熱 ねつ エントロピーの説明 せつめい 用 よう の図 ず 。
エントロピーは、熱 ねつ 力学 りきがく における断熱 だんねつ 過程 かてい の不 ふ 可逆 かぎゃく 性 せい を特徴付 とくちょうづ ける量 りょう として位置付 いちづ けられる。熱 ねつ 力学 りきがく では、系 けい のすべての熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき な性質 せいしつ が、一 ひと つの関数 かんすう によってまとめて表現 ひょうげん される。そのような関数 かんすう は完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう と呼 よ ばれる。エントロピーは完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう の一 ひと つでもある。
エントロピーの定義 ていぎ の方法 ほうほう には、いくつかのスタイルがある。
以下 いか のエントロピーの説明 せつめい は、クラウジウスが1865年 ねん の論文 ろんぶん の中 なか で行 おこな ったものを基 もと にしている。クラウジウスは熱 ねつ を用 もち いてエントロピーを定義 ていぎ した。この方法 ほうほう による説明 せつめい は多 おお くの文献 ぶんけん で採用 さいよう されている。
簡単 かんたん な状況 じょうきょう 下 か での説明 せつめい
編集 へんしゅう
温度 おんど T 1 の吸熱源 げん から Q 1 の熱 ねつ を得 え て、温度 おんど T 2 の排 はい 熱源 ねつげん に Q 2 の熱 ねつ を捨 す てる熱 ねつ 機関 きかん (サイクル)を考 かんが える。この熱 ねつ 機関 きかん が外部 がいぶ に行 おこな う仕事 しごと はエネルギー保存 ほぞん 則 そく から W = Q 1 − Q 2 であり、熱 ねつ 機関 きかん の熱 ねつ 効率 こうりつ η いーた は
η いーた
=
W
Q
1
=
1
−
Q
2
Q
1
{\displaystyle \eta ={\frac {W}{Q_{1}}}=1-{\frac {Q_{2}}{Q_{1}}}}
で与 あた えられる。
カルノーの定理 ていり によれば、熱 ねつ 機関 きかん の熱 ねつ 効率 こうりつ には二 ふた つの熱源 ねつげん の温度 おんど によって決 き まる上限 じょうげん の存在 そんざい が導 みちび かれ、その上限 じょうげん は
η いーた
≤
η いーた
m
a
x
=
1
−
T
2
T
1
{\displaystyle \eta \leq \eta _{\mathrm {max} }=1-{\frac {T_{2}}{T_{1}}}}
で表 あらわ される[注 ちゅう 3] 。
これら2本 ほん の式 しき を整理 せいり することで、
Q
1
T
1
≤
Q
2
T
2
{\displaystyle {\frac {Q_{1}}{T_{1}}}\leq {\frac {Q_{2}}{T_{2}}}}
(*
)
が成立 せいりつ することが分 わ かる。
可逆 かぎゃく な熱 ねつ 機関 きかん の熱 ねつ 効率 こうりつ は η いーた max と等 ひと しく、このため可逆 かぎゃく な熱 ねつ 機関 きかん では(*) 式 しき は等号 とうごう
Q
1
T
1
=
Q
2
T
2
{\displaystyle {\frac {Q_{1}}{T_{1}}}={\frac {Q_{2}}{T_{2}}}}
(†
)
が成 な り立 た つ。すなわち、可逆 かぎゃく な過程 かてい で高熱 こうねつ 源 げん に接 せっ している状態 じょうたい から低 てい 熱源 ねつげん に接 せっ している状態 じょうたい に変化 へんか させたとしても Q /T という量 りょう は不変 ふへん となる。クラウジウスはこの不 ふ 変量 へんりょう をエントロピー と呼 よ んだ。
可逆 かぎゃく でない熱 ねつ 機関 きかん は熱 ねつ 効率 こうりつ が η いーた max よりも悪 わる いことが知 し られており、このため可逆 かぎゃく でない熱 ねつ 機関 きかん では(*) 式 しき は等号 とうごう ではなく不等式 ふとうしき
Q
1
T
1
<
Q
2
T
2
