水蒸気 すいじょうき であれば
S
m
∘
(
gas
)
J
K
−
1
m
o
l
−
1
=
69.91
+
44016
298.15
+
8.3145
⋅
ln
31.70
h
P
a
1000
h
P
a
=
188.84
{\displaystyle {\frac {S_{\text{m}}^{\circ }({\text{gas}})}{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}=69.91+{\frac {44016}{298.15}}+8.3145\cdot \ln {\frac {31.70\,{\rm {hPa}}}{1000\,{\rm {hPa}}}}=188.84}
となる。
以上 いじょう のことから純 じゅん 物質 ぶっしつ の蒸気 じょうき の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (T ) は、温度 おんど T における液体 えきたい または固体 こたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (liquid; T ) または S °m (solid; T ) と、その温度 おんど における蒸発 じょうはつ 熱 ねつ または昇華 しょうか 熱 ねつ と、平衡 へいこう 蒸気 じょうき 圧 あつ からよい精度 せいど で算出 さんしゅつ できることが分 わ かる。よりよい精度 せいど の標準 ひょうじゅん モルエントロピーを算出 さんしゅつ するには、液体 えきたい の密度 みつど と熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ 、および蒸気 じょうき の不完全性 ふかんぜんせい の補正 ほせい が必要 ひつよう になる。
気体 きたい のモルエントロピーは分子 ぶんし 構造 こうぞう および各 かく エネルギー準 じゅん 位 い より統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき に算出 さんしゅつ することも可能 かのう である。統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき に算出 さんしゅつ したエントロピーを、統計 とうけい 的 てき エントロピー (英 えい : statistical entropy )または統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき エントロピー という。計算 けいさん に用 もち いる分子 ぶんし 構造 こうぞう および各 かく エネルギー準 じゅん 位 い は、赤 あか 外 がい 分光 ぶんこう 法 ほう やマイクロ波 は 分光 ぶんこう 法 ほう などの分子 ぶんし 分光 ぶんこう 法 ほう より得 え られる。そのため、統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき に算出 さんしゅつ した理想 りそう 気体 きたい のモルエントロピーを分光 ぶんこう 学 がく 的 てき エントロピー (英 えい : spectroscopic entropy )ともいう。それに対 たい して、熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 三 さん 法則 ほうそく に基 もと づいて熱容量 ねつようりょう 測定 そくてい などの熱 ねつ 測定 そくてい から算出 さんしゅつ したエントロピーを、第 だい 三 さん 法則 ほうそく エントロピー (英 えい : third law entropy )または測 はか 熱 ねつ 的 てき エントロピー (英 えい : calorimetric entropy )という。
この節 ふし では、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく P ° における理想 りそう 気体 きたい のモルエントロピー S m (T , P °) 、すなわち気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピー S °m (T ) を、分光 ぶんこう 学 がく 的 てき データから算出 さんしゅつ する方法 ほうほう について述 の べる。
理想 りそう 気体 きたい のエントロピーは、気体 きたい が独立 どくりつ に並進 へいしん 運動 うんどう する同 おな じ種類 しゅるい の粒子 りゅうし の集 あつ まりであり、かつ粒子 りゅうし 間 あいだ には相互 そうご 作用 さよう が働 はたら かない、と仮定 かてい すると統計 とうけい 力学 りきがく 的 てき に算出 さんしゅつ できる。粒子 りゅうし 間 あいだ に相互 そうご 作用 さよう が働 はたら かないとするなら、気体 きたい のモルエントロピー S m (T , P °) は、粒子 りゅうし の並進 へいしん 運動 うんどう による項 こう と粒子 りゅうし の内部 ないぶ 自由 じゆう 度 ど による項 こう の和 わ として表 あらわ される。
S
m
(
T
,
P
∘
)
=
S
m,trans
(
T
,
P
∘
)
+
S
m,internal
(
T
)
{\displaystyle S_{\text{m}}(T,P^{\circ })=S_{\text{m,trans}}(T,P^{\circ })+S_{\text{m,internal}}(T)}