{\displaystyle {\frac {Q_{1}}{T_{1}}}<{\frac {Q_{2}}{T_{2}}}}
が成 な り立 た つ。すなわち、可逆 かぎゃく でない過程 かてい で高熱 こうねつ 源 げん で熱 ねつ を得 え た後 のち 、低 てい 熱源 ねつげん でその熱 ねつ を捨 す てるとエントロピーは増大 ぞうだい する(エントロピー増大 ぞうだい 則 そく )。
上 うえ では話 はなし を簡単 かんたん にするため、高熱 こうねつ 源 げん と低 てい 熱源 ねつげん の2つしか熱源 ねつげん がない場合 ばあい を考 かんが えたが、より一般 いっぱん にn 個 こ の熱源 ねつげん がある状況 じょうきょう を考 かんが えると(*) 式 しき は
∑
i
=
1
n
Q
i
T
i
≤
0
{\displaystyle \sum _{i=1}^{n}{\frac {Q_{i}}{T_{i}}}\leq 0}
となる(クラウジウスの不等式 ふとうしき )。ただし上 じょう の不等式 ふとうしき では(*) 式 しき と違 ちが いQi は全 すべ て温度 おんど Ti の熱源 ねつげん から得 え る熱 ねつ であり、熱 ねつ を捨 す てる場合 ばあい は負 まけ の値 ね としている。
可逆 かぎゃく なサイクルでは等号 とうごう
∑
i
=
1
n
Q
i
T
i
=
0
{\displaystyle \sum _{i=1}^{n}{\frac {Q_{i}}{T_{i}}}=0}
が成 な り立 た ち、この式 しき でn →∞ とすると、
∮
d
′
Q
T
=
0
{\displaystyle \oint {\frac {d'Q}{T}}=0}
となる[注 ちゅう 4] 。状態 じょうたい A から状態 じょうたい B へと移 うつ る任意 にんい の可逆 かぎゃく 過程 かてい C ,C' を考 かんが え、−C をC の逆 ぎゃく 過程 かてい とする。このとき、C' と−C を連結 れんけつ させた過程 かてい C' −C は可逆 かぎゃく なサイクルとなり
∮
C
′
−
C
d
′
Q
T
=
∫
C
′
d
′
Q
T
+
∫
−
C
d
′
Q
T
=
∫
C
′
d
′
Q
T
−
∫
C
d
′
Q
T
=
0
{\displaystyle \oint _{C'-C}{\frac {d'Q}{T}}=\int _{C'}{\frac {d'Q}{T}}+\int _{-C}{\frac {d'Q}{T}}=\int _{C'}{\frac {d'Q}{T}}-\int _{C}{\frac {d'Q}{T}}=0}
∫
C
′
d
′
Q
T
=
∫
C
d
′
Q
T
{\displaystyle \int _{C'}{\frac {d'Q}{T}}=\int _{C}{\frac {d'Q}{T}}}
(**
)
が成 な り立 た つ。つまり、この積分 せきぶん の値 ね は始 はじめ 状態 じょうたい と終 おわり 状態 じょうたい が同 おな じならば可逆 かぎゃく 過程 かてい の選 えら び方 かた によらない。
そこで、適当 てきとう に基準 きじゅん となる状態 じょうたい O と、そのときの基準 きじゅん 値 ち S 0 を決 き めると、状態 じょうたい A におけるエントロピー S (A) を
S
(
A
)
=
S
0
+
∫
Γ がんま
(
A
)
d
′
Q
T
{\displaystyle S({\text{A}})=S_{0}+\int _{\Gamma ({\text{A}})}{\frac {d'Q}{T}}}
と定義 ていぎ することができる。ここでΓ がんま (A) は基準 きじゅん 状態 じょうたい O から状態 じょうたい A へと変化 へんか する可逆 かぎゃく な過程 かてい である。(**) 式 しき からエントロピーの定義 ていぎ は可逆 かぎゃく 過程 かてい Γ がんま (A) の選 えら び方 かた によらない。
基準 きじゅん 状態 じょうたい O から状態 じょうたい A へと移 うつ る可逆 かぎゃく 過程 かてい Γ がんま (A) と、状態 じょうたい A から状態 じょうたい B へと移 うつ るある可逆 かぎゃく 過程 かてい C を連結 れんけつ させた過程 かてい Γ がんま (A)+C は基準 きじゅん 状態 じょうたい O から状態 じょうたい B へと移 うつ る可逆 かぎゃく 過程 かてい である。したがって、
∫
Γ がんま
(
A
)
d
′
Q
T
+
∫
C
d
′
Q
T
=
∫
Γ がんま
(
A
)
+
C
d
′
Q
T
=
∫
Γ がんま
(
B
)
d
′
Q
T
{\displaystyle \int _{\Gamma ({\text{A}})}{\frac {d'Q}{T}}+\int _{C}{\frac {d'Q}{T}}=\int _{\Gamma (A)+C}{\frac {d'Q}{T}}=\int _{\Gamma ({\text{B}})}{\frac {d'Q}{T}}}
あるいは
Δ でるた
S
=
S
(
B
)
−
S
(
A
)
=
∫
C
d
′
Q
T
{\displaystyle \Delta S=S({\text{B}})-S({\text{A}})=\int _{C}{\frac {d'Q}{T}}}
となる。
エントロピー増大 ぞうだい 則 そく
編集 へんしゅう
状態 じょうたい A から状態 じょうたい B へと移 うつ る任意 にんい の過程 かてい X と、同 おな じく状態 じょうたい A から状態 じょうたい B へと移 うつ る可逆 かぎゃく 過程 かてい C を考 かんが え、−C をC の逆 ぎゃく 過程 かてい とする。このときX と−C を連結 れんけつ させた過程 かてい X −C はサイクルとなる。
このサイクルについて、導出 どうしゅつ と同様 どうよう にクラウジウスの不等式 ふとうしき から
∮
X
−
C
d
′
Q
T
ex
=
∫
X
d
′
Q
T
ex
+
∫
−
C
d
′
Q
T
ex
=
∫
X
d
′
Q
T
ex
−
∫
C
d
′
Q
T
ex
≤
0
{\displaystyle \oint _{X-C}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}=\int _{X}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}+\int _{-C}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}=\int _{X}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}-\int _{C}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}\leq 0}
∫
X
d
′
Q
T
ex
≤
∫
C
d
′
Q
T
ex
{\displaystyle \int _{X}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}\leq \int _{C}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}}
が導 みちび かれる。ここでT ex は熱源 ねつげん の温度 おんど であり、一般 いっぱん には系 けい の温度 おんど T とは一致 いっち しない。しかし、可逆 かぎゃく 過程 かてい C の間 あいだ においては、系 けい は常 つね に平衡 へいこう 状態 じょうたい にあるとみなされるから、熱源 ねつげん の温度 おんど T ex は系 けい の温度 おんど T に一致 いっち する。したがって
∫
X
d
′
Q
T
ex
≤
∫
C
d
′
Q
T
=
Δ でるた
S
{\displaystyle \int _{X}{\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}\leq \int _{C}{\frac {d'Q}{T}}=\Delta S}
となる。
特 とく に断熱 だんねつ 系 けい (外 そと から仕事 しごと が加 くわ えられても良 よ い)においてはd' Q = 0 なので、
Δ でるた
S
≥
0
{\displaystyle \Delta S\geq 0}