粒子 りゅうし の内部 ないぶ 自由 じゆう 度 ど による項 こう S m,internal (T ) は圧力 あつりょく には依 よ らず、温度 おんど と分光 ぶんこう 測定 そくてい から求 もと められる1個 いっこ の粒子 りゅうし の性質 せいしつ だけで決 き まる。粒子 りゅうし が原子 げんし や単 たん 原子 げんし イオンの場合 ばあい は、内部 ないぶ 自由 じゆう 度 ど は電子 でんし によるものだけなので、原子 げんし 分光 ぶんこう 法 ほう により電子 でんし 状態 じょうたい が知 し られていれば、S m,internal (T ) を算出 さんしゅつ することができる。粒子 りゅうし が分子 ぶんし や多 た 原子 げんし イオンの場合 ばあい は、内部 ないぶ 自由 じゆう 度 ど による項 こう S m,internal (T ) を電子 でんし 状態 じょうたい による項 こう 、分子 ぶんし 振動 しんどう による項 こう 、分子 ぶんし 回転 かいてん による項 こう に分割 ぶんかつ して計算 けいさん する(ボルン–オッペンハイマー近似 きんじ )。
S
m,internal
(
T
)
=
S
m,elec
(
T
)
+
S
m,vib
(
T
)
+
S
m,rot
(
T
)
{\displaystyle S_{\text{m,internal}}(T)=S_{\text{m,elec}}(T)+S_{\text{m,vib}}(T)+S_{\text{m,rot}}(T)}
粒子 りゅうし の並進 へいしん 運動 うんどう による項 こう S m,trans (T , P °) は、粒子 りゅうし の性質 せいしつ の詳細 しょうさい には依 よ らない。温度 おんど と圧力 あつりょく に加 くわ えて、粒子 りゅうし の質量 しつりょう にのみ依存 いぞん する項 こう である。
理想 りそう 気体 きたい の並進 へいしん エントロピーは以下 いか のようになる。ここでR は気体 きたい 定数 ていすう 、m は粒子 りゅうし の質量 しつりょう 、k はボルツマン定数 ていすう 、h はプランク定数 ていすう 、V m は理想 りそう 気体 きたい のモル体積 たいせき 、N A はアボガドロ定数 ていすう である。極端 きょくたん な高温 こうおん でなければ、Mg, Ca などの第 だい 2族 ぞく 元素 げんそ 、Hg などの第 だい 12族 ぞく 元素 げんそ 、および Ne, Ar などの第 だい 18族 ぞく 元素 げんそ の単 たん 原子 げんし 気体 きたい の標準 ひょうじゅん モルエントロピーはこれで求 もと まる[3] 。ナトリウムイオン や塩化 えんか 物 ぶつ イオン などの、閉殻 イオンの気 き 相 しょう の標準 ひょうじゅん モルエントロピーについても同様 どうよう である。
S
m,trans
(
T
,
V
m
)
=
R
[
5
2
+
ln
{
(
2
π ぱい
m
k
T
h
2
)
3
/
2
V
m
N
A
}
]
{\displaystyle S_{\text{m,trans}}(T,V_{\text{m}})=R\left[{\frac {5}{2}}+\ln \left\{\left({\frac {2\pi mkT}{h^{2}}}\right)^{3/2}{\frac {V_{\text{m}}}{N_{\text{A}}}}\right\}\right]}
この理論 りろん 式 しき は1912年 ねん にO. SackurとH. Tetrodeにより導 みちび かれたもので、サッカー・テトロードの式 しき という。ただしこの式 しき は古典 こてん 統計 とうけい 力学 りきがく の近似 きんじ を用 もち いて導 みちび かれた式 しき であり、対数 たいすう 関数 かんすう の引 び き数 すう が1より充分 じゅうぶん に大 おお きくなる高温 こうおん [4]
(
2
π ぱい
m
k
T
h
2
)
3
/
2
V
m
N
A
≫
1
{\displaystyle \left({\frac {2\pi mkT}{h^{2}}}\right)^{3/2}{\frac {V_{\text{m}}}{N_{\text{A}}}}\gg 1}
において成立 せいりつ する。これが1に近 ちか くなるような極 ごく 低温 ていおん においては、粒子 りゅうし の統計 とうけい 的 てき 性質 せいしつ が無視 むし できなくなり、古典 こてん 理想 りそう 気体 きたい は理想 りそう フェルミ気体 きたい または理想 りそう ボース気体 きたい に移行 いこう する。
サッカー・テトロードの式 しき に V m = N A kT /P ° と m = M m u を代入 だいにゅう すると以下 いか のように書 か き換 か えられ、絶対温度 ぜったいおんど T 、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく P ° および 分子 ぶんし 量 りょう M を代入 だいにゅう すると並進 へいしん エントロピーが求 もと まる。ここで
(
−
ln
P
∘
P
a
+
10.36122
)
{\displaystyle (-\ln {\frac {P^{\circ }}{\rm {Pa}}}+10.36122)}
はサッカー・テトロード定数 ていすう に相当 そうとう する。また分子 ぶんし 量 りょう M は、相対 そうたい 分子 ぶんし 質量 しつりょう とも呼 よ ばれる無 む 次元 じげん の量 りょう で、1個 いっこ の分子 ぶんし の質量 しつりょう を統一 とういつ 原子 げんし 質量 しつりょう 単位 たんい で割 わ ったものに等 ひと しい。