という結果 けっか が得 え られる。これがエントロピー増大 ぞうだい 則 そく である。熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 二 に 法則 ほうそく と同値 どうち なクラウジウスの不等式 ふとうしき からこれが求 もと められたことにより、熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 一 いち 法則 ほうそく がエネルギー保存 ほぞん 則 そく と対応 たいおう するのになぞらえて熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 二 に 法則 ほうそく とエントロピー増大 ぞうだい 則 そく を対応 たいおう させることもある。なお、この導出 どうしゅつ から明 あき らかなように、熱 ねつ の出入 でい りがある系 けい ではエントロピーが減少 げんしょう することも当然 とうぜん 起 お こり得 え る。
エントロピーが増加 ぞうか するために、熱 ねつ エネルギーのすべてを他 た のエネルギーに変換 へんかん することはできない。したがって、熱 ねつ エネルギーは低 てい 品質 ひんしつ のエネルギーとも呼 よ ばれる。
完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう
編集 へんしゅう
熱 ねつ 力学 りきがく 第 だい 一 いち 法則 ほうそく から、ある熱 ねつ 力学 りきがく 過程 かてい の間 あいだ に系 けい が外部 がいぶ から得 え る熱 ねつ Q は、その過程 かてい の前後 ぜんご での系 けい の内部 ないぶ エネルギーU の変化 へんか Δ でるた U と、その過程 かてい の間 あいだ に系 けい が外部 がいぶ になす仕事 しごと W により
Q
=
Δ でるた
U
+
W
{\displaystyle Q=\Delta U+W}
と表 あらわ すことができる。無限 むげん 小 しょう の変化 へんか で考 かんが えると
d
′
Q
=
d
U
+
d
′
W
{\displaystyle d'Q=dU+d'W}
となる[注 ちゅう 4] 。クラウジウスの不等式 ふとうしき とエントロピーの定義 ていぎ 式 しき から無限 むげん 小 しょう 変化 へんか に対 たい して
d
S
≥
d
′
Q
T
ex
{\displaystyle dS\geq {\frac {d'Q}{T_{\text{ex}}}}}
となる。系 けい が体積 たいせき V の変化 へんか dV を通 とお してのみ外部 がいぶ に仕事 しごと をなす場合 ばあい には、外部 がいぶ の圧力 あつりょく をp ex として
d
′
W
=
p
ex
d
V
{\displaystyle d'W=p_{\text{ex}}dV}
となる。これらをまとめると
d
S
≥
1
T
ex
(
d
U
+
p
ex
d
V
)
{\displaystyle dS\geq {\frac {1}{T_{\text{ex}}}}(dU+p_{\text{ex}}dV)}
が成 な り立 た つことがわかる。可逆 かぎゃく 過程 かてい では等号 とうごう
d
S
=
1
T
ex
(
d
U
+
p
ex
d
V
)
{\displaystyle dS={\frac {1}{T_{\text{ex}}}}(dU+p_{\text{ex}}dV)}
が成 な り立 た ち、さらに準 じゅん 静的 せいてき 過程 かてい では系 けい と外部 がいぶ が熱 ねつ 平衡 へいこう および力学 りきがく 的 てき 平衡 へいこう にあるので、外部 がいぶ の温度 おんど T ex は系 けい の温度 おんど T に等 ひと しく、外部 がいぶ の圧力 あつりょく p ex は系 けい の圧力 あつりょく p に等 ひと しい。すなわち、(U ,V ) で表 あらわ される平衡 へいこう 状態 じょうたい から(U +dU ,V +dV ) で表 あらわ される平衡 へいこう 状態 じょうたい への準 じゅん 静的 せいてき な無限 むげん 小 しょう 変化 へんか では
d
S
=
1
T
(
d
U
+
p
d
V
)
{\displaystyle dS={\frac {1}{T}}(dU+pdV)}
となる。
系 けい と外部 がいぶ の間 あいだ で物質 ぶっしつ の出入 でい りがなく、外 そと 場 じょう の作用 さよう も受 う けていないときには、平衡 へいこう 状態 じょうたい にある系 けい の温度 おんど と圧力 あつりょく は、(U ,V ) の関数 かんすう として一意 いちい に定 さだ まることが経験 けいけん 的 てき に知 し られている。系 けい の温度 おんど と圧力 あつりょく がそれぞれT (U ,V ) とp (U ,V ) で表 あらわ されるとき、不可 ふか 逆 ぎゃく 過程 かてい においても、(U ,V ) で表 あらわ される平衡 へいこう 状態 じょうたい から(U +dU ,V +dV ) で表 あらわ される平衡 へいこう 状態 じょうたい への無限 むげん 小 しょう 変化 へんか で、準 じゅん 静的 せいてき 過程 かてい と同 おな じ式 しき
d
S
=
1
T
(
U
,
V
)
(
d
U
+
p
(
U
,
V
)
d
V
)
{\displaystyle dS={\frac {1}{T(U,V)}}(dU+p(U,V)dV)}
が成 な り立 た つ。なぜなら、左辺 さへん のdS が状態 じょうたい 量 りょう S の変化 へんか 量 りょう なので、右辺 うへん もまた途中 とちゅう の過程 かてい に依 よ らないからである。この式 しき をS (U ,V ) の全 ぜん 微分 びぶん dS と比 くら べると、直 ただ ちに偏 へん 微分 びぶん
(
∂
S
∂
U
)
V
=
1
T
,
(
∂
S
∂
V
)
U
=
p
T
{\displaystyle \left({\frac {\partial S}{\partial U}}\right)_{V}={\frac {1}{T}},~\left({\frac {\partial S}{\partial V}}\right)_{U}={\frac {p}{T}}}
が得 え られる。
特 とく に前者 ぜんしゃ は、統計 とうけい 力学 りきがく において熱 ねつ 力学 りきがく 温度 おんど T を導入 どうにゅう する際 さい に用 もち いられる関係 かんけい 式 しき である(エントロピーの存在 そんざい を公理 こうり 的 てき に与 あた える論理 ろんり 展開 てんかい の場合 ばあい は、熱 ねつ 力学 りきがく においてもこの式 しき が熱 ねつ 力学 りきがく 温度 おんど の定義 ていぎ 式 しき である)。
系 けい と外部 がいぶ の間 あいだ で物質 ぶっしつ の出入 でい りがなく、外 そと 場 じょう の作用 さよう も受 う けていないとき、T (U ,V ) とp (U ,V ) の両方 りょうほう の関数 かんすう 形 がた が知 し られていれば、これら二 ふた つの関数 かんすう から、熱容量 ねつようりょう やエントロピーなどの、系 けい の全 すべ ての状態 じょうたい 量 りょう を計算 けいさん することができる。しかし、どちらか一方 いっぽう の関数 かんすう 形 がた が不明 ふめい な場合 ばあい は、これが不可能 ふかのう になる。例 たと えば、p (U ,V ) だけから系 けい の熱容量 ねつようりょう を計算 けいさん することは不可能 ふかのう である。また、T (U ,V ) だけからでは、体積 たいせき 変化 へんか に伴 ともな うエントロピー変化 へんか を求 もと めることはできない。一方 いっぽう 、S (U ,V ) が知 し られていれば、この関数 かんすう ひとつだけから、系 けい の全 すべ ての状態 じょうたい 量 りょう を計算 けいさん することができる。すなわち、系 けい と外部 がいぶ の間 あいだ で物質 ぶっしつ の出入 でい りがなく、外 そと 場 じょう の作用 さよう も受 う けていないとき、S (U ,V ) は完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう となる。
エントロピーは内部 ないぶ エネルギーや体積 たいせき などの示 しめせ 量 りょう 性 せい 状態 じょうたい 量 りょう を変数 へんすう に持 も つとき、完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう となる。系 けい が化学 かがく 反応 はんのう など物質 ぶっしつ の増減 ぞうげん によってエネルギーの移動 いどう が生 しょう じるときは
d
S
=
1
T
(
d
U
+
p
d
V
−
μ みゅー
d
N
)
{\displaystyle dS={\frac {1}{T}}(dU+pdV-\mu dN)}
となる。