S
m,trans
(
M
;
T
,
P
∘
)
=
R
[
3
2
ln
M
+
5
2
ln
T
−
ln
P
∘
+
ln
{
(
2
π ぱい
m
u
h
2
)
3
/
2
k
5
/
2
}
+
5
2
]
=
R
(
3
2
ln
M
+
5
2
ln
T
K
−
ln
P
∘
P
a
+
10.36122
)
{\displaystyle {\begin{aligned}S_{\text{m,trans}}(M;T,P^{\circ })&=R\left[{\frac {3}{2}}\ln M+{\frac {5}{2}}\ln T-\ln P^{\circ }+\ln \left\{\left({\frac {2\pi m_{\text{u}}}{h^{2}}}\right)^{3/2}k^{5/2}\right\}+{\frac {5}{2}}\right]\\&=R\left({\frac {3}{2}}\ln M+{\frac {5}{2}}\ln {\frac {T}{\rm {K}}}-\ln {\frac {P^{\circ }}{\rm {Pa}}}+10.36122\right)\\\end{aligned}}}
温度 おんど T = 298.15 K、標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく P ° = 105 Pa の場合 ばあい は
S
m,trans
(
M
;
298.15
K
,
10
5
P
a
)
J
K
−
1
m
o
l
−
1
=
12.472
⋅
ln
M
+
108.86
{\displaystyle {\frac {S_{\text{m,trans}}(M;298.15\,{\rm {{K},10^{5}\,{\rm {{Pa})}}}}}{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}=12.472\cdot \ln M+108.86}
である。たとえばM = 4.003 のヘリウム であれば 126.16 J K−1 mol−1 、M = 200.6 の水銀 すいぎん 蒸気 じょうき であれば 174.97 J K−1 mol−1 となる。
サッカー・テトロードの式 しき が成立 せいりつ する条件 じょうけん を標準 ひょうじゅん 圧力 あつりょく P ° と 分子 ぶんし 量 りょう (単 たん 原子 げんし 気体 きたい の場合 ばあい は原子 げんし 量 りょう ) M で表 あらわ すと
T
≫
(
h
2
P
∘
2
/
3
2
π ぱい
M
m
u
)
3
/
5
k
−
1
∼
4.3
K
M
3
/
5
{\displaystyle T\gg \left({\frac {h^{2}P^{\circ 2/3}}{2\pi Mm_{\text{u}}}}\right)^{3/5}k^{-1}\sim {\frac {4.3\,{\rm {K}}}{M^{3/5}}}}
となる。この式 しき からM = 4 のヘリウムであっても T ≫ 2 K であれば充分 じゅうぶん な高温 こうおん であることがわかる。
分子 ぶんし や多 た 原子 げんし イオンでは回転 かいてん エントロピーの寄与 きよ が加 くわ わる。標準 ひょうじゅん モルエントロピーの計算 けいさん では、まず、回転 かいてん 運動 うんどう が激 はげ しくなっても遠心 えんしん 力 りょく などによる分子 ぶんし の変形 へんけい はないと仮定 かてい して回転 かいてん 準 じゅん 位 い を求 もと める(剛体 ごうたい 回転子 かいてんし 近似 きんじ )。さらに回転 かいてん 準 じゅん 位 い から回転 かいてん の分配 ぶんぱい 関数 かんすう を計算 けいさん する際 さい に、回転 かいてん 量子 りょうし 数 すう J に関 かん する和 わ を積分 せきぶん に置 お き換 か える近似 きんじ をする(高温 こうおん 近似 きんじ )。
二 に 原子 げんし 分子 ぶんし や二酸化炭素 にさんかたんそ CO2 などの直線 ちょくせん 分子 ぶんし や直線 ちょくせん 形 がた 多 た 原子 げんし イオンの回転 かいてん エントロピーは次 つぎ 式 しき で与 あた えられる。
ここで
I
{\displaystyle I}
は分子 ぶんし の慣性 かんせい モーメント 、
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
は分子 ぶんし の対称 たいしょう 数 すう である。
S
m,rot
(
I
,
σ しぐま
;
T
)
=
R
(
1
+
ln
8
π ぱい
2
I
k
T
σ しぐま
h
2
)
=
R
(
ln
I
/
σ しぐま
10
−
47
k
g
m
2
+
ln
T
K
−
2.696
)
{\displaystyle {\begin{aligned}S_{\text{m,rot}}(I,\sigma ;T)&=R\left(1+\ln {\frac {8\pi ^{2}IkT}{\sigma h^{2}}}\right)\\&=R\left(\ln {\frac {I/\sigma }{10^{-47}\,{\rm {kg\,m^{2}}}}}+\ln {\frac {T}{\rm {K}}}-2.696\right)\\\end{aligned}}}
対称 たいしょう 数 すう