ここで、N は物質 ぶっしつ 量 りょう 、μ みゅー は化学 かがく ポテンシャル である。さらに他 た の示 しめせ 量 りょう 性 せい 状態 じょうたい 量 りょう の変化 へんか dX によるエネルギーの移動 いどう があるときは、それに対応 たいおう する示 しめせ 強 きょう 性 せい 状態 じょうたい 量 りょう x として
d
S
=
1
T
(
d
U
+
p
d
V
−
μ みゅー
d
N
−
x
d
X
)
{\displaystyle dS={\frac {1}{T}}(dU+pdV-\mu dN-xdX)}
となる。
X とx の組 くみ としては
などがある。
温度 おんど による表示 ひょうじ
編集 へんしゅう
エントロピーを完全 かんぜん な熱 ねつ 力学 りきがく 関数 かんすう として用 もち いる場合 ばあい の系 けい の平衡 へいこう 状態 じょうたい を表 あらわ す変数 へんすう は内部 ないぶ エネルギーと体積 たいせき などの示 しめせ 量 りょう 性 せい 変数 へんすう である。しかし、温度 おんど は測定 そくてい が容易 ようい なため、系 けい の平衡 へいこう 状態 じょうたい を表 あらわ す変数 へんすう として温度 おんど を選 えら ぶ場合 ばあい がある。
閉鎖 へいさ 系 けい で物質 ぶっしつ 量 りょう の変化 へんか を考 かんが えない場合 ばあい に、温度 おんど T と体積 たいせき V の関数 かんすう としてのエントロピー S (T ,V ) の温度 おんど T による偏 へん 微分 びぶん は
(
∂
S
∂
T
)
V
=
1
T
(
∂
U
∂
T
)
V
=
C
V
(
T
,
V
)
T
{\displaystyle \left({\frac {\partial S}{\partial T}}\right)_{V}={\frac {1}{T}}\left({\frac {\partial U}{\partial T}}\right)_{V}={\frac {C_{V}(T,V)}{T}}}
で与 あた えられる。ここで CV 定 てい 積 せき 熱容量 ねつようりょう である。
また、エントロピー S (T ,V ) の体積 たいせき V による偏 へん 微分 びぶん はMaxwellの関係 かんけい 式 しき より
(
∂
S
∂
V
)
T
=
(
∂
p
∂
T
)
V
{\displaystyle \left({\frac {\partial S}{\partial V}}\right)_{T}=\left({\frac {\partial p}{\partial T}}\right)_{V}}
で与 あた えられる。これは熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう α あるふぁ と等温 とうおん 圧縮 あっしゅく 率 りつ κ かっぱ T で表 あらわ せば
(
∂
S
∂
V
)
T
=
α あるふぁ
κ かっぱ
T
{\displaystyle \left({\frac {\partial S}{\partial V}}\right)_{T}={\frac {\alpha }{\kappa _{T}}}}
となる。
従 したが って、T -V 表示 ひょうじ によるエントロピーの全 ぜん 微分 びぶん は
d
S
=
C
V
T
d
T
+
(
∂
p
∂
T
)
V
d
V
=
C
V
T
d
T
+
α あるふぁ
κ かっぱ
T
d
V
{\displaystyle {\begin{aligned}dS&={\frac {C_{V}}{T}}\,dT+\left({\frac {\partial p}{\partial T}}\right)_{V}dV\\&={\frac {C_{V}}{T}}\,dT+{\frac {\alpha }{\kappa _{T}}}\,dV\\\end{aligned}}}
となる。
さらに体積 たいせき に変 か えて圧力 あつりょく p を変数 へんすう に用 もち いれば、体積 たいせき V (T ,p ) の全 ぜん 微分 びぶん が
d
V
=
V
(
α あるふぁ
d
T
−
κ かっぱ
T
d
p
)
{\displaystyle dV=V(\alpha \,dT-\kappa _{T}dp)}
であることを用 もち いれば、T -p 表示 ひょうじ によるエントロピーの全 ぜん 微分 びぶん は