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
は、等 とう 核 かく 二 に 原子 げんし 分子 ぶんし や CO2 のような対称 たいしょう 直線 ちょくせん 分子 ぶんし では
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 2 であり、異 い 核 かく 二 に 原子 げんし 分子 ぶんし や一酸化 いっさんか 二 に 窒素 ちっそ N2 O のような非対称 ひたいしょう 直線 ちょくせん 分子 ぶんし では
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 1 である。温度 おんど T = 298.15 K の場合 ばあい は
S
m,rot
(
I
,
σ しぐま
;
298.15
K
)
J
K
−
1
m
o
l
−
1
=
8.3145
⋅
ln
I
/
σ しぐま
10
−
47
k
g
m
2
+
24.96
{\displaystyle {\frac {S_{\text{m,rot}}(I,\sigma ;298.15\,{\rm {{K})}}}{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}=8.3145\cdot \ln {\frac {I/\sigma }{10^{-47}\,{\rm {kg\,m^{2}}}}}+24.96}
となる。たとえばフッ素 ふっそ 分子 ぶんし F2 であれば、
I
{\displaystyle I}
= 31.7×10−47 kg m2 で
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 2 だから、回転 かいてん エントロピーは 47.93 J K−1 mol−1 である。
和 わ を積分 せきぶん に置 お き換 か える近似 きんじ は
8
π ぱい
2
I
k
T
h
2
≫
1
{\displaystyle {\frac {8\pi ^{2}IkT}{h^{2}}}\gg 1}
であれば良 よ い近似 きんじ となる(高温 こうおん 近似 きんじ )。よって温度 おんど T 〜 300 K であれば
I
≫
h
2
8
π ぱい
2
k
T
≃
0.13
×
10
−
47
k
g
m
2
{\displaystyle I\gg {\frac {h^{2}}{8\pi ^{2}kT}}\simeq 0.13\times 10^{-47}\,{\rm {kg\,m^{2}}}}
の分子 ぶんし に対 たい しては良 よ い近似 きんじ である。多 おお くの直線 ちょくせん 分子 ぶんし の慣性 かんせい モーメントは 13×10−47 kg m2 より大 おお きいので、極 ごく 低温 ていおん でないかぎり高温 こうおん 近似 きんじ は良 よ い近似 きんじ である。最 もっと も小 ちい さな慣性 かんせい モーメント
I
{\displaystyle I}
= 0.472×10−47 kg m2 を持 も つ水素 すいそ 分子 ぶんし H2 でも、室温 しつおん 以上 いじょう では高温 こうおん 近似 きんじ で回転 かいてん エントロピーを算出 さんしゅつ できる。室温 しつおん 以下 いか での水素 すいそ 分子 ぶんし のエントロピーの計算 けいさん は、高温 こうおん 近似 きんじ が破綻 はたん することに加 くわ えて、核 かく スピン異性 いせい 体 たい についても考慮 こうりょ しなければならないので、他 た の分子 ぶんし よりもずっと複雑 ふくざつ な計算 けいさん になる。
非 ひ 直線 ちょくせん 分子 ぶんし では回転 かいてん エントロピーは以下 いか のように表 あらわ され、ここで
I
A
{\displaystyle I_{A}}
、
I
B
{\displaystyle I_{B}}
、
I
C
{\displaystyle I_{C}}
は互 たが いに直交 ちょっこう する各 かく 主軸 しゅじく の慣性 かんせい モーメントである。
S
m,rot
(
I
A
I
B
I
C
,
σ しぐま
;
T
)
=
R
[
3
2
+
ln
{
(
8
π ぱい
2
k
T
h
2
)
3
/
2
(
π ぱい
I
A
I
B
I
C
)
1
/
2
σ しぐま
}
]
=
R
(
1
2
ln
I
A
I
B
I
C
/
σ しぐま
2
(
10
−
47
k
g
m
2
)
3
+
3
2
ln
T
K
−
3.471
)
{\displaystyle {\begin{aligned}S_{\text{m,rot}}(I_{A}I_{B}I_{C},\sigma ;T)&=R\left[{\frac {3}{2}}+\ln \left\{\left({\frac {8\pi ^{2}kT}{h^{2}}}\right)^{3/2}{\frac {(\pi I_{A}I_{B}I_{C})^{1/2}}{\sigma }}\right\}\right]\\&=R\left({\frac {1}{2}}\ln {\frac {I_{A}I_{B}I_{C}/\sigma ^{2}}{(10^{-47}\,{\rm {{kg\,m^{2}})^{3}}}}}+{\frac {3}{2}}\ln {\frac {T}{\rm {K}}}-3.471\right)\\\end{aligned}}}
非 ひ 直線 ちょくせん 分子 ぶんし の対称 たいしょう 数 すう
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
は、分子 ぶんし の属 ぞく する点 てん 群 ぐん に含 ふく まれる回転 かいてん 操作 そうさ (360°回転 かいてん である恒等 こうとう 操作 そうさ を含 ふく む)の数 かず に等 ひと しい。すなわち、鏡 かがみ 映 うつ 操作 そうさ 、反転 はんてん 操作 そうさ 、回 かい 映 うつ 操作 そうさ を含 ふく まない点 てん 群 ぐん では対称 たいしょう 数 すう
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
は点 てん 群 ぐん の位 い 数 すう に等 ひと しく、これらの操作 そうさ をひとつでも含 ふく む点 てん 群 ぐん では位 い 数 すう の半分 はんぶん である。たとえば点 てん 群 ぐん C2V に属 ぞく する H2 O では
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 2 であり、点 てん 群 ぐん C3V に属 ぞく する NH3 では
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 3 である。点 てん 群 ぐん D6H に属 ぞく する C6 H6 では分子 ぶんし 面 めん に垂直 すいちょく な6回 かい 回転 かいてん 軸 じく に加 くわ えて分子 ぶんし 面 めん 内 ない に2回 かい 回転 かいてん 軸 じく が6本 ほん あるので
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 12 である。CH4 のような正 せい 四 よん 面体 めんてい 分子 ぶんし は点 てん 群 ぐん Td に属 ぞく するので、指標 しひょう 表 ひょう から
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 1 + 8 + 3 = 12 であることが分 わ かり、SF6 のような正 せい 八 はち 面体 めんてい 分子 ぶんし は点 てん 群 ぐん Oh の指標 しひょう 表 ひょう から
σ しぐま
{\displaystyle \sigma }
= 1 + 8 + 6 + 6 + 3 = 24 であることがわかる。
温度 おんど T = 298.15 K の場合 ばあい は
S
m,rot
(
I
A
I
B
I
C
,
σ しぐま
;
298.15
K
)
J
K
−
1
m
o
l
−
1
=
4.1572
⋅
ln
I
A
I
B
I
C
/
σ しぐま
2
(
10
−
47
k
g
m
2
)
3
+
42.20
{\displaystyle {\frac {S_{\text{m,rot}}(I_{A}I_{B}I_{C},\sigma ;298.15\,{\rm {{K})}}}{\rm {J\,K^{-1}mol^{-1}}}}=4.1572\cdot \ln {\frac {I_{A}I_{B}I_{C}/\sigma ^{2}}{(10^{-47}\,{\rm {{kg\,m^{2}})^{3}}}}}+42.20}
となる。たとえば水分 すいぶん 子 こ H2 O であれば、
I
A
I
B
I
C
{\displaystyle I_{A}I_{B}I_{C}}
= 5.84×10−47×3 kg3 m6 で
σ しぐま
2
{\displaystyle \sigma ^{2}}
= 22 = 4 だから、回転 かいてん エントロピーは 43.77 J K−1 mol−1 である。
原子 げんし 間 あいだ の結合 けつごう をフックの法則 ほうそく に従 したが うバネとみなすなら、分子 ぶんし 振動 しんどう のシュレーディンガー方程式 ほうていしき は解析 かいせき 的 てき に解 と ける(調和 ちょうわ 振動 しんどう 子 こ 近似 きんじ )。この近似 きんじ により得 え られた分子 ぶんし の振動 しんどう 準 じゅん 位 い を使 つか うと振動 しんどう 分配 ぶんぱい 関数 かんすう および振動 しんどう エントロピーを解析 かいせき 的 てき な形 かたち で書 か くことができる。振動 しんどう エントロピーの計算 けいさん に必要 ひつよう な振動 しんどう 準 じゅん 位 い 間 あいだ のエネルギー間隔 かんかく は、赤 あか 外 がい 分光 ぶんこう 法 ほう やラマン分光 ぶんこう 法 ほう により測定 そくてい される、分子 ぶんし の振動 しんどう スペクトルから求 もと められる。
二 に 原子 げんし 分子 ぶんし の振動 しんどう エントロピーの寄与 きよ は以下 いか のようになる。ここでe は自然 しぜん 対数 たいすう の底 そこ 、
x
=
h
c
ν にゅー
~
k
T
{\displaystyle x={\frac {hc{\widetilde {\nu }}}{kT}}}
を表 あらわ し、
ν にゅー
~
{\displaystyle {\widetilde {\nu }}}
は振動 しんどう の波数 はすう を、c は光 ひかり の速 はや さを表 あらわ す。
S
m,vib
(
x
)
=
R
[
x
e
x
−
1
−
ln
(
1
−
e
−
x
)
]
{\displaystyle S_{\text{m,vib}}(x)=R\left[{\frac {x}{e^{x}-1}}-\ln(1-e^{-x})\right]}
この振動 しんどう エントロピーの寄与 きよ が 0.01 J K−1 mol−1 より大 おお きくなるのは
x
{\displaystyle x}