d
S
=
C
p
T
d
T
−
V
α あるふぁ
d
p
{\displaystyle dS={\frac {C_{p}}{T}}\,dT-V\alpha \,dp}
となる。
低圧 ていあつ 領域 りょういき において実在 じつざい 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき をビリアル展開 てんかい
V
m
(
T
,
p
)
=
R
T
p
+
B
V
(
T
)
+
O
(
p
1
)
{\displaystyle V_{\text{m}}(T,p)={\frac {RT}{p}}+B_{V}(T)+O(p^{1})}
の形 かたち で書 か くと、モルエントロピー S m の圧力 あつりょく による偏 へん 微分 びぶん は、マクスウェルの関係 かんけい 式 しき より
(
∂
S
m
∂
p
)
T
=
−
(
∂
V
m
∂
T
)
p
=
−
R
p
−
d
B
V
d
T
+
O
(
p
1
)
{\displaystyle \left({\frac {\partial S_{\text{m}}}{\partial p}}\right)_{T}=-\left({\frac {\partial V_{\text{m}}}{\partial T}}\right)_{p}=-{\frac {R}{p}}-{\frac {dB_{V}}{dT}}+O(p^{1})}
となる。従 したが って、低圧 ていあつ 領域 りょういき においてモルエントロピーは
S
m
(
T
,
p
)
=
S
m
∘
(
T
)
−
R
ln
p
p
∘
−
p
d
B
V
d
T
+
O
(
p
2
)
{\displaystyle S_{\text{m}}(T,p)=S_{\text{m}}^{\circ }(T)-R\ln {\frac {p}{p^{\circ }}}-p\,{\frac {dB_{V}}{dT}}+O(p^{2})}
で表 あらわ される。ここで
S
m
∘
(
T
)
=
lim
p
→
0
{
S
m
(
T
,
p
)
+
R
ln
p
p
∘
}
{\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }(T)=\lim _{p\to 0}\left\{S_{\text{m}}(T,p)+R\ln {\frac {p}{p^{\circ }}}\right\}}
で定義 ていぎ される S °m (T ) は、温度 おんど T における標準 ひょうじゅん モルエントロピー であり、この実在 じつざい 気体 きたい が理想 りそう 気体 きたい の状態 じょうたい 方程式 ほうていしき に従 したが うと仮定 かてい した時 とき の、圧力 あつりょく p °におけるモルエントロピーに相当 そうとう する。
リーブとイングヴァソンによる再 さい 構築 こうちく
編集 へんしゅう
1999年 ねん にエリオット・リーブ とヤコブ・イングヴァソン は、「断熱 だんねつ 的 てき 到達 とうたつ 可能 かのう 性 せい 」という概念 がいねん を導入 どうにゅう して熱 ねつ 力学 りきがく を再 さい 構築 こうちく した。「状態 じょうたい Y が状態 じょうたい X から断熱 だんねつ 操作 そうさ で到達 とうたつ 可能 かのう である」ことを
X
≺
Y
{\displaystyle X\prec Y}
と表記 ひょうき し、この
≺
{\displaystyle \prec }
の性質 せいしつ からエントロピーの存在 そんざい と一意 いちい 性 せい を示 しめ した。
この公理 こうり 的 てき に基礎 きそ 付 づ けされた熱 ねつ 力学 りきがく によって、クラウジウスの方法 ほうほう で用 もち いられていた「熱 あつ い・冷 つめ たい」「熱 ねつ 」のような直感 ちょっかん 的 てき で無 む 定義 ていぎ な概念 がいねん を基礎 きそ から排除 はいじょ した。温度 おんど は無 む 定義 ていぎ な量 りょう ではなくエントロピーから導出 どうしゅつ される。このリーブとイングヴァソンによる再 さい 構築 こうちく 以来 いらい 、他 ほか にも熱 ねつ 力学 りきがく を再 さい 構築 こうちく する試 こころ みがいくつか行 おこな われている[17] 。