< 9.0 のときである。よって
T
<
1
9.0
⋅
h
c
ν にゅー
~
k
=
1.439
K
9.0
ν にゅー
~
c
m
−
1
=
0.16
K
⋅
ν にゅー
~
c
m
−
1
{\displaystyle T<{\frac {1}{9.0}}\cdot {\frac {hc{\widetilde {\nu }}}{k}}={\frac {1.439\,{\rm {K}}}{9.0}}{\frac {\widetilde {\nu }}{\rm {cm^{-1}}}}=0.16\,{\rm {{K}\cdot {\frac {\widetilde {\nu }}{\rm {cm^{-1}}}}}}}
であれば、振動 しんどう エントロピーの寄与 きよ は無視 むし できるほど小 ちい さい。
温度 おんど T 〜 300 K の場合 ばあい は、この式 しき は
300
K
0.16
K
<
ν にゅー
~
c
m
−
1
{\displaystyle {\frac {300\,{\rm {K}}}{0.16\,{\rm {K}}}}<{\frac {\widetilde {\nu }}{\rm {cm^{-1}}}}}
となるから、分子 ぶんし 振動 しんどう の波数 はすう が
ν にゅー
~
{\displaystyle {\widetilde {\nu }}}
> 1900 cm−1 のときには、振動 しんどう エントロピーは室温 しつおん では無視 むし できるほど小 ちい さいことがわかる。たとえば、
ν にゅー
~
{\displaystyle {\widetilde {\nu }}}
= 2143 cm−1 の一酸化 いっさんか 炭素 たんそ 分子 ぶんし CO について計算 けいさん すると 0.003 J K−1 mol−1 となり確 たし かに小 ちい さい。それに対 たい して
ν にゅー
~
{\displaystyle {\widetilde {\nu }}}
= 554 cm−1 の塩素 えんそ 分子 ぶんし Cl2 では 2.24 J K−1 mol−1 となり、小 ちい さいが無視 むし できない程度 ていど の寄与 きよ をする。
多 た 原子 げんし 分子 ぶんし の場合 ばあい は、分子 ぶんし が n 個 こ の原子 げんし から構成 こうせい されているとすると、基準 きじゅん 振動 しんどう の数 かず は 3n-6(直線 ちょくせん 分子 ぶんし のときは 3n-5)となる。二 に 原子 げんし 分子 ぶんし の場合 ばあい と同様 どうよう に調和 ちょうわ 振動 しんどう 子 こ 近似 きんじ を使 つか うと、振動 しんどう エントロピーの寄与 きよ は以下 いか のようになる。ここで
x
i
=
h
c
ν にゅー
~
i
k
T
{\displaystyle x_{i}={\frac {hc{\widetilde {\nu }}_{i}}{kT}}}
であり、
ν にゅー
~
i
{\displaystyle {\widetilde {\nu }}_{i}}
は i 番 ばん 目 め の基準 きじゅん 振動 しんどう の波数 はすう を表 あらわ す。
x
{\displaystyle {\boldsymbol {x}}}
は
x
i
{\displaystyle x_{i}}
の組 くみ
{
x
1
,
x
2
,
⋯
,
x
3
n
−
6
}
{\displaystyle \{x_{1},x_{2},\cdots ,x_{3n-6}\}}
を表 あらわ す。
S
m,vib
(
x
)
=
∑
i
3
n
−
6
S
m,vib
(
x
i
)
=
R
∑
i
3
n
−
6
[
x
i
e
x
i
−
1
−
ln
(
1
−
e
−
x
i
)
]
{\displaystyle S_{\text{m,vib}}({\boldsymbol {x}})=\sum _{i}^{3n-6}S_{\text{m,vib}}(x_{i})=R\sum _{i}^{3n-6}\left[{\frac {x_{i}}{e^{x_{i}}-1}}-\ln(1-e^{-x_{i}})\right]}
多 た 原子 げんし 分子 ぶんし の振動 しんどう には、結合 けつごう 距離 きょり が伸 の び縮 ちぢ みする伸縮 しんしゅく 振動 しんどう のほかに、結合 けつごう 角 かく が広 ひろ がったり狭 せば まったりする振動 しんどう やねじれ角 かく (二面 ふたおもて 角 かく ) が変化 へんか する振動 しんどう などの変 へん 角 かく 振動 しんどう が存在 そんざい する。変 へん 角 かく 振動 しんどう の波数 はすう は伸縮 しんしゅく 振動 しんどう の波数 はすう よりも普通 ふつう は小 ちい さいので、変 へん 角 かく 振動 しんどう によるエントロピーへの寄与 きよ は伸縮 しんしゅく 振動 しんどう のそれよりも大 おお きくなる。たとえば二酸化 にさんか 硫黄 いおう SO2 では、
ν にゅー
~
{\displaystyle {\boldsymbol {\widetilde {\nu }}}}
= {1362, 1151, 518} cm−1 であり、変 へん 角 かく 振動 しんどう の波数 はすう 518 cm−1 は伸縮 しんしゅく 振動 しんどう の波数 はすう の半分 はんぶん 以下 いか である。298.15 K では
x
{\displaystyle {\boldsymbol {x}}}
= {6.57, 5.55, 2.50} となり、SO2 の振動 しんどう エントロピー 2.87 J K−1 mol−1 のうち 90% が変 へん 角 かく 振動 しんどう の寄与 きよ である。直線 ちょくせん 分子 ぶんし である CO2 では、
ν にゅー
~
{\displaystyle {\boldsymbol {\widetilde {\nu }}}}
= {2349, 1333, 667, 667} cm−1 であり、667 cm−1 の変 へん 角 かく 振動 しんどう は二 に 重 じゅう に縮退 しゅくたい している。これらの振動 しんどう の波数 はすう から 298.15 K の CO2 の振動 しんどう エントロピーは 3.01 J K−1 mol−1 と算出 さんしゅつ され、そのうちの 97% は変 へん 角 かく 振動 しんどう の寄与 きよ である。
多 た 原子 げんし 分子 ぶんし の基準 きじゅん 振動 しんどう の数 かず が原子 げんし 数 すう n に比例 ひれい するため、振動 しんどう エントロピーも n に比例 ひれい して大 おお きくなる。たとえば12個 こ の原子 げんし からなるベンゼン 分子 ぶんし C6 H6 の基準 きじゅん 振動 しんどう の数 かず は 3 × 12 - 6 = 30 であるので、ベンゼンの振動 しんどう エントロピーは30項 こう の和 わ で表 あらわ される。振動 しんどう スペクトルから得 え られた波数 はすう から 298.15 K の C6 H6 の振動 しんどう エントロピーを算出 さんしゅつ すると 19.24 J K−1 mol−1 となる。この値 ね は二 に 原子 げんし 分子 ぶんし や三 さん 原子 げんし 分子 ぶんし の典型 てんけい 的 てき な振動 しんどう エントロピーよりも桁違 けたちが いに大 おお きい。
室温 しつおん またはそれ以下 いか の温度 おんど では、電子 でんし 励起 れいき 状態 じょうたい のエントロピーへの寄与 きよ は無視 むし できることが多 おお い。このとき、電子 でんし 状態 じょうたい のエントロピーへの寄与 きよ は温度 おんど に依 よ らない定数 ていすう となり、次 つぎ 式 しき で与 あた えられる。
S
m,elec
=
R
ln
g
0
{\displaystyle S_{\text{m,elec}}=R\ln g_{0}}
ここで g 0 は電子 でんし 基底 きてい 状態 じょうたい の縮退 しゅくたい 度 ど である。たとえば希 まれ ガス 、第 だい 2族 ぞく 元素 げんそ および第 だい 12族 ぞく 元素 げんそ (単 たん 原子 げんし 気体 きたい )など、原子 げんし の基底 きてい 状態 じょうたい が 1 S であるものは g 0 = 1 であり、電子 でんし エントロピーはゼロである。第 だい 1族 ぞく 元素 げんそ および第 だい 11族 ぞく 元素 げんそ (単 たん 原子 げんし 気体 きたい )など基底 きてい 状態 じょうたい が 2 S であるものは g 0 = 2 より、電子 でんし エントロピーは 5.76 J K−1 mol−1 となる。一般 いっぱん に、電子 でんし 励起 れいき 状態 じょうたい からの寄与 きよ が無視 むし できて、かつ、電子 でんし 基底 きてい 状態 じょうたい の軌道 きどう 角 かく 運動 うんどう 量 りょう がゼロである場合 ばあい の電子 でんし エントロピーは
S
m,elec
=
R
ln
(
2
S
+
1
)
{\displaystyle S_{\text{m,elec}}=R\ln(2S+1)}
で求 もと められる。ここで 2S + 1 は原子 げんし 、イオンまたは分子 ぶんし の基底 きてい 状態 じょうたい のスピン多重 たじゅう 度 ど である。閉殻 の原子 げんし 、イオンおよび分子 ぶんし は不 ふ 対 たい 電子 でんし を持 も たないため、これら閉殻の化学 かがく 種 しゅ のスピン多重 たじゅう 度 ど は 1 であり、また軌道 きどう 角 かく 運動 うんどう 量 りょう はゼロである。さらに、閉殻の電子 でんし 配置 はいち を励起 れいき するのに必要 ひつよう なエネルギーはきわめて大 おお きいので、室温 しつおん またはそれ以下 いか の温度 おんど ではこれらの化学 かがく 種 しゅ は事実 じじつ 上 じょう すべて電子 でんし 基底 きてい 状態 じょうたい にある。よって、閉殻の原子 げんし 、イオンおよび分子 ぶんし では、電子 でんし エントロピーはゼロである。
化学 かがく 的 てき に興味 きょうみ のある分子 ぶんし のほとんどは、不 ふ 対 たい 電子 でんし を持 も たないため S m,elec = 0 である。不 ふ 対 たい 電子 でんし を持 も つ分子 ぶんし の場合 ばあい は、そのほとんどすべての場合 ばあい において軌道 きどう 角 かく 運動 うんどう 量 りょう を持 も たない[5] ので、電子 でんし エントロピーは S m,elec = R ln (2S + 1) で与 あた えられる。例 たと えば 二酸化 にさんか 窒素 ちっそ NO2 のように、不 ふ 対 たい 電子 でんし をひとつだけ持 も つ分子 ぶんし では 2S + 1 = 2 なので、S m,elec = 5.76 J K−1 mol−1 となる。不 ふ 対 たい 電子 でんし をふたつ持 も つ酸素 さんそ 分子 ぶんし O2 の基底 きてい 状態 じょうたい はスピン三 さん 重 じゅう 項 こう なので、酸素 さんそ では S m,elec = 9.13 J K−1 mol−1 となる。
軌道 きどう 角 かく 運動 うんどう 量 りょう がゼロでない原子 げんし の場合 ばあい は、スピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう により基底 きてい 状態 じょうたい の縮退 しゅくたい が部分 ぶぶん 的 てき に解 と けるため、電子 でんし エントロピーの計算 けいさん は複雑 ふくざつ になる。例 たと えば第 だい 14族 ぞく 元素 げんそ の原子 げんし の基底 きてい 状態 じょうたい は、最 さい 外 そと 殻 から の電子 でんし 配置 はいち が s2 p2 だから、フントの規則 きそく により 3 P となる。スピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう を無視 むし する近似 きんじ では、この基底 きてい 状態 じょうたい は9重 じゅう に縮退 しゅくたい しているので S m,elec = R ln 9 = 18.27 J K−1 mol−1 になる。スピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう を考慮 こうりょ すると 3 P は、3 P0 , 3 P1 , 3 P2 に分裂 ぶんれつ する。第 だい 14族 ぞく 元素 げんそ の原子 げんし では、3 P0 が基底 きてい 状態 じょうたい となるので、g 0 = 1 であり、スピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう が十分 じゅうぶん に大 おお きくなると電子 でんし エントロピーはゼロになると予想 よそう される。スピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう は原子 げんし が重 おも くなるほど大 おお きくなることから、したがって、C, Si, Ge, Sn, Pb と周期 しゅうき 表 ひょう を下 さ がるにつれて電子 でんし 状態 じょうたい の寄与 きよ が R ln 9 からゼロへと近 ちか づくと考 かんが えられる。以下 いか に示 しめ すように、この予想 よそう は正 ただ しい。
一般 いっぱん に、電子 でんし 励起 れいき 状態 じょうたい からの寄与 きよ が無視 むし できない場合 ばあい には、電子 でんし エントロピーは温度 おんど の関数 かんすう となり、次 つぎ 式 しき で与 あた えられる。
S
m,elec
(
T
)
=
R
(
ln
Q
elec
(
T
)
+
T
d
d
T
ln
Q
elec
(
T
)
)
{\displaystyle S_{\text{m,elec}}(T)=R\left(\ln Q_{\text{elec}}(T)+T{\frac {d}{dT}}\ln Q_{\text{elec}}(T)\right)}
ここで Q elec (T ) は電子 でんし 状態 じょうたい の分配 ぶんぱい 関数 かんすう であり、i 番 ばん 目 め の励起 れいき 状態 じょうたい の縮退 しゅくたい 度 ど を gi , 基底 きてい 状態 じょうたい とのエネルギー差 さ を Δ でるた i として次 つぎ 式 しき で与 あた えられる。
Q
elec
(
T
)
=
∑
i
=
0
g
i
exp
(
−
Δ でるた
i
/
k
T
)
{\displaystyle Q_{\text{elec}}(T)=\sum _{i=0}g_{i}\exp(-\Delta _{i}/kT)}
ここで i = 0 は基底 きてい 状態 じょうたい であり Δ でるた 0 = 0 である。g 0 は基底 きてい 状態 じょうたい の縮退 しゅくたい 度 ど を表 あらわ す。例 たと えば第 だい 14族 ぞく 元素 げんそ の原子 げんし について、3 P0 , 3 P1 , 3 P2 の三 さん 準 じゅん 位 い を考 かんが えた場合 ばあい は
Q
elec
(
T
)
=
1
+
3
exp
[
−
(
ϵ
1
−
ϵ
0
)
/
k
T
]
+
5
exp
[
−
(
ϵ
2
−
ϵ
0
)
/
k
T
]
{\displaystyle Q_{\text{elec}}(T)=1+3\exp[-(\epsilon _{1}-\epsilon _{0})/kT]+5\exp[-(\epsilon _{2}-\epsilon _{0})/kT]}
となる。ここで ε いぷしろん 0 , ε いぷしろん 1 , ε いぷしろん 2 はそれぞれ 3 P0 , 3 P1 , 3 P2 のエネルギー準 じゅん 位 い である。この式 しき に原子 げんし スペクトルから得 え られる ε いぷしろん 1 - ε いぷしろん 0 と ε いぷしろん 2 - ε いぷしろん 0 を代入 だいにゅう して、298.15 K における電子 でんし 状態 じょうたい のエントロピーへの寄与 きよ を計算 けいさん すると、C, Si, Ge, Sn, Pb に対 たい してそれぞれ 18.24, 17.53, 5.61, 0.07, 0.00 J K−1 mol−1 となる。炭素 たんそ 原子 げんし の S m,elec は、ほぼ R ln 9 であってスピン軌道 きどう 相互 そうご 作用 さよう を無視 むし したときの値 ね に近 ちか い。それに対 たい して鉛 なまり 原子 げんし では、電子 でんし 励起 れいき 状態 じょうたい からの寄与 きよ は室温 しつおん では完全 かんぜん に無視 むし できることがわかる